別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

絵師の正体

2010-03-20 | アートな時間

 (3月17日) 
  
時に豪放  時に精緻に描きわけた 絵師の正体…  (パンフレットより)
  多くの仏画、 牧谿様式に基づいた水墨画、 極彩色の障壁画、 細やかな肖像画など ため息ばかりでた。      
  
  没後400年 特別展 長谷川等伯   
  

  第1章 能登の絵仏師・長谷川信春

 ・「三十番神図」 重文 
  等伯の法華信仰の表れ。 ひと月を三十日とし、毎日交代で国土を守るとされる神を描いた。 一日熱田大明神 二日諏訪大明神 二十日容人権現 廿二日 稲荷大明神・・・  衣裳や神の姿などこまやかで楽しい

 ・「仏涅槃図」 
  沙羅双樹の下で入滅し涅槃にはいる釈尊  嘆き悲しむ弟子や動物たち 克明な描写と極彩色。 表情を追って飽きない。 慟哭が聞こえそう。 華やかでかなし

第2章 転機のとき-上洛、等伯の誕生
 ・「牧馬図屏風」 重文 6曲1双 武家風俗と山水画  やまと絵の影響
 馬のさまざまな飾り模様有り  いななき 跳ね 走る・・ 
 ・「山水図襖」 重文 きら刷りの襖の 桐紋を雪に見立てる。 すごいセンス! 大徳寺三玄院の襖に絵を描きたいと願うも断られ春屋宗園の留守中に上がり込んで描いたという。 斬新で詩情あふれる山水図。  降りしきる雪… とても魅力的だ

第3章 等伯をめぐる人々 -肖像画-

日堯上人像 ・「日堯上人像」 30歳で夭折した日堯の物静かで気品ある姿 病弱な線の細さ 天蓋のうつくしさ  机の掛けもの 仏具 柄香炉など 細やかな描写 華やかな彩色

 ・「千利休像」 重文 春屋宗園賛

第4章 桃山謳歌 -金碧画-
  金箔と色の濃い鮮やかな色彩 その対比もうつくしい 

 ・「楓図壁貼付」 国宝  両腕を拡げたような楓 葉擦れのおと 下の草花 萩や菊など   
  絢爛多彩な色の世界… 山根有三 

  ・「松に秋草図屏風」 国宝  
 細やかな自然描写と叙情性

 ・「波濤図」 金箔による雲霞を表す 斬新な試み

楓図(部分)

第5章 信仰のあかし -本法寺と等伯-

 

・「仏涅槃図」 重文 
 表装を含めて高さ10m 横6m 等伯を支えた息子久蔵(26歳)の急逝。長谷川家の供養を兼ねて描かれた。肩を落とし泣きくずれる動物、口元に手をそえ嗚咽を漏らす。 象 牛 猫 鶴・・ 悲しみの表情が胸に迫る 兎に角大きい。

  ・「等伯画説」 
 茶の湯文化  等伯の画談など

 

 

 

 

 第6章 墨の魔術師 -水墨画への傾倒-

 松に鴉(部分)・「潚湘八景図屏風」
 中国の画題を手本に。 
潚湘…潚水と湘水が合流している土地。 中国の湖南省 洞庭湖周辺の八つの景観。
  山市青嵐 潚湘夜雨 漁村夕照 遠浦帰帆 洞庭秋月 平沙落雁 煙寺晩鐘 江天暮雪… これらの文字をたどるだけでも 詩的な潚湘のようすが浮かんでくるようだ。霧か靄か 全体をしずかに繋いでいる。 

  
 ・「竹林猿猴図屏風」 牧谿モッケイ作品の応用だが  等伯の視点は家族愛へ 
 やわらかな毛並み  子猿を肩に乗せてあやすような (この作品の 部分を賀状につかわせていただいたこともあるので 楽しみだった)

 ・「松に鴉・柳に白鷺図屏風」 
 古来忌避されてきた鴉を 家族愛として表現した点に
 等伯の水墨画制作における 清新な意欲を感じる  黒田泰三

  鳴き交わす親子、鴉の一家が微笑ましい。 番の白鷺、 白と黒、静と動  柳の描線に釘付けになる。 対決! で比べた 永徳の「松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風」など思うが、 等伯には情感や あたたかみを感じる。
  

  第7章 松林図の世界

  国宝 「松林図屏風」  絵葉書から 

  遠くつらなる松林  かすかな雪山  朝の風  霧は流れ 時がうつろう 余白… ただよう気配に余情をたっぷりと楽しむ
  視線の先に かたむき揺れる樹影  葉叢の荒々しい筆跡  こころをつらぬく幹の太線  見えかくれするおぼろな松  仄かなひかり
  この絵を見ると かならず浮かんでくる  防人の歌
 朧にみえる松は わたしを見送ってくれた家族 
    あれは妻  あれは幼子 …友よ   絵になった思い出

   絵師の正体… 
    どれも すばらしかった。 楓図など 洗練された色彩に惹かれる

 (参照) 写真 絵葉書 パンフレット 図録など
      「対決 巨匠たちの日本美術」
      「もっと知りたい 長谷川等伯」

   

 

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2 コメント

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動物画の名手 ()
2010-03-22 22:49:30
 ふくら雀さん ありがとうございます。ぜひお出かけください。気に入りの作品が多くあって選ぶのに困りました。今回も自分の受け皿の小ささばかり目立って。

 ふくら雀さんはとくに水墨画ですね、等伯の多彩な筆遣いに感動され刺激を受けて作品にも反映することでしょうね。それも楽しみです。 また雀さんはしばしばいきものを題材にされますが、等伯の動物画にもどうぞご期待ください。京都の等伯展もにぎわうことでしょう。

 こちらが↓  展示作品一覧です。

http://www.tnm.jp/jp/exhibition/special/201002tohaku_list.html

ありがとうございました。
返信する
ただただ感謝です。 (ふくら雀)
2010-03-22 16:28:17
やはり、京都まで出かける決心がつきました。
こんな規模の大きな展覧会とは知りませんでした。
多分つぎつぎに目移りして、とり止めもなくなるかと思いますが、それでも残された少ない持ち時間の中、もうめぐり合う機会もないと思うと、自分の目に焼き付けておきたい作品もいくつかあります。
仏画は、よくわからないと思いますが、松林図などの水墨画は日本人の到達した最高の境地と勝手に評価していますので。
図録でしか見たことのない、豊かで幅のある作画に、どう触発されるか、実物の持つ迫力が何を語りかけてきますか、楽しみで今からわくわくしています。
労を惜しまず多くの画像をUPしてくださいまして本当にありがとうございました。
松林図に防人の歌を重ねる蛙さん、その温かな感性が好きです。
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