大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・120『アキバ封鎖!?』

2022-01-20 15:40:22 | ライトノベルセレクト

やく物語・120

『アキバ封鎖!?』 

 

 

 エッサホッサ エッサホッサ

 

 ラムレムメイドさんにかごを担いでもらって東に向かう。 

―― あ、アキバ! ――

 神田明神下の交差点まで出てくると、東の方にアキバのビルやらお店がエメラルドの都のように輝いているのが見える。わたしってば、オズの魔法使いのドロシーみたくドキドキしてる。

 いよいよ来たんだ!

 思わず、少女漫画の主人公みたいに胸に手を当ててしまう。

「ちょ、苦しい」

「あ、ごめん」

 ポケットに収まっている御息所を押えてしまっていた(^_^;)

「あれ、なんで停まってるんだろ?」

 信号が青になったのに、ラムレムメイドさんはカゴを進めようとしない。

「申し訳ありません」

「通行止めです」

「え?」

「『霊道工事中』なので」

「迂回しなければなりません」

 わたしには、見えない。普通に行けば、中央通からアキバの駅に向かっているように見える。

「わたしには見える……車止めとかがあって、指示棒持ったメイドたちが済まなさそうにしてる」

「そうなの?」

「やくもさまやくもさま」

「昌平小学校の方から参ることにします」

「あ、はい、お願いします」

 

 エッサホッサ エッサホッサ

 

 北に二百メートルほど進んでから横断歩道を渡る。

 渡ってすぐの左側に小学校。

 都心の小学校なので、六階建てで最上階は、どこかの市民会館というくらいに大きなガラス張り。

 自分の出た小学校とは、ずいぶん違うなア……お上りさんの感覚になるのも嬉しい。

「あら!?」

 御息所が小さく叫んで、再びカゴが停まってしまった。

「「やくもさまやくもさま」」

「また、通行止め……」

 今度のはわたしにも見えた。

 小学校の東側の道は、ここはテキサスの国境かってくらいのフェンスが張り巡らされていて、五メートル間隔ぐらいで、メイドさんが指示棒……ではなくて、銃を持って立っている。

「アキバは封鎖中です!」

「進入禁止です!」

「それ以上近寄ったら……」

「「「撃ちます!」」」

 ズチャ!

 メイドさんたちが、一斉に銃を構えた。

「ちょっと」

「なんなのです?」

「「これは!?」」

 ラムレムメイドさんが腰に手を当てて抗議する。

「わたしたちは」

「神田明神直属のメイドです」

「「無礼ではありませんか!」

 ラムレムメイドさんが詰め寄る。

 あすがに、メイドさんたちは一歩引きさがる。

「わたしが説明しよう」

 メイドさんたちを押しのけて、メイドカチューシャの代わりにティアラを頂いたメイド将軍みたいなのが出てくる。

「将門さんが身の内に引き受けておられた悪鬼どもが解き放たれたので、アキバは閉鎖しております。まして、その神田明神からやってきたあなたたちを通すわけにはいきません!」

 そんな……

「無礼であろう!」

「メイド将軍!」

「なにが無礼か! 関八州を守護するはずの将門が、災厄をまき散らす方が、よっぽど無礼であろうが!」

「「なにを!」」

「待って、ラムレムメイドさん」

「「やくもさま」」

「そこだ!」

 ピシ!

 メイド将軍が音を立てて鞭を突き付けてきた。ひょっとしてSMの方の将軍?

「なぜ『ラムレムメイド』などと名乗る? おまえたちは著作権というものを知らぬのか!?」

「あ、ちがうの! わたしが親しみを込めて言ってるだけで、この二人が自分で名乗ったわけじゃないの!」

「同じことだ、間違った呼び方をされて注意しないのは認めたも同然ではないか!」

「あ、えと、じゃあ、きちんと呼ぶから……えと?」

「アカです」

「アオです」

 あ、見たマンマなんだ(^_^;)

「いまさら言いなおしても遅いわ!」

 ピシ!

「頭に乗るな、メイド将軍!」

「アカ」

「しかし、アオ」

「ごめん、二人とも」

「「いえ、やくもさまのせいではありません」」

「では、どうしても、ここを通してくれないの?」

「あと、十一匹の悪鬼をやっつけてこい! それか……将門みずからが、頭を下げるのなら考えてやらなくもないがな……」

 フハハハ

 メイドたちがバカにしたように笑う。

「貴様たち!」

「なんという無礼を!」

 なんか、大変なことになってきたよ……

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 アカアオメイド 
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明神男坂のぼりたい・47〔新学年の始業式〕

2022-01-20 07:19:17 | 小説6

47〔新学年の始業式〕 

       

 


 ゲ、ガンダム!!

 同じような声が、あたしの列からわき起こった。

 今日は一学期の始業式。朝、学校に行くと昇降口のガラス戸に新しいクラス表が貼りだしてあった。一年で同じクラスだった子が五人いるけど、あまり付き合いのない子らなので、特に感慨はない。ただ学年一のイケメンとモテカワが居るのが気になったぐらい。

 ま、その話はあとにして、始業式での担任発表。

 あたしらは、3組なので三番目の発表。ガンダムが前に立っているのは不思議ではない。生活指導部長なので、全校集会ではいつも前でにらみをきかしてる。

「三組担任、岩田武先生」

 司会の先生が言ったとたんに、「ゲ、ガンダム!!」になってしまった。

「三組を鍛え上げることは、もちろん。二年生をTGHで最高の学年に鍛え上げてやるから、そのつもりでいろ」

 それだけ言うと、ニヤリと方頬で笑って、担任団の席に戻っていった。

 クラスのみんなは、怖気をふるった。

 なんで岩田武がガンダムなのかは、字を見たら分かると思う。音読みしたら「ガンダム」。それに、その名にふさわしい程の頑丈さと、しつこさ。

 校門前で、朝の立ち番してるときに、あの美咲先輩がスカートの中を盗撮されたことがあった。二百メートルほど離れてたけど、「コラー!」の一声と共に駆け出して追跡。なんと一キロ追いかけて犯人を捕まえた。ついでに途中で喫煙していたS高校の男子生徒の写真も撮って、S高校の生活指導に送り、ありがた迷惑にも思われた。

 で、これだけの大立ち回りしながら息一つ乱れずポーカーフェイス……いかにもガンダム。だから、さっきの挨拶で方頬で笑たのは極めて異例で、クラスのみんなが怖気をふるったのも無理はない。

 演劇部辞めてから、学校にアイデンテティーを感じなくなったあたしでも、この展開は興味津々だよ。

 で、クラスのイケメンとモテカワ。

 イケメンが安室並平。なんかアンバランスな名前だけど、趣味じゃないんで、よくもてるという以上のことは、よく分からない。

 モテカワは南ララァ。カナダからの帰国子女。日本人のお父さんとカナダ人のお母さんに生まれたハーフらしい。水泳部らしく張りのある煎餅みたいに日焼けしてるけど。地は色白だと、同じ水泳部の女子の弁。髪は水泳部にありがちな自然な茶パツ。この自然な茶パツが、とてもワイルドで、その下には信じられないくらいの可愛い顔。むろんプロポーションは抜群。

「暫定的に、学究委員長は安室。副委員長は南。学年始めはいろいろあるから、二人とも、しっかり頼む」

 ガンダムが、口数少なに言う。みんなも「さもありなん」と納得顔。

 なんで、イケメンとモテカワで納得やねん!? 

「これで、シャアがおったら、完ぺきだぞ」

 横の席の男子が呟いた。

 ガンダムには詳しくないので、終わってからスマホで検索した。アムロが主役で、ララァいうのが、永遠のヒロイン。シャア言うのんがシオン軍のボス。で、担任がガンダム。

 確かに出来すぎ。ちゅうか……波乱の予感。

 

 波乱というと、午後の入学式。

 

 二年生に出席の義務は無いんだけど、さつきが興味を示したので、体育館のギャラリーで見ることにした。

「ただ今より、令和三年度入学式を挙行いたします。国歌斉唱、一同起立!」

 司会の教頭先生が言ったとたんに、あたしは気をツケして、直立不動で『君が代』を音吐朗々と歌い出した!

―― え、あたし、こんなに歌上手かった!? で、むっちゃ恥ずかしい(#'∀'#)! ――

 みんながギャラリーのあたし見上げてる。言っときますけど、歌わせているのはさつき!

―― 和漢朗詠集の読み人知らずの名歌よね。これを国歌にしてるとは、なかなかよ! ――

 一人で感心してる。

 式のあと、校長室に呼び出された。

「あんな立派な独唱は、甲子園ぐらいでしか聞けない。大したものだね!」

 来賓の指導主事さんに誉められた。

「チェンバレンが、こんな英訳しております」

 さつきが、勝手に言わせる。

 A thousand years of happy life be thine!
 Live on, my Lord, till what are pebbles now,
 By age united, to great rocks shall grow,
 Whose venerable sides the moss doth line.

 いつのまに勉強したんだ? はた迷惑な!

 あたしの新学年も波乱の兆し……。

 

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