ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

キャッチ=22 ジョーセフ・ヘラー

2018-10-31 12:04:00 | 

十代の頃、私はけっこう映画にはまっていた。

当時住んでいた三軒茶屋という街には、安さが売りの映画館があったので、しばしば通っていた。そのなかで、理解しがたいというか、えらく中途半端な印象ながら妙に記憶に残った映画に「キャッチ22」があった。

戦争をネタにしたコメディ映画なのかと思ったが、それにしては笑いが乾き過ぎ。反戦映画かと思いきや、戦争そのものを否定しているようには思えなかった。結局最後まで理解できなかった。

その映画の原作が表題の作品である。

まず、最初に言っておく。いや、叫んでおく。

読みにくい!

時系列がバラバラなせいもあるが、おそらくは作者が意図的に混乱を起こすような配置になっている。上下二巻で1000ページを超す大作なのだから、前半だけで、苛立たしいほどに困惑する。

下巻の終盤に至り、ようやく主人公の置かれた立場の悲惨さと、それを笑い飛ばすことでしか心のバランスを保てなかった苦しみが分かってくる。ここに至り、この作品が20世紀のアメリカ文学における金字塔として賞される価値があるのだと理解できる。

ここで白状しよう。私がこの作品を読むのにかかった時間は半年を超える。途中で嫌気が差して、読むのを中断した回数は4回である。よくぞ最後まで読めたものだと自分を褒めてやりたい気分である。

そのくらい、読みにくい本であるのだから、映画化された作品が、十代の小僧っ子に理解できなくて当然なのだろう。この本、かなりの本読みでないと、最後まで読むのは無理だと思う。そのくらい、読みにくい作品なのだ。

何故にこれほど読みにくいのかといえば、やはりこれは作者の意図的な時系列の混乱が一因ではないかと思う。戦争がもたらす恐浮ゥらくる混乱と苦悩により狂気を彷徨う主人公。その苦悩と狂気を読者にも追体験させようとの思いがあるように思えてならなかった。

正直、やり過ぎだと思う。でも、この作品が傑作だとされたのも理解は出来る。時間が十分にある方なら、読んでみる価値はあると思います。

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ハイテク兵器の陥穽

2018-10-30 12:04:00 | 社会・政治・一般

ハイテク兵器はお金がかかり過ぎる。

その典型例かもしれないのが、アメリカ海軍が自信満々で竣工させたズムウォルト級駆逐艦だ。駆逐艦といいつつ排水量1万6千トンだから、軽巡洋艦なみである。

その姿は、レーダーに探知されにくいスティルス構造であるが、最大の目玉は主砲155mmAGS(先進ガンシステム)である。一分間に20発を連射できるという驚異的な艦載砲であり、現時点ではこれ以上の艦載砲は存在しないと云われている。

ところが、この最新艦は3隻が作られた後、現在は製作が止まっている。原因は主砲の砲弾の値段が高すぎたことだった。ただでさえ、連続の高速発射が可能な主砲であるから、大量の砲弾が必要となる。その砲弾の値段が高すぎて、アメリカ議会からストップがかかった。

おそらくだが、ズムウォルト級駆逐艦が大量に建造され、AGS砲が装備されていれば、大量生産によるコストダウンが可能だったのだろう。しかし、その負担があまりに大き過ぎて、議会から予算が認められなかった。

これは、この十年間、アメリカ軍内部で何度となく起こっている。空軍ではF22ラプター戦闘機の生産が途中で打ち切られている。あまりにハイテクな兵器は金がかかり過ぎる。

そこで現在、アメリカ軍は、ハイテク兵器の見直しに入っている。一つの方向性は無人兵器の登用である。人的損害を減らすことの出来る無人兵器は、今後の軍隊の主力となり得る可能性を秘めている。

もう一つの方向性は、安価で汎用性の高い、つまり大量生産が確実な兵器に換装することだ。現在、世界各国で採用予定のF35は、資金を海外から調達するばかりでなく、空軍、海軍、海兵隊にも使用可能なように汎用性を持たせている。これにより、大量生産によるコストダウンを実現し、同時に軍事力におけるアメリカのプレゼンス(存在感)を強くアピールできる。

何度か書いているが、日本もこのアメリカの新戦略に組み込まれている。日本の高度な工業力、豊富な資金力は、既にアメリカ軍のプランに織り込み済みである。実際、あまりに高額と云われてたF35は、今後次第に値下がりすることが確実である。(ソフトウェアのヴァージョンアップは別腹だけどさ・・・)

既にF15用のエンジンは、今後日本で製作され、アメリカ軍を経由して世界に供給されることが決まっている。他にもいろいろと、日本製品が軍事用品として世界に輸出されている。もちろん、アメリカの承認を得てのものである。日本がアメリカの軍事的従属下にあることが良く分かる。

日本の平和絶対主義者のお方々は、現行の憲法の下でも、既に日本は軍事大国の道を着実に辿っていることを、どのように認識しているのか。平和憲法を口にしつつ、世界中に兵器をばら撒いているのが日本であることを、どう考えているのだろうか。

日本は今や大規模に軍事支援を行っている国である。この現実を無視しての憲法改正論議なんて、ヘソが茶を沸かす。いい加減、事なかれ平和主義から脱却して、冷徹に現実を見据えての論議をして欲しいものだ。

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夏目友人帳 緑川ゆき

2018-10-29 16:27:00 | 

にゃんこ先生といえば、いなかっぺ大将だ。

そう思っていると、若者から「えっ!?」て顔をされる。今どきの若者にとって、にゃんこ先生といえば表題の漫画「夏目友人帳」の妖怪・斑(まだら)のことである。

本来は巨大な白い狼のような恐ろしげな妖怪なのだが、長い間招き猫の像に封印されていたので、少し頭でっかちの猫の姿をしている。元に戻ることも出来るのだが、ある約束のため主人公の護衛役を買って出ているため、傍に居やすいように猫の姿でいる。

元々は少女漫画であったのだが、恋愛ものではなく、伝奇漫画であったせいか、割と男性からの評価の高い作品でもある。私はこれを漫画ではなく、アニメのCS放送で観たのだが、当初は少女漫画であることにまったく気が付かなかった。

いわゆる伝奇ものであり、男女を問わず楽しめると思う。それにしても、妖怪とか霊を身近なものとし、時には敵対的に、場合によっては身近な親しきものとして捉えるのは、日本のような多神教の世界でないと無理だと思う。

現在、世界の宗教はキリスト教とイスラム教という一神教が大半を占めており、多神教は東南アジアと南米の奥地に細々と残っているだけだ。シナでは道教の影響が強く、儒教はいささか微妙。でもインドのヒンドゥー教もまた多神教であるが、やはり世界的には少数派である。

別に一神教を蔑む気持ちはないけど、神様は沢山いたほうが良いように思う。種の多様性ではないが、神様も妖怪も霊も、多種多様であったほうが世界にゆとりが生まれるように思えてならない。

これだけ複雑な世の中である。一つで染め上げるよりも、いろんな色があるほうが楽しいと思うなァ。

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子供の親権

2018-10-26 11:56:00 | 社会・政治・一般

もう忘れ去られようとしているが、私は忘れていない。

今年、東京目黒区で起きた船戸結愛ちゃん(当時5歳)の虐待死事件は、本当にヒドイ事件であった。実は事件の起きたアパートは、私が子供の頃に住んでいた三軒茶屋から自転車で10分たらず。

近くの駒沢オリンピック公園には、よく遊びにいっていたことがあり、また近辺には当時の友人たちがちらほら住んでいるので、今でもいろいろと情報は入る。

香川の児童相談所と、東京の児童相談所との連絡の不備。警察と児童相談所との連携の拙さなど、改善しなくてはいけないことは数多ある。これは国会と厚生労働省が協力し合えば出来ることである。是非とも進めて欲しい。

ただ、児童相談所については、もう少しつっこんで改革が必要だと思う。いろいろと聞いてみると、人手不足は確かなのだが、どちらかといえば人材不足の印象が強い。

行政の一部門であるからして、他部署から配置換えで赴任してくる職員が多い。もちろん全く畑違いの分野だけに、事前に児童福祉司という資格をとってくるのだが、ペーパー知識だけで即戦力には程遠い。

そして現場に行って遭遇するのは、とんでもなく非常識で攻撃的な親たちだ。パチンコに行くために子供を放置する親に、真っ当な話し合いなど通じる訳がない。まして子供を放置して不倫に走る母親や、日ごろのストレスのはけ口として子供を虐待する父親である。そんな異常者を相手にするのが児童相談所である。

公務員試験に合格し、役所に勤める真面目な人たちの常識が通じる相手ではない。それでも現場で目にした悲惨な子供たちの姿に、心を動かされて真剣に駆け回る職員も少なくない。

だが担当する業務は異常に多く、人手は足りない。各役所間の連携も未熟、未整備で善意は空回りするばかり。費やした努力が実を結ばぬ徒労感から、燃え尽きてしまう真面目過ぎる職員も出る始末。鬱病などを発する職員も珍しくない。

オフレコでと云われたが、もし自分が児童相談所に異動が決まったら、忙しいフリをして何もしないのが一番ですとの言は、多分本音だと思う。不謹慎だと憤るのは勝手だが、ならば解決策はありますか?

それほど難しい問題でもある。難しくしている原因の一つに、親権の問題がある。今回の結愛ちゃんのケースもそうなのだが、子供を持つ夫婦が離婚した場合、よほど妻側に問題がない限り、子供の親権は妻へいく。

私も父母が離別しての母子家庭で育っているから、原則的にはそれでイイと思っている。仕事大好きなあの父に子育てが出来るとは思えない。でも、妻側に多少の問題があっても、またどれほど夫側が親権を望んでも、現状では滅多に認められない。

私は認められた例を知っているが、それは新聞沙汰になるほどの事件を起こしたアホな妻であったからで、通常は調停でも、家庭裁判所でも子供の親権は母親しか認めないという原理主義がまかり通っているのが実情だ。

もちろん父子家庭がベストな選択とはいわない。実際、相模原において「パパ、助けて」と病気で助けを求める子供を置き去って、女遊びに走った父親もいる。父親が後ろめたく帰宅したら、既に子供は衰弱死していた悲惨な事件であった。

一般的には、女性のほうが親としての責任感が強く、子供を任せるに足りると判断される。私もそう思うが、それを決めつける離婚調停員、家裁の書記官、裁判官が多過ぎる。もう少し、個別のケースについて、深く調べてから親権を決めるべきだと思う。

しかし、現実には女性に親権を与えて済ますケースが多い。個人差は相当にあるとは思うが、私の知るある母親は、親権に固執したが、それは子供を育てたいからではなかった。養育費が欲しかったからこそ、親権を欲しがった。そしてその養育費は母親の遊行費に消え、パチンコに夢中になっている間に、駐車場の車の中で子供は熱中症で亡くなってしまった。

子供の遺体にすがり付いて泣いていた父親は、調停で「親権は母親でなくてはならない」と力説していた調停員をこの手で殺してやりたいと今も怒っている。でも現在も、この調停委員は離婚案件に関わっていると聞いている。

私は基本的には母親へ親権がいくことに賛成だ。それでも、本当に母親で大丈夫かの調査は慎重にあるべきだと信じている。少なくても、親権=母親と決めつけることは良くないと思う。

またシングルマザーは一部の例外があるものの、大概が経済的には困窮することが多い。それどころか地域で孤立しているケースも多い。LGBT問題で騒ぎになった杉田議員の言うように、単身親子への公的な補助は、もっと詳細に突き詰めるべきだと思う。それをマスコミは安倍潰しのネタにして済ませている。

我が家とて、離婚後は決して余裕はなかった。ただ、母の仕事と生活が安定するまで祖父母の家に厄介になれたし、親族からの支援もあったからこそ、母はシングルマザーとして頑張れたと思う。

でも、現代社会では孤立している母子家庭は多い。その結果、育児に耐えきれなくなった親が、児童虐待に走るケースは非常に多い。このように、児童虐待の問題は、児童相談所に任せれば良いといった単純なものではない。

事件直後はずいぶんと話題になったが、今でも追い詰められている親、虐待されている子供は少なくない。

現在、安倍・自公政権は長期安泰であるが、この児童虐待問題、待機児童問題など、あまり国政が熱心でない課題は少なくない。森友、加計問題なんぞ追求して時間を浪費するくらいなら、このような隠れた社会問題を取り上げたほうが、よっぽどマシだと思うけど、マスコミも野党もダメですねぇ。

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僕のヒーローアカデミア 二人の英雄

2018-10-25 11:39:00 | 映画

長年、漫画を読み続けてきたので、これは売れる、これはダメだとの予測はかなり当たる。

でも、外れることもけっこうある。その代表が表題の作品だ。

数年前に、週刊少年ジャンプ誌で連載が始まったのだが、当初から売れ線を狙った感があって、少し反感が湧いたほどであった。物語の大筋は、なんの才能(個性)もないが、それでもヒーローに憧れる少年が、伝説のヒーローから能力の伝授を受けて夢を実現していくという、まさに鉄板の売れ線シナリオである。

ただ、絵柄が子供向け過ぎて、大人の私には抵抗感があった。なので、私はいつも流し読み程度で、決して熱心な読者ではない。おそらくだけど、あまり大人のファンは多くないと思う。

逆に云えば、子供ウケする絵柄ではあったようで、小学生から中学生くらいまでの男子には、結構人気があったようだ。ある意味、ピンポイントでの売れ線であるから、そのことに文句はない。

ただ、大人にも人気の「ONE PIECE」や「NARUTO」のような世界的な人気作品にはならないと思っていた。だからこそ、この夏のアメリカでの映画版の大ヒットには驚いた。

アメリカにおけるアニメ映画は、ほぼディズニーやピクサーが独占的な存在である。世界中にファンが居る日本のアニメと云えども、映画館での興行成績はあまり芳しくない。

ところが、表題のアニメ映画「二人のヒーロー」は、わずか3週で興行収入5700万ドル(6億4千万円)の大ヒットであった。過去のポケモン映画などと比べても記録破りの大ヒットとなった。

正直ビックリである。多分、如何にも白人的容貌のオールマイト(主人公の師匠)もさることながら、平凡で強そうには見えない主人公のヒーローへの憧れと、そのための努力などがアメリカの子供たちにも受け入れられたのではないかと思う。

いやはや、本当に驚いた。どうも私は見損なっていたようだ。冬休みにでも漫画喫茶で一気読みしようかと思っています。

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