温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯田温泉 亀乃湯および温泉舎

2017年06月21日 | 山口県
山口県山口市の湯田温泉は、県内のみならず山陽地方随一の温泉街であり、旅館や歓楽街が渾然となりながら温泉街が形成されています。
当地には大小様々な規模の宿があり、その一部では立ち寄り入浴も受け入れていますが、そもそも歓楽街的な要素が強い土地柄だからか、入浴のみを専業とする温泉銭湯は「亀乃湯」と「天然温泉 清水湯」の2軒しかありません。そこで、当地へ泊まった昨年(2016年)某日の晩に、その中の一軒である「亀乃湯」を訪れてみることにしました。


●亀乃湯
 
老舗旅館「松田屋」の向かい、旅館「西村屋」の左隣に位置しており、建物の前には4〜5台分の駐車場が用意されています。歴史ある温泉地の銭湯ですが、トラディショナルな佇まいをしているわけではなく、建物の外観は至って質素でこぢんまりとしており、やたら看板だけ目立っていました。



上画像は翌朝改めて撮った「亀乃湯」です。浴場名の看板がなければ、倉庫かポンプ室ではないかと勘違いしてしまいそうな外観ですね。

建物の右脇に出入口があり、館内に入ってから券売機で料金を支払い、番台のおばちゃんに券を差し出してから、脱衣室へと向かいます。脱衣室内にロッカーは無いので、貴重品を携行している場合は、番台前に設置されているダイヤル式のロッカーを利用することになります。またこの番台の前にはちょっとした休憩スペースが用意されており、お風呂上がりに自販機で飲料を買ったドリンクで水分補給しながらひと息つくことも可能です。
外観から予想できる通り、脱衣室はコンパクトな作りで、混雑時には譲り合いが求められるような状態になりますが、そんな空間でも洗面台が2台設置されていたり、ドライヤーも2台備え付けられていたりと、狭い点に目を瞑れば使い勝手はまずまずと言えるでしょう。


 
浴室も決して広いとは言えませんが、限られたスペースを有効に活かすべく、浴槽や洗い場、そしてサウナなどが、隙間なく嵌め込まれたパズルのように配置されていました。男湯の場合、浴室へ入った正面すぐ目の前に2つの浴槽が並んでおり、その左手前方に洗い場が、同じく左手の手前側にサウナと水風呂(2人サイズ)が設けられています。洗い場に取り付けられているシャワー付きカランは計5基。シャンプー類の備え付けはありませんので、持参するか番台で購入するなど、事前に用意しておく必要があります。

上述のように浴槽は2つあり、一つは画像左(or上)の小さな槽。寸法は(目測で)1.5m×1.0mの2〜3人サイズ。この浴槽では底部から熱いお湯が供給されており、43〜4℃というちょっと熱めの湯加減が維持され、この浴槽に張られたお湯は、槽内のスリーブを通じて隣の大きな浴槽へと流れています。
その大きな浴槽(画像右or下)は、小さな浴槽の倍近い大きさがあり、小さな槽からの流れ込みの他、専用の湯口から適温のお湯が供給され、湯船自体も42℃前後の万人受けする湯加減に調整されていました。浴槽の底には吸い込み口が2つあってそこからお湯が吸引されていましたから、そうした構造やお湯のフィーリングから推測するに、おそらくお湯は循環利用されているものと思われます。画像を見るとわかりますが、この大きな浴槽には「壺湯」と称する窪みが3つあり、それぞれが丁度一人だけ入れる深い造りのお風呂になっていました。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、少々の消毒臭が感じられます。大小両浴槽ともオーバーフローは見られず、槽内吸引や供給が行われており、お湯からフレッシュさはあまり感じられなかったので、循環消毒が実施されているものと思われます。ネット上の情報によれば、お湯は温泉街で集中管理しているミックス泉に、30℃未満の自家源泉を混合させているらしいのですが、その点に関する詳しい情報を入手することができなかったので、湯使いに関してこれ以上の言及は控えさせていただきます。湯船に浸かると、アルカリ性泉らしいトロミが肌に伝わりましたが、決してツルツル浴感がはっきりしているわけではなく、正直なところ掴みどころのない没個性なお湯と化していました。この時は夜遅い時間だったため、最混雑時間帯を過ぎた後で、お湯が相当疲れていたのでしょう。連日の残業とお局様のイビリが重なって目の下に真っ黒いクマができてしまったOLさんと深夜にお見合いするようなもので、私が訪れたタイミングが悪かったのかもしれません。今度はコンディションの良い時に改めて利用させていただきたいものです。



壁にはタイル絵が埋め込まれていたのですが、そのタイル絵は全て白狐を描いたもの。全国津々浦々の歴史ある温泉は、鹿・猿・鷺・鶴など、えてしてその開湯伝説に動物が関係していますが、湯田温泉の場合は白狐がお湯を見つけたと言い伝えられており、それゆえ白狐のタイル絵が埋め込まれているのでしょう。


湯田温泉ミックス泉
アルカリ性単純温泉 63.6℃ pH9.14 溶存物質626.54mg/kg(※) 成分総計626.54mg/kg(※)
Na+:206.8mg,
F-:11.42mg, Cl-:274.8mg, HS-:0.02mg, OH-:0.24mg, CO3--:15.96mg,
H2SiO3:72.43mg,
(平成19年12月19日)
(※)掲示されている分析書に記載なかったため、著者が計算。

12:00〜24:00(受付終了23:30)
390円
ロッカー・ドライヤーあり、石鹸類販売あり

私の好み:★+0.5


●温泉舎や足湯
 
湯田温泉では「おもてなし西の京湯田温泉街プロジェクト」という活性化プロジェクトを進めており、実際に街中を歩いていると、巨大旅館や歓楽街の間に、無料で利用できる足湯や温泉を流すモニュメントなど、明らかにここ数年のうちに設置されたであろうと思しき施設が目につき、散策して楽しめる街づくりを目指していることが伝わってきます。その象徴たるものが、温泉街の南東に位置する「温泉舎(ゆのや)」。温泉街の中で屹立する高い櫓が目印です。湯田温泉の複数ある各泉源は建物の間に隠れるように存在しているため、その泉源に光を当てて温泉街としての風情を出すべく、2010年にオープンしたものです。温泉風情を醸し出すべく、黒色基調のシックな和テイストですが、ロゴなど随所に現代的なデザインが採用されています。


 
当地の開湯伝説に基づき、白狐の石像が据え置かれた庭園。その狐の足元から流れている川は「湯の川」。


 
櫓は高さ7.9mで木造。実際の揚湯に使われている訳ではなく、単なるオブジェとして建てられたようです。黒板の塀に囲まれた中心部には円筒形の泉源塔が据え付けられ、その傍らには自然石の上に注連縄をしめた飲泉場が設けられています。こちらの泉源は「市有19号泉」と称し、複数ある湯田温泉の源泉のひとつ。とても熱いので、ふぅふぅ吹きながらゆっくり飲んでみますと、トロミとともにはっきりとしたイオウ感が得られました。それもそのはず、なんと総硫黄が2.4mgも含まれているのです。ここで湧いたお湯は他源泉をミックスされて各旅館へ配湯されるわけですが、個人的な希望を言えばこの源泉単独のお風呂に入ってみたいものです。


 

泉源塔の配管には温度計が取り付けられており、64℃を指し示していました。この泉源塔には喉き窓が設けられており、塔の中でお湯が流れる様子を目にすることができるのですね。私も実際に見学しましたが、かなりの勢いでお湯が流れており、結構な迫力が伝わってきました。なおその量は1日約2000トンとのことです。

市有19号泉
アルカリ性単純温泉 62.0℃ pH9.4 溶存物質0.5826g/kg 成分総計0.5826g/kg
Na+:175.3mg,
F-:12.9mg, Cl-:243.8mg, Br-:0.7mg, OH-:0.4mg, HS-:1.5mg, S2O3--:0.9mg, , OH-:0.4mg, CO3--:20.8mg,
H2SiO3:78.6mg,
(平成22年12月1日)



●足湯
 
温泉街には無料で利用できる足湯も複数設けられています。上画像は、湯の町街道(県道204号線)と錦川通りを結ぶ細い路地「湯の香通り」にある足湯。



こちらは同足湯の湯口。定期的に清掃が行われているらしく、前夜訪れた時にはお湯で満たされていましたが、この画像を撮影した次の日の朝にはお湯が抜かれていました。ただ単につくるだけでなく、きちんと維持管理されているところが素晴らしい!


 
観光案内所の前にも足湯がありました。



足湯のみなたず、路地の角にも温泉を流す白狐のモニュメントが建てられていました。
従来の湯田温泉は歓楽街としての色彩が強かったため、温泉地なのに温泉風情に欠けていたわけですが、このような活性化事業により、少しずつ温泉街としての風情を取り戻しているようでした。

さて、次回記事では実際に当地で宿泊したお宿についてレポートさせていただきます。

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