古くから湯治場として知られている山口県の俵山温泉。昨年(2016年)に立ち寄り入浴でちょっとお邪魔しました。
●温泉街
公共駐車場に車を止めて温泉街を歩くと、昭和どころか大正明治の時代までタイムスリップしちゃったようなとてもレトロな街並みに、思わず立ち止まってカメラを構えずにはいられなくなりました。車一台通るのがやっとの狭い路地に沿って、民家のような日本家屋の小規模旅館が櫛比しているのですが、これらの古い宿では内湯を持たず、湯治客は宿から外湯へ通うという伝統的なスタイルをいまだに貫いているんだそうです。
はじめ私は内湯を持つ自家源泉の旅館「富士屋」を訪れたのですが、全ての窓でカーテンが掛けられ、玄関の扉も固く施錠されていました。残念ながらクローズしてしまったようです。おそらく離れの白い小屋が湯屋だと思われるのですが、閉鎖されてそれなりの月日が経っているのか、湯屋のまわりは雑草が生い茂っており、これから荒れてゆくのは必至な状況でした。
当地には2つの共同浴場がありましたが、その中のひとつである「川の湯」も、新たな施設である「白猿の湯」開業に伴い閉鎖されてしまいました。このような閉鎖されたお宿や施設が昔ながらの街並みの中で軒を連ねていると、ただでさえ鄙びた温泉街の哀愁がより一層募ります。
●町の湯
さて魂が消えて抜け殻になってしまった2つの施設を目にして寂しい気分になった私は、ちゃんとお風呂に入って心身を温めるべく、当地の共同浴場のひとつである「町の湯」を訪ねることにしました。鄙びた渋い温泉街の中央部に位置しており、どのお宿からも通いやすいロケーションです。
自動ドアの玄関を入ってすぐ左側にある券売機で湯銭を支払い、右斜め前にある受付のおじさんに券を手渡します。その受付があるホールの正面にはちょっとした喫茶カウンターがあり、左手には立派な飲泉所が備え付けられていました。その場で飲むなら無料ですが、お湯を持ち帰る場合は有料です。
脱衣室にはいくつかの張り紙が掲示されているのですが、その中でも私が注目したのは上画像の2枚。
まず左(or上)画像の張り紙で説明されているのは湯使いに関してであり、浴場内には2つの浴槽があって、1号という浴槽は「源泉100%かけ流し」、その一方、もうひとつの湯船である2号浴槽は「一部循環かけ流し」である旨が記されていました。なるほど湯使いに関してはよくわかりましたが、浴槽の呼び名を大小や主副ではなく、1号2号という序数が用いられている点が珍しく、私にとっては興味深い点でした。
もうひとつ、右(or下)画像の張り紙では、「町の湯」と「川の湯」の違いや飲泉に関して触れられており、この「町の湯」はリュウマチ・神経痛・肩こり・腰痛・打撲など、「川の湯」は慢性的皮膚炎や傷などに対して、それぞれ効能が有しているんだとか。ということは、かつて俵山で湯治をしていた人は、自分の症状に合わせて浴場を選んでうたのでしょうね。でも「川の湯」が過去帳入りしてしまった今、皮膚炎や外傷を湯治したい人はどうすればよいのでしょう(「白猿の湯」へ行けば良いのかな?)。
お風呂は内湯のみですが、タイル張りの浴室内は天井が高くて明るく、「町の湯」という名前がもたらす銭湯風情のこぢんまりしたイメージを根底から覆すシティーホテルの大浴場並みの立派な造りにびっくりしてしまいました。間口の狭い木造家屋が密集している俵山という土地にありながら、これだけの広さを確保できるとは驚きです。いや、むしろ各旅館の宿泊客がこぞってやってくるのですから、それなりの空間を確保して然るべきなのかもしれませんね。
洗い場は二手に分かれており、計6基のシャワー付きカランが設置されています。また出入口の脇には小さな上がり湯槽も設けられています。
洗い場の上には「効果的な入浴」と題して入浴方法が解説されていました。内容に関しては割愛させていただきますが、やはり湯治の場ですから、単に汗を流して湯船に浸かるだけではなく、いかにして湯浴みをするか、その方法こそが大切なのでしょう。
上述の張り紙で説明されていたように、浴室内には大小2つの浴槽があります。
漏斗のような形状をしている大きな浴槽が、循環と放流式を併用している2号浴槽。窓側の最長辺で約3m、幅は広いところで約2m、狭い湯口側で1.5mといったところ。浴槽の中央部ではジェットバス装置が稼働していました。湯口はあるものの、私の訪問時にはほとんど吐出されておらず、後述する1号浴槽から流れ込む受け湯と循環湯が供給源のようでした(日によっては湯口からお湯が出るのかも)。ややぬるい湯加減(40℃前後)に調整されており、一部循環とはいうものの、浴槽の縁から洗い場へ向けてお湯がザバザバと惜しげも無く溢れ出ていましたから、ほとんど完全放流式に近い湯使い状態と言っても差し支えないでしょう。
その左手に据え付けられている2m×2.5mの四角く小さな浴槽は完全掛け流しの1号浴槽。壁から突き出た湯口よりお湯がドバドバ投入されていて、その勢いを見ているだけでも豪快な気分になれます。湯加減は41℃前後。浴槽のお湯は全量が隣の2号浴槽へと流れ出ています。見た目だけでは1号も2号も同じお湯のように思われますが、実際に入るとフィーリングが全然違い、もちろん1号の方がはるかに素晴らしく、鮮度感が抜群です。
こちらで使われているお湯は「町の湯泉」と称し、浴場の敷地内で湧出している源泉のようです。無色透明で大変清らかに澄んでいます。飲泉所で飲んでみますと口の中でトロミを感じ、しっかりとしたタマゴ味が得られました。アルカリ性ですから口当たりがまろやかなんですね。冷やして飲むと、さぞかし美味しいことでしょう。1号浴槽の湯口付近では温泉由来のタマゴ臭も漂っていました。そして湯船に足を入れた瞬間に、トロトロ・ヌルヌルそしてツルツルといった滑らかさが肌に伝わり、肩までお湯につかると、まるで自分がローションの中に浸っているかのような極上の滑らか浴感に包まれ、いい歳こいたオッサンの私ですら「あれ? アタシって美人になっちゃった?」と勘違いして、湯中でスベッスベな自分の肌をさすってしまいました。これぞまさに美人の湯。このお風呂で昔ながらの湯治をするのも結構ですが、それとは違う観点で美肌効果を期待するのも良いかもしれません。
上述したように俵山温泉では内湯を持つ旅館が少ないため、宿泊する客はこの浴場に集まります。このため夕方以降は混雑するのですが、私が訪れた昼間は空いており、かなりの長い時間、独占することができました。素晴らしいお湯でした。
町の湯泉
アルカリ性単純温泉 41.3℃ pH9.9 溶存物質0.2048g/kg 成分総計0.2048g/kg
Na+:47.8mg,
Cl-:12.1mg, HS-:0.6mg, S2O3--:0.8mg, OH-:1.4mg, SO4--:14.6mg, CO3--:43.6mg,
H2SiO3:79.0mg,
(平成25年12月4日)
1号浴槽:100%掛け流し
2号浴槽:一部循環掛け流し
下関駅や長門湯本駅からサンデン交通の路線バスで「俵山温泉」バス停下車
山口県長門市俵山湯町5113 地図
0837-29-0001
6:00〜22:00
420円
ロッカー(10円有料)・ドライヤーあり
私の好み:★★★
●温泉街
公共駐車場に車を止めて温泉街を歩くと、昭和どころか大正明治の時代までタイムスリップしちゃったようなとてもレトロな街並みに、思わず立ち止まってカメラを構えずにはいられなくなりました。車一台通るのがやっとの狭い路地に沿って、民家のような日本家屋の小規模旅館が櫛比しているのですが、これらの古い宿では内湯を持たず、湯治客は宿から外湯へ通うという伝統的なスタイルをいまだに貫いているんだそうです。
はじめ私は内湯を持つ自家源泉の旅館「富士屋」を訪れたのですが、全ての窓でカーテンが掛けられ、玄関の扉も固く施錠されていました。残念ながらクローズしてしまったようです。おそらく離れの白い小屋が湯屋だと思われるのですが、閉鎖されてそれなりの月日が経っているのか、湯屋のまわりは雑草が生い茂っており、これから荒れてゆくのは必至な状況でした。
当地には2つの共同浴場がありましたが、その中のひとつである「川の湯」も、新たな施設である「白猿の湯」開業に伴い閉鎖されてしまいました。このような閉鎖されたお宿や施設が昔ながらの街並みの中で軒を連ねていると、ただでさえ鄙びた温泉街の哀愁がより一層募ります。
●町の湯
さて魂が消えて抜け殻になってしまった2つの施設を目にして寂しい気分になった私は、ちゃんとお風呂に入って心身を温めるべく、当地の共同浴場のひとつである「町の湯」を訪ねることにしました。鄙びた渋い温泉街の中央部に位置しており、どのお宿からも通いやすいロケーションです。
自動ドアの玄関を入ってすぐ左側にある券売機で湯銭を支払い、右斜め前にある受付のおじさんに券を手渡します。その受付があるホールの正面にはちょっとした喫茶カウンターがあり、左手には立派な飲泉所が備え付けられていました。その場で飲むなら無料ですが、お湯を持ち帰る場合は有料です。
脱衣室にはいくつかの張り紙が掲示されているのですが、その中でも私が注目したのは上画像の2枚。
まず左(or上)画像の張り紙で説明されているのは湯使いに関してであり、浴場内には2つの浴槽があって、1号という浴槽は「源泉100%かけ流し」、その一方、もうひとつの湯船である2号浴槽は「一部循環かけ流し」である旨が記されていました。なるほど湯使いに関してはよくわかりましたが、浴槽の呼び名を大小や主副ではなく、1号2号という序数が用いられている点が珍しく、私にとっては興味深い点でした。
もうひとつ、右(or下)画像の張り紙では、「町の湯」と「川の湯」の違いや飲泉に関して触れられており、この「町の湯」はリュウマチ・神経痛・肩こり・腰痛・打撲など、「川の湯」は慢性的皮膚炎や傷などに対して、それぞれ効能が有しているんだとか。ということは、かつて俵山で湯治をしていた人は、自分の症状に合わせて浴場を選んでうたのでしょうね。でも「川の湯」が過去帳入りしてしまった今、皮膚炎や外傷を湯治したい人はどうすればよいのでしょう(「白猿の湯」へ行けば良いのかな?)。
お風呂は内湯のみですが、タイル張りの浴室内は天井が高くて明るく、「町の湯」という名前がもたらす銭湯風情のこぢんまりしたイメージを根底から覆すシティーホテルの大浴場並みの立派な造りにびっくりしてしまいました。間口の狭い木造家屋が密集している俵山という土地にありながら、これだけの広さを確保できるとは驚きです。いや、むしろ各旅館の宿泊客がこぞってやってくるのですから、それなりの空間を確保して然るべきなのかもしれませんね。
洗い場は二手に分かれており、計6基のシャワー付きカランが設置されています。また出入口の脇には小さな上がり湯槽も設けられています。
洗い場の上には「効果的な入浴」と題して入浴方法が解説されていました。内容に関しては割愛させていただきますが、やはり湯治の場ですから、単に汗を流して湯船に浸かるだけではなく、いかにして湯浴みをするか、その方法こそが大切なのでしょう。
上述の張り紙で説明されていたように、浴室内には大小2つの浴槽があります。
漏斗のような形状をしている大きな浴槽が、循環と放流式を併用している2号浴槽。窓側の最長辺で約3m、幅は広いところで約2m、狭い湯口側で1.5mといったところ。浴槽の中央部ではジェットバス装置が稼働していました。湯口はあるものの、私の訪問時にはほとんど吐出されておらず、後述する1号浴槽から流れ込む受け湯と循環湯が供給源のようでした(日によっては湯口からお湯が出るのかも)。ややぬるい湯加減(40℃前後)に調整されており、一部循環とはいうものの、浴槽の縁から洗い場へ向けてお湯がザバザバと惜しげも無く溢れ出ていましたから、ほとんど完全放流式に近い湯使い状態と言っても差し支えないでしょう。
その左手に据え付けられている2m×2.5mの四角く小さな浴槽は完全掛け流しの1号浴槽。壁から突き出た湯口よりお湯がドバドバ投入されていて、その勢いを見ているだけでも豪快な気分になれます。湯加減は41℃前後。浴槽のお湯は全量が隣の2号浴槽へと流れ出ています。見た目だけでは1号も2号も同じお湯のように思われますが、実際に入るとフィーリングが全然違い、もちろん1号の方がはるかに素晴らしく、鮮度感が抜群です。
こちらで使われているお湯は「町の湯泉」と称し、浴場の敷地内で湧出している源泉のようです。無色透明で大変清らかに澄んでいます。飲泉所で飲んでみますと口の中でトロミを感じ、しっかりとしたタマゴ味が得られました。アルカリ性ですから口当たりがまろやかなんですね。冷やして飲むと、さぞかし美味しいことでしょう。1号浴槽の湯口付近では温泉由来のタマゴ臭も漂っていました。そして湯船に足を入れた瞬間に、トロトロ・ヌルヌルそしてツルツルといった滑らかさが肌に伝わり、肩までお湯につかると、まるで自分がローションの中に浸っているかのような極上の滑らか浴感に包まれ、いい歳こいたオッサンの私ですら「あれ? アタシって美人になっちゃった?」と勘違いして、湯中でスベッスベな自分の肌をさすってしまいました。これぞまさに美人の湯。このお風呂で昔ながらの湯治をするのも結構ですが、それとは違う観点で美肌効果を期待するのも良いかもしれません。
上述したように俵山温泉では内湯を持つ旅館が少ないため、宿泊する客はこの浴場に集まります。このため夕方以降は混雑するのですが、私が訪れた昼間は空いており、かなりの長い時間、独占することができました。素晴らしいお湯でした。
町の湯泉
アルカリ性単純温泉 41.3℃ pH9.9 溶存物質0.2048g/kg 成分総計0.2048g/kg
Na+:47.8mg,
Cl-:12.1mg, HS-:0.6mg, S2O3--:0.8mg, OH-:1.4mg, SO4--:14.6mg, CO3--:43.6mg,
H2SiO3:79.0mg,
(平成25年12月4日)
1号浴槽:100%掛け流し
2号浴槽:一部循環掛け流し
下関駅や長門湯本駅からサンデン交通の路線バスで「俵山温泉」バス停下車
山口県長門市俵山湯町5113 地図
0837-29-0001
6:00〜22:00
420円
ロッカー(10円有料)・ドライヤーあり
私の好み:★★★