軌道エレベーター派

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OEV豆知識(10) 図解その7 静止軌道部

2009-05-29 00:37:29 | 軌道エレベーター豆知識
 ようやく静止軌道まで来ました。高度約3万6000kmに位置する静止軌道部は、軌道エレベーター(OEV)の心臓部とも言える最重要区です。

 この静止軌道部は、OEV建造の最初のとっかかりになる場所でもあり、完成後には最大級のステーションが建造されると考えられます。なぜならこの高度は、重力と遠心力が釣り合って無重量状態(自由落下状態)が現出されているからです。地上から昇ってきた場合、ここに到着したら完全な無重力を体験できます。
 静止軌道部はOEVの全質量の重心であり、ほかの部分はすべてこの静止軌道部の延長、あるいは部品にすぎないとみなすこともできるでしょう。

 そんなわけで、静止軌道上ではステーションは理論上いくらでも大きくできますし、大型の宇宙船を建造するのにも向いているでしょう。OEVが発展すれば、造船所のような場所になるかも知れません。このほか、低軌道部のように実験や観測施設なども設けられるはずです。
 また、静止軌道部は、OEV全体にかかる力の支点のようなポイントでもあります。ここより下のOEVの構造体は地球の重力に引っ張られ、上は遠心力で引っ張られるわけで、上下に引き裂く力が働いている(まあ、どの部分もそうなんですが)バイタルパートととも言えます。
 反面、ここならOEVが「ちぎれる」ようなことがあっても落下したり遠心力でより外側の宇宙に放り出されたりしないし(もちろん、もっと上や下でちぎれたら静止軌道部ごとOEVが上昇か落下を始めますが)、デブリとの衝突もまずない(OEVに対して相対的に動いていたら、デブリは高度を維持できない)ので、ある意味一番安全な場所かも知れません。

 一方、私たち庶民にとって意味のある観光面ではどうかというと、あんまり人気スポットにはならないんじゃないかなあ、というのが正直な感想です。先述のように、ここでは無重力を体験できるし、重力や遠心力の制約がないので、観光施設としても大規模化できるでしょう。
 しかし、仮に平均時速200kmで昇ったとしたら、片道1週間以上かかるんですよね。その途中では、ヴァン・アレン帯という放射能帯を通過しますし、高くなるほど宇宙線の影響は深刻化します。
 ここから見た地球は数メートル先のサッカーボールを見るみたいに小さくて、見ごたえあるのかどうかも。。。低軌道部だと、たとえば1辺5mの世界地図の上に立っているみたいな感じだったりして、台風とか夜景とかの現象も肉眼で見えますし、よっぽどダイナミックな感じがするのは私だけでしょうか?

 なんか興ざめするようなことを書いていますが、静止軌道部が最重要であることは確かです。個人的な感覚ですが、静止軌道というのは、本当の意味で宇宙への玄関のような気がするからです。
 「宇宙」と呼ばれるのは一般的に高度100kmくらいから上ですが、静止軌道まではかろうじて地球の庭先のような感じがするのです。船の航海にたとえるなら、静止軌道を超えて上昇していくのは、内湾や領海から外洋へ出ていくようなものではないでしょうか。ここから真の「宇宙」と言える気がするのです。

 じっさい、静止軌道より上には、「外向き」のシステムが設けられることになります。それはまた次回に。。。

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