大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・せやさかい・055『ヤマセンブルグ・1』

2019-08-24 15:38:32 | ノベル
せやさかい・055
『ヤマセンブルグ・1』 

 

 

 エディンバラを離れる飛行機の中に居てる。

 と言っても、夏休みが終わって日本へ帰るわけではない。第二の訪問地ヤマセンブルグに向かっているところ。

 

 じつは、こっちが本命なんや。

 

 おとついの晩御飯で頼子さんが口を開いたのは、イザベラさんがデザートを運んできた時。

 いつもは通訳見習いにしてエクソシストにしてお世話係のソフィアさんがやってくれてる。それがイザベラさんなんで、あたしらもアレ?って感じはした。

 イザベラさんが英語でも日本語でもない言葉で頼子さんに言うと、頼子さんも同じ言葉で返事した。

「あさって、エディンバラを離れてヤマセンブルグに移動します。ちょっと窮屈な旅になるかもしれないけど、新鮮な旅になることは確かだから、期待してちょうだい」

「「は、はあ……」」

 留美ちゃんと二人でたよんない返事になる。

「ヤマセンブルグというのは、どんな国なんですか?」

 留美ちゃんが素朴な質問をする。

「ヨーロッパには公国と言って、王国に準ずる国がいくつかあるの。モナコ公国とか知ってるでしょ? その一つよ。わたしにはね三つの国籍があるの、日本とイギリスと、ヤマセンブルグ。お父さんがイギリスとヤマセンブルグの国籍を持ってる関係でね。で、夏休みに間にどうしても立ち寄らなくちゃならなくて、ごめんなさい、ちょっと付き合ってくださいね(o^―^o)」

 頼子さんの笑顔(o^―^o)には有無を言わせない力がある。阿弥陀さんがお迎えに来たら、きっとこんな笑顔やろなあと思う。

 空港で待ってた飛行機はプライベートジェットとは違ごた。ふたまわりは大きいクリーム色のジェット機で、胴体にはドラクエに出てきそうな紋章が貼り付いてて、パイロットもジョン・スミスとは違う人。

「この機体の操縦免許は持ってないんでね」

 そう言いながら、ソフィアさんやイザベラさんといっしょに飛行機に乗り込んだ。他にもヒルウッドのお屋敷のスタッフも何人か乗り込んで賑やかになるかなあ……と思ったら、機内はいくつかのキャビンに分かれていて、わたしと留美ちゃんは頼子さんといっしょに○○○○キャビンに。○○○○と伏字になってるのは「キャビンの位置が分かる書き方はしてはいけません」と言われたから。

「なんでですか?」

「ミサイルは、このジョン・スミスにも防げないからね」

 これはただ事やないなあ……。

 そう思てると、イザベラさんの耳打ちで頼子さんが目を剥いた。

「え、ドレスコードがあるの!?」

 ドレスコード? どんなコードや?

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・66〔初公開 うちのプリクラ!〕

2019-08-24 06:48:53 | ノベル2
高安女子高生物語・66
〔初公開 うちのプリクラ!〕
    


 
 妊娠はせんとき……それが精一杯やった。

 カレができたいうくらいで、キャーキャー騒ぐ女子高生の世界で、美枝の話は飛躍しすぎてた。
 恋愛、体の関係……ここまでやったら、なんとか話のしようもある。

 せやけど、その相手が義理とは言え兄妹。それも手早く子どもつくって、既成事実を作ろとしてる。
 そんな美枝を、どう受け止めて、なに言うたらええのんか、ぜんぜん分からへん。

 うちの頭の中では「お兄ちゃんは、男の欲望を、お手軽な義理の妹ですませよとしてる」そんな平凡で薄汚い感想しか湧いてけえへん。
 そう思たら、美枝は、そっくりそのままの、うちの気持ちを言い当てよった。
「好きな相手がいてたらHしたなるのは普通や。単なる欲望からかどうか言うのは、いっしょに居てたらよう分かる。お兄ちゃんは、先のことまでしっかり考えてる。自分にあたしを養える甲斐性。始まったばっかりのあたしの青春。親に言うタイミング。せやけど、あたしは別のこと感じる。今しっかりしとかんと、お兄ちゃんとは一生兄妹のまんまや。それに、子どもが欲しいいうのは、あたし自身の切実な気持ちやねん。明日香やゆかりには分からへんやろな……あたしはお父さんとしか血のつながりがない。お兄ちゃんはお母さんとだけ。で、お父さんとお母さんは、もともと再婚同士の他人。あたしは確かな家族が欲しい。あたしに子どもができたら、子どもを通して、みんながほんまの家族になれる」
「美枝は、家族のために子どもが欲しいのん?」
「ちゃう。ほんまのほんまは、好きな人の子どもが欲しい。当たり前の女の気持ちや。その上で、うちの家族が仮面とちゃう、ほんまの顔で向き合えるようになったら、最高やん。ううん、生まれてくる子どものためにも、あたしらはほんまの家族になっとかならあかんねん、あかんねん!」

 もう言う言葉あらへん。ただ美枝の一途さが、哀れで、羨ましかった。

「ああ、胸の中吐き出したらすっきりした。おおきに明日香。明日のヤマはバッチリやさかいね!」
 便秘のCMに出られそうなくらいスッキリした顔で、美枝は行ってしもた。

 ほんで、今日のテストはバッチリやった。美枝のヤマハリは偉いもんや。これで自分の気持ちの確かさを間接的に示そとしてるのは……うちの当たりやとおもう。
 明日はテストの中休みなんで、ゆかりと美枝と三人でミナミに出てはしゃいだ。カラオケで二時間。うちは可愛らしい『フォーチュンクッキー』四回ぐらいかけて、三人で歌って踊った。AKBのナンバーやら、モモくろなんか。やっぱりこのへんは、普通の高校生。
 ただ、ラストで、美枝が『前しか向かねえ』で閉めたんは意味深やった。

 それからプリクラを撮りに行った。

 うちは一年のときは、親しい友だち居てなかったよって、みんなでプリクラなんかは中学以来。
 プリクラもたった一年ちょっとで大進歩。一回の撮影で、アップ・ななめ・全身・コラージュの四種類を体験できる。一回400円やけど、三回も撮ってしもた。

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高校ライトノベル・須之内写真館・38『キューポラのある街・2』

2019-08-24 06:39:59 | 小説・2
須之内写真館・38
『キューポラのある街・2』         


「あんた、雑誌社の人?」

 作業着のお爺さんが近づいてきた。深く刻まれた皺、節くれ立った手。いかにも昔ながらの職工の感じ。
「A出版の嘱託です。お爺さんは、古いんですか、この工場?」
「いや、今日が初めて」
「え……?」
「なんか勘違いしてんね。ボクは役者だよ。この工場取り壊すんで、関東テレビで、特集。そのドキュメンタリーだよ」
「え、あ、じゃ、それじゃ……」
 直美には、話が見えてこない。
「ボク『キューポラのある街』で、職工のちょい役で出てたの。予算少ないから小百合ちゃんに来てもらうわけにもいかないから、動員がかかったってわけ」
「あ、そうなんだ」

 ようやく分かった。

「撮影は、もう終わったんですか?」
「撮影どころじゃないんだよ」
「え……」
「取り壊し反対の市民運動の人たちが来ちゃってさ。今、そこの公民館で、市とうちのロケ隊と、市民運動の人たちと話し合いの真っ最中。ボクは苦手だから、ここで待ってるんだ」
「そうなんだ。いろいろややこしいんですね……しかし、どう見ても本物に見えますねえ」
「そりゃ、もう撮影から四十七年だよ。ボクみたいな大部屋、いつまでも役者じゃ食えないからね。普段は大道具やってんの」
 道理で、節くれ立った手をしているはずだ。
「役者は廃業ですか?」
「やってるよ。気持ちの上では、そっちが本業だからね。もっとも、ほとんどエキストラだけどね」

 直美は惜しいと思った。黙って、そこにいるだけで人生を感じさせる役者は、そういるもんじゃない。

「今でも映画専門なんですか?」
「ハハ、映画専門の役者なんて、大物でもいないよ。市川 右太衛門の息子だって犬の声でCMに出る時代だぜ」
「ハハ、そういやそうですね」
「今度は、久々に台詞のある役だったんだけどね……」
「え、すごいじゃないですか!」
「ナリが東野英二郎に似てるもんでね。再現ドラマにはおあつらえ向き……あ、失礼。つい喫ちゃった」
 お爺ちゃんは、火を付けたタバコを持て余した。
「いいですよ、そのまま」

 直美は、十数枚写真を撮った。

「撮ってくれるのは嬉しいけど、一応仕事で来てるからさ、事務所のOKとらなきゃ使えないよ」
「採用になったら、編集から電話させてもらいます」

 そのとき、四十七年前の吉永小百合がセーラー服で駆けてきた。反射的に写真を撮ってしまう。

「あ、お早うございます」
 吉永小百合が、アイドルのような声で挨拶した。

「孫の小夏です。役者のタマゴ、今回は吉永小百合役」
「そうなんだ、そっくりね!」
「メイクさんの腕です」
「この子は、もう三十年早く生まれてりゃ、スターになれたんですけどね。かわいい孫だけど今風じゃない」
「フフ、どこで、どんなキャラが流行りになるなんか分からないわよ」
「そうね。あたしも、そう思って売れない写真撮ってんの」
「ハハ、売れない者同士か」
「お祖父ちゃん、撮影は中止だって」
「ほんとかよ?」
「工場の取り壊しを前提にした撮影はしないって、さっき決まったとこ」
「そうかい……」

 すると、そこに別のロケ隊がやってきた。花かごをぶちまけたようにアイドルグループの女の子たちがロケバスから降りてくる。

 新曲のプロモの撮影に、この工場を狙っていたようで、あらかじめキャンセルを狙って待機していたようだ。直美は、改めて、この業界のスサマジサを感じた。

 老優のお爺ちゃんは、その後二度とカメラの前に立つこともなく、一カ月後に脳溢血で帰らぬ人になった。
 孫の小夏は、あのアイドルグループのオーディションに合格。見事研究生になった。

 ブログで見た小夏の顔には、あの時の吉永小百合の片鱗も無かった。

 まあ、時代なんだ……そう思う直美であった。
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高校ライトノベル・小悪魔マユの魔法日記・12『知井子の悩み・2』

2019-08-24 06:30:34 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・12
『知井子の悩み・2』


 知井子が決心をした。

 たいそうな決心ではない。この半年近くで、身長が五センチも伸びたので、新しい服を買いに行く決心をしたのだ。
 縦には成長したが、横には、それほどに成長していなかったので、服はずっとそのままでいた。しかし、さすがに持っているミニスカートがマイクロミニになりかけて、階段の上り下りに気を遣うようになった。で、思い切って服を買い換えることにしたのだ。

 まずは制服だった。毎日着る物なので、これが最初になった。
「入学の時、少し大きめのを買ったのにね」
 知井子のお母さんは、そう言いながらも制服を買い直してくれた。不足そうな言い方だったけど、娘の成長は嬉しい。単に身長が伸びたことだけじゃなくて、何事にも自信を持ち始めたことが嬉しいのだ。
「他の服も買い直さなくっちゃなあ」
 お父さんが、嬉しそうにお小遣いをくれた。

 マユは知っていた。落第天使の利恵がかけた白魔法が効いてきたのだ。片岡先生の事件の前に、利恵が知井子のコンプレックスを知って、お気楽にかけた白魔法。
 オチコボレ小悪魔のマユは、知井子が魔法で身長を伸ばして得る自信はにせものだと思った。知井子の身長が伸びると、知井子は自分でも思いもかけない苦労をしょいこむことを知っている。だから対抗して、知井子の身長が伸びない黒魔法をかけたが、結果は、半年で五センチも背が伸びるという、育ち盛りの小学生並の成長になった。
 利恵は、思ったほどに知井子の背が伸びないことに、やや不満。マユは自分の黒魔法が利恵に勝てなかったことが不満。
 実際のところは、オチコボレ天使と小悪魔の魔法は相殺されて、知井子の背が伸びたのは、あくまでも自然な成長であった。影響があったとすれば、英語の片岡先生が、メリッサ先生と恋人同士になるドラマチックな展開を目の当たりにしたことであろうか。

 マユには見えていた。街に服を買いに行ったら、どういう展開になるか(小悪魔マユの魔法日記・3『知井子の悩み』に書いてある)
「ねえ。知井子、明日いっしょに街に出ない?」
 マユの方から声をかけた。知井子は沙耶や里依紗もいっしょ行きたかったが、あいにく二人は検定試験で出かけられない。むろんマユはそれを見越して、声をかけている。未熟な小悪魔であるマユは、人数が多いと、これから起こる問題をさばききれないからである。

「ねえ、キミお茶しない?」

 イケメンくずれのお笑いタレントのようなオニイサンが声をかけてきた。
 多少くずれていてもイケメンである。知井子は人生で初めて、男の人に声をかけられた。中学生のとき、ディズニーランドでスタッフのオニイサンが「迷子になったの?」と声をかけてくれたのを例外として。

――予想通りだ。

 ゴスロリの店で、知井子は思い切って服を買った。あたりを歩いているヒラヒラのゴスロリではなく、シックな二十世紀初頭のイギリスのお嬢さんのように見えた。

「いいえ、けっこうです」……とは言えなかった。
 なんせ、人生で初めてオトコから声をかけられたのである。で、ディズニーランドのスタッフのオニイサンではない。
「え……あの、あの……」
 知井子は、後の言葉が続かない。このままではイケメンの軽いナンパに引っかかってしまう。
 マユは、知井子自身に断って欲しかった。でも、予想通り、知井子は声も出せない。
「だからさ、気楽に、そっちの子もいっしょにさ」
 あきらかに、ついでに言われていることにむかついて、マユは、ヒョイと指を横に振った。

 とたんに、イケメンの口は閉じたチャックになってしまった……。

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高校ライトノベル:連載戯曲:ユキとねねことルブランと…… 1

2019-08-24 06:06:30 | 戯曲
ユキとねねことルブランと……
栄町犬猫騒動記
 
大橋むつお
 
 
時  ある春の日のある時
所  栄町の公園
 
人物
ユキ    犬(犬塚まどかの姿)
ねねこ    猫(三田村麻衣と二役)
ルブラン   猫(貴井幸子と二役)
 
闇の中、猫たちの無秩序で無統制な声々しばらく続く。「おだまり!」とルブランの凛とした一声で、水を打ったように静かになる。同時に、舞台明るくなる。舞台は栄町の公園。中央に、この町の高校二年生、貴井幸子の姿をしたルブランが、舞い散る桜吹雪の中、猫達(姿は見えない)を睥睨している。
 
 
 
ルブラン: おまえたち、いいかげんにしないと三味線の皮にしちゃうよ!(猫達のしょげた声)
 
ルブランの携帯が鳴る。手にしたラクロスのスティックを持ちかえ、腰につけた大そう立派なケースから、美しい携帯を出す。同時に猫達に「あっちにおいき」とあごでしゃくる。猫達の気配ほとんどなくなる。
 
ルブラン: ……いいこと、あなたはわがままだったのよ。どうしようもなくね。因果応報、むくいよ……だめ! 今ごろ泣きごと言ったって。恨むんだったら、自分を恨みな。人のことをちっとも考えない。自分の気持ち、欲望だけ。最低だったわよ!! そんなあなたに、終止符を打ってあげたの。エンドマークを出してあげたの。反省……? しても遅いわよ。もう人間として生きていく資格なんかなし! 世界のためにも、これしかないの! これからは、わたしがやるわ。あなたに代わって……そう、泣けばいい、わめけばいい。もう誰にも聞こえやしない。そうやって、自分の愚かさとみじめさを思い知るがいい! ホホホ……じゃ、またお話しましょ。これからは何度でもいたぶってあげる。もう少しあなたの心をえぐってやりたいけど(人の気配を感じて)じゃ、またね……。
 
携帯のスイッチを切り、上手方向に目線を残しながら下手に去る。二三匹居残った猫が「ニャー」と後を追う。いれかわりに、同じ高校二年生の犬塚まどかの姿をしたユキが、声をひそめ、まどかを探しながらあらわれる。
 
ユキ: まどか……まどか…………まどかったら……どこ行っちゃったのよ。まどか……たまんないよ、ほんとに……まどか! たのむよまどか……どうすんのよ、こんなになっちゃって……まどか! 冗談じゃないわよ……お願いまどか。出てきてまどか……出てきてちょうだい、まどかあ……
 
同様に、同じ高校二年生の三田村麻衣の姿をしたねねこがあらわれる。背中に大きな水鉄砲を背負い、腰にチャラチャラとひかりもの、鞄を手に、首にブタの人形を下げている。
 
ユキ: まどか……まどか……(ねねこに気づき)ユキ、ユキ……どこにいるの、犬塚さんちのユキ……
ねねこ: なにやってんの?
ユキ: あ、麻衣……いつからそこに?
ねねこ: ついさっき。公園の前を通ったら、まどかの姿が見えて……何か探してんの? ひょっとして……
ユキ: ユキ、ユキ探してるの。目が覚めたらいないの。庭の柵が開いていたから、一人で散歩に出かけちゃったんじゃないかと思うの。
ねねこ: それは心配ね。まだ子犬なんでしょ?
ユキ: うん、一才ちょっと……人間でいえば、わたしたちくらいかな。
ねねこ: へえ、もう一才過ぎたんだ。
ユキ: 小柄な子だから……でも、雑種のノラ犬、賢い子だからそう心配はないと思うんだけど……。
ねねこ: へえ、ユキってノラだったんだ。
ユキ: お母さん、動物嫌いのくせに見栄っ張りだから、紀州犬だって言ってるけど。ほんとは、お父さんが酔った勢いで、この公園で拾ってきたの。
ねねこ: そうなんだ。
ユキ: で、けっきょく、わたしがユキの世話係ちゅうわけよ……おーい、ユキいいいい……
ねねこ: まどか、今日は、ちょっと久しぶりだよね?
ユキ: そう……?
ねねこ: このふた月ほどは、ろくに顔もあわせてないよ。
ユキ: そう? だったらごめん。
ねねこ: ひょっとして、麻衣のこと敬遠とかしてる?
ユキ: ううん……たまたま。
ねねこ: たまたま?……はっきり言いなさいよ。そういうずるい言い方嫌いだし、あたし。ほら、また目線が逃げる。何か思ってる証拠。かまわないから、はっきり言って。
ユキ: えと……じゃ、このごろ麻衣、変わっちゃったりしてない?
ねねこ: あたしが?
ユキ: うん……派手になったつうか、お化粧とかもしてるし、ジャラジャラひかりもんとかぶら下げてるし……それはいいんだけど、学校でも、よく居眠りとか、ちょっと気むつかしくなった感じ……?
ねねこ: ふーん……
ユキ: はっきり言えっていうから……気ィ悪くしたらごめんね。
ねねこ: ううんいいよ、気にしてないから。あたしもいっしょに探してあげようか?
ユキ: いいよ、そんな……
ねねこ: いいよ、探してあげるよ、行方不明のまどかのこと……
ユキ: え……!?
ねねこ: 実は、ずっとさっきから、あんたのことはわかっていたのさ。あんたの探しているのは、犬のユキなんかじゃない。人間のまどかだ! どうだい、違うかい? 犬塚まどかさんちの飼犬のユキさんよう……
ユキ: キャイーン……!
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