イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

そう考えるだけでもいいじゃないか

2008-06-21 19:10:57 | アニメ・コミック・ゲーム

BSマンガ夜話』34弾第3夜(192400~)は『ハチミツとクローバー』。未読でもタイトルは知っている作品なのでそれなりに期待して録画しましたが、冒頭の岡田斗司夫さんの、ゲストのアニメ脚本家佐藤大さんへの「脚本家さんてのは、三谷幸喜みたいに自信満々で、よく喋るんですよ」で爆笑してしまい、再生が本題に入ってからもしばらく集中できませんでした。

わはは。岡田さん(とりわけダイエット成功後の岡田さん)、三谷さん嫌いそうだもんなあ。特に映画『ザ・マジックアワー』の宣伝でここのとこ三谷さん露出量高原状態だったし。発言の文脈としては、「3夜めで疲れ気味」と自己申告する夏目房之介さんが「今日は、(しゃべりたい)熱気のすごい(隣席の)佐藤さんに(発言量を)助けてもらいたい」と言った後に乗っかったもので特に毒気はなく、全員笑顔流しで、佐藤さんも全然嫌な顔もせずこの後「(シナリオ)50本書いてたときにこの連載で癒された」など積極的にハチクロ賞賛トークを展開してくれたのですが、だからこそ岡田さんの本音が垣間見えてちょっと愉快でした。

「『アマデウス』と同じ、残酷な天才(=はぐみ)に翻弄される一般人の話、表現論として読んだ」「はぐちゃんはパブロ・ピカソのような“創作モンスター”で、美大で人間に返れるかも知れない4年間を過ごしたのに、結局モンスターのほうに戻って行く。はぐちゃんは創作という神を見た人で、神は光かもしれない(←“夏目の目”で夏目さんがこう表現した)けど、僕には闇に見えた」「だから読んでてはぐちゃんが怖くて怖くてしょうがなかった」と言う岡田さんに、夏目さんが「“あらゆる人間はお互いに理解はできないのだ”という諦念から始まるマンガもいまはあるし、そういうキャラの立て方もあるけど、この作品ではみんな同じ世界を生きていて解り合っている、だから岡田さんの言わんとする事はわかるけど、そこを突いてもここではあまり意味がない」と言ったときの岡田さんの“ふむぅ?”な目もよかった。

いしかわじゅんさんが「読中ずっと思ってたんだけど、最後のコレでやっぱり『自虐の詩』(業田良家)だな、と再確認した」と言う竹本くんの最終巻最終ページオーラスのセリフ「いまならわかる、意味はあるんだ、実らなかった恋にも」を聞いて、月河はヘミングウェイ『日はまた昇る』のジェイク・バーンズの締め台詞を思い出さずにいられませんでした。

連載開始時2000年に1820歳前後だった主人公たちは、人に目覚める思春期以降ずっと“日本の下り坂”しか見て来ていない世代。言わば“戦争放棄の国のロスト・ジェネレーション”かもしれない。作中設定はちょっと前なのかな。読みもしないで印象で決めちゃいけませんね。

気持ちいいくらい直球に“マンガマンガ”した絵柄には好感を持ちましたが、正直、『PINK』(岡崎京子)や『ポーの一族』(萩尾望都)のように、この番組で解題されたのをきっかけに「よっしゃ、第1巻からでも読んでみっか、ハマれるかはまれないか一か八か!」ほどの好意的興味は残念ながら湧いて来ませんでした。

『アマデウス』は好きな映画だし『ケインとアベル』も小説としておもしろいと思ったし、一時期『自虐の詩』目当てで週刊宝石を立ち読みしてた時期もあるけど、そういう読み味、テーマ性を期待して入って行くには『ハチクロ』はぶっちゃけ作品世界が“恋愛恋愛”していすぎる

“創作”という神に選ばれた、神ならぬ生身の人間、それも年若く小柄な身体の女の子の葛藤や、「人生悩んだり凹んだりに意味はあるのかないのか」を表現するのに、そんなに“そこらじゅう恋愛感情だらけ”に描く必要なんかないと思う。

いろんな人間の情動の中で“恋愛”だけを突出して賛美しフィーチャーする傾向、どうも“若さへの無駄な妄執”“種(しゅ)を保存することの無条件の肯定”が透けて見える気がして、月河はあまり好感を持てないのです。

「今日はさー絶賛モードになるんじゃねーかと思ったんだよー。なんかもーちょっと据わりが悪いんだよなー」とニコニコ悩んで終わった岡田さんの気持ちがすごくよくわかる。この番組継続して見てると「ヤなこと言うヤツだなこいつ、でも当たってるなチクショー(微笑)」となってくる岡田さんに、つい肩入れしてしまうな。レギュラー陣がお題本に付箋立てるところを、ヘアピン挟んでるとわかった笹峯あいさんもますます好感度アップ。次回は9月放送予定だそうです。第35弾か。お題は何作品かな。

ま、それまでに公式サイトエントランスのイラストの岡田さんは、ぜひ“アフター”ヴァージョンに描き替えてあげてください。NHKさんお願いします。岡田さんもよもやのリバウンドなんかしないでね。

コメント
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