※2021年7月2日に再オープンしました。
3ヶ月も前の話ですが、会津駒ヶ岳へ登山した日のこと(※)、下山後の汗をどこで流そうか思案していたのですが、せっかくだから未訪問の施設が良かろうと思い、以前から気になっていた小豆温泉「窓明の湯」を利用してみました。私は物心ついた頃からあんこが大好きで、ガキの時分は業務用の大きな缶詰のあんこに手を突っ込んでムシャムシャ頬張って母親から怒られた記憶がありますが、そんなあんこ馬鹿な私が小豆という文字を見逃すはずもなく、その一方で、お湯に関してはそれほど芳しい評判を聞かなかったので、これまでその存在を気になっていたものの訪問せずにいたのでした。
(※)その時の登山記は拙ブログにて「涼と花を求めて 会津駒ヶ岳・中門岳 2013年8月」と題して前編と後編に分けて記載しております。
こちらへアクセスするには、国道352号のスノーシェッドの途中にある分かりにくい分岐を折れていかねばならず、いつのも悪癖で車を軽く飛ばしていたら、案の定、曲がるポイントを見逃してしまい、途中で∪ターンをするはめになりました。
初めてお目にかかるこの施設を見てビックリ。こんな山奥に小洒落た立派な施設が存在していたとは!! 雪国らしい大きな屋根を頂く中央の棟を挟んで左右両側に美術館のような洒落た円形の建物がくっついており、この左右の建物が浴室となっているわけです。
館内は天井が高く、全体的に広々しており、モダン和風な意匠によって統一されています。玄関を入った正面には囲炉裏があり、右手には食堂を兼ねたお座敷が広がっていて、湯上がりで横になっているお客さんがたくさんいらっしゃいました。
浴室には窓が大きくて開放感のある「陽明の湯」と、薄暗くして落ち着きのある空間を生み出している「月明の湯」の2種類があって、男女が日替わりでチェンジするようになっているそうですが、この日は「月明の湯」に男湯の暖簾がかかっていました。
ウッディーな内装の脱衣室は広くて清潔感に溢れ、籠や洗面台もたくさん用意されており、他のお客さんの動きを気にせずにストレス無く着替えることが出来ました。ただちょっと気になったのがロッカーでして、利用の際には200円を要し、1日に限り何度でも出し入れが可能で、使用終了時には100円が返却されるのですが、福島県にしては高いレベルの入浴料(700円)なのですから、100円リターン式にするなど、もっと使い勝手の良い方法が採用できなかったのか、ちょっぴり悔やまれるところです。
入浴ゾーンにはいくつもの温浴槽があるのですが、まずは露天風呂から見ていきましょう。
いわゆる岩風呂でして、結構大きな容量があり、前方こそ山の緑を眺めることができるのですが、左右両サイドは建物に阻まれて視界が遮られており、意外と開放感が得られないのが残念なところです。しかもこの日は陽射しが強くて、岩風呂の岩や周囲の石がすっかり焼けており、とても素足では歩けず、かと言って湯船に逃げてもお湯が熱いという、灼熱地獄状態でした。その上、入浴中は虻の猛襲にも遭ったため、露天では2~3分浸かっただけで出てきてしまいました。夏以外でしたら熱さや虫の被害には遭わずに済むかと思いますが、でも山奥にいながら露天であまり開放感が得られないのはやっぱり残念です。
なおお湯に関しては槽内で吸引および供給が行われており、オーバーフローなどは一切見られません。無色透明無味無臭の特にこれと言った特徴の無いお湯でした。こちらのお風呂を設計した方は、後述する内湯に情熱を注ぎすぎたあまり、露天はすっかり疎かになってしまったのかもしれません。「とりあえず取って付けておきました」感が伝わってきました。
こちらの施設は露天風呂よりも内湯の方が遥かに魅力的だろうと思われます。画像左(上)は脱衣室側から奥に向かって、画像右(下)は奥から脱衣室に向かって、それぞれ撮影したものです。室内空間は右へドッグレッグするようにして大きな扇型を描いており、見上げると羽根を広げたような大きな天井が窓の方へ向かって下がっていて、その屋根を扇子の骨のような感じで数多の木の梁が支えており、建築物としてダイナミックな造形美が展開されていました。極力自然由来の建材で統一しようとしているのか、天井は木材主体であるのに対し、床や浴槽などの水回りは鉄平石が用いられています。また上述のように窓を小さくすることによって室内の照度を下げ、落ち着きのある空間を生み出しています。
建物の中心に寄っている右側にはかぶり湯や打たせ湯が設けられ…
建物の外縁にあたる左側には主浴槽、そして一段高い位置にジャグジーやジェットバスの槽が据えられています。
浴室入ってすぐ右にあるのが「かぶり湯」槽で、利用客にその用途を説明するため「このかぶり湯には入らないで下さい」と書かれた札が立て掛けられています。
その奥で轟音を室内に響かせているのが打たせ湯でして、やや熱めのお湯が2本×3組の計6本落とされています。浴室内に4種類ある槽の中でも、この打たせ湯のお湯が最も状態が良いように感じられました。後述するように他の浴槽ではしっかりお湯を循環させていますが、温泉施設が神経をとがらせるレジオネラ属菌の感染は、飛沫がたくさん発生する打たせ湯で起きやすく、打たせ湯に循環のお湯を使うことはタブーでありますから、この打たせ湯に限っては掛け流しかそれに近い状態のお湯が使われているのではないか、それゆえお湯から得られるフィーリングが良いのではないかと、勝手に解釈しております。
主浴槽は42℃くらいのお湯が静かに湛えられており、湯口からお湯が勢い良く吐出されているものの、オーバーフローなどは見られず、槽内にて吸引されています。浴槽の底はまるで瀝青のような光沢のある美しい石材が敷かれていました。
その隣にあるジェットバス槽やジャグジー槽は、主浴槽よりちょっと高くなっており、41~2℃という適温のお湯が張られ、人が入ればお湯は溢れ出ますが、通常時は縁すれすれの嵩をキープしていました。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が計14基(内側に6基、外側に8基)並んでおり、その他に立って使うシャワーブースが2ヶ所用意されています。このシャワーは一般的な斜め上からの吐出の他、中程や頭上などあらゆる方向から浴びることができる、機能性に富んだタイプです。
さて、肝心のお湯についてですが、無色透明無味無臭で、加水・循環・消毒が行われており、浴感も掴みどころがなく、何と表現すべきか迷ってしまうごくごく普通の真湯のようなものなのですが、打たせ湯のお湯に限っては鮮度感があり、サラサラとした心地よさが肌に伝わってきました。その浴感とどのように影響しているのか断定できませんが、この温泉で特徴的なのはフッ素イオンが10.1mg含まれていることです。他の温泉と比較して飛び抜けて多いわけではありませんが、どちらかと言えば多い部類に含まれるかと思われます。この小豆温泉のみならず、帝釈山脈の周辺に湧出する温泉はフッ素イオンが比較的多い傾向にあり、手元の資料から拾ってみますと、例えば檜枝岐温泉「駒の湯」などで用いられている檜枝岐4号泉は11.5mgですし、木賊温泉の「広瀬の湯」は8.4mg、同じく木賊の井筒屋は7.9mg、そして帝釈山脈の向こう側にある栃木県湯西川の集中管理源泉は10.2mg, 同じく湯西川の「民宿やま久」で使われている「高手観音の湯」源泉は20.2mg、そして湯西川下地区源泉に至っては22.1mgというかなりの数値が記録されています。栃木県側と比べると小豆温泉のフッ素イオンは半分ですが、温泉成分に敏感な方でしたら、その特徴にお気づきになるかもしれません。
冗長な屁理屈で何とか無理矢理お湯の特徴を拾ってみましたが、かなり繊細なお湯を加水循環させてしまっているためか、正直なところ、残念ながら浴感的には心惹かれるポイントが見出せませんでした。しかしながら広い浴室やデザインコンセプトから受ける開放感や寛ぎは出色であり、浴室のみならず食堂など館内各施設も使い勝手が良いので、温泉マニア的な観点はともかく、綺麗で広くて多様な浴槽があるお風呂を求める一般的な観光客のニーズを満たしており、この日の館内が多くのお客さんで賑わっていたことは、その確固たる証左であります。また今回私は下山後の汗を流すために利用したわけですが、全般にわたって使い勝手が良いため、ストレスなく身支度を整えることができ、身も心もサッパリできましたので、登山後の利用にも良いかと思います。
小豆温泉窓明の湯貯湯槽(2源泉混合)
(大桃小豆温泉1号湯・大桃小豆温泉3号湯)
単純温泉 50.5℃ pH8.3 動力揚湯 溶存物質0.443g/kg 成分総計0.443g/kg
Na+:18.7mg(84.87mval%), Ca++:13.0mg(10.69mval%),
F-:10.1mg(8.65mval%), Cl-:145.7mg(67.06mval%), SO4--:16.0mg(5.38mval%), HCO3-:63.1mg(16.80mval%),
H2SiO3:61.7mg,
温度が高いため沢水(専用水道水)で加水
衛生管理のため循環ろ過装置を使用
衛生管理のためジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを使用
福島県南会津郡南会津町大桃平沢山1041-3
0241-76-3112
2021年7月に再オープンしました。営業時間や料金などは公式サイトをご覧ください。
11:00~19:00 木曜定休
町外700円
ロッカー(有料)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★
3ヶ月も前の話ですが、会津駒ヶ岳へ登山した日のこと(※)、下山後の汗をどこで流そうか思案していたのですが、せっかくだから未訪問の施設が良かろうと思い、以前から気になっていた小豆温泉「窓明の湯」を利用してみました。私は物心ついた頃からあんこが大好きで、ガキの時分は業務用の大きな缶詰のあんこに手を突っ込んでムシャムシャ頬張って母親から怒られた記憶がありますが、そんなあんこ馬鹿な私が小豆という文字を見逃すはずもなく、その一方で、お湯に関してはそれほど芳しい評判を聞かなかったので、これまでその存在を気になっていたものの訪問せずにいたのでした。
(※)その時の登山記は拙ブログにて「涼と花を求めて 会津駒ヶ岳・中門岳 2013年8月」と題して前編と後編に分けて記載しております。
こちらへアクセスするには、国道352号のスノーシェッドの途中にある分かりにくい分岐を折れていかねばならず、いつのも悪癖で車を軽く飛ばしていたら、案の定、曲がるポイントを見逃してしまい、途中で∪ターンをするはめになりました。
初めてお目にかかるこの施設を見てビックリ。こんな山奥に小洒落た立派な施設が存在していたとは!! 雪国らしい大きな屋根を頂く中央の棟を挟んで左右両側に美術館のような洒落た円形の建物がくっついており、この左右の建物が浴室となっているわけです。
館内は天井が高く、全体的に広々しており、モダン和風な意匠によって統一されています。玄関を入った正面には囲炉裏があり、右手には食堂を兼ねたお座敷が広がっていて、湯上がりで横になっているお客さんがたくさんいらっしゃいました。
浴室には窓が大きくて開放感のある「陽明の湯」と、薄暗くして落ち着きのある空間を生み出している「月明の湯」の2種類があって、男女が日替わりでチェンジするようになっているそうですが、この日は「月明の湯」に男湯の暖簾がかかっていました。
ウッディーな内装の脱衣室は広くて清潔感に溢れ、籠や洗面台もたくさん用意されており、他のお客さんの動きを気にせずにストレス無く着替えることが出来ました。ただちょっと気になったのがロッカーでして、利用の際には200円を要し、1日に限り何度でも出し入れが可能で、使用終了時には100円が返却されるのですが、福島県にしては高いレベルの入浴料(700円)なのですから、100円リターン式にするなど、もっと使い勝手の良い方法が採用できなかったのか、ちょっぴり悔やまれるところです。
入浴ゾーンにはいくつもの温浴槽があるのですが、まずは露天風呂から見ていきましょう。
いわゆる岩風呂でして、結構大きな容量があり、前方こそ山の緑を眺めることができるのですが、左右両サイドは建物に阻まれて視界が遮られており、意外と開放感が得られないのが残念なところです。しかもこの日は陽射しが強くて、岩風呂の岩や周囲の石がすっかり焼けており、とても素足では歩けず、かと言って湯船に逃げてもお湯が熱いという、灼熱地獄状態でした。その上、入浴中は虻の猛襲にも遭ったため、露天では2~3分浸かっただけで出てきてしまいました。夏以外でしたら熱さや虫の被害には遭わずに済むかと思いますが、でも山奥にいながら露天であまり開放感が得られないのはやっぱり残念です。
なおお湯に関しては槽内で吸引および供給が行われており、オーバーフローなどは一切見られません。無色透明無味無臭の特にこれと言った特徴の無いお湯でした。こちらのお風呂を設計した方は、後述する内湯に情熱を注ぎすぎたあまり、露天はすっかり疎かになってしまったのかもしれません。「とりあえず取って付けておきました」感が伝わってきました。
こちらの施設は露天風呂よりも内湯の方が遥かに魅力的だろうと思われます。画像左(上)は脱衣室側から奥に向かって、画像右(下)は奥から脱衣室に向かって、それぞれ撮影したものです。室内空間は右へドッグレッグするようにして大きな扇型を描いており、見上げると羽根を広げたような大きな天井が窓の方へ向かって下がっていて、その屋根を扇子の骨のような感じで数多の木の梁が支えており、建築物としてダイナミックな造形美が展開されていました。極力自然由来の建材で統一しようとしているのか、天井は木材主体であるのに対し、床や浴槽などの水回りは鉄平石が用いられています。また上述のように窓を小さくすることによって室内の照度を下げ、落ち着きのある空間を生み出しています。
建物の中心に寄っている右側にはかぶり湯や打たせ湯が設けられ…
建物の外縁にあたる左側には主浴槽、そして一段高い位置にジャグジーやジェットバスの槽が据えられています。
浴室入ってすぐ右にあるのが「かぶり湯」槽で、利用客にその用途を説明するため「このかぶり湯には入らないで下さい」と書かれた札が立て掛けられています。
その奥で轟音を室内に響かせているのが打たせ湯でして、やや熱めのお湯が2本×3組の計6本落とされています。浴室内に4種類ある槽の中でも、この打たせ湯のお湯が最も状態が良いように感じられました。後述するように他の浴槽ではしっかりお湯を循環させていますが、温泉施設が神経をとがらせるレジオネラ属菌の感染は、飛沫がたくさん発生する打たせ湯で起きやすく、打たせ湯に循環のお湯を使うことはタブーでありますから、この打たせ湯に限っては掛け流しかそれに近い状態のお湯が使われているのではないか、それゆえお湯から得られるフィーリングが良いのではないかと、勝手に解釈しております。
主浴槽は42℃くらいのお湯が静かに湛えられており、湯口からお湯が勢い良く吐出されているものの、オーバーフローなどは見られず、槽内にて吸引されています。浴槽の底はまるで瀝青のような光沢のある美しい石材が敷かれていました。
その隣にあるジェットバス槽やジャグジー槽は、主浴槽よりちょっと高くなっており、41~2℃という適温のお湯が張られ、人が入ればお湯は溢れ出ますが、通常時は縁すれすれの嵩をキープしていました。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が計14基(内側に6基、外側に8基)並んでおり、その他に立って使うシャワーブースが2ヶ所用意されています。このシャワーは一般的な斜め上からの吐出の他、中程や頭上などあらゆる方向から浴びることができる、機能性に富んだタイプです。
さて、肝心のお湯についてですが、無色透明無味無臭で、加水・循環・消毒が行われており、浴感も掴みどころがなく、何と表現すべきか迷ってしまうごくごく普通の真湯のようなものなのですが、打たせ湯のお湯に限っては鮮度感があり、サラサラとした心地よさが肌に伝わってきました。その浴感とどのように影響しているのか断定できませんが、この温泉で特徴的なのはフッ素イオンが10.1mg含まれていることです。他の温泉と比較して飛び抜けて多いわけではありませんが、どちらかと言えば多い部類に含まれるかと思われます。この小豆温泉のみならず、帝釈山脈の周辺に湧出する温泉はフッ素イオンが比較的多い傾向にあり、手元の資料から拾ってみますと、例えば檜枝岐温泉「駒の湯」などで用いられている檜枝岐4号泉は11.5mgですし、木賊温泉の「広瀬の湯」は8.4mg、同じく木賊の井筒屋は7.9mg、そして帝釈山脈の向こう側にある栃木県湯西川の集中管理源泉は10.2mg, 同じく湯西川の「民宿やま久」で使われている「高手観音の湯」源泉は20.2mg、そして湯西川下地区源泉に至っては22.1mgというかなりの数値が記録されています。栃木県側と比べると小豆温泉のフッ素イオンは半分ですが、温泉成分に敏感な方でしたら、その特徴にお気づきになるかもしれません。
冗長な屁理屈で何とか無理矢理お湯の特徴を拾ってみましたが、かなり繊細なお湯を加水循環させてしまっているためか、正直なところ、残念ながら浴感的には心惹かれるポイントが見出せませんでした。しかしながら広い浴室やデザインコンセプトから受ける開放感や寛ぎは出色であり、浴室のみならず食堂など館内各施設も使い勝手が良いので、温泉マニア的な観点はともかく、綺麗で広くて多様な浴槽があるお風呂を求める一般的な観光客のニーズを満たしており、この日の館内が多くのお客さんで賑わっていたことは、その確固たる証左であります。また今回私は下山後の汗を流すために利用したわけですが、全般にわたって使い勝手が良いため、ストレスなく身支度を整えることができ、身も心もサッパリできましたので、登山後の利用にも良いかと思います。
小豆温泉窓明の湯貯湯槽(2源泉混合)
(大桃小豆温泉1号湯・大桃小豆温泉3号湯)
単純温泉 50.5℃ pH8.3 動力揚湯 溶存物質0.443g/kg 成分総計0.443g/kg
Na+:18.7mg(84.87mval%), Ca++:13.0mg(10.69mval%),
F-:10.1mg(8.65mval%), Cl-:145.7mg(67.06mval%), SO4--:16.0mg(5.38mval%), HCO3-:63.1mg(16.80mval%),
H2SiO3:61.7mg,
温度が高いため沢水(専用水道水)で加水
衛生管理のため循環ろ過装置を使用
衛生管理のためジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを使用
福島県南会津郡南会津町大桃平沢山1041-3
0241-76-3112
2021年7月に再オープンしました。営業時間や料金などは公式サイトをご覧ください。
ロッカー(有料)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★