大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・060『城ケ島の少女・4』

2019-08-19 12:52:26 | 小説

魔法少女マヂカ・060  

 
『城ケ島の少女・4』語り手:マヂカ  

 

 

 あっちだ!

 早とちりの誤認攻撃に文句も言わないで、ブリンダは駆けだした。

 ブリンダは地元の女子高生の制服で敵を追いかけていたのだ。敵がわたしとの戦いに気を取られている隙に接近し、一撃で仕留めるつもりだったんだ。近接戦闘は大戦のころからのブリンダの得意技だ。七十四年ぶりに日暮里駅で邂逅したときにはすれ違いざまにブラを抜き取られた。ところが、敵もなかなか、逆にブリンダを翻弄してわたしのドロップキックで同士討ちにさせようとしたんだ。

 16号線を芸術劇場の方に走っている。

 芸術劇場の向こうは京浜本線。敵は線路に沿って逃げたか、線路をまたいだ山に逃げ込たか、数秒後には判断しなければならない。敵もこちらも亜音速で16号線を駆けているのだ。人々は、ようやく鎮火し始めた軍港の災厄に釘付けで魔法少女の激闘に気づく者はいないだろう。ただ、スマホやカメラを向けている者が多く、映りこんでいる可能性は高い。二人ともレベル1の光学迷彩をかけているので、顔の特徴を捉えられることは無いが、制服は写る。騒ぎになるかもしれないが、今は構ってはいられない。

 え……分裂した!?

 汐入駅手前まで来たところで敵の気配は三つに分かれた。上りの東京方面に向かう気配、下りのトンネル方向に向かう気配、そして正面の山に駆けのぼる気配。

 どうなってるんだ?

 京浜本線の軌道上で迷ってしまう。光学迷彩をレベル4に上げてある。赤外線カメラでもなければ視認はできない。光学迷彩を5にまで上げれば赤外線カメラにも引っかからないが、瞬発的な行動ができない。迷彩の効果と行動能力は反比例するのだ。

 軌道上を右往左往しながら行方を探る。

 来るぞ!

 トンネル側に寄った時、トンネルの中からパルスタガ―が飛んできた。からくも、トンネル入り口の両脇に身をかわしたが、わたしもブリンダも制服を裂かれてしまった。

――トンネルの向こう側に周る、十秒後突入――

 手話で伝え、山すそを駆けて反対側へ。一呼吸おいて十秒。突入!

 互いに識別信号を発して同士討ちを予防する。

 ところが、突入直後に飛んできたのは敵のパルスタガ―だ。

 くそ!

 風切り丸を実体化させ、上段に構えながら突き進む!

 再びパルスタガ―! 避けたところにソードの剣先が迫る!

 キエーーー!!

 避けると同時に風邪きり丸を一閃!

 バシュ!!

 手応えと同時に頬に痛みが走る! 口の中が血で溢れる、誤飲すれば窒息する。

 反射的に左手を当てて止血。

 風切り丸を構え直して、敵のシルエットを認識。

「ブリンダ!?」「マヂカ!?」

 またも同士討ちするところだった。

 

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・61〔ラブホ初体験!〕

2019-08-19 07:11:05 | ノベル2
高安女子高生物語・61
〔ラブホ初体験!〕
        


 連休を持て余していた中尾美枝から電話。

「ねえ、ラブホの探検に行かへん!」
 なんでもゆかりとの約束が流れたのでヒマなので、うちのとこにお鉢が回ってきた。
  で、第一声が、これ。
 オトコと行くのは、最終的なHが目的やけど、そういうときにラブホのグレードやら、オトコのセンス(まあ、こういうのは、オトコから誘うもんやし)を値踏みするために、学習しておこうというのが目的。
「オンナ同士でも、やらしいことせえへんやろね?」
 そう確認すると「ガハハ」と愉快そうで健康的な答が返ってきた。

 で、大阪市内の環状線某駅で降りて、大阪でも指折りのラブホ街に二人でおもむいた。

「なんかネオン点いてんと、普通のビジネスホテルみたいやね」
「こんな時間やから、入れるんよ。昼過ぎたら、もう空室ないやろなあ」
「あ、フロントがある……」
「あれは、法律対策上。部屋はこっち」
 やっぱ、美枝の方が詳しい。て、当たり前。うちは、こんなとこ来るのん初めてや。

 パネルにある部屋は、看板通り均一料金やった。で、半分以上が使用中なのには驚いた。

「ウワー、ショッキングピンク!」

 部屋に入るなり、部屋のコンセプトがピンクなのにタマゲタ。
「やっぱり、趣味のええ部屋は使用中やね。ま、基本的なシステムはいっしょやろから」
 ウォーターサーバーもピンク色やったから、ピーチのジュースでも出てくるのかと思たら、当たり前の水やった。
「明日香、なにショボイ水飲んでねんな。こっち、飲み物は一杯あるよ」
 コーヒー・お茶・紅茶・生姜湯・ココア・コンソメスープetc……。
「へえ、生姜湯や……」
 今里のお祖母ちゃんを思い出す。
「なに、しみじみしてんのよ。ご休憩やから、時間との勝負やで」
 美枝は、そう言うとクローゼットの上からお風呂のセットをとりだして、放ってよこした。
「せっかくだから、いっしょに入ろ」
 美枝のノリで、そのままバスに。
 壁の色なんかは違うたけど、お風呂自体は、去年お祖母ちゃんのお通夜で入った葬儀会館といっしょ。
 二人で、ゆったり入れて、お風呂の中に段差がある。ガラス張りかと思てたら、拍子抜けするほど普通のお風呂。
「これは、フロントといっしょで、警察うるさいし、女の子には、この方が喜ばれる」
「ふーん……キャ!」
 油断してると、いきなり水鉄砲。
「アハハ、びっくりしたやろ。こういう遊び心が嬉しいとこや」
「もう、とりあえずシャワーして、お風呂入ろ」
 美枝のノリで、シャワーして、バスに浸かる。やっぱり女の子同士でも、変な感じ。ちょっとドキドキ。
「ほんなら、洗いっこしょうか」
 前も隠さんと美枝が上がる。ボディーシャンプーやらリンスやら、わりとええもんが二種類ずつ置いたった。二人で違うもん使うて感触を確かめる。違いはよう分からへんけど、うちで使うてるのよりはヨサゲやった。
「なあ、体の比べあいしょうや」
「比べあい?」
「修学旅行でも、お互いの体しみじみ観るてないやんか。二人きりやから、観察のしあいせえへん」

 なるほど、同じ歳の同じくらいの体格でも、裸になると微妙に違う。肩から胸にかけてのラインは負けてる。
「せやけど、乳は明日香の方がかわいいなあ。あんまり大きないけど、カタチがええ。ほら片手で程よく収まる」
 そっと、美枝の手で両方の胸を覆われた。風呂の鏡に映すと、丸出しよりも色っぽいし、自分が可愛く見える。

 それからは……中略……自分でも観たことのないホクロを見せてしもた。いろんなとこのカタチや色が違うのは勉強になった。

「明日香、ベッドにおいでよ」
 髪の毛乾かし終わると、美枝がベッドに誘う。
「え、あんた裸!?」
 掛け布団めくると、美枝はスッポンポン。
「あんたも……」
 あっという間に、バスローブ脱がされてしもた。
「ちょっとだけ練習しとけへん」
 言い終わらんうちに美枝が後ろから抱きついてきた。胸の先触られて、体に電気が走った。
「もう、びっくりするやんか!」
「今度は、明日香が」
 そう言うて、美枝は背中を向けた……。

 お互い感じやすいとこを確認したけど、下半身はやめといた。あくまで、勉強やねんさかい。

「この感覚知っとくことと、この感覚を愛情やと誤解せんことやね」
「せやね、Hの後にIがあるもんやけど、やっぱり愛が先にあらへんとね」

 そういう女子高生らしい恋愛論の結論に達して、うちらはご休憩時間ギリギリまでおってホテルを出た。

 実は、美枝から、ある話を聞いたんやけど、女の約束で言えません。

 ただ、外に出たとき、五月の風が、とても爽やかやったことは確かでした。
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高校ライトノベル・里奈の物語・60『なんで!』

2019-08-19 06:58:07 | 小説5
里奈の物語・60
『なんで!』


 
 のらくろは生き延びることになったけど、お父さんが死んだ。
 
 ポジとネガが一ぺんにやって来た。もちろんのらくろがポジで、お父さんはネガ。

「お父さん来はったときに、里奈ちゃんには会わさんようにしたけど……ごめんな」
 店に戻ると、伯父さんが済まなさそうに俯いた。
「いいんです。あの日は帰ってきたときに、ここから出てくるお父さん見たけど、あたしも避けたから」
「……そやけど」
 伯父さんは、あたしの顔を見て気をつかっている。ひどい顔をしている自覚はある。
「そんなんじゃないんです」
 伯父さんが何か言いかけたけど、おばさんが止めた。その気配を背中に感じながら、階段を上がり、部屋に籠った。
 ベッドに飛び込んで、頭から布団をかぶる。

――なんで、なんで、動揺してんだ! あたしたちを捨てて、とっくに縁の切れた元チチなのに! なんで! なんで!――

 頭の中で――なんで!――がグルグル回ってる。
 ドアの外に人の気配。伯父さんとおばさんが、心配してくれている。
 頭の中で回っていた「なんで」は、いつか口からこぼれていた。
「なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! なんで! なんで!」 
 声が外に漏れているのは、伯父さんたちの気配で分かる。
 分かってる、心配をかけている。でも口に出さなきゃ「なんで!」のために爆発してしまいそう。

 いつのまにか眠ってしまった。

 人間は絶えられない痛みに襲われると、脳みそから催眠物質が分泌されて眠ってしまうらしい。
 話には聞いていたけど、初めて体感した。
 あんな元チチに愛情なんて無いはずなのに……これっぱかしも。

「お母さん、あたしお通夜に行く」

 目が覚めると、お母さんに電話した。
――でも、あんなお父さんだったんだよ?――
 お母さんの意外の声。
「それ分かってて、電話してきたのお母さんだし」
――う……だけど……――
 あたしは、ただ「なんで!」の正体が知りたかった。
 考えても出てこない。お父さんの死に顔に聞くしかない……そう思ったから。
「お母さん、新大阪で待ちあおう」
――って……お通夜は明日だよ――
「なんで今日じゃないの!?」
――お葬式ってのはね……――

 あとの言葉は聞いてなかった。こんな気持ち、一分一秒でも早くケリをつけたかったから。 
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高校ライトノベル・須之内写真館・33『成人式の写真・2』

2019-08-19 06:53:00 | 小説4
須之内写真館・33
『成人式の写真・2』         


 成人式写真の二日目、妙な飛び込みの客があった。

 なんとお坊さん。それも、とうに九十は超えて居るであろう老僧である。

「専念寺の住職で橘常海と申します。突然で申し訳ありませんが、この人達の成人式の写真を撮っていただけませんか?」
 そう言って解いた風呂敷包みには、法名が書かれた小さな札が沢山収まった額が入っていた。
「この方々は?」
 玄蔵祖父ちゃんが聞くと常海和尚は、こう答えた。
「わたしの戦友たちです」
「戦友……失礼ですが、ご住職はお幾つになられるんですか?」
「今年で、九十五になります」
「それはそれは……」
「この人達も、生きて居ればわたしと同年です……予科練の同期です。みんな二十歳の若さで散っていった人たちです。もう亡くなって七十余年、元々係累の少なかった人たちです。わたしも老い先短い身の上、ひ孫が成人なので思い立ちました。みんなの成人写真を撮ってやろうと」

 数えると四十八人分の俗名と法名が書かれていた。中には笑顔やむつかしい顔をした写真が付いているものもあった。
「この人達は、みな特攻で逝かれたのですか?」
 玄蔵祖父ちゃんが、しみじみと聞いた。
「出撃はしましたが……敵艦に突っ込めたものは一人もいません。わたしの出撃は終戦の明くる日の予定でしたので、この歳まで生きてしまいました」

 スタジオは、準備待ちの新成人も含め、しばらくシンとしてしまった。

「しかし、予約で一杯でしてね……」
 やっと、父の玄一が口を開いた。
「それなら、あたしたち一緒に撮ってもいいですよ」
 順番が来た女の子三人のうちの一人が申し出た。
「ミーハーかもしれませんけど、こないだ『永遠のゼロ』を観て感動したんです。いっしょに撮らせてください」

 そういうことで、三人の女の子の前に額を置いて写真を撮ることになった。

「どうもありがとう。年寄りのわがままに付き合わせてしまって」
 常海和尚は、深々と頭を下げた……。

 その後、妙な事件があった。

 尖閣諸島に近い海域を七隻の艦隊で南下していた某国の艦隊のレーダーに48機のアンノウンの飛行機が映った。各艦の見張り員は、やがて海面すれすれを飛んでくるゼロ戦に気づき、警告射撃をした。
 進路を変えないため、一斉に対空ミサイルを打ち上げたが、全弾目標をロストし、48機のゼロ戦は、七隻の艦に七機ずつほどが体当たりして、艦隊は大混乱した。

 某国は、その状況を撮影し、直ぐに世界中に映像が配信された。しかし、その映像には静かな海と空。そして闇雲にミサイルや近接防御機銃を撃ちまくり、慌てふためく乗組員の演習のようなものしか写っておらず、某国は合成前のCG映像を間違って流したと笑われ、非難された。

 いよいよ、明日は、成人式の本番である。
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高校ライトノベル・小悪魔マユの魔法日記・7『ダークサイドストーリー・3』

2019-08-19 06:37:10 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・7
『ダークサイドストーリー・3』    


 
 サタンとミカエルの戦いを除いて、有史以来初めての「時間よ止まれ、ダブルブッキング事件」から一ヶ月。
 知井子の身長が一センチ伸びた。
 本人はビックリしていたが一センチなので、誰にも言わない。誰も気づかなかった。
 落第小天使利恵は、自分の白魔法のなせる技だと思っていたが、ただの自然な成長であった。利恵の思いこみのいきさつについては『小悪魔マユの魔法日記・3 知井子の悩み』を見ていただきたい。

 本題は知井子のことではない。

 ルリ子たちワルのアミダラ女王パンツに、ことの発端がある。
 マユのイタズラで、ルリ子の仲間の一人のスカートが翻り、アミダラ女王のパンツが丸見えになった。心を閉ざし、無気力な授業をやっていた片岡先生の心は読めなかったが、その瞬間、片岡先生は一瞬ドキリとしたが、並の男が、こういう状況で感じるドキリとは違っていた。ブルネットの髪をした女性の顔が一瞬浮かんだだけである。
 そのことが気になって、マユは、階段の踊り場で、片岡先生が手にしていた商売道具を滑らせた。さすがに片岡先生も「あ!」と声を上げて、閉ざされた心が、わずかに開いた。そこで時間を止めて、先生の心の闇を覗いてみようとしたのだが、落第天使の利恵も同時に時間を止めてしまった。その差0.01秒。世界はダブって止まってしまった。これが「時間よ止まれ、ダブルブッキング事件」である。
 仕方なく、落第ということで共通している小悪魔と小天使は手を繋いで、時間を同時に再起動した。

 それから、一ヶ月。知井子の身長が一センチ伸びた……だけではなかった。

「ええ、今日から、スミス先生の代わりとして赴任された、メリッサ・フランクリン先生です」
 英語科主任の山田先生が紹介した。片岡先生は、月に一度の通院で休んでいる。
「こんにちは。キョウから、みなさんの英会話のベンキョウのオテツダイをするメリッサです。どうぞよろしく」
 前任のスミス先生は、本国の友だちに頼んで買ってもらった宝くじが大当たり。日本円で五億円手に入れた。
 なんでも、宝くじを買うのに並んでいたら、偶然前に宝くじマニアで、何度も賞金を獲得しているキンバリーというオッサンがいることに気づいた。
 キンバリーというオッサンは、宝くじマニアの中では、カリスマと言われている人物である。面が割れないように、帽子を深々と被って、付けひげをして、口には含み綿を入れ顔を変えていたので誰にも分からなかった。気づくのには理由があった。
 宝くじの行列の脇を、プラダを着込み、濃いめのグラサンをした女性が通りから身を隠すように歩いていた。そして、ヒールを歩道のブロックに引っかけて倒れ込んでしまった。
 で、倒れ込んだ先にキンバリーのオッサンがいて、彼女を抱き留めた。
 女性のグラサンが外れた。外れたその顔を見て、オッサンは驚いた。
 女性はオッサンが若い頃からファンであった、名女優のオリビア・ヤッセーであった。

「あ、あなたは!?」

 びっくりした、キンバリーのオッサンの帽子も付けひげも外れてしまい、含み綿を飲み込んだ。そして、勢いで、二人揃って列から外れて、はみ出してしまった。
 オリビアは、つい二ヶ月前に三番目の夫と別れたばかりであった。当然パパラッチたちに付け狙われており、このときも三人のパパラッチがカメラを構えた。そして気づいた。

「宝くじカリスマのキンバリーだ!」

 あたりは大騒ぎになった。
「わたしの車に!」
 キンバリーのオッサンは騎士道精神を発揮して、路肩のパーキングに停めていた自分のTOYOTAにオリビアを乗せて、幹線から外れた裏通りを通り、名女優を逃がしてやった。
 なぜ、辣腕のパパラッチをかわせたかというと、キンバリーは、若い頃、映画のカースタントのドライバーをやっていた。一度、オリビアを乗せた車でスタントをやったことがあり、その時から、ほのかな恋心をオリビアに持っていた。むろんパパラッチのバイクを撒くなど屁でもない。そして、TOYOTAが小型で、性能が良かったことも幸いした。やはり、イザというときは日本製である!
 ここまでハデにやれば、スミス先生の友だちも気づくわけである。
 で、スミス先生の友だちはキンバリーが外れた順番に立つことになり、本来なら、キンバリーが手に入れるはずであった宝くじを手に入れ、一等の五億円を当てたのである。
 それで、スミス先生は、安月給な日本の英語の講師をアッサリと辞め、本国に帰ってしまった。
 キンバリーのオッサンは、これが縁で、オリビアの四番目の夫になった。
 しかし、パパラッチの一人は、キンバリーがスピンをかけて方向転換をしたときに、ハンドル操作を誤り、車線を外れ、対向車線のヒュンダイに激突した。パパラッチは、命は取り留めたものの、腕や脚を骨折。仕事ができなくなり、半年前に買った家のロ-ンが払えなくなり、身重の妻といっしょに夜逃げをするハメになった。
 天使がやる、幸せづくりというのは、どこかにしわ寄せがくるものなのであるが、利恵は、そこまでは知らないし、責任を持つつもりもない。

「似てるわね……」

 メリッサ先生が、やる気になって、髪をまとめてオダンゴにしたとき、ルリ子が呟いた。
 メリッサ先生の面影は、アミダラ女王に似ていた……。

 つづく
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高校ライトノベル・連載戯曲『たぬきつね物語・8』

2019-08-19 06:23:52 | 戯曲
連載戯曲 たぬきつね物語・8
 大橋むつお
 
 
時   ある日ある時
所   動物の国の森のなか
人物
  たぬき  外見は十六才くらいの少年  
  きつね  外見は十六才くらいの少女 
  ライオン 中年の高校の先生
 
 
ねこまた: 行っちゃった……
ライオン: いいねえ……
ねこまた: 若いってことはね……やり直しがきく。
ライオン: 君のことだよ。
ねこまた: あたし!?
ライオン: 医者はいいよ。治れば感謝されるし、失敗すれば手遅れだって言えばすむ。
ねこまた: なによ、それ?
ライオン: じゃ、この旅立ちに責任が持てるのかい?
ねこまた: 治すのは、あの子たちの力。医者は、その手伝いをするだけ。
ライオン: なるほど。
ねこまた: もとはといえば、あんたの御立派な指導が原因でしょうが!
ライオン: おれの責任か?
ねこまた: そうよ。
ライオン: どこが!?
ねこまた: 「互いの身になって」じゃなく、「きつねとはどうあるべきか、たぬきとはどうあるべきか」そこんとこをきちんと教えなっくっちゃいけないのよ。
ライオン: そんなこと教えたら、マスコミから袋だたきの目にあう。
ねこまた: 組合もだろ?
ライオン: 森の動物教組なんてどうってことないけど、このごろの教師なんて左にならえだからな。
ねこまた: 右へならえじゃないの?
ライオン: 森の広場で集会やると正面が南なんだ。
ねこまた: それが?
ライオン: 勤務時間内に組合活動はできないから、集会とかは夕方になるんだ。で、そこで右にならって並んじゃうと西日がきつくってさ。で、六十年以降は「左にならえ!」って、ことになってる。
ねこまた: うらやましいもんね。今度のことも……
ライオン: うらやましいと思ってんの、おれのこと?
ねこまた: そーよ。世のため人のため子供のためって、適当にやってりゃ、身分は安定、退職金はガッポリ。世間じゃそう思ってるわよ。そこいきゃ、今日びの医者は客商売みたいなもんだから……
ライオン: 教師だってね、ちょっと本気でやれば、やれセクハラだ、暴力教師だって言われるし、モンスターピアレントの相手はしなくちゃならないし……ストレス多いんだぜ。オレも肝臓いためちゃってよ……長生きはできねえなあ……
ねこまた: だめだめ、そんな弱ぶって見せても。あんたのことはお見通し……
ライオン: こっちこそ……あんたの言葉の裏の裏まで……
ねこまた: 古いつきあいだものね……
ライオン: お互い……
 
     間
 
 
 
 
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