別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

風立ちぬ

2012-12-02 | 別所沼だより

   第十二回 朗読公演 
  堀 辰雄  風立ちぬ いざ生きめやも  14:00~
       彩の国さいたま芸術劇場 映像ホール

 朗読  武田久仁子
 音楽  フルート&ギター  岩濱眞規(「風のように」 作詞作曲)

・風立ちぬ

  Le vent se lève, il faut tenter de vivre. 

 冒頭に引用された ポール・ヴァレリーの詩、 心地よい音質と早さで朗読がはじまった。
 

 それらの夏の日々、一面に薄(ススキ)の生い茂った草原の中で、 お前が立ったまま熱心に絵を描いていると、 私はいつもその傍らの一本の白樺の木蔭に身を横たえていたものだった。

  朗読は抜粋し要約されている。 武田さんは 元 NHK東京放送劇団員とあった。 長年磨かれた技術で、 よどみなく、 声の調子を抑えたり、高めたりしながら、 堀 辰雄が描いた詩のようなせかいを広げてゆく。 音楽が場面ごとに臨場感や奥行を与え、 しずかに盛り上げてゆく。 節子と私のすがたが浮かぶようだった。 もっと聞いていたい。 

 口笛や挿入歌に導かれ想像がふくらむ、小説を深く味わうことができた。 堀が矢野綾子に捧げたといわれる鎮魂歌。 小説に表された うつくしい、いくつものかけらを拾った。 自然の描写であり、 彼女のしぐさや上品な言葉づかい… 私や節子の心理描写の。   

・トーク (八ヶ岳その白き輝き)

・曠野(アラノ)

忘れぬる君はなかなかつらからで いままで生ける身をぞ恨むる  (拾遺集)

 堀辰雄の王朝物といわれる四作のなかで 最も完成された作品。 
 原典(今昔物語第四の巻30)。 古語の解説もあったが、 より詳しく解った、古典を学んできてよかった。 


 堀 辰雄夫人 多恵子さんは 立原道造記念館の名誉館長であり、 ヒアシンスハウスをつくる会の発起人でもいらした。  公演のおわりに ヒアシンスハウス代表の北原さんの夫人が 多恵子さんを別所沼にお連れした日のことや、 一緒にウナギを召しあがったことなど楽しく話され、会場はいっそう和やかになった。 ヒアシンスハウスのことを全く知らなかった方たちにも 堀 辰雄と立原道造の交遊を心に刻み、 関心を寄せてくださったことと思う。 

 

 

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