イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

星屑の夏

2009-06-18 00:19:51 | 再放送ドラマ

『夏の秘密』は第13話。序盤にここで“お嬢さまの自分探しアドヴェンチャー”と書きましたが、たとえば『不思議の国のアリス』『オズの魔法使い』『ピーター・パン』あるいは『ナルニア国ものがたり』といった“異世界スリップものファンタジー”とも共通するところがありますね。

目に飛び込む、降りかかってくる現象とその原因、見知らぬ世界を支配している因果律、誰を信じるべきか、信じるべからざる人は誰か、持てる経験値と健康な知性と、そして大切な人、いつかそのもとへ帰還再会したい人への真っ直ぐな思いとを力に変えて、懸命に読み解き対処し生き抜こうとする、成長途上のヒロイン。怖いモンスターや魔女や災厄も襲いますが、心強い味方キャラやアイテムとの遭遇そして共闘、幸運な新発見やパワー獲得など、美味しいアクシデントもある。このドラマはある意味、大人女性向けのロールプレイングゲームに近いかもしれない。

スリップしたきり帰る手段を見つけあぐねるファンタジーのヒロインに比べ、我らが紀保(山田麻衣子さん)は、ウェディングドレスオーダー工房の主宰者にして、大企業社長令嬢というホームグラウンドにいつでも帰れる分ファンタジー性や冒険性が薄いかと思いきや、そのホームグラウンドの父社長(篠田三郎さん)に工房の実務パートナー杏子(松田沙紀さん)も、紀保の知らないところで実は100%味方ではないかもしれないという陥穽が。これはアリス系ファンタジーにはないブラックな側面です。

ファンタジーついでに思い切りブラックに踏み外して深読みすると、『オリエント急行殺人事件』、あるいは『相棒 season4“黒衣の花嫁”ばりに、浮舟女主人の蔦子姐さん(姿晴香さん)をカシラに、潜入先の下町住人全員が口裏合わせてみのり嬢殺害の共犯だったりしたら、かなり笑うね。

まぁ冗談はさておき、紀保役の山田麻衣子さんの好感度が、月河としては日増しに上がってきていますね。まだまだ演技的には硬さが取れていないのだけれど、紀保という人物の置かれた状況と、昼帯主演初体験の俳優・山田麻衣子の奮闘ぶりがシンクロして、特撮ヒーロー役オーディションを勝ち抜いた新人さんのような一期一会なテンションが醸し出されてきました。

実はこの東海テレビ制作昼枠関連で、山田麻衣子さんの名前に接するのは今作が初ではありません。07年『金色の翼』の、5月のスポーツ紙報道の直前、主演の高杉瑞穂さん国分佐智子さん以外のキャストが公式に未発表だった数日の間に、脇キャストの一人として山田さんの名を含む情報が一部ネットに流れたことがあったのです。いざ紙媒体での報道が出ると山田さんの位置には肘井美佳さんの名前があり、その後山田さんの名前が取り沙汰されることはなくなりました。

後で調べると山田さんと肘井さんは所属事務所が同じとわかり、そのせいでの、恐らくは誤報流出だったのでしょうが、山田さんを支持するファンはネット上に多かったようで、情報から名前が消えた後もしばらくは「出てほしかった」の声が散見されました。

『金翼』で同事務所の肘井さんが演じた理生(りお)の役は、国分さんの修子が太陽なら“月”に相当する、今作で言えば小橋めぐみさんのフキ的なポジションでしたから、どんな事情での誤報にせよ、モデル的な長身でフランス人形風美少女タイプ山田さんより、ホテル従業員制服の似合う小柄で、妹キャラで薄幸さや憂愁味もある肘井さんを充てたのは結果的に正解だったと思いますが、当時山田さんの過去の出演作やヴィジュアルをまったく知らなかった月河は“金翼の理生だったかもしれない女優さん”として名前を記憶しました。

根拠のない想像ですが、『金翼』で主要キャスト候補に一度は挙がった山田さんの持ち味に一目惚れしたスタッフが「金翼ではぴったりの役が無かったけれど、いつか近々」と念じ続け、2年後にもう一度オファーして今作での主演が実現したのではないかという気も。大変失礼な言い方ながら、決して磐石の演技力で安心して見ていられるタイプではないにもかかわらず、その安心できなさが“愛おしい安心できなさ”なんですね。

同年代、同程度演技キャリアの女優さんをほかにたくさん存じ上げているわけではありませんが、今作の山田さんは、ご本人もスタッフも認識している以上に、“余人を以て代え難い”キャスティングのような気がします。

この枠の帯ドラマ、ひとりのヒロインを軸に構成展開される作品が大半なわりには、主演女優さんの名前が放送後も看板になって“○○さんのドラマ”と思い出される作となると、驚くほど少ないんですよね。

評判だけではなく自分で視聴して覚えている中では、03年の『真実一路』が“高岡早紀さんのドラマ”と言えるかもしれない。妙なプチブームにもなった04年『牡丹と薔薇』も“小沢真珠さんのドラマ”でいいかもしれませんが、あれは他にも“いろんなモノのドラマ”だったし。

05年『危険な関係』は、高橋かおりさんの、と言うよりすぐれて“柊子と律のドラマ”であり、もっと言えば“RIKIYAさんのドラマ”の側面もありました。06年『美しい罠』は、“類子と槐と不破のドラマ”と称されることに、櫻井淳子さんも高杉瑞穂さんも、麿赤兒さんも異存はないでしょう。

3ヶ月、60有余話にわたる枠だけに、ひとりの人物を複数の俳優さんが年代ごとにリレーで演じる作品も多いことも影響しているかもしれません。昨年の『白と黒』の西原亜希さんは、同じ主演としてもかなり背負うパートが大なタイプの主演でしたが、やはり“西原亜希さんのドラマ”よりは“桐生聖人(佐藤智仁さん)のドラマ”の印象が個人的には強く残りました。

今作『夏の秘密』は、名実ともに“山田麻衣子さんのドラマ”になっていい作品だと思います。共演の瀬川亮さん、内浦純一さんを筆頭に全員味を出し、輝いていることも、この作品が“山田さんのドラマ”として記憶されることに何ら矛盾しないと思う。

四肢や首が特にすらっと細く長いせいか、プロフィールの身長164センチより長身に見える山田さん、個人的には星座のようなホクロのあるふんわり頬っぺがチャームポイントだと思います。肉質や脂肪を感じる“ぽっちゃり”ではなく、泡立て卵白に粉砂糖を混ぜたメレンゲのような“ふんわり”感。等身的には小顔でも、若い娘さんの頬っぺはできればコケて削げてるより、ふんわりしてたほうが幸せそうだし、見てても幸せになりますよね。放送開始前から、たぶん猛暑の8月アタマぐらいまで続くのであろうタイトな撮影で、せっかくのふんわり頬っぺまでタイトになりませんように。

コメント
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