軌道エレベーター派

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パイオニア・アノマリー

2009-07-21 00:03:03 | その他の雑記
 軌道エレベーター学会で紹介した「軌道エレベーターによる核廃棄物の処分」で、軌道エレベーターを使って核廃棄物を太陽に投棄させるプランを説明しておりますが、「別に無理して太陽に突入させなくてもいいんじゃないの?」という指摘もありました。
 実際その通りで、月とかほかの惑星とか、太陽系外へ放り出してしまってもいいわけです。軌道エレベーターならそれができます。
 たとえば、宇宙エレベーター協会(JSAEA)で実施した「宇宙エレベーターアイデアコンテスト」の担当が私だったのですが(というより、企画を出したので責任者にならざるをえなかっただけ)、応募作品の中に、「太陽系外に投射する廃棄物に観測装置を付け、探査に役立てる」というのがありました。とてもいい発想で、きっと本当に行われるに違いありません。すごく気に入ったので、この作品には賞を差し上げました。

 そんなわけで、とにかく人類に危害が及ばなければ、軌道エレベーターで投射した廃棄物の行き先はどこでもいいわけです。ですので、「軌道エレベーターによる核廃棄物の処分」をまとめる際にも、太陽系外に飛ばすことを少しだけ考慮しました。
 本文中でも述べましたが、実際問題、地球から質量を太陽へ突入させるより、太陽系外へ飛ばしちゃう方が力学的には簡単に済むらしいです。速度を十分に減殺しないと、きちんと太陽に向かわず、異なる楕円軌道に遷移してしまう可能性があるからです。
 それでも太陽を選んだのは、太陽系外だと行き先が不明のままで消化不良というか、不安を誘うような感じがしたし、しかも太陽は天然の核爆弾だからスッキリすると思ったのが主な理由です。だから太陽系外はちょっと考えてすぐ却下しましたが、その時にちょっとだけ頭をよぎりました。「パイオニア・アノマリーの件もあるし。。。」。

 NASAの「パイオニア計画」で1970年代に相次いで打ち上げられた「パイオニア10号」と「11号」。外惑星の貴重な観測データを送ってくれた後に、太陽系を脱して行きました。太陽系の脱出速度を得た最初(と2番目)の探査機でもあります。
 ところが、その後数十年の観測で、探査機のスピードが予測値よりほんのわずかに小さくなっているという観測結果がもたらされました。太陽の重力に引かれるから徐々に減速はするんですが、太陽から遠くなるほどこの影響は小さくなるので減速率も下がり、最終的には重力を振り切って飛んでいくはずでした。ところが予測よりも減速している。これがパイオニア・アノマリー問題で、「パイオニア減速問題」とか「異常問題」とも呼ばれます。
 これが偶発的なトラブルでないことは、それぞれバラバラの方向へ飛んで行った10号と11号の双方が減速していることからも明らかです。いずれにせよ、大袈裟かも知れませんが、この減速が続けば遠い未来には停止してしまうしまうかも知れないんですね(もっとも交信が途絶えて久しいので、今どうなってるかわからないらしいですが)。これを思い出して、「廃棄物投げても戻ってきたらどうする?」なんて思ったのです。

 私の知る限り、アノマリーの原因ははっきりしておらず、予測か観測のミスや誤差かも知れないし、まだ知られていない現象や自然法則によるものかも知れません。最近ではこんな説も出ているらしいです。もっと新しい情報をお持ちの方、ぜひ教えてください。
 私の生きているうちに原因を知りたいと願うばかりですが、こういう出来事があると、「まだまだ宇宙は謎だらけだ」と、かえってわくわくしますな。

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