現在では「何も活躍できず、パッとしない」という意味で使用される言葉に「鳴かず飛ばず」があります。
しかし、これは本来の意味とは少し異なります。
では、本来はどのような意味なのでしょうか?
「鳴かず飛ばずの本来の意味」
広辞苑によると、「鳴かず飛ばずの」本来の意味は、将来の活躍に備えて何もしないでじっと機会を待っているさま。現在では、長いこと何も活躍しないでいることを軽蔑して言うことが多い。と説明しています。
注釈として、ひとたび飛べば大空高く飛び上がり、ひとたび鳴けば人を驚かすという鳥が、三年間飛びも鳴きもせずにいるの意から。と説明しています。
辞書が示すように、この言葉の本来の意味は、『将来大いに活躍しようとして、じっとその機会の来るのを待っているさま』で、その出典は中国・春秋時代、紀元前七世紀頃の「史記・楚世家」の「三年蜚(と)ばず鳴かず」からです。
「中国故事」
「鳴かず飛ばず」の由来は次の故事からです。
楚の君主であった荘王は、即位してから3年間政治を省みることなく、注意をする家臣は処刑すると公言し、夜遊びに興じていました。
そんな折、伍挙(ごきょ)という家臣が荘王に「丘の上で3年間鳴くことも飛ぶこともない鳥は、一体どんな鳥だと思われますか」と問いかけました。
荘王の答えは「3年も飛ばない鳥は、ひとたび飛んだら天を突くかのように高く飛び、鳴いたら人を驚かすほどの勢いだろう」というものでした。
『お前の言いたい事は解っている。下がれ。』と言ったまま、やはり仕事には戻らず、その後も淫蕩に耽(ふけ)っていました。
そこで今度は、別の家臣・蘇従(そじゅう)が王様をはっきりと諌めました。
王様は、『諌めた者は死刑にすると言ったはずである。』といったが、蘇従は『死刑になっても王様が目を覚ましてくだされば本望です。』と、はっきり申し上げました。
荘王は3年間、愚かな振りをする事で家臣の人物を見定めていたもので、その後、仕事に戻ったということです。
そして、自分を諌めた伍挙と蘇従を優秀な部下として認めて国政を執らせ、目を付けておいた者を新たに数百人登用し、悪臣たち数百人を誅殺したと言われています。
このことが由来となって、「鳴かず飛ばず」は「将来の活躍に備えて行いを控えておく」という意味になったということです。
この故事から、何もしないでじっと観察し、自力を蓄えて機会を待つ状態の事を「鳴かず飛ばず」と言うようになったのですが、現在では「長い間ぱっとしない」と言う意味で使われる事が多く、本来の意味とは違ってきているようです。
リタイアした現在はこの言葉を使用することはありませんが、皆様の中でもし使用されることがあれば、十分お気を付けください。