ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「さすらいのスターウルフ」 エドモンド・ハミルトン

2008-03-27 13:37:36 | 
人間に寿命がある以上、小説にも未完の作品が生じてしまうのは致し方ない。わかっちゃいるが、愛読者としては無念の想いは拭いきれない。

中学生の頃、SF小説に夢中だった私にとって、スペースオペラの大家であるハミルトンは大好きな作家であった。もっとも、その代表作であるキャプテン・フューチャー・シリーズは、さすがにこの年齢になると素直に楽しめない。なにより、無邪気にアメリカの正義を信じられなくなったことが原因だ。でも、短編はアイディア豊富で面白いぞ。

そんなハミルトンの遺作になってしまったのが、表題の作品。「スターキング」を始めとして、素直な正義感を主人公にあてこむことが多かったハミルトンとしては、かなり異質な主人公が印象に深い。

なにせ、略奪を生業とする宇宙海賊をやむを得ない事情で抜け出た若者が主人公だ。従来の作品とは異なる主人公の活躍ぶりが、実に興味深く、続編を楽しみにしていた。しかも、悪人が改心して正義に目覚めるなら陳腐だが、この主人公にその気配は見られない。だからこそ、面白かった。もともとストーリーテラーとしては優れたハミルトンだが、このような主人公を活躍させた作品は他にはない。

ところが三作目の「望郷のスターウルフ」」が遺作となってしまった。高齢であっただけに、致し方ないのだろうが、実に残念な結果であった。晩年になって新境地を拓いたハミルトン老にとっても、さぞや無念であったと想われる。

たしか日本では、翻訳家の野田氏らの尽力もあって漫画化されたり、アニメ化されたこともあったようだが、私は一切観なかった。ハミルトンのイメージを大切にしたかったからだ。

未完で終わったことを無念に想う気持ちに変わりはないが、さりとてハミルトンではない続きは知りたくない。割り切れない複雑な心境は、あまり多く経験したくないものだが、それも人生なのだろう。
コメント (7)
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