ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

蜘蛛の糸 芥川龍之介

2017-08-31 12:12:00 | 

お釈迦様って案外と冷酷なのかもしれない。

生前盗賊として悪事を重ねたが故に、地獄に堕ちて苦悶するカンダタを雲上から見つけたお釈迦様。カンダタが生前、蜘蛛を助けたことを思い出して、地獄で苦しむカンダタの頭上に蜘蛛の糸を垂らして、地獄からの脱出を誘ってみる。

蜘蛛の糸に気が付いて、よじ登り始めたカンダタであるが、同じ地獄の罪びとたちが彼に続いて登ってくる様に「蜘蛛の糸が切れてしまう」と恐れて、他の罪びとたちを落とそうとする。

すると、蜘蛛の糸はカンダタの頭上で切れ、再び地獄に戻される。その光景をみたお釈迦様はため息ついて、その場を立ち去る。そんな寓話であった。

当時、小学生であった私の夏休みの課題図書の一つであった。私は当時、既に読書が大好きな子供ではあったが、自分から読みたい本を読むのは好きでも、読まされるのは大嫌いであった。

だから、夏休みの終わりギリギリまで、課題図書は読まずにいた。なので、学校が始まる直前に大慌てで読み、感想分をしたためる羽目に陥った。かなり適当な感想文であったと思う。

だが、この本自体は、かなり記憶に残った。だからこそ、再読したいと思っていた。そこで夏休みに図書館に寄って、読んでみた。正直、お釈迦様もキツイこと、やるなぁと思いましたよ。

そりゃカンダタは悪い。悪いことは間違いないけど、二度も地獄に落さなくてもイイんじゃないか?お釈迦様、この結末を分かっていて、なおかつ蜘蛛の糸を垂らした気がしてならない。

もちろん、悪いことはしてはいけないとの目的の子供向け寓話なのだから、これでイイのだと言えなくもない。でも、二度も地獄堕ちを味わされたカンダタの失意を思うと、ちょいと厳し過ぎると思ってしまうのですよね。

子供の頃の夏休みの宿題で、一番嫌いだったのが読書感想文。これを書くために読まされた本は、嫌々読んだせいか、適当に読んだものが多い。でも、今回再読してみて感じたのですが、やはり良書が多い。芥川龍之介は文章、上手いです。

大人となり、それなりに読解力も上がったと思うので、時たま昔読んだ課題図書とかいう奴を再読してみましょうかね。

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ワンダーウーマン

2017-08-29 12:06:00 | 映画

今年観たアメコミの実写化映画では、一番まともかもしれない。

でも、際どかった。スパイダーマンを始めとして、最近公開されたアメコミ実写化映画について、私が辛口にならざるを得ないのは、アヴェンジャーズのような花見せ興業が悪い意味で影響を与えているからだ。

はっきり言うが、アヴェンジャーズ映画は一人一人のヒーローたちが薄口になってしまう弊害があり、それが最大の弱点となっている。ヒーローは孤独であっても良いし、無理に仲間を作る必要はないとさえ思う。

だから、けっこう心配していた。マーベルコミックのアベンジャーズに対抗して、DC社でもバットマンを中心にジャスティスリーグの看板が建てられたからだ。看板ヒーローの一人、スーパーマンは一応休憩に入ったようだが、バットマンがやる気満々。

もしかしたら、この映画でもバットマンたちジャスティスリーグのヒーローたちが潜り込んでくるのではないか。そう思っていたのだが、ブルース・ウェインは思いの外、控えめで慎重なようだ。

おかげで、この映画ではワンダーウーマンの活躍に集中できた。まぁ、相手が若干しょぼかったのも確かだが、それでも余計なヒーローたちの出しゃばりがない分、私は楽しめた。

日本では、あまり人気のないワンダーウーマンですけど、アヴェンジャーズに飽きてきた方には丁度いいのではないかと思います。

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中東の暗雲

2017-08-28 12:53:00 | 社会・政治・一般

あまり取り上げられていないけど、私としては要注意だと思っている。それがサウジアラビアなど中東4か国によるカタールへの断交だ。

中東というか、原油産出国の中では最大の埋蔵量を誇るサウジアラビアだが、その政治的な地位はあまり高くはない。イスラムの聖地メッカを管理しているから、尊重をされてはいるが、アラブ社会のリーダー的存在ではない。

そもそもサウジアラビアという民族は存在しない。サウド家を中心とした多数の部族連合国家である。原油を元手に成り上がった金持ち、それがサウジアラビアである。

そもそも中東の地を近代まで支配していたのは、オスマン朝トルコであり、対抗馬としてサファビー朝ペルシャ(イラン)である。異民族による支配を受けていたのが中東の特徴である。だが、敢えてアラブ社会のリーダーといえば、エジプトであろう。

OPECという組織の中にあれば、サウジにもリーダーの資格はあった。しかし、非OPEC諸国の台頭でサウジのリーダーとしての地位は低下していた。おまけに石油よりも天然ガスで急速に成長したカタールという隣国も出てきた。

サウジアラビアの支配者たちは、相当な焦りがあったのではないかと思う。成金意識の強かったファイサル元国王の世代と異なり、今の支配者たちは石油危機以降の生まれであり、生まれながらにして大富豪であり、支配者であった。

その権勢の根源が石油にあることは理解していたが、肥大した優越感を優先していたからこそ、サウジは決して近代国家となり得ず、イスラム教ワッハーブ派というスンニ派の異端の少数教義に支配されるサウド王朝であり続けた。

石油とアメリカの軍事力に支えられたサウジという現実を素直に受け入れていた旧世代のサウジ王家とは異なり、現在のサウジ王家は生まれながらにして富と権力を握った若き王族たちに率いられている。

カタールもまた同様なのだが、だからこそサウジの若き王族たちはカタールを許せない。原油の枯渇が現実の脅威となっている今日、サウジもまた新たな国家像を模索している。今年のサウジ王家の来日は、その一環である。脱石油による国家運営は至急の命題である。

小国カタールと異なり、部族連合であるサウジには統一国家意識は希薄である。だからこそ、ワッハーブ派という伝統的イスラム社会でも異端の匂いのする教義にしがみ付かざるを得ない。カタールが許容しているイスラム原理主義なんぞ、断じて認める訳にはいかないのだ。

この危機感あってこそのカタール断交であろう。

アメリカも今回のカタール断交への対処には頭を抱えている。打つ手が乏しく、サウジをコントロール出来ていない。カタールに対しても同様であるが、幸か不幸かトランプ政権は中東への関心が薄く、強く関与する気もないようだ。

拳の下ろしどころを失したサウジに対し、ロシアが介入を試みているが、正直難しいだろう。私はそう遠からぬ将来、サウジは西側社会から離反するのではないかと思っている。

原油が枯渇しても、まだ天然ガスなどがあるはずだが、資源大国としての立場は大きく揺らぐ。アメリカも無理してサウジを支えようとはしない可能性もある。本来、西側の民主主義を基礎とした近代国家とは、まったく異質の国であるサウジは、その時本性をむき出しにするように思う。

サウド家中心の部族連合国家であるサウジアラビアが西側からの自立を考えるならば、どうしても確固たる軍事力が必要となる。その肝は間違いなく核兵器であろう。

コリア半島の貧乏独裁国家とは異なり、膨大な金融資産を持つ(個人で・・・だが)サウジアラビアは、その有り余るドルを使って容易に核兵器を輸入するであろう。

その時、中東において北朝鮮を遥かに上回る危険な独裁国家(これは今もだが)が誕生することになる。既にイラン、イスラエルなどの周辺国家が核兵器を保持していると思われる以上、この流れは必然だと思う。

果たしてアメリカをはじめ西側国家は、この異端の独裁国家をどう遇するのか?

中東の地が、再び戦乱を迎える日はそう遠くないように思えてなりません。

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事実を直視せよ

2017-08-25 12:16:00 | 社会・政治・一般

毎年のことではあるが、8月になると靖国参拝だの、核兵器廃絶と喧しい。

喧しいのはセミの鳴き声だけで十分だと思っているので、ニュースなどは流し読みで、ほとんど無視している。この時期に読む価値のあるニュースなんて、稀だとさえ思っているほどだ。

核兵器廃絶を訴える方々は、毎年同じように悲憤を込めて熱心に奮闘されている。善意に酔い痴れて、周囲が見えないのだろう。

現時点で、核兵器ほど防衛に有効な兵器はない。これが現代社会の常識である。孤立しがちな国家ほど、核兵器を欲するのは、それが自国の防衛に最も役立つからに他ならない。

核兵器は非人道的だと言う人は多いが、私に言わせれば全ての兵器は非人道的である。強力な武器ほど非人道的であるのが現実であり、それゆえに防衛効果が見込まれる。

平和を願うことは、人として自然であり、当然のことである。だが、気が付いているのだろうか。平和を願うなら、平和を守るための武器が必要であることに。

広島、長崎以来、核兵器は一貫して防衛のために用いられてきた。核兵器を持つ国へ、武力行使が行われた例はないこと(イスラエルは微妙だが)は確かな現実である。

平和を大切に思う、平和が存続することを本気で願うならば、核兵器の保有は選択肢の一つである。

ところが我が国では、平和を願う人と、核兵器廃絶を訴える人とが重複している矛盾がある。もちろん核兵器以外の、つまり通常兵器での防衛に重点を置くことも選択肢ではある。だが、日本では武力なしで平和を守ろうとする夢物語を、大の大人が平気で口にする無邪気な幼稚さが横行している。

私は話し合いでもめ事を解決することを否定している訳ではない。しかし、話し合いだけで問題が解決できる訳ではない現実も知っている。平和を求めるならば、平和の為に戦う覚悟と準備が必要である。それは人類の歴史が証明している。

別に戦う覚悟と準備があるからといって、必ず戦う必要はない。むしろ、戦うぞ、戦うぞと戦う姿勢を見せつつ、話し合いの解決を模索し、相互に妥協し合って問題を解決していくことこそ、最も平和的な問題解決策であったと思う。

逆に、戦う姿勢をみせずに、話し合いだけで問題解決を図ろうとする甘い態度では、相手に付け込まれるだけである。このことは、湾岸戦争でフセイン大統領に直談判を申し込んだ旧・社会党の土井党首が実証している。

日本のマスコミは真綿でくるんだような生易しい報道で誤魔化していたが、あの時、平和を実現すると脳内お花畑で踊り狂っていた社会党の政治家さんたちは、世界からの嘲笑という冷たい現実を味わったはずだ。

口先だけで平和は実現しない。

核兵器=戦争抑止力であり、平和=互いの武力を浮黷トの均衡状態である。この現実を直視しない政治家(国民もだね)に、平和を実現する力はないと私は断言します。

なお、日本ですが、日米安保ある限り、自前の核兵器は不要です。というか、アメリカの了承なくして、核兵器は持つべきではない。日本が本気で核兵器を持たねばならぬ時は、アメリカの核の傘から外れた時でしょう。但し、アメリカの仮想敵国扱いされることを避ける必要はありますから、非常に慎重に運ぶ必要があると思います。まぁ、そんな日が来ないことを願います。

もっとも、その前に、国内において現実的に平和を守る意思の確認を図る必要があると思いますけどね。武力=戦争と考える妄想平和主義者が多いですから、この国は。

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スパイダーマン ホームカミング

2017-08-24 12:09:00 | 映画

多分、今までで一番幼いスパイダーマンだと思う。

これは意図されたものなのは分かる。アベンジャーズの仲間入りを果たした「シビル・ウォー」を受けての作品なのだが、アイアン・マンことトニー・スタークはスパイダーマンを高くは評価していなかった。

むしろ、まだ若すぎると、お荷物扱いしていた。それに反発したスパイダーマンは・・・・

そんな前提のシナリオなので、幼く設定されてしまったのだろう。それは分かるが、スパイダーマンが本来持っていた正義の味方への希求が薄れてしまった。育ての親を犯罪により失ったことが、スパイダーマンの出発点であり基盤でもある。

その部分が省略され、希薄化されてしまったことで、スパイダーマン本来の孤独感と犯罪への憤りが感じられない。今回のヒロインはなかなかに魅力的なのだが、そのせいでMJが添え物扱いになっている。

正直言えば、これまで私が観てきたスパイダーマンの映画では、一番低い評価とならざるを得ない。原因は分かっている。アベンジャーズ入りである。そのせいで、スパイダーマンが持つ魅力が薄れてしまった。

なにでもかんでも、アベンジャーズ入りさせるのは勘弁して欲しいです。

コメント (2)
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