らいちゃんの家庭菜園日記

家庭菜園、家庭果樹栽培及び雑学日記

逆境

2016-03-12 | 季節

梅の花便りは終わりをつげたようですが、梅の花が咲くといつもこの和歌を思いだします。
「東風(こち)吹かば にほひをこせよ 梅の花、主(あるじ)なしとて春を忘るな」・・・菅原道真(拾遺和歌集)
意訳:「春の風が吹いたら梅の花よ、お前の香りを送ってよこしておくれ。主人がいないからといって、春を忘れたらいけないよ」。

この和歌は、延暦元年(西暦901年)2月1日、菅原道真公が京の都を離れ、遠く九州の大宰府へ旅立つ日に庭の梅との別れを惜しんで詠んだ歌とされます。
一般によく知られているように、道真公のこの人事は左遷であり、思わぬ逆境に立たされた格好になったことから、自らの逆境を梅に託したようだとも言われています。

逆境と言えば、人は誰だって花のように咲き誇る時もあれば、人生の悲哀を味わうこともあります。順境もあれば、逆境もあります。山もあれば谷もあります。それが人生なのです。
私のような年寄りは兎も角、若い人たちには春が来れば梅の花が咲くように、例えどんな境遇にあったとしても、くじけることなく、それぞれの花を咲かせて欲しいものです。
 
作家の城山三郎の随筆に、上海競馬のある騎手の話があります。
この騎手は中国人とスコットランド人との間の混血児であるため、これはという馬に乗せてもらえず、毎度のレースでどん尻続きでした。
ところが、彼はくさりもせず、むしろ逆転の発想で生きたのです。
「どん尻続きであることが素晴らしいことでした。私にはレースの全貌が見えたのです」と。
つまり、一番後ろから眺めることを重ねたおかげで、レース展開が読め、ライバル全員の行動がわかるようになった、というのです。
そうした彼を買う人も出てきて、ある時、いい馬に乗せてもらうと、十二レース中、十レースで優勝してしまい、英雄になりました。
そして、引退後は香港に移り、第二の人生もまた成功したと言います。
人生、不遇続きの中でもくじけることなく、何か心掛けてさえいれば、いつか、一直線に駆け抜ける日が来る、と綴っています。

高校や大学入試で志望校に入れた人、入れなかった人、或いは就職で希望する企業に入れた人、そうでない人、組織内の昇進レースに勝った人、レースを諦めた人など、様々な人たちがいると思います。
春は人生の岐路に立つ場面が多い季節でもあります。
順境なら言うことはありませんが、そうはいかないことも多々あります。
思い通りにならなかった時、所謂、逆境の時にこそ素晴らしい花を咲かせるチャンスがあるのです。
若い人たち、或いは遅れをとった人たちには、そう信じて新しい第一歩を踏み出して欲しいものです。