『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』自己責任**<2004.5. Vol.29>

2006年01月11日 | 砂場 徹

自己責任

みちと環境の会 砂場 徹

 この頃、なんとも不愉快な言葉は「自己責任」「自業自得」論である。

 「それでもイラクの人が嫌いになれないのです」。高遠奈穂子さんたち3人が解放されたとき、高遠さんが涙につまりながら語った言葉だ。ストリートチルドレンと共に暮らし子供たちに慕われていた彼女の心情を吐露するこの珠玉のような言葉に対し、小泉首相は記者会見で「これだけ多くの人が救出に寝食を忘れているのに、なおかつそういうこと(イラクに残りたい)を言うんですからね。自覚を持ってもらいたい」。こう語った。一人の人間としても、まして在外自国民の保護を国家の基本的責務とする一国の首相としても許すことの出来ない暴言である。当初、3人の家族たちが「自衛隊の撤退も視野に入れてほしい」と発言したことに与党や読売、産経などが「自己責任」をもちだし劣情に満ちた人々を扇動した。このときから被拉致者と家族に対するバッシングが始まった。自民党参議院議員のひとりは「自衛隊のイラク派遣に公然と反対しているらしい、もしそうならそんな反政府、反日的分子のために血税を使うのは……」と公言した。反体制的な被害者は救うに値しない悪い被害者であるというのだ。それにしても「反日的」とは、この人物の頭はただ古いというだけなのか、そら恐ろしい。

 ここで一言ふれておきたい。すでに明らかになっていることだが、小泉の言う「これだけ多くの人が……寝食を忘れて……」とは、誰が寝食を忘れたか、忘れて何をしたのかと言いたい。今度の人質事件の特徴は、被拉致者がイラクの人のために働いていたことを知ったレジスタンス勢力がこの人たちを解放したことだ。そしてこれを先方に分からしたのは日本国内のNGOの仲間と現地の人々の連携によるものである。小泉のやったことは素早く自衛隊の撤退拒否を声明するとともにアメリカ軍に「お願い」しただけだ。解放には全く係わっていない。元来、自衛隊がアメリカ軍支援のためにイラクに行かなければ親日的で友好的だといわれるイラク人民が日本人に危害を加えようとするはずがない。人道支援と何も関係のない自衛隊の存在が人道支援を継続してきた人々を危険にさらすことになったのだ。

 イラク人民のアメリカ占領軍に対する抵抗闘争はいっそう強まるであろう。ブッシュはベトナム化を避けようとするならば、アメリカ軍の全面撤退以外に道はない。アメリカの尻馬に乗ってきた小泉はそのときどうするのだろう。

 自業自得論は、自衛隊が攻撃されたときに、また小泉が返答につまるときにあてはまる概念である。

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