イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

おだてりゃ木に登る

2008-09-17 00:20:00 | 国際・政治

10日の報道だったか、バラク・オバマ民主党大統領候補の「口紅塗っても豚は豚」発言はさほどのバッシングも引き起こさず収束したようですね。もともと、かの国では“見てくれを飾っても、中身はしょぼいままであること”の喩えとして、よく使われる言い回しではあるらしい。

対立するマケイン共和党候補陣営、ペイリン副大統領候補の受諾演説の一節「ホッケーママ(=アイスホッケーチームに子供を通わせる母親)(であるペイリンさん自身)と闘犬との違いは口紅を塗っていることだけ」を暗に当てこすった差別的発言であり、「我々の陣営で口紅を塗っているのはペイリン氏ひとりだ、標的は明白」と、同陣営は猛反発攻撃したのですが、なんだか二重三重に喩えが入り組んで、日本語に翻訳された報道だけ読んでいると、ピンと来ないことおびただしいですな。

ただ、長い長いアメリカ大統領選挙、陣営の一方に女性がひとり加わったことで、“よく使われる言い回し”でも場合によっては侮蔑だ中傷だと言質を取られる地合いに、一気に変わったのがおもしろいですね。

以前出版社編集部勤務の知人から聞いたのですが、どんなに善意の、あるいは一般性のある表現であっても、「傷ついた」「侮蔑されたと感じた」と訴え出られたら、表現を媒体に乗せた側が無条件で「悪意はなかったが申し訳ない」と謝罪し当該字句を削除しなければならないことになっているそうなんです。「表現の世界では、“傷ついた者勝ち”、より正確には傷ついたと“言った者勝ち”なんだ」とその知人は苦々しささえないしらけた顔で言っていたものです。

共和党陣営から反発表明したのが、当のペイリンさん自身ではないというところも実におもしろい。差別発言に対する怒りそれ自体より、「こういう差別に対しては黙っていない、被差別者を守る我が党ですぞ」とアピールしたい意欲のほうが上回ってるということでしょうね。

オバマ候補には今後、賢夫人の噂も高いミッシェル夫人がアドバイスしてあげたらいいんですよね。“被差別者としての女性”の利益を代表する言論に対抗するには、使ってはいけない用語・話法ってだいたい公式があって、そこを踏みさえしなければどうにでもなりますから。

『白と黒』第55話。昨日放送の54話で、緊迫感・切迫感があまりにも不足だと思った理由のひとつに、“話が単線”なことがあります。

礼子誘拐さるで桐生家がパニックに突き落とされるのは当然なのですが、その話ばかりで“手いっぱい”になり、その傍らでこんなことも起きている、その影響でこんな状況もひそかに進行している…という脇線がまったく描かれないので、かえって“大したことないことを皆して大袈裟に騒いでいる”“要するに問題解決能力の乏しい人の集まりなだけ”という印象になってしまう。

今日は、東京でヴェリテ社と交渉金策している章吾の留守中、忽然と桐生家のインターホンが…誰?…路子さん(伊佐山ひろ子さん)が恐る恐る出てみたら、53話での嫁にもらって発言に素直に反応したクリーニング屋の篠塚(仲本工事さん)だった、というサプライズあり。

「あれからいろいろ考えたんだけどサー」の、考えてる間がそっくり桐生家と礼子の危機だったという間の悪い篠塚、でも「カラダで愛を感じたい」(54話)路子さんの立場になってみれば問題含みだらけの桐生家とは縁を切って篠塚に「一生かわいがって」もらったほうが幸せだったのに惜しい…という見方と、いや不器用な和臣旦那様(山本圭さん)にいま見切りをつけないで!という向きとが観客の中でも拮抗する、これは結構、いい描写だった。

章吾(小林且弥さん)沖縄出張、礼子連絡つかず、和臣所長(山本圭さん)母屋に籠りっきり、中村(久ヶ沢徹さん)行方不明、という状況で多忙に振り回され、研究所の行く末を憂う小林(白倉裕二さん)と珠江(斉川あいさん)がひそかに転職の手を打っていて…というくだりも、結婚間近のちゃっかりカップルのあからさまコミカル会話としてでなく、もっと淡々と昨日織り込んでおけば、篠塚の路子さんへの求婚ともども“本人たちに自覚ないまま、味方がひとり去りふたり去りして孤立して行く研究所と桐生家”という経路で、状況の切迫感演出に貢献していたはずです。

昨日の55話までの脚本が遠藤彩見さん、今日が坂上かつえさん、どうも、ここは!というところで感情や状況のテンションが連続しない。

ただ、犯人の一味の顔や顔のパーツ(顎ヒゲの口元)が何度も映り、特徴ある声も流れたことで大体全貌の見当はつきました。8話で聖人が東谷の湿地買取り資金の足しにと300万円借りた闇金業者の一党らしい。たぶん金を引き出すのに礼子誘拐という手があると示唆したのは聖人だったのでしょうが、両手両足縛り上げて監禁までは打ち合わせに入っていなかったので、写メール見た途端に「警察に言うしかないんじゃないか」と青ざめたのでしょう。一葉(大村彩子さん)が皮肉った通り、結局聖人は礼子を早く救出したかっただけと思しい。

礼子を見張っていた子分2人組の会話「また地震だってよ、、本当に来るかな?東京直下型」「どうせ死ぬなら、惚れた女と一緒に死にてぇよな」が最終盤の転結への暗示かもしれない。

まさか特撮地震で研究所も何もかも倒壊して終了ってことはないと思いますが。“直下型地震”が何の比喩なのか。もう1回ぐらい脚本家さんが行ったり来たりしたら、こんな推測、無駄足になるかな。

章吾が3億円持ってビルの屋上~団地のゴミステーション~地下駐車場と走るシークエンスのバックに流れていた曲(54話で脅迫電話第一弾を和臣が対応したラストシーンでも出だしだけ流れました)は、45話で章吾が礼子の携帯の着信記録を見て不安に襲われつつドレッサー前の礼子を見つめる最後の場面の曲同様、サントラ盤未収録。アルバム全体の構成上やや異色だからでしょうか。

コメント (2)
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