温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

川棚温泉 玉椿旅館

2017年06月12日 | 山口県
 
今回記事から連続で山口県下関の奥座敷である川棚温泉を取り上げます。私が川棚を旅したのは昨年(2016年)9月某日。路線バスを降りて温泉街を歩き、まずはじめに訪ねたのは「玉椿旅館」です。趣きある伝統建築は国の有形文化財に登録されているんだそうです。


 
今回は日帰り入浴での利用です。玄関の太鼓を叩いて入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださいました。こちらのお宿は大正期に山口県出身の元力士が創業した老舗で、宿名の玉椿とは創業者の現役時代の四股名なんだとか。元々は巡業する力士達の常宿であり、いま使われている客室の名前も、明治から大正にかけて活躍した横綱に由来しているんだそうです。



曲がり角の多い館内を進んで浴場へ。お風呂は一室しかないので、利用の際は貸切となります。私が訪れた時には運良く先客がいなかったため待たずに済みましたが、もし先客がいる場合は待つことになります(予約が可能とのこと)。


 
古い建物なので天井は低いのですが、脱衣室は意外にも広く、しかも足裏に優しいタイルカーペット敷きです。室内の掲示によれば、気温の低い時期のみ加温されているそうですが、私が訪れたのは残暑が厳しい時期でしたので、おそらく加温が無い完全放流式の湯使いだったものと思われます。


 
浴室は脱衣室より若干低い位置にあり、ドアを開けてステップを3段ほど下る造りになっていました。全国の湯めぐりをしている私の経験則から申し上げますと、こうしたステップを下るお風呂では名泉に巡り会える場合が多いので、この造りを目にした時には反射的にお湯への期待に胸が膨らみました。浴室の壁はタイル貼りで床は石板敷き。床面積は脱衣室とほぼ同じかと思われますが、床の位置が低い分、天井が高くなっていました。そんな室内にはふんわりと石膏の香りが漂っていました。


 
洗い場にはシャワー付きカランが2基取り付けられています。カランから出てくるお湯はボイラーの沸かし湯です。なおシャワーの右隣にはかつて上がり湯として使われていたと思しき小さな槽が設けられているのですが、現在は空っぽで使用されておらず、板を載せて桶を置く台の代わりになっていました。
浴室の壁にはところどころにタイル絵が嵌め込まれており、殺風景になりがちなタイル貼りの浴室に彩りを添えていました。


 
浴槽はΣのような形状をしており、幅は約1.8mで奥行きは3m強でしょうか。浴槽の縁は御影石で底部は濃淡のグレー系豆タイル敷き。角に屹立している岩の湯口から温泉が絶え間なく落とされ、浴槽のお湯は非常にクリアな状態が保たれていました。


 
このお風呂は湯船からのオーバーフローがすごいんです。縁の上からの溢れ出しはもちろん、サイフォン式で湯尻の塩ビ管から排出されるお湯の量も夥しく、その様を見ているだけでも豪快な気分になれます。浴槽の容量から推測するに、かなり早いペースで浴槽のお湯が入れ替わっているのではないかと思われます。
お湯は無色透明で湯の花などの浮遊物はなく、とてもクリアに澄みきっています。お湯を口に含むと薄い塩味と石膏味が感じられました。また湯中では弱いスルスベ浴感が得られます。上述のように放流式の湯使いであり、しかも投入量が多いので湯船のお湯は大変フレッシュ。鮮度の良いお湯に浸かっていると、身も心も浄化されそうです。地味なお風呂ですが、湯使いの良さは老舗だからできる技なのかもしれません。日帰り入浴にもかかわらず丁寧に接客してくださった宿の方の心遣いもありがたく、もし当地に再訪する機会があれば、ぜひ泊まってみたいと強く願いながら、お暇させていただきました。


川棚温泉ミックス泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 その他のデータ不明
加温する時期あり(入浴に適した温度に保つため、気温の低い期間のみ加温。9月から5月まで)

下関駅や川棚温泉駅よりサンデン交通もしくはブルーライン交通のバスで「川棚温泉」バス停下車
山口県下関市豊浦町大字川棚5132  地図
083-772-0005
ホームページ

日帰り入浴10:00〜20:00
700円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする