イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

じゃんけんチッ

2008-06-28 17:16:49 | アニメ・コミック・ゲーム

『花衣夢衣』を観ていて、音楽担当“コーニッシュ”さんが気になりはじめ、ちょうど先日帰宅途中にある新古書店で“洋・邦サウンドトラック・フェア”を開催中だったので、この枠で昨年秋~暮れのクールに放送していた『愛の迷宮』STを購入してしまいました。

……“しまいました”ってのも失礼な話ではありますが、だってね、フェア期間中の2週間ぐらい毎日のようにお店の前を通っていたんだけど、月河が買わないと誰も買いそうもない気配濃厚だったんですよ。同ドラマをリアルタイムで観ていなかった、知らなかった人はまず九分九厘買わないだろうし、観ていても、その…ジャケ写的に、出演女優・俳優さんの非常に熱心なファンででもなければ買いにくいと思うんです。

興味をお持ちのかたは画像検索でもすればすぐわかると思うので載せませんが、また何であんなデザインにしてリリースしたもんかな。

同じこの枠作品のサントラジャケでも、←←←左柱←←でおなじみ(なのか?)『美しい罠』『金色の翼』の確信犯的くすぐりファンタジックなキャスト写真の使い方とは、また毛色の異なる恥ずかしさなんですな。社会派ヒューマンドラマみたい。モノクロだし。

俳優さんたちの所属事務所との力関係でもあったのか。

ジャケ内ブックレットの東海テレビ高村幹プロデューサーの一文にもあるように“愛”が生成される“ルーツ”にこだわってコーニッシュさんに依頼したという、全般の曲調や構成はまったく問題ありません。期待以上。ジャケのおかげで曲がだいぶ損していると思う。内ブックレット部の空と雲と太陽のモノクロ写真をジャケ表にも使えばよかったのに。

“愛のルーツ”というコンセプトを“愛のある原風景”と読み替え、風景とともに回想されてくる風の音、水音、野鳥の囀り、小枝や草葉のざわめきなども込みで音楽化したと言ってもいい。ドラマのほうは終盤の盛り上がり(盛り上がったのか?)のはるか手前で月河は視聴脱落しましたが、このサントラを聞いていると、あぁ、きっとこうこう、こんな感じの、こんな読み味のドラマをイメージして出発したのではないかな…という“原イメージ”の輪郭が朧げながら見えて来る気がしないでもありません。

企図、出発点は悪くなかった。“愛の生成ルーツ”。イメージ通りに形をなさなかったのは誰のせいなのか。誰のせいでもない。ドラマも生き物ですから。

ただ、欲を言えば、ピアノとバンドネオンにホーン(トロンボーン担当の中山英二郎さんは放送中のNHK朝ドラ『瞳』OPテーマも作曲演奏されていますね)をからませた“音色”の豊潤さに比べると、“旋律”がちょっと薄味でおとなしいかなという印象も。ここらは岩本正樹さん、寺嶋民哉さん辺りとの“昼帯汁(じる)”の滲み込み方の差でしかない。今作音楽が好評であれば必ずほどなく同枠オファーが来るはずで、経験が解決してくれるでしょう。

←左柱←←でおなじみ(なのか?)寺嶋民哉さんの04年『愛のソレア』の後、06年1月期『新・風のロンド』、10月期『紅の紋章』のサントラも聴いてみましたが、いやもうね。ほのかに大時代がかって、微量の痛みの棘をふくんだセンティメントに訴えるこういう曲調は、寺嶋さんにかかったら汲めども尽きぬ泉水のように、あるいは♪ ポケットをたたけばビスケットがひとつ もひとつたたけばビスケットがふたつ… みたいに、「さんハイッ」っつったらいくらでも生まれてくるのね。

どちらもドラマとしては求心力がいまいちで嵌まり込めないまま終わってしまった作品ですが、“赤線から夢と人間愛(?)とネバーギブアップ精神で這い上がるヒロイン”という共通項でつながった『紅の~』の音楽は『愛の~』のそれの“続編”と思って聴いてもいいし、そこにドラマティック、パセティックな大芝居性を加えた『新・風~』のそれは両タイトルの“劇場版番外編”と思ってもいい。

『新・風~』に限って若干スタックアップしたようなスケール感になっているのは、少女漫画人気作による原作もの、かつリメイク作ということもあるでしょうが、『愛の~』が昭和32年、『紅の~』が昭和22年といずれも戦後の混乱期・刷新期から始まる物語なのに対し、戦中→戦後の価値観転換期を跨ぐ話だからというのが大きいと思う。こちらは『愛~』『紅~』の延長線より、02年に寺嶋さんが初めて手がけたこの枠作『真珠夫人』と聴き比べるほうがおもしろいかもしれません。

 岩本正樹さんの昼帯サントラについてはここで一度ならず書いてきたし、来週630日(月)~放送開始の『白と黒』でまたたっぷりご馳走になるので、改めては触れません。 

岩本さんと寺嶋さんは、月河の中で“陰と陽”、あるいは“暖流と寒流”というか“水辺と内陸”というか“塩水と淡水”というか“紅茶と煎茶”というか、はたまた“栗毛と黒鹿毛”というか…………なんか喩えを出せば出すほど伝わらなくなってきてるな。とにかく昼帯ドラマ、もっと具体的に言えば“昼メロ”という世界観の、音楽による解釈のショーケースを見せてもらう思いが毎作あるのです。

えーと、それから忘れてはいけない、『花衣夢衣』第65話最終回が27日でした。

この作品に関しては、細かく1シーン、1エピソード、1キャラ、1キャストにああだこうだ言及しても始まらない感じ。とにかく原作が長尺かつ、“意味の総量”においても膨大すぎて、3ヶ月13週月~金の枠サイズをもってしても捌き調理し盛りつけ切れなかった感。青春期を戦争と貧困で逆境に過ごした双子姉妹ならではの精神的な、あるいは宿命的な結びつきを描き切るには、TVドラマ、特に昼帯は具体性や明瞭性が要求される舞台であり過ぎた。

『新・風のロンド』放送終了後に同じ津雲むつみさん作の原作漫画を通読してみて漫画ズルい」とまず思ったことを思い出します。特にこの作者の得意とする、視線がページ上を斜めに流れるコマ割り、絵とネームとの間に挟まれる“無地”部分の孕む空気感、これらの意味伝達力・情報量はものすごいのに、TVドラマではこれらすべてを役者さんの演技で見せ、台詞のやりとりで説明していかなければならない。

『花衣~』原作はさすがに多巻数過ぎて手が出ませんが、原作者がいちばん伝えたかったであろう双子姉妹の精神的な、魂魄的な絆については、恐らく今回のドラマでは10分の1も表現できていないでしょう。

もっぱら、いちばん“昼メロ”に親しいモチーフである三角関係と不倫にばかり話が偏り、将士という、どう考えても女性一般からは魅力的と言い難いひとりの男性を、姉妹でキャッチボールしているだけのお話に堕してしまいました。

冒頭に書いた通り、コーニッシュさんという音楽家に興味を惹かれたのが、月河にとってはほとんど唯一の収穫。

“和”の世界に親しい、茶道華道や箏曲などをよくするとか、着物や反物を眺めたり匂いを嗅いだり畳んだりするだけで胸がときめくような感性を持ち合わせた女性視聴者ならば、キャストが場面替わりで着てくる衣装でかなり楽しめた作品かもしれません。

演技に要するエネルギーのわりに、あんまり報われない役どころを頑張った男性キャスト陣の中では、寡黙で不器用な職人肌・安藤役を肩にチカラ入れずに演じた長谷川朝晴さんを見直しました。損な役どころ代表・眞島秀和さんの『海峡』における上川隆也さんみたいなもんで、ちょっと儲け役。エンドマーク目前での退場が、視聴者にいちばん惜しまれ泣かれたかも。鼻と上脣との間のホクロに色気がある朝晴さん、一度ぐらいは色っぽいシーンも見たかったな。またこの枠に来演希望。

コメント
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