温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

東鳴子温泉 ホテルニューあらお

2017年06月05日 | 宮城県

昨年(2016年)夏の某日、東鳴子温泉の「ホテルニューあらお」にて立ち寄り入浴してまいりました。かつては「荒雄荘」と称する国鉄の保養所だったそうです。低層建築が多い東鳴子エリアにあって、こちらの建物は群を抜いて高いため、車で国道を走っていても、陸羽東線の列車に乗っていても、誰しもがこのお宿の存在に気づくかと思います。ちなみに「あらお」とは、鳴子の北の鬼首にそびえる荒雄岳のことを指しているのでしょうね。宿のまわりには「日帰り温泉」と記された幟がたくさん立っていました。こちらでは入浴のみの利用も積極的に受け入れているようです。


 
日帰り入浴利用客は、玄関でスリッパに履き替えた上で館内に入り(宿泊客は土足のまま入館可)、フロントの右脇に設置されている券売機で料金を支払って、券をフロントのスタッフさんに差し出してから、ロビーを挟んでフロントの反対側に提げられた大きな暖簾をくぐると、その先に紺と朱の暖簾が掛かっていました。ネット上の情報によれば、男女の暖簾は日によって入れ替わるようです。


 
エアコンの効いた綺麗な脱衣室を抜け、黒基調でシックで落ち着いた雰囲気の浴室へ。
この浴室に入った途端、東鳴子らしいアブラ臭が香り、その芳香を嗅いだ私は、条件反射のように心が弾んでしまいました。2方向に設けられたガラス窓の下には浴槽が据えられ、その反対側には洗い場は配置されています。その洗い場にはシャワー付きカランがL字型に計6基並んでいました。なおカランから出てくるお湯は沸し湯です。


 
内湯の浴槽は勾玉のような形状をしており、14〜5人は同時に入れそうなゆとりのあるサイズを有しています。以前は泡風呂装置が稼働していたそうですが、私が訪問した時には動いておらず、静かな状態で湯浴みすることができました。


 
奥のコーナー部に内湯の湯口があり、そこから62.8℃というかなり熱いお湯がチョロチョロと注がれていました。湯使いは加水加温循環消毒の無い完全放流式なのですが、高温の源泉を加水することなく湯温調整するため、投入量を絞ることによってお湯を冷ましているのでしょう。


 
露天風呂は日本庭園風の設え。頭上は屋根で覆われており、左右は建物や線路の法面が立ちはだかっているため、開放感は今ひとつかもしれませんが、浴槽のまわりに石板を敷くことで重厚感を醸し出し、その周りを庭木の緑で彩っているため、内湯同様に落ち着いた空気感の中で湯浴みのひと時を過ごすことができるかと思います。露天の浴槽は石板張りで、おおよそ6人サイズといったところ。温泉成分の付着により、浴槽内の石板が黒光りしていました。


 
露天の湯口も61.0℃という高温ですが、外気の影響を受けやすいためか投入量は内湯より若干多く、それで丁度良い湯加減になっていました。さすが湯守の方は吐出量をよくわかっていらっしゃる。きっとその時々の状況に応じて、こまめに温度を管理なさっているのでしょうね。


 
露天風呂の庭園に立つ衝立の向こうでは、白い湯気が上がっていました。また脱衣室の外側には貯湯タンクが設置されていました。こちらでは2つの源泉をミックスして使っているそうですから、湯気を上げているこうした設備でお湯の混合やストックが行われているのでしょう。内湯・露天ともに同じお湯であり、見た目は炒めすぎた玉ねぎみたいな濃い飴色と表現したくなる褐色の透明で、気泡は見られませんが、小さな黒い浮遊物なら湯中でチラホラ舞っていました。お湯からはインクをちょっと焦がしたようなアブラ臭が漂っているほか、ビターなテイストや石膏を焼いたような風味も得られます。分析書によれば溶存物質量は981.0mg/kgであり、1000mgに満たないため(温泉法の規定により)泉質名は単純泉ですが、実質的には重曹泉といって差し支えないような成分構成であり、実際に過去の分析では重曹泉と称されていたこともあったようです。泉質名のみならず、実際にお湯に入っても重曹泉らしいツルツルスベスベの大変滑らかな浴感が感じられ、湯上がりも汗の引きが早く、暑い夏の入浴なのに爽快感を楽しむことができました。東鳴子には個性的なお風呂やお湯が多いので、このエリアの他旅館と比べるといまいちインパクトが足りない気もしますが、お湯そのものはなかなか良く、ご近所のお風呂と比較しなければ、かなり満足のゆく湯浴みができそうです。



お風呂のすぐ上を陸羽東線の線路が敷かれています。私が入浴していると遠くからガタンゴトンというジョイント音が響いてきたので、その音が聞こえる方向に耳を傾けながら法面を見上げていると、やがて列車が私の真上を通過していきました。かつて国鉄の保養所だったという経緯を持つお宿だからか、いまでもJRの列車に見守られているのですね。


炭酸泉・黒湯混合泉
単純温泉 61.0℃ pH8.1 溶存物質981.0mg/kg 成分総計1001.2mg/kg
Na+:185.7mg(88.69mval%),
Cl-:33.6mg(10.54mval%), SO4--:20.8mg, HCO3-:421.5mg(76.69mval%), CO3--:18.0mg,
H2SiO3:266.0mg, CO2:20.2mg,
(平成20年12月5日)
加水加温循環消毒なし

JR陸羽東線・鳴子御殿湯駅より徒歩7分(約500m)
宮城県大崎市鳴子温泉赤湯40  地図
0229-83-3062
ホームページ

日帰り入浴10:30~21:00
600円(湯めぐりチケットのシール3枚)
貴重品フロント預かり、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (2)
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