六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

世界史を教えないこととトンデモ本

2006-10-27 04:43:58 | 社会評論
 以下は、富山県で発覚し、今や全国に波及しようとしている高校においてのカリキュラム偽造事件について、ネット上で友人と交わした意見の一部を編集したものです。

     ============================    


              

 マスコミ報道など見ていると、ルールの問題、高校の予備校化までぐらいはいうのですが、肝心の世界史など一般教養のもつポジティヴな意味での必要性についての言及が希薄なように思います。

 世界史の基礎的な知識すら持ち合わせない若者達が、受験のスキルのみでいわゆる一流大学に合格し、官僚や政治家になって行くことは恐いようにも思います。

 そんな連中が、「アウシュビッツは実際にはなかった。それはユダヤの陰謀である」とか、「イスラム圏の問題は全て、狂信的テロリストが引き起こしている」とかいった、いわゆるトンデモ本の世界に容易に吸収されてくのではないかとも思われます。

 世界史を近現代に重点を置いてという**さんのご見解には賛成です。現在の教科書には、それらの記述は少なく、しかも、期末の時間切れで、実際の授業では対象にならないようです。

 その背景には、党派性によって評価が分かれる近現代は入試に出ないという予測があり、それが実際そうなのだそうです。

 こうして生み出された欠如している知識の分野を埋めたいという欲望が、往々にして、イージーでエンターティメント性すらあるトンデモ本に向かわせるのかも知れません。

 もっとも、トンデモ本は今に始まったことではなく、例えば、私が青年時代、公民館の図書室で目にした『成吉思汗ハ源義経也』(小谷部全一郎・1924)などが代表的なものかも知れません。
 この本は、推理小説家・高木彬光の『成吉思汗の謎』のネタ本になったもので、こちらの方も読みました。

 話は脱線しますが、この小谷部全一郎という人、アメリカのエール大学で博士号までとっている人ですが、かなりハチャメチャな人で、その略歴を読むだけで笑えてくるような人です (詳しくは、検索エンジンで小谷部全一郎をお探し下さい。そこで見つけたアドレスを掲載しても、何故かそこへはたどり着けないのです)。

この人、他にもトンデモ本を書いていて、それは『日本及日本國民之起原』というのですが、それによると、日本人とユダヤ人は同祖であるということらしいのです(これは未読)。

 後者はともかく、義経=ジンギスカン説は、陸軍が調査に乗り出すなど、国家的に承認された仮説となりました。
 もちろん、その背景には、大東亜共栄圏の歴史的裏付けという国家意志=国民の願望が見え隠れしています。だからこそ、私が目撃したような田舎の公民館の図書室に蔵書として配本されていたのでしょう。

 戦後、都市部の大手の図書館では、廃本にされたり、単なる蔵書本として背景に退いたにもかかわらず、田舎の公民館では、蔵書不足のためそのまま、常備されていたのでしょう。
 当時は、本そのものが貴重品でした。

 著しく脱線しました。
 私のいいたいことは、教養としての世界史像すらもたずにいると、トンデモ本がかもし出すようなポピュリズムの分野で、偏狭なイデオロギーの餌食になる人たちが増えるだろうということです。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする