-畑沢通信-

 尾花沢市「畑沢」地区について、情報の発信と収集を行います。思い出話、現況、自然、歴史、行事、今後の希望等々です。

和裁用の鏝(こて)

2013-10-18 12:58:00 | 民具

 

 現在でも和裁をなさる方は、同じような物を電気式で使われているようですが、昔、電気のアイロンがなかった時代には囲炉裏の熱で温めて使っていたそうです。「そうです」という表現をしているのは、私はこの道具が衣類の皺(しわ)を伸ばすために使われていたのを見たことがないからです。ただ、どこの家でも備えていたように思います。

 私たち「畑沢の男の子」は、別の用途に用いました。スキーの手入れは頻繁に行う必要がありました。今のスキーは、グラスファイバーかカーボンのFRPになっていて、縁には細い鋼板が埋め込まれていますので、一度手入れをすると、しばらくの間はそのまま継続して使用することができます。ところが昔のスキーは木製で、縁の木部はすり減って丸くになっていました。いくらワックスを塗っても縁の方から直ぐにになくなってしまいました。そこで、畑沢の賢い子どもたちは工夫します。ワックスや蝋(ろうそくの蝋)を鏝で溶かしながら、スキーの板に浸みこませます。囲炉裏の灰に鏝を突っ込んで熱くします。熱くなった鏝を使って、ワックスや蝋をスキー板の上に伸ばします。手で伸ばすよりも、しっかりとスキー板にワックスなどが付着します。

 何処かの国で「一番でなきゃいけないんですか。二番では駄目なんですか」と言っていました。今や懐かしい言葉です。でも私たち畑沢の子は、一番でなくてはならなかったのです。常盤小学校のスキー大会では、畑沢の子は、皆さん一番でした。私が初めて出た大会では、二番でした。秋の運動会では、いつも後ろから一、二番でしたから、スキー大会で前の方から二番はとんでもないことです。意気揚々と帰り道で畑沢っ子に報告したところ、鼻で笑われてしまいました。全員、一番だったのです。

 そんな訳で畑沢っ子にとってスキーの手入れは、命の次に大事なことでした。畑沢っ子の名誉を守るためです。鏝を目的外使用してもです。

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