-畑沢通信-

 尾花沢市「畑沢」地区について、情報の発信と収集を行います。思い出話、現況、自然、歴史、行事、今後の希望等々です。

マダ マンダ ってなんだ?

2019-09-16 21:42:51 | 民具

 投稿を一月以上もお休みしていました。理由は怠慢です。夏バテと言うか加齢と言うのか、いろんなものがあります。

 さて、私はいろんな物を捨てられずに大事にとっておく性格です。「もう少し時間に余裕ができれば、何かに使えるかもしれない」の理由です。特に貯めこんだのが木材です。バードカービング用の彫刻できる原木、DIY作業での端材などが主なものです。狭い住居のかなりのスペースを占めています。因みにバードカービングとは鳥の木彫りです。

 ところが還暦はとっくの昔に過ぎてしまいましたので、残されている時間的余裕が段々となくなり、「……すれば」の理由が成り立たなくなってきました。早い話、「……すれば」が、単なる空想であったことを自覚しました。そこで、畑沢の薪ストーブの燃料にしようと、直径15cmほどの原木をぶつ切りにしておいたところ、近くに来た人から質問を受けました。

「それは何か特別のものですか」

「いいや、ただ薪にするだけです。シナノキだが利用する当てがなくなった」

      すると、

「昔はその木をマンダヌギと言って、樹皮を蓑やハケゴの材料にした」

と言ったではないですか。とっさに今から40年ほど前に、畑沢の父が「マダ」とか「マダヌギ」と言っていたことを思い出しました。「ヌギ」は「〇〇の木」を意味しています。栗の木はクリヌギ、桃の木はモモヌギ、が同じですから「マダ」も「マンダ」も同じ物を意味しています。訛りでの発音だと違いが分かりません。畑沢でも山形でも「マダ」「マンダ」と言う特殊な呼び名が共通しています。

 もしやと思ってネットで調べたら、新潟北部、秋田県、宮城県、岩手県も共通で、東北で広く使われていた木の名前でした。利用の仕方も共通です。樹皮から繊維を取り出して、蓑などの農具や布に使ったそうです。

 私はさらに畑沢の小屋にあった物を思い出しました。繊維の束です。一つは糸車に巻かれたものです。もう一つは繊維だけが束ねられています。

 

 私の少年時代では、畑の植物から取る繊維は、青苧(あおそ)糸だけでしたからシナノキの繊維は知りませんでした。当然、畑沢に残っている繊維も青苧だと思っていました。ところが、畑沢にあった蓑には青苧や藁以外の材料が使われていたような気がしました。明らかに違う色と形です。やはり、青苧以外の物が蓑に使われています。


 もしやと思い、残されていた二つの繊維の束を拡大して撮影してみました。すると、細い繊維を一本ずつ繋いだ姿が見えました。

 

 これは鶴岡市と新潟県村上市のシナ織で行われている手法と同じです。シナノキの樹皮を使ったシナ織は北国で広く作られていたようですので、畑沢でも例外ではないはずです。私の家にあった繊維はシナノキの樹皮の可能性が高くなりました。でも、確認できる方がいません。

 今では鶴岡市や村上市などの数少ない所だけにシナ織が残っていますが、昔は畑沢も含めた広い地域でシナ織が作られていたものと思います。畑沢の実家にあった繊維も大事に保管しておくことにします。

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網カンジキを作ってみました。

2017-08-27 16:52:09 | 民具

 網カンジキと言われても、畑沢出身の人でさえも50歳代以下の方は、分からないかと思います。とりあえず、下の写真を御覧下さい。左側が普通のカンジキで、材料にクロモジの木を用いており、両脇に硬い樹で作った滑り止め用の爪なるものが組み込まれています。そして、左が網カンジキで、かなり大きいことが分かります。材料にはチシマザサ(通称は「根曲がり竹」)を用います。クロモジは曲げやすい(加工しやすい。)のですが、これほど大きい輪を作れる材がありません。どうしても笹を用いなければなりません。だったら普通のカンジキも笹で作ればいいのではないかとお思いになるかもしれませんが、笹では「爪」を組み込むことが困難なようです。網カンジキは普通のカンジキと用途が異なるので、爪を必要としません。網カンジキの用途は、後で説明いたします。

 さて、この網カンジキとして紹介した上の写真にも、昔から網カンジキを御存じの方は、違和感を持たれているかもしれません。そうです。大きさは昔ながらの網カンジキですが、輪っかの中の紐の通し方が、かなり変わっているのです。私も今回、網カンジキを作る時には悩み続けました。本来の網カンジキは、紐を縦横に格子状に通します。私のそれは、亀の甲状にしてあります。昔のように縦横に格子状にするには、紐(縄)を両手で綯(な)いながら伸ばしていき、直角に交差するポイントでは、上手く二つの紐を絡めながら一体的になるようにします。交差するポイントが塊り状態になることなく、すっきりとしています。ところが、私には紐(縄)を作る藁(わら)がない、藁があったとしても綯う根気がない、上手く綯う技術もないのでは何ともできません。そこで、紐は買ってきました。綯うことでできないので、格子状にすることができません。考えた挙句に亀の甲状にすることにしたのです。けっして形は満足できるものではないことを承知していますが、まあ、何とかなるでしょう。自分の実力以上のことはできません。でき得る限りにベストを尽くすことが大事です。などと、ぐだぐたと書いてしまいました。

 さて、この網カンジキを見ると、かなり動きにくいだろうと思われたでしょう。普通のカンジキでも足運びに苦労しますが、網カンジキの場合はとても足だけでは動けません。腕の力を必要とします。網カンジキの前に紐を付けて、腕で引っ張り上げるのです。丁度、古武道などで紹介される「ナンバ歩き」のような格好になります。右足を揚げるときには右手で紐を引っ張り揚げ、左足を揚げるときには左腕で紐を引っ張り揚げます。これを何度もやれば、武道の鍛錬になるかどうかは分かりませんが、例えばインナーマッスルの一つである腸腰筋の強化に役立つことでしょう。

 それほどまでに厄介な網カンジキでも、とても大事な役割があるのです。それは普通のカンジキを助ける役です。雪の上で靴が雪にめり込んで歩きにくい時は、カンジキを装着します。でも、雪がもっと沢山積もって、カンジキが雪にめり込んでしまい、カンジキの役が立たなくなった時は、網カンジキを使うのです。輪っかが大きい分、雪にめり込む程度が小さくなります。畑沢などのように一晩で1m以上も新雪が積もる地区の必需品です。

 私たちは、新雪が深々と積もった状態をフカユキ(深雪)と呼んでいます。深雪で最も困るのは、小中学生が通学する時です。普通の新雪が積もった状態の時は、大人が普通のカンジキを付けて先頭に立ち、雪を固めて一本道を作ってくれます。しかし、深雪になると、普通のカンジキでは何ともなりません。そこで、さらに網カンジキを付けた大人が加わります。網カンジキが先頭で進みますが、当然、スピードは極端に遅くならざるを得ませんでした。子どもたちの通学のために、大人たちがこれほどまでに面倒を見てくれたのです。私たちは子ども時代にそれほどにお世話になってきました。その恩返しをする機会がありません。

 

 ところで、私たちは網カンジキと呼んでいましたが、全国的には「スカリ」と呼んでいるようです。私たちはスカリなど聞いたことがありません。似た発音の名前に、雪下ろしに使うヘラ状のカスギ(カス木)がありますが、全く用途が違います。

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また今年も作ってしまいました。

2017-02-13 17:15:58 | 民具

 今回だけはカンジキを作ることはないだろうと思っていましたが、12月に常盤地区公民館で先輩たちとカンジキ作りをし、さらに友人から「作ってくれ」と言われていました。カンジキの材料となるクロモジは殆ど公民館で使ってしまいました。それでも何とか残された材料で一足分を作りました。13日に尾花沢市の丹生地区へ届けてきました。

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アブラチャンで作ったカンジキが完成

2014-12-21 18:57:09 | 民具

 ようやく畑沢のアブラチャンで作ったカンジキが完成しました。今日、輪っかに紐を巻きつけました。昨年はクロモジの輪っかに、網目状に紐を結びつけましたが、今回は極普通に輪っかにぐるぐると巻きつける方法を取りました。畑沢で昔からやられているやり方です。

 実は昨年のカンジキは、すこぶる不評でした。自分では畑沢のカンジキに革命を起こす傑作と思っていましたが、世間はそうはいきません。その土地に合った道具でなければならなかったようです。不評の一番の理由は、大き過ぎることです。山で仕事をするときは、小回りが利く必要があります。大きすぎると、輪っかが邪魔になったそうです。次の問題は、大きくしたために材料のクロモジも太い材を使いましたために、重くなってしまったことです。その結果、畑沢のカンジキには革命が起きませんでした。

 そして、今年は徹底的に保守的になりました。それもまた良しです。

 畑沢のアブラチャンで作ったカンジキは、間もなく白鷹町、尾花沢市寺内、尾花沢市上町へ持って行きます。

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今年はトリキ(アブラチャン)でカンジキ作り

2014-12-18 17:24:56 | 民具

 以下の記事に重大な誤りがありました。トリキ(アブラチャン)と書きましたが、正しくはトリキではありませんでした。アブラチャンだけになります。    訂正令和2年2月17日

 去年はクロモジでカンジキを作りましたが、昨年、古瀬T氏から教えていただいたアブラチャンでのカンジキづくりに挑戦しました。

 アブラチャンは今年の秋に千鳥川ウォッチングとして投稿しました。アブラチャンはクロモジと同じく楠の仲間です。油分が多くて、熱でグニャグニャと言いたいほどに木が柔らかくなります。油にはクロモジと同じような成分が入っていて独特の強い匂いがします。樹皮の様子はクロモジと全く異なります。

  アブラチャンの樹皮                 クロモジの樹皮

 カンジキは既に三人から依頼があります。たまたまカンジキづくりの話を出したところ、「俺に作ってくれ」と物好きな方々からの注文です。

 カンジキづくりで最も力が必要なのが、爪を挟んで輪っかを縛るときです。幸い、ハタガネが非常に有効でした。

 今日はとりあえず2人分の輪が出来上がりました。御覧になって、「何だか、形が悪い」とお思いかと思います。そのとおりです。まだ輪っかを作っただけで、成形してません。ついでに大きさも一様でないようですね。う~~ん、手直しが必要かなあ。

 カンジキの底には滑り止めの爪を付けました。畑沢で使われているものよりも、幅が狭いものにしています。材料は、畑沢で最も硬い木であるイタヤカエデです。爪にイタヤカエデは定番です。

 

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