温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

春日温泉 国民宿舎もちづき荘 (そして源泉公園)

2011年09月22日 | 長野県
蓼科山の北麓の台地「御牧ヶ原」は小諸・佐久・東御の3市に及ぶ広い台地で、かつて朝廷に献上する馬を育てていたことから御牧の名前が付いたそうですが、その台地を横切っているのが五街道のひとつの中山道であり、中山道の宿場であった望月から山の方へ南下していった山間の集落で湧いているのが春日温泉です。信州の温泉地ではかなり地味でマイナーな存在かと思われますが、こんな温泉地に「源泉公園」なるものがあると聞き、まずはそこへ行ってみることにしました。


●春日温泉「源泉公園」
 
浅い谷あいに民家と宿が肩を寄せ合う温泉地を抜け、山を登る細い県道をちょっと進んだところにあります。谷頭の小さな敷地に拓かれた庭園で、園内には東屋・トイレ・源泉施設などが建てられています。

 
温泉と特に関係の無さそうな淀んだ小さな池の畔には、鹿の像と石碑が立てられており、その碑文には春日温泉の由来が刻まれていました。文の内容を思いっきり省略すると、鹿がこの温泉の存在を教えてくれたんだそうです。温泉の発祥に鹿などの動物がかかわってくるのは、全国的にもよくある話です。鹿の像の下に突き出た筒から流れ出ている水は、単なる湧水かあるいは温泉源泉なのか、よくわかりません。触ってみたんですが、春日温泉のヌルヌル感はあまり得られなかったので、普通の水かもしれません。なお鹿の像の隣には、信州らしく双体道祖神もありました。


源泉井施設の裏では、このように水がドバドバ出ている箇所がありました。普通の水っぽいのですが、これはおそらく春日温泉の源泉水でしょう。この源泉は佐久市が所有しており、温泉地内の各施設に分配されています。しかしほとんどの施設は供給された源泉水を循環使用しているらしく、その中でも国民宿舎「もちづき荘」は掛け流しの湯使いを実施していると聞いたので、次にその「もちづき荘」で立ち寄り入浴して、春日温泉のお湯を実際に体験してみることにしました。


●国民宿舎「もちづき荘」
 
いかにも昭和後半らしい、やや草臥れた外観の建物です。車寄せのあるエントランスの雰囲気から想像するに、立ち寄り入浴を受け付けていないのではないかと勘繰ってしまったのですが、実際に入館してみると、係員の方はみなさん非常に愛想が良く、入浴のみでも快く対応してくれました。ロビーを入って左側の廊下を進んだ突き当りが浴室です。こちらのお宿のお風呂には「岩風呂」と「滝風呂」があるのですが、日帰り客は「滝風呂」のみ利用が可能です。なお内風呂だけなので、露天風呂を希望する宿泊客には姉妹施設「ゆざわ荘」の露天風呂を案内しているようです。


こちらは「滝風呂」男湯の脱衣所。室内は三角形の形状となっており、その斜辺に脱衣棚(籠)が設けられています。古い施設のわりには広いスペースが確保されているので、混雑時もさほどストレスを感じずに済みそうです。

 
浴室の隅っこに湯口を設け、そこを軸にして扇のように広がる五角形の浴槽が主浴槽です。浴室内には主浴槽の他、小さな浴槽もありましたが、お湯はいずれも同じものが注がれているようです。洗い場にはシャワー付き混合栓が6基設置されていました。


源泉温度が低い(25.0℃)ので加温されていますが、加水循環消毒は行われておらず、湯口のお湯は飲泉が可能です(ちゃんと保険所のお墨付きを得ているようです)。無色透明でほぼ無味無臭ですが、神経を研ぎ澄ましながらお湯を口の中でよく転がすと、強めのアルカリ泉によく見られる苦みのような味が微かに感じられ、ほのかな石膏っぽい匂いも鼻から抜けていきました。お湯そのものも、とても飲みやすいものでした。
成分総計166.6mg/kgというかなり薄いお湯にもかかわらず、pH9.6という強めのアルカリ性に傾いていること、そして炭酸イオンが陰イオンの主成分であることが影響しているためか、ヌルヌルスベスベ感がとっても強く、何度も肌をさすりたくなるほど気持ち良い浴感が得られました。しかも加温も程ほどに抑えられているため、じっくり長湯ができる湯加減となっており、ヌルヌル浴感とぬるめのお湯のおかげで、全身がトロトロにとろけちゃいそうになりました。実に気持ち良いお湯です。またこのヌルヌル質感のため、洗い場の床はとっても滑りやすく、私も何度か足元を掬われそうになりました。数値だけではわからない隠れたパワーを持っている、実力派のお湯だと思います。


ところで、この浴室は「滝の湯」という名前ですが、浴室内のどこを見ても滝は無く、唯一それらしいものがこの打たせ湯でした。打たせ湯を滝に見立てているのかしら。


「もちづき荘」は温泉地の小高い丘の上に立地しているため、浴室の窓からは辺りの風景を見晴らすことができ、特に奥の方に広がっている棚田がとても美しく印象に残りました。

成分が薄いから、露天が無いから、国民宿舎だから、あるいは加温されているから、などと言って侮っていけない、なかなか良質のお湯でした。この手の薄い高アルカリ泉は循環するとたちまち中性に傾いて、普通の水と何ら変わらなくなってしまいますから、加温掛け流しを実現しているこの「もちづき荘」でないと、春日温泉の真の実力は体験できないでしょうね。係員の方の対応も明朗で快く、お湯のみならずソフト面でもこちらのお宿は私にとって良い印象を抱かせてくれました。


アルカリ性単純温泉 25.0℃ pH9.6 120L/min(掘削自噴) 溶存物質166.6mg/kg 成分総計166.6mg/kg
Na:26.9mg(94.36mval%), CO3:31.5mg(80.83mval%)

長野県佐久市春日5921  地図
0267-52-2515
ホームページ

立ち寄り入浴時間 8:00~21:00
400円
ロッカー(100円リターン式・貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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稲子湯鉱泉 稲子湯旅館

2011年09月21日 | 長野県
 
北八ヶ岳の登山拠点になっている老舗の一軒宿です。ログハウスの山小屋のような外観で、周囲の環境にすっかり溶け込んでいます。お湯目的の宿泊客の他、いかにも登山客らしい姿の方も見られました。連泊でじっくりなさっているのか、登山のため早々にチェックインしているのか、昼間だというのに館内には浴衣姿の方が歩いており、とってものんびりした空気が流れていました。

 
受付で料金を支払い、右に折れて廊下を進み、突き当りにある浴室へ。浴室前にはステンレスの長い洗面台が設置されていました。いかにも古めの旅館らしい設備ですね。



(画像クリックで拡大)
洗面所上には明治44(1911)年4月23日付で発行された内務省東京衛生試験所の分析表が掲示されていました。その主要部分を書き写してみます。

第145号 冷鉱泉 長野県南佐久郡北牧村大字稲子字八ヶ岳国有林内湧出一種 定量分析 
右試験ノ為メ当所へ差出シタル水ハ、微ニ白濁シ殆ト中性ノ反応ヲ徴シ微ニ刺戟性鉱味ヲ有ス。之ヲ煮沸スレハ気泡ヲ発揚シテ分解シ、遂ニ褐色ノ沈垽ヲ生ス。比重ハ摂氏15度ニ於テ10005ヲ示シ、其毎1000分中ニ含有スル各成分ノ分量左ノ如シ
炭酸亜酸化鉄 0.0240
硫酸カルチウム(ママ) 0.0216
炭酸カルチウム 0.0109
炭酸マグネシウム 0.1103
炭酸ナトリウム 0.0005
炭酸カリウム 0.0073
クロールカリウム 0.0036
酸化アルミニウム 0.0037
珪酸 0.0457
燐酸 痕跡
遊離及半結合炭酸 11451
以上定量分析ノ成績ニ據レハ本水ハ弱鋼鉄泉ニ属ス。依テ医治効用ノ概要ヲ掲クレハ左ノ如シ
浴用 栄養不良 諸種疾病ノ恢復期 生殖器病 神経痛 
内用 慢性神経痛 神経衰弱症 慢性膓胃加答児(カタル)
 (漢字は常用漢字へ、数字はアラビア数字へ、それぞれ変換。句読点は当方にて加筆)

全体的に薄い冷鉱泉ですが、遊離炭酸ガスが突出して多いようですね。一応ここでは弱い鉄泉に分類されているものの、炭酸泉としての効能に期待しているのか、神経痛などを適応症として挙げています。さてこの分析からちょうど100年がたった今日の稲子湯はどのような泉質を示しているのでしょうか。


こちらが浴室。男女別の内湯がひとつずつあるだけのシンプルな構造。洗い場のカランは、昭和の銭湯によくあった押しバネ式のものが3基用意されています。


長方形の湯船は4~5人サイズでしょうか。源泉温度がとても低いので当然ながら加温(+循環)されており、湯船のお湯はうっすら深緑色および褐色を帯びた貝汁濁りで、赤茶色の小さな浮遊物が無数に舞っています。明治の分析表の「之ヲ煮沸スレハ(中略)遂ニ褐色ノ沈垽ヲ生ス」とはこのことを指しているのでしょう。

 
このお風呂で注目すべきはこのバルブと源泉溜でしょう。お湯は循環加温されていますが、湯船の上に突き出たバルブを開くことによって冷たいままの源泉を直接投入することもできます。またバルブ上には小さな源泉溜りがあって、そこからコップで鉱泉を汲んで飲むことができるわけです。源泉溜りは「微ニ白濁」という表現の通り、硫黄の付着により綺麗な純白に染まり、タマゴ臭がプンと香ってきます。実際に飲泉してみると、口の中で勢いよくシュワシュワと炭酸が弾け、当然ながら炭酸の味が非常に強くて口腔内が収斂し、さらに金気味や硫黄のタマゴ味が混在して、とっても不味いものでした。でもこの不味さは温泉ファンなら思わず興奮してしまう非常に個性的な特徴であり、特に1493mgという近々の分析値が示す通りに遊離炭酸ガスの多さには圧倒されてしまいます。

バルブを開けると、ボコボコ音を立てながら勢いよく冷鉱泉が湯船へと投入されました。バルブを開きっぱなしにすれば、半循環状態の湯使いが実現できますが、何しろ鉱泉はとても冷たいので、源泉を入れっぱなしにしておくとたちまち湯船はぬるく、さらには冷たくなってしまうため、程ほどのところで止めないと、他のお客さんに迷惑かけてしまいます。私は多少ぬるくても大歓迎なのですが、この時は後から続々お客さんが入ってきたので、源泉投入は少しだけにとどめておきました。
加温された湯船の鉱泉は白っぽさが失われ、炭酸ガスも飛散してしまうため、酸味と金気ばかりが残って、上述のように貝汁的な微かな褐色を呈するお湯へと変貌してしまいます。加温するだけでこんなにも印象が違ってしまうものなのですね。キシキシと引っかかる浴感でした。
私は入浴中に「うわっ、不味い」と口にしながらも、そのインパクトのある味につい心が惹かれ、何度も鉱泉を口にしてしまいました。単に加温槽だけの鉱泉だったら私は興味を抱かなかったでしょうが、一切手が加えられていないそのままの源泉を浴槽へ投入でき、しかも飲泉することもできたので、非常に印象に残る鉱泉となりました。明治の分析とほぼ同様の泉質が今でも楽しめるというのは、とってもロマンチックでもあります。


稲子湯源泉
単純二酸化炭素・硫黄冷鉱泉 8.3℃ pH5.0 67.1L/min(自然湧出) 溶存物質160.1mg/kg 成分総計1657mg/kg
Na:4.1mg(13.06mval%), Ca:11.5mg(41.36mval%), Fe2+:6.8mg(17.41mval%), HCO3:76.3mg(93.77mval%), 遊離CO2:1493mg, 遊離H2S:3.4mg

長野県南佐久郡小海町稲子1343  地図
0267-93-2262

立ち寄り入浴 600円
石鹸・シャンプーあり、他備品類なし

私の好み:★★★

コメント (2)
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新穂高温泉 水明館 佳留萱山荘

2011年09月21日 | 岐阜県

「日本秘湯を守る会」に加盟しているこちらのお宿は、広大な露天風呂が自慢とのことなので、どのくらい広いのか、立ち寄り入浴で体験してみることにしました。


玄関横では錫杖岳の清らかな伏流水飲むことができ、とっても冷たくて美味でした。その隣には龍の首ような形をした木の枝から熱い温泉が出ています。


露天風呂の入り口は駐車場を挟んで宿泊棟と反対側。大きな暖簾がお出迎え。

 
脱衣所は露天風呂に対してオープンになっており、お風呂から丸見え状態でした。尤も、ちゃんと隠れることができるスペースもあるので心配ご無用。


すぐ脇を流れる鎌田川のせせらぎ音が清々しい、奥飛騨北アルプスの山裾に包まれた緑の中で、たっぷりお湯を湛えた巨大な露天風呂。なるほど、これは確かに広い。奥の方には滝が落ちていますね。面積は約250畳なんだそうでして、つまりは400㎡強もあるわけです。上州の宝川温泉と肩を並べるような規模ですね。本邦最大か否かはわかりませんが、最大級には違いないでしょう。露天風呂はいくつかの浴槽に分かれていますが、誰もいない時を見計らって一番大きな槽で平泳ぎしてみたら、20回手を掻きました。普通のお風呂でそんなに掻けるところは無いでしょう(良い子はマネしないように)。
なおこの露天風呂は混浴ですが、緑色の湯浴み着を着用することができるので(料金別途)、女性でも安心して入浴できるかと思います(他に女性専用露天風呂あり)。また、湯浴み着を借りない客は前を隠すのがここの暗黙のルールのようです。

 
画像左(上):カランは無いので指定の掛け湯場で体を洗います。
画像右(下):洗い場の奥には足湯がありました。

 
お湯は中央の岩から噴き出ていたり、竹筒から注がれていたりと、いろんな形で供給されています。広い日本庭園の池の中に入っているかのようなお風呂です。錦鯉の気持ちがちょっと理解できそうな気がしました。


一番大きな槽と滝のある奥の槽の間には、冷たい水が張られた池がありました。水が注がれる樋の下では飲むことができます。無論庭園の景観構成のために設けられた池ですが、入浴中は水分補給が求められますから、樋の水が飲めるのは一石二鳥で便利ですね。

 
あまりに広い露天風呂なので、かえって落ち着くことができず、ついウロウロしてしまいます。せっかくなので、滝に近づいてみましょう。滝はてっきり普通の水かと思っていたら、なんと温泉が落とされているのでありました。湯の滝です。何とも豪快ではありませんか。


滝の手前は岩が口をあける洞窟のような空間がありました。中に入ってみると…

 
中には「日本秘湯を守る会」の大きな提灯が提げられ、その光により洞窟内がボンヤリと照らされていました。奥の方からはお湯が流れてきます。露天のみならず洞窟風呂も楽しめるんですね。これは面白い。子供は大興奮必至でしょう。


上述のようにお湯の供給元は、岩の上の噴出、竹筒、湯の滝など、目に見える形でたくさんあるのですが、広い露天風呂でそれだけに頼っていては湯加減にムラができてしまうため、浴槽の底には一定間隔に穴があけられた塩ビ管が沈められており、ここからも源泉が供給されて湯加減のムラを無くしているようです。細かい苦労が垣間見れますね。尤も、こういうのはお芝居の黒子と一緒なので、あえてこのように取り上げるのは野暮な話かもしれませんが。

露天風呂は大きく3つの浴槽に分けられ、それぞれ微妙にお湯の質感が異なりました。一番奥の湯の滝がある浴槽は無色透明でほぼ無味無臭、手前の一番大きな浴槽とその隣の脱衣所前の浴槽は、やはり無色透明ながら湯口で僅かにゴムのような硫黄臭、そして薄い金気のような味と硫黄を思わせるゴムのような味が感じられました。一番大きな浴槽は槽内の材質の関係か薄っすら緑色っぽく見えます。脱衣所前の浴槽は他より若干ぬるめでした。弱いスベスベ浴感で、湯上りはさっぱり爽快です。あまり特徴のない泉質で、且つ加水されていますが、加温循環消毒なしの掛け流しである上に源泉投入量も非常に多いので、温泉の質にこだわる方でもご満足いただけるのではないかと思います。秘湯の趣があるかどうかはちょっと疑問ですが、一風変わった面白い露天風呂をご希望の方にはもってこいかもしれません。


カルカヤ1号泉と2号泉の混合
66.2℃ pH6.2 220L/min(動力揚湯) 溶存物質881.6mg/kg 成分総計954.2g/kg
Na:180.7mg(83.00mval%), Cl:81.4mg(23.81mval%), HCO3:396.6mg(67.29mval%), 遊離H2S:0.0mg

佳留萱3号
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉 87.4℃ 191.0L/min(動力揚湯) 溶存物質1662mg/kg 成分総計1698mg/kg
Na:364.6mg(86.68mval%), Cl:164.8mg(26.64mval%), HCO3:716.0mg(67.23mval%)

岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂555  地図
0578-89-2801
ホームページ

立ち寄り入浴 8:00~20:00
800円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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大白川温泉 しらみずの湯

2011年09月20日 | 岐阜県

環境省の「ふれあい・やすらぎ温泉地」整備事業による補助金を受けて白川村の第三セクターが運営する、実質的には公営の温泉入浴施設です。道の駅「飛騨白山」に隣接しているため、とても分かりやすい立地です。一部を除き木造平屋建ての立派な建物は、まだ開業して間もないためか、どこもかしこも新しくて綺麗で、清潔感が漲っています。

 
玄関ロビーでは、この手の施設にお馴染みの地元物産品の販売が行われ、地域観光に関する案内も掲示されていました。別の記事でも記しましたが、このような行政による村おこし手法って、どこも似たり寄ったりになってしまうため、没個性の中の「個性」なんですよね。私はあまり関心が無いので、ここにどんなものがあったか、よく憶えていません。受付で下駄箱のカギと引き換えにロッカーキーを受け取り、大きく曲線を描く休憩スペースを通りながら浴室へ。


脱衣所も木のぬくもりが伝わる内装でとっても綺麗。ロッカーを斜に設置しているのは、曲線的なスペースの有効活用なのか、あるいは意匠なのか。洗面台にはドライヤーが5台ほど設置されていたり、綿棒が用意されていたりと、公衆浴場らしくない、旅館を思わせる充実したサービスぶりです。

 
大きなガラス窓を通して日の光が燦々と降り注ぐ明るい浴室。ガラス窓直下の主浴槽の他、寝湯、泡風呂、桧風呂など、いろんな浴槽が設けられています。


こちらは洗い場。シャワー付き混合栓が余裕ある間隔で設置されているため、隣の人との干渉を気にせず利用できるかと思います(混合栓の数が失念)。使い勝手は良好なのですが、室内デザインがいかにも公的施設らしいコントラスト差の少ない地味な色調であるため、いまいち面白さに欠けるような気がします。


こちらは露天風呂。岩風呂的な浴槽は10人サイズでしょうか。広々したスペースが確保されており、木の長いベンチも設置されているので、風に吹かれながらお湯で火照った体をのんびりクールダウンさせることができました。平瀬集落の長閑な景色と、それを包む込み山の緑がとても美しい、素晴らしい環境です。

お湯は大白川2号泉と3号泉を交互に利用しているとのこと。交互ってどういうことを意味しているのか、たとえば男湯と女湯で交互に浸かっているという意味か、あるいは源泉自体を日替わり等によって使い分けているのか、あまりよくわかりません。私の訪問時のお湯は内湯・露天とも無色澄明で、かなり薄めの塩味とゴムのような味を帯び、軟式テニスボールのような硫黄臭がはっきりと嗅ぎとれました。源泉地はこの浴場から約13km離れた大白川ダム上流の地獄谷にあり、そこからわざわざここまで引湯しています。源泉地付近の白水湖畔には同じ源泉を利用している「大白川露天風呂」(白水湖畔ロッジ)があるのですが、私はまだそこへ訪問したことが無いので、いずれは源泉近くの「大白川露天風呂」にも入浴して、遠路を引湯してきた「しらみずの湯」とお湯のコンディションがどのように違うか、比較してみたいと思っています。

お金をかけて建設している割にはいまひとつ面白みに欠けますが、静かで清々しい環境に恵まれ、設備は綺麗で使い勝手が優れており、湯使いも放流式ですから、白川郷を観光したついでに立ち寄って汗を流すのも良いかと思います。


大白川2号泉
含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 92.5℃ pH8.7 600L/min(掘削自噴) 溶存物質1869mg/kg 成分総計1870mg/kg
Na:501.9mg(84.17mval%), Cl:775.8mg(84.38mval%), HS:5.9mg(0.69mval%), 遊離H2S:0.3mg,

大白川3号泉
含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 90.9℃ pH7.9 600L/min(掘削自噴) 溶存物質1275mg/kg 成分総計1279mg/kg
Na:330.4mg(81.69mval%), Cl:505.3mg(80.91mval%), HS:3.8mg(0.62mval%), 遊離H2S:0.5mg,

2つの源泉を交互に使用。いずれも熱交換器により冷却もしくは加温(状況により加水)

岐阜県大野郡白川村平瀬247-7  地図
05769-5-4126
ホームページ

4月1日~11月30日→10:00~21:00(最終受付20:30)
12月1日~3月31日→11:00~20:00(最終受付19:30)
水曜定休
600円(白川郷の観光案内所等で配布されている割引券を利用すれば500円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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下島温泉 ひめしゃがの湯

2011年09月19日 | 岐阜県

御嶽山の麓に刻まれた峻谷「巌立峡」の手前に湧出する鉱泉を利用した温浴施設です。普段私は沸かし湯の鉱泉にはあまり関心を寄せないのですが、ここでは源泉そのままの鉱泉に入れるそうなので、俄然興味が湧き、行ってみることにしました。

 
建物の入り口脇には、飲泉場がありました。地元の檜材で作られた東屋がかかっており、一見すると神社の手水場みたいな感じですが、そこに落とされている鉱泉が見るからに強烈です。竹筒から注がれる鉱泉は、出てきた直後は透明ですが、空気に触れるとたちまち酸化して赤みを帯びた橙色に濁り、周囲にコッテリとした石灰の析出を残してゆきます。施設側のメンテナンスにより鉱泉を汲める四角い湯溜りが削られていますが、もし手入れされなければ、一年もしないうちに析出により埋め尽くされ、石灰華の山が築き上げられているかもしれません。置かれている柄杓で飲んでみると、口腔内で炭酸ガスがシュワシュワ弾け、サイダーのような強い炭酸味と薄い塩味+金気味がミックスされた味が口の中に広がり、その上金気臭とタマゴが腐ったような匂いも漂ってくるので、思わずオエっと舌を出したくなる程に不味いものでした。柄杓の中は炭酸の泡で満たされています。ここまで強い天然の炭酸鉱泉はなかなか珍しいのではないでしょうか。会津の大塩(会津心水)、六甲の有馬、大分県の七里田などと肩を並べられるほどインパクトのある炭酸泉です。この手の不味い炭酸鉱泉は、拙ブログで取り上げたチェコのカルロヴィ・ヴァリのように、ヨーロッパではしばしば飲泉療法に用いられているので、不味さを堪えて飲み続けると、効能が顕れるかもしれません。


玄関を入って階段を上がるとエントランスホールです。券売機で料金を支払い、受付のおばちゃんに券を渡すと、湯上り後の濡れたタオルを入れるビニール袋をくれました。こうした細かい配慮って嬉しいですね。
今時の公営温浴施設らしく、脱衣所は使い勝手良好でした。

 
浴室内には大きな主浴槽の他、泡風呂(真湯)がその隣に、主浴槽の向かい側に香草風呂、浴室入口脇にサウナがあり、温泉はもちろんのこと、サウナ目当てでこの施設を利用するお客さんが多いようです。洗い場のカランは11基ありました。
主浴槽のお湯は赤みを帯びた橙色に強く濁っており、底は全く見えません。味は屋外の飲泉場の鉱泉に似ていますが、加温されているためか、炭酸がすっかり抜けてしまっています。湯中における肌への泡付きも見られません。匂いに関しても、金気臭は感じられますが、硫化水素臭は確認できません。弱ツルツルとキシキシの中間のような微妙な浴感でした。どうやら飲泉場の鉱泉と、主浴槽に使われている源泉は、似て非なる別の源泉のようです。


館内表示によれば泡風呂や香草風呂以外の温浴槽は掛け流しとのこと。源泉風呂って何ぞや?


主浴槽・泡風呂と並んで小さく据えられている浴槽が、その源泉風呂のようです。こちらも強く濁っていますが、明らかに主浴槽とは異なる黄土色で、湯口のお湯を掬って口にしてみると、しっかり炭酸味が感じられました。おそらくこれは屋外の飲泉場と同じ源泉を引いているのでしょう。入ってみるとほとんど水風呂みたいな冷たい温度でした。水風呂が苦手な私は必死に堪えながらの入浴となりましたが、この隣にはサウナがあるため、サウナで大量に汗をかいたお客さんがシャワーも浴びずに、水風呂かわりにこの源泉風呂へ入ってしまうため、ちょっと辟易です。一般的な水風呂と違って、浴槽への鉱泉の投入量は少ないので、汗をかいたまま入っちゃうと、浴槽内は汚い汗だらけになっちゃいますよ…。なお上述のように炭酸味は明瞭でしたが、なぜか肌への泡付きは見られませんでした。


こちらは露天風呂。和風な造りですが、語弊を承知で申し上げると、凡庸な空間構成ですね。板塀の向こうには巌立峡の断崖がちらっと望めます。こちらは内湯の主浴槽と同じ源泉を使用しているようで、赤みを帯びた強い濁り湯です。湯船は全体的に浅く、肩まで浸かるには若干体を寝かす必要がありました。この露天風呂では浴槽縁の石に析出が付着しており、こうした析出は主浴槽ではあまり見られませんでした(単に私の見落としかも)。外気に触れて冷やされることによって析出が現れやすくなるんでしょうか。

 
建物正面の駐車場脇には、かつて小坂森林鉄道で活躍していた機関車が展示保存されていました。キャブ内の機器はすべて取り払われていますが、駐車場敷地内には新しく敷設されたと思しき線路が100mほど敷かれており、もしかしたら復活運転でもするのかしら…。

お風呂に関しては、私個人的としては評価が難しいのですが、飲泉場のシュワシュワ炭酸泉は非常に個性的なので、この鉱泉を飲むだけでもここを訪れる価値は十分にあるかと思います。


(飲泉所・源泉風呂)
ひめしゃがの湯
含鉄(Ⅱ)-ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉 24.3℃

(浴用)
ひめしゃが1号
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉 46.0℃(加水後) pH6.67 湧出量不明(ガスを伴い強い圧力で間欠的に吹き上げるため測定不能) 溶存物質1.997mg/kg 成分総計2.282mg/kg
Na:421.3mg(78.2mval%), Ca:73.0mg(15.5mval%), Cl:192.2mg(21.5mval%), HCO3:1192.9mg(77.7mval%),遊離CO2:285.4mg

岐阜県下呂市小坂町落合1656  地図
0576-62-3434
ホームページ

10:00~21:00(最終受付20:30) 水曜定休
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
(飲泉場の鉱泉は★★★)
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