蓼科山の北麓の台地「御牧ヶ原」は小諸・佐久・東御の3市に及ぶ広い台地で、かつて朝廷に献上する馬を育てていたことから御牧の名前が付いたそうですが、その台地を横切っているのが五街道のひとつの中山道であり、中山道の宿場であった望月から山の方へ南下していった山間の集落で湧いているのが春日温泉です。信州の温泉地ではかなり地味でマイナーな存在かと思われますが、こんな温泉地に「源泉公園」なるものがあると聞き、まずはそこへ行ってみることにしました。
●春日温泉「源泉公園」
浅い谷あいに民家と宿が肩を寄せ合う温泉地を抜け、山を登る細い県道をちょっと進んだところにあります。谷頭の小さな敷地に拓かれた庭園で、園内には東屋・トイレ・源泉施設などが建てられています。
温泉と特に関係の無さそうな淀んだ小さな池の畔には、鹿の像と石碑が立てられており、その碑文には春日温泉の由来が刻まれていました。文の内容を思いっきり省略すると、鹿がこの温泉の存在を教えてくれたんだそうです。温泉の発祥に鹿などの動物がかかわってくるのは、全国的にもよくある話です。鹿の像の下に突き出た筒から流れ出ている水は、単なる湧水かあるいは温泉源泉なのか、よくわかりません。触ってみたんですが、春日温泉のヌルヌル感はあまり得られなかったので、普通の水かもしれません。なお鹿の像の隣には、信州らしく双体道祖神もありました。
源泉井施設の裏では、このように水がドバドバ出ている箇所がありました。普通の水っぽいのですが、これはおそらく春日温泉の源泉水でしょう。この源泉は佐久市が所有しており、温泉地内の各施設に分配されています。しかしほとんどの施設は供給された源泉水を循環使用しているらしく、その中でも国民宿舎「もちづき荘」は掛け流しの湯使いを実施していると聞いたので、次にその「もちづき荘」で立ち寄り入浴して、春日温泉のお湯を実際に体験してみることにしました。
●国民宿舎「もちづき荘」
いかにも昭和後半らしい、やや草臥れた外観の建物です。車寄せのあるエントランスの雰囲気から想像するに、立ち寄り入浴を受け付けていないのではないかと勘繰ってしまったのですが、実際に入館してみると、係員の方はみなさん非常に愛想が良く、入浴のみでも快く対応してくれました。ロビーを入って左側の廊下を進んだ突き当りが浴室です。こちらのお宿のお風呂には「岩風呂」と「滝風呂」があるのですが、日帰り客は「滝風呂」のみ利用が可能です。なお内風呂だけなので、露天風呂を希望する宿泊客には姉妹施設「ゆざわ荘」の露天風呂を案内しているようです。
こちらは「滝風呂」男湯の脱衣所。室内は三角形の形状となっており、その斜辺に脱衣棚(籠)が設けられています。古い施設のわりには広いスペースが確保されているので、混雑時もさほどストレスを感じずに済みそうです。
浴室の隅っこに湯口を設け、そこを軸にして扇のように広がる五角形の浴槽が主浴槽です。浴室内には主浴槽の他、小さな浴槽もありましたが、お湯はいずれも同じものが注がれているようです。洗い場にはシャワー付き混合栓が6基設置されていました。
源泉温度が低い(25.0℃)ので加温されていますが、加水循環消毒は行われておらず、湯口のお湯は飲泉が可能です(ちゃんと保険所のお墨付きを得ているようです)。無色透明でほぼ無味無臭ですが、神経を研ぎ澄ましながらお湯を口の中でよく転がすと、強めのアルカリ泉によく見られる苦みのような味が微かに感じられ、ほのかな石膏っぽい匂いも鼻から抜けていきました。お湯そのものも、とても飲みやすいものでした。
成分総計166.6mg/kgというかなり薄いお湯にもかかわらず、pH9.6という強めのアルカリ性に傾いていること、そして炭酸イオンが陰イオンの主成分であることが影響しているためか、ヌルヌルスベスベ感がとっても強く、何度も肌をさすりたくなるほど気持ち良い浴感が得られました。しかも加温も程ほどに抑えられているため、じっくり長湯ができる湯加減となっており、ヌルヌル浴感とぬるめのお湯のおかげで、全身がトロトロにとろけちゃいそうになりました。実に気持ち良いお湯です。またこのヌルヌル質感のため、洗い場の床はとっても滑りやすく、私も何度か足元を掬われそうになりました。数値だけではわからない隠れたパワーを持っている、実力派のお湯だと思います。
ところで、この浴室は「滝の湯」という名前ですが、浴室内のどこを見ても滝は無く、唯一それらしいものがこの打たせ湯でした。打たせ湯を滝に見立てているのかしら。
「もちづき荘」は温泉地の小高い丘の上に立地しているため、浴室の窓からは辺りの風景を見晴らすことができ、特に奥の方に広がっている棚田がとても美しく印象に残りました。
成分が薄いから、露天が無いから、国民宿舎だから、あるいは加温されているから、などと言って侮っていけない、なかなか良質のお湯でした。この手の薄い高アルカリ泉は循環するとたちまち中性に傾いて、普通の水と何ら変わらなくなってしまいますから、加温掛け流しを実現しているこの「もちづき荘」でないと、春日温泉の真の実力は体験できないでしょうね。係員の方の対応も明朗で快く、お湯のみならずソフト面でもこちらのお宿は私にとって良い印象を抱かせてくれました。
アルカリ性単純温泉 25.0℃ pH9.6 120L/min(掘削自噴) 溶存物質166.6mg/kg 成分総計166.6mg/kg
Na:26.9mg(94.36mval%), CO3:31.5mg(80.83mval%)
長野県佐久市春日5921 地図
0267-52-2515
ホームページ
立ち寄り入浴時間 8:00~21:00
400円
ロッカー(100円リターン式・貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
●春日温泉「源泉公園」
浅い谷あいに民家と宿が肩を寄せ合う温泉地を抜け、山を登る細い県道をちょっと進んだところにあります。谷頭の小さな敷地に拓かれた庭園で、園内には東屋・トイレ・源泉施設などが建てられています。
温泉と特に関係の無さそうな淀んだ小さな池の畔には、鹿の像と石碑が立てられており、その碑文には春日温泉の由来が刻まれていました。文の内容を思いっきり省略すると、鹿がこの温泉の存在を教えてくれたんだそうです。温泉の発祥に鹿などの動物がかかわってくるのは、全国的にもよくある話です。鹿の像の下に突き出た筒から流れ出ている水は、単なる湧水かあるいは温泉源泉なのか、よくわかりません。触ってみたんですが、春日温泉のヌルヌル感はあまり得られなかったので、普通の水かもしれません。なお鹿の像の隣には、信州らしく双体道祖神もありました。
源泉井施設の裏では、このように水がドバドバ出ている箇所がありました。普通の水っぽいのですが、これはおそらく春日温泉の源泉水でしょう。この源泉は佐久市が所有しており、温泉地内の各施設に分配されています。しかしほとんどの施設は供給された源泉水を循環使用しているらしく、その中でも国民宿舎「もちづき荘」は掛け流しの湯使いを実施していると聞いたので、次にその「もちづき荘」で立ち寄り入浴して、春日温泉のお湯を実際に体験してみることにしました。
●国民宿舎「もちづき荘」
いかにも昭和後半らしい、やや草臥れた外観の建物です。車寄せのあるエントランスの雰囲気から想像するに、立ち寄り入浴を受け付けていないのではないかと勘繰ってしまったのですが、実際に入館してみると、係員の方はみなさん非常に愛想が良く、入浴のみでも快く対応してくれました。ロビーを入って左側の廊下を進んだ突き当りが浴室です。こちらのお宿のお風呂には「岩風呂」と「滝風呂」があるのですが、日帰り客は「滝風呂」のみ利用が可能です。なお内風呂だけなので、露天風呂を希望する宿泊客には姉妹施設「ゆざわ荘」の露天風呂を案内しているようです。
こちらは「滝風呂」男湯の脱衣所。室内は三角形の形状となっており、その斜辺に脱衣棚(籠)が設けられています。古い施設のわりには広いスペースが確保されているので、混雑時もさほどストレスを感じずに済みそうです。
浴室の隅っこに湯口を設け、そこを軸にして扇のように広がる五角形の浴槽が主浴槽です。浴室内には主浴槽の他、小さな浴槽もありましたが、お湯はいずれも同じものが注がれているようです。洗い場にはシャワー付き混合栓が6基設置されていました。
源泉温度が低い(25.0℃)ので加温されていますが、加水循環消毒は行われておらず、湯口のお湯は飲泉が可能です(ちゃんと保険所のお墨付きを得ているようです)。無色透明でほぼ無味無臭ですが、神経を研ぎ澄ましながらお湯を口の中でよく転がすと、強めのアルカリ泉によく見られる苦みのような味が微かに感じられ、ほのかな石膏っぽい匂いも鼻から抜けていきました。お湯そのものも、とても飲みやすいものでした。
成分総計166.6mg/kgというかなり薄いお湯にもかかわらず、pH9.6という強めのアルカリ性に傾いていること、そして炭酸イオンが陰イオンの主成分であることが影響しているためか、ヌルヌルスベスベ感がとっても強く、何度も肌をさすりたくなるほど気持ち良い浴感が得られました。しかも加温も程ほどに抑えられているため、じっくり長湯ができる湯加減となっており、ヌルヌル浴感とぬるめのお湯のおかげで、全身がトロトロにとろけちゃいそうになりました。実に気持ち良いお湯です。またこのヌルヌル質感のため、洗い場の床はとっても滑りやすく、私も何度か足元を掬われそうになりました。数値だけではわからない隠れたパワーを持っている、実力派のお湯だと思います。
ところで、この浴室は「滝の湯」という名前ですが、浴室内のどこを見ても滝は無く、唯一それらしいものがこの打たせ湯でした。打たせ湯を滝に見立てているのかしら。
「もちづき荘」は温泉地の小高い丘の上に立地しているため、浴室の窓からは辺りの風景を見晴らすことができ、特に奥の方に広がっている棚田がとても美しく印象に残りました。
成分が薄いから、露天が無いから、国民宿舎だから、あるいは加温されているから、などと言って侮っていけない、なかなか良質のお湯でした。この手の薄い高アルカリ泉は循環するとたちまち中性に傾いて、普通の水と何ら変わらなくなってしまいますから、加温掛け流しを実現しているこの「もちづき荘」でないと、春日温泉の真の実力は体験できないでしょうね。係員の方の対応も明朗で快く、お湯のみならずソフト面でもこちらのお宿は私にとって良い印象を抱かせてくれました。
アルカリ性単純温泉 25.0℃ pH9.6 120L/min(掘削自噴) 溶存物質166.6mg/kg 成分総計166.6mg/kg
Na:26.9mg(94.36mval%), CO3:31.5mg(80.83mval%)
長野県佐久市春日5921 地図
0267-52-2515
ホームページ
立ち寄り入浴時間 8:00~21:00
400円
ロッカー(100円リターン式・貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★