大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE滅鬼の刃・24『だいじょうぶかな』

2022-01-16 15:10:16 | エッセー

RE エッセーノベル    

24・『だいじょうぶかな』  

 

 

 元日の新聞を読んでいないのはわかってました。

 

 読んだ新聞を丁寧にたたむお爺ちゃんですが、折り方……というか広告の戻し方に特徴があります。

 広告の折り目と本紙の折り目を逆にするんです。

 たぶん、折り目を同じにしていると、一か月も重ねると折り目が重なったところが分厚くなりすぎるから。

 ただの習慣かもしれませんが。

 他にもあるんですが、内緒です。

 まあ、そんなで、読んでないことは知っていました。

 でも、読んだつもりになっていたら……と思うと言えませんでした。

 だからね、「出すのは、お祖父ちゃんやってよね」と念を押しました。

 もし、出すのも忘れるようだったら……ちょっと、あぶないじゃないですか(^_^;)

 まあ、ちゃんと出してくれていたので、一安心。

 

 お祖父ちゃん、このごろ人相が悪くなりました。

 多分、老眼がさらに進んでるせいです。

「メガネ買い直したらあ」

 言ってみましたが「まだだいじょうぶ」と言います。

「いまの度数分かってる?」

「え、えと……」

「机のここに貼ってあるから」

「え……ああ、これかあ」

 と、目を細めますが見えていません。

 貼ってあるのは、レンズの端っこに貼ってあった度数表示の豆粒ほどのシールです。

 次に買う時にスカタンしないよう(以前、同じ度数のを買って無駄になったことがあります)貼っておいたのです。

「そうそう、3.5だ。思ってたのといっしょだったぞ」

 ぜったい嘘です。

 老眼鏡というのは、普通に5.0まであるようです。

 一昨年の暮れに老眼鏡を買い直して、その度数が(3.5)でした。

 いちど目医者さんに行ったらと言うのですが、なかなか行きません。

 

 お祖父ちゃんは、座卓の横に未読の本を積んでいます。

 読んでしまった本は、まとめて下の部屋の本棚に移します。

 だから、いつも同じくらいの本が積んであっても、同じ本ではありません。

 それが、この数か月、本の移動がありません。

 取り越し苦労なのかもしれませんが、ちょっと心配のお正月でした。

 

 

http://wwc:sumire:shiori○○//d〇.com

 Sのドクロブログ☠!

 

 だいじょーぶかよ!?

 言霊っていうのがあるから、はっきりとは言わないけども、きてんじゃないかって気がする。

 新聞は読むだけでも、目にも頭にも悪いもんだって、教えてくれたのは祖父ちゃんだけどさ。

 それなら、新聞止めちゃえばって思った。

 こないだ料金上がって、月に4400円だもんね。

 基本、年金生活の祖父ちゃんには、ちょっと贅沢品、てか無駄だと思う。

「また、嘘書きやがって!」

 ネットで情報とってるから、新聞の嘘とかいい加減さとか分かってるはずなのに、やめねえ。

 年間で52800円だぜ!

 もう、丸っと止めちゃえば清々しいのにね。そいで、その分栞にちょうだいよ。有意義に使うからさ!

 

 本だってさ、このごろ読んでないじゃん。

 座卓の横に『SAO』とか『こち亀』とか『アクセルワールド』とか『りゅうおうのおしごと』とかあるけど、ひとつも進んでない。

 廊下の本棚にさ『岩波歴史講座』って、読んだら呪われそうな本がズラリと並んでる。

 ケース入りなんだけど、もう黄ばんで、はんぶん朽ち果ててるの。

 たぶん、若いころに無理して買ったんだと思う。

 年齢とか経歴とから言っても、団塊の世代の尻尾でさ。まあ、サヨクなわけですよ。

 でね、一冊出して見てみたわけですよ。

「ゲ!?」

 吐きそうになったね!

 傷んでんのはケースだけで、中身真っ新!

 挟んである紐の栞も、なんだか押し花みたいにペッタンコ!

 ああ、積読は昔からなんだ!

 まあ、情けないような、安心したような……。

 だけどね、ちょっと心配になった。

 孫娘まで、ペッタンコにしないでよね!

 ちょっと、栞って名前がおぞましく思えた正月だったぜ。

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魔法少女マヂカ・254『田中執事長の閃き』

2022-01-16 10:42:04 | 小説

魔法少女マヂカ・254

『田中執事長の閃き語り手:マヂカ  

 

 

 鉄道では行くだけで二日かかる。

 最高時速なら鉄道よりは速いが、道路が未整備な大正時代では、車でも三日、どうかすると四日。

 可能性としては飛行機。

 だが、まだ民間航空は成立していない。

 ちょっと無理をして、創設間もない軍の飛行機なら、あるいは……しかし、侯爵のツテを頼っても、軍の飛行機を使うのは難しい。

 調べてみると、長崎には、まだ飛行場そのものが無い。

「どないすんのん?」

 ノンコが泣きそうな顔で聞いてくる。

 魔法少女のわたしでも、窓辺で爪を噛むしかないのだ。準魔法少女のノンコは涙をためてオロオロするしかない。

 霧子は、ソファーで仰向けになって、腕を組んで天井ばかり見ている。

「凌雲閣のドアはどうかしら……」

 自信のない声で呟くように言う。

「だめでしょ、あれをは、時間を遡れるけど、浅草近辺にしか飛べないよ」

「そうね……」

「ねえ、遡れるんやったら、そこから長崎に行ったら?」

「だめよ、遡れると言っても震災の前後数日しか飛べない。飛んでも、震災で鉄道も道路も寸断されてる」

「そうか……」

 アイデアが出尽くすと、再び沈黙が部屋を支配する。

 この堂々巡りを、もう二時間も続けている。

 

 窓の下には、車寄せから正門へのアプローチが見下ろせる。

 箕作巡査は、フィアンセが誘拐され、居てもたってもいられないはずなのに、きちんと門衛室の前で、いつものように立哨している。

―― いや、こうしている方が落ち着くんです。ひょっとしたら、いい考えが湧くかもしれませんし ――

 いい男だ。

 田中執事長は、後ろ手組んで、車寄せのロータリーをグルグル歩いている。

 時々、二階のこの窓に目をやって、互いに――いい考えは?――という顔をするんだけど、横に首を振り合うだけで終わってしまう。

 時々、他の執事やメイドが仕事の指図受けに来たり、伺をたてにくるが、それには微笑みを浮かべ慣れた様子で指示をしている。さすがは、高坂家筆頭家老の家系の執事長だけのことはある。

 若い執事が荷物を載せた台車を押してやってきて、なにやら指示を受けている。

 高坂家では、ほぼ毎日郵便や小荷物を出す。侯爵家としての付き合いや日々の生活、侯爵の仕事がらみでも、けっこうな荷物や郵便物になるからね。

 田中執事長は、それを毎日チェックして間違いが無いようにしている。

 こんな時でも、日々のルーチンに手を抜かない姿勢は立派なものだ。

 

 あ……という感じで執事長の手が停まった。

 

―― そっちに参ります! ――

 口の形で、そう言うと、三十秒後にはドアがノックされた。

「なにか思いついたの!?」

 霧子が、真っ先に詰め寄ると『まあまあ』という感じで切り出した。

「池袋の西、豊島郡に長崎がございます!」

「「「え、東京に!?」」」

 言って思いついた。

 九州のそれが、あまりにも有名なもので『長崎』と言えば、そこしか思わなかったが、『堀の内』や『二宮』のように、どこにでもというほどではないが、地名は全国規模で存在するものが多い。

「下手人も来いと申すからには、すぐに来られる『長崎』を差して居ると存じます!」

 執事長は『下手人』などと大時代の言葉を使う。

 なんだか、遠山の金さんのように見えてきた。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
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明神男坂のぼりたい・43〔御茶ノ水幻想・2〕

2022-01-16 07:57:18 | 小説6

43〔御茶ノ水幻想・2〕 

       


「じ、地元の者です!」

 叫ぶと、どう見ても大河ドラマの第一回目に出てくる脇役みたいな(のっけに主役出てこない)オッサンが、刀かまえたまま聞いてくる。

「……地元とはどこだ!?」
「えと、外神田二丁目、神田明神の男坂下ったとこです」

「神田明神ならば、いかにも地元ではあるが……それにしても、異様なる風体……」

 オッサンが刀を抜いて尋問してるもんだから、人だかりができてしまう。

「面妖なやつ……」「女か……?」「何ごと?」「きつねか?」「タヌキか?」「どん兵衛か?」

「板橋さま、そやつは?」

 野次馬の一人がオッサンに尋ねる。オッサンは板橋というらしい。

「これこれ、見世物ではないぞ。仕方がない、付いてまいれ」

 よかった、さらし者になるところだった。

「それ!」

「うわ!?」

 板橋のオッサンは、わたしを軽々と持ち上げると、自分と一緒に馬に載せて走り出した。

 水道橋近くだと思うんだけど、くねくね曲がって、切り通しや林を過ぎたので見当がつかない。

「よし、下りろ」

「うわ!」

 襟首を掴まれたかと思うと、地面に着地して、目の前には板塀で囲まれたお屋敷の門がある。

「付いてまいれ」

 大きいけれど瓦も載ってない、粗末な門。

「どこを見ておる、こっちだ」

 てっきりお屋敷の中に入るのかと思ったら、柴垣っぽい垣根の向こうを指さす板橋さん。

 ブン!

 ヒ!?

 垣根の向こう、いきなりおっきいアサカリの頭が振り上げられる。

 セイ!

 振り下ろされたかと思うと、ガシっと音がして、薪の切れが飛び上がった。

「連れてまいりました」

「おう、ごくろうであった」

 ズサ

 ひねた金太郎みたいなオヤジがマサカリを切り株に突き立てて振り返った。

「……鈴木明日香であるな」

 え?

「そこに掛けろ」

 ひね金オヤジは、あっさり、あたしの名前を言って、もう一個の切り株を指さし、自分は薪束の山に腰を下ろした。

「言っておくが、ひね金ではないぞ」

 え、声に出てた? てか、目つき悪くって、めっちゃ怖いんですけど(;'∀')

「儂は平将門である」

 え……ええ!?

 

※ 主な登場人物

 鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
 東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
 香里奈          部活の仲間
 お父さん
 お母さん         今日子
 関根先輩         中学の先輩
 美保先輩         田辺美保
 馬場先輩         イケメンの美術部
 佐渡くん         不登校ぎみの同級生
 巫女さん
 だんご屋のおばちゃん
 明菜           中学時代の友だち 千代田高校

 

 

 

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