ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

不機嫌な中国 宋暁軍 他

2010-09-30 17:12:00 | 
驕り高ぶると本音が出る。

その意味で表題の本は実に興味深い。いや、興味深いというよりも、その凄まじい本音に怖気ずくほどだ。本書の中で赤裸々に語られる若き研究者たちの語る内容は、日本のマスメディアがまず報道を避けるようなことばかり。

シナ人といえば、外交上手の接待上手。嘘を嘘で塗り固め、笑顔で親しみをこめた握手を交わしたすぐ後で、背後から冷たい視線で刺すかの如き裏表の激しい人たちだ。

彼らの本音を聞きだすのは、本当に難しい。なにせ、言ってることと、やってることが違いすぎる。私自身の経験に照らしても、あれほど理解しづらい人たちはいなかった。

この本の中で語られることも、どこまでが本気で、どこが見栄(面子というべきか)なのか判断しかねるが、言葉の節々にある傲慢にして独善的な態度ゆえに本音に近いだろうと想像はつく。

なにせ、シナ人にとっての平和とは、世界がシナ人の思いとおりになる世界のことだ。軍事力あっての平和であり、経済も文化も軍事力の裏づけがなければ無価値だと断言する。

意味なきジャパニーズ・スマイルで平和外交なんぞを口にする、どこかの国の善良なる間抜け政治家にこそ知って欲しいものである。いや、彼らが知りたがらず、見たがらず、自分の脳裏に描く妄想だけを信じていることは分っている。

ならば分るはずだ。シナ人が外国人を信用せず、自分たちが世界一だとの妄想を信じて疑わず、自分たちの正義こそが世界の正義だと思い込める愚かさを。

事実を直視する勇気を持たず、自分だけが正しいと思い込んで、周囲の声に耳をかさない人たちは、世界中どこにでもいる。ただ、シナ人は数が多い。それゆえに無視できぬ存在なのだ。

シナ人以外の人々にとっては、不快でしかない内容の本なのだが、それでも日頃隠されている彼らの本音を知る意味で価値がある本だと思います。

なかでも21世紀は残り少ない資源(石油など)を実力で奪い合う時代であると述べていることは注目に値するでしょう。現在問題になっているアフリカ、南米、オーストラリアなどでの中国企業の進出と買収は、決して経済目的の平和的なものではなく、軍事的意思に基づくものであることは間違いないことを見事に裏付けている。

「話せば分る」なんて甘いことが通じる相手ではないのです。いかに北京政府が騒ごうと、日本としては今後も軍事力を十分保持することが必要だと良く分ります。そのためにも、アメリカとの関係は良好に保つべきでしょう。

断言しますが、日本列島がシナの支配下にならない限り、シナと日本が平和な関係に落ち着くことはないでしょう。別に驚くこともないと思います。シナに限らず、世界の歴史を振り返れば普通のことなんですよ。

時には笑顔で握手して、時には罵りあい、場合によっては喧嘩する。それが普通の人間です。国だって同じことでしょ。

なお、表題の本は、日本ではタイトルが「中国が世界を思いどおりに動かす日」と意訳されて出版されています。原題の「不機嫌な中国」のほうが適切だと思いますね。

この本は十年ほど前に話題になった「NOと言える中国」の続編といっていいものですが、注目すべきは日本に対する記述の少なさ。経済大国となったシナにとって、日本はもはや重要な敵ではなくなったようです。

だからこそ、侮りやすく扱いやすい相手として日本が使われるのでしょう。現在、尖閣諸島周辺で拿捕されたシナ人船長問題で揉めている件なんぞ、その典型ではないかな。

私の想像ですが、おそらく北京政府の狙いは、経済格差が拡大して不満を抱えたシナの大衆に対するパフォーマンスでしょう。幸い今の日本政府は媚びへつらいを友好だと思い込める間抜けな連中が政権与党なので、日本を屈服させて国内の不満をそらす絶好の機会と考えているのだろうと思います。

で、その思惑どおりに事態は進みました。今後、日本の領土内でシナ人が犯罪を犯した場合、シナ政府が騒げば無罪放免されるという特権をシナ人に与えたわけです。

では、シナ人の不満は満たされたのか?

いやいや、地上で最も欲望に貪欲なシナ人です。この先欲望を益々エスカレートさせるでしょう。尖閣諸島はシナのもの、沖縄だってシナのもの。太平洋の西側半分を支配下に置くためには、日本列島を支配下に置くことは必要不可欠なことはアメリカをみれば分ること。

民主党政権は、ある意味パンドラの箱を開いたといってもいい。平和と友好を求めてやったこと(シナ人犯罪者を無罪放免する)が、結果的にはシナの軍事的野望に灯を点したと、未来の歴史家は著述するかもしれませんね。

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ブラジルから来た少年 アラン・レヴィン

2010-09-29 12:37:00 | 
おそらく、もう生きてはいるまい。

死の医師と恐れられたナチス・ドイツのヨゼフ・メンゲレのことだ。アウシュビッツなどのユダヤ人強制収容所でおぞましい人体実験を繰り返し、敗戦のドサクサにまぎれて南米へと逃亡したナチス戦犯の一人だ。イスラエルの諜報機関をはじめとして、幾多の追っ手を免れて、南米のジャングルに潜んでいたとされている。

そのメンゲレがブラジルのサンパウロに現れた。日本料理店の奥の間で腕利きの元ナチス親衛隊員に渡された94人の暗殺リスト。意味が分らない大量殺人計画に戸惑いながらも、殺人者たちが世界に散らばっていく。

その情報を掴んだユダヤ戦犯の追及に生涯を捧げた老ユダヤ人は、理由不明の大量殺人計画に悩みながらも、徐々に真相に迫っていく。

ナチス・ドイツ復興の妄執に取り付かれたメンゲレと、彼を追う老ユダヤ人の虚虚実実の騙し合い。決して激しいアクション・シーンがあるわけでもないのだが、徐々にスピードアップしてくる緊迫感は頁をめくる手を止めさせない。

足の先さえ見えない濃い霧の中から、少しずつ見えてくるおぞましい真相には驚かざるを得ない。

ネタバレは避けたいので、これ以上書けないが、この作品が書かれた時代にはまだ未知の技術であったが、今では実現されつつある恐るべき秘密。

おそらく近い将来、実際に起りうる恐るべき未来。多分、神の領域に属することだと思う。それと知りつつ、妄執ゆえに突き進むメンゲレ博士。

多分、似たような精神をもった人は、けっこういるのではないかと思う。そのことに気がつくと、気持ち悪いほどにおぞましく感じたミステリーでしたね。

たしか映画化もされていると思いますが、正直観たいとは思いません。多分、再読もしないと思います。ミステリーとしては一級の面白さであることは認めますが、いささか気持ち悪い。

理屈ではなく、本能から拒否したくなるメンゲレ博士のどす黒い欲望。本当にありそうで嫌です。そんな訳で、あまりお薦め出来かねる傑作ですね。
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民法あれこれ その三

2010-09-28 12:25:00 | 経済・金融・税制
「これって、非課税ですよね!」

仕事柄、この手の科白に出くわすことは少なくない。とりわけ電話相談で多い。国税庁のコールセンターの相談員などをやっていると、頻繁に聞かされる科白でもある。税法は厳密に非課税項目を規定している。その規定に合致すれば非課税だ。

なかでも困るのが、保険金って奴だ。

実はこれが曲者だ。個人の場合保険事故を起しての保険金収入は非課税であることが多い。具体的に言えば「心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他一定のもの」は所得税法9条によると非課税だ。

さらに所得税法9条は「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」は非課税だとも書かれている。この辺りの規定を生読みすると、たしかに保険金は非課税だと思い込む心情は分らないでもない。

念のために言っておくが、これは個人の課税関係であり、会社(法人)は違う。ただ、まあ、常識に照らしても損害賠償的な性格が強い保険金を所得として課税することは適切ではない。

但し、事業者が受け取る収益保証的な保険は課税対象となる。また保険の内容によっては、医療費控除対象額から控除すべきものもあり、一概に非課税とは断言できない。要は中味なのだ。

もう一度確認するが、あくまでこれは個人の所得に関する規定だ。つまり所得税法の規定であり、これとは別に相続税法って奴があり、相続や贈与は相続税法で課税される。

ちなみに被相続人(亡くなった人)の相続人が受け取る保険金には、非課税の枠はあるが、その枠を超えた金額は当然に相続税が課税される。つまり原則として保険金は課税対象だ。

ところが、ここで厄介なのは民法上の扱いだ。民法は相続財産を、相続の発生時(つまり死亡時)にある財産だと規定している。そこで生命保険だが、これは被保険者(この場合は、被相続人)の死亡により契約の効力が発生し、死後に遺族から保険会社に請求される。つまり相続発生時には存在しない財産なのです。

民法を中途半端に勉強した人は、それゆえに生命保険金は相続財産ではない。だから相続税はかからないと主張します。これは正しくもあり、間違いでもある。

たしかに民法上の相続財産ではありません。実際、遺留分からも除かれている(異論あります)ので、私どもも相続争いが予想される場合の解決策の一つとして生命保険をお勧めすることがあるぐらいです。

ちなみに遺留分とは、法定相続分に満たない財産しかもらえなかった場合に、相続人が最低限の権利を主張する権利のことです。遺産争いの際に、しばしば「遺留分の減殺請求」として活用される法律行為です。そして、生命保険金は民法上の相続財産でないがゆえに、「遺留分」には含まれないことを活用した相続対策がしばしば行われているのです。

そんな訳で、相続の際に生命保険は非課税だと思い込む人はしばしば散見するのです。

もし、生命保険金に相続税がかからないとしたら、私なら全ての現預金を生命保険に投じます。現預金として持っていれば、その全額が課税されます。でも、生命保険として全額前払いしておけば、大半が相続税から逃れられることになるのです。あぁ嬉しい!

・・・残念ながら税務署は、そんなに甘くないです。

よくよく考えてみれば、たしかに被相続人の死亡時には生命保険金自体は存在しません。しかし、保険請求権はある。この権利は被相続人が稼いだ財産で賄われたものであり、やはり相続財産を構成するべきものです。

そこで税法は、生命保険金や死亡退職金を「みなし相続財産」であると規定しているのです。ただし、遺族の感情を配慮してか、法定相続人一人につき500万円の非課税枠を用意してはあります。

現在の民法が作られた頃も、生命保険などはありましたが、今日のように複雑なものではなかったはず。実務家として、「遺留分の減殺請求」逃れのために生命保険を活用することはありますが、正直迷うこともあります。いささか不公平に過ぎる気がするからです。

そのためか、近年最高裁判決(平成16年10/29)で生命保険を特別利益として、「遺留分の減殺請求」に含めるといった判決が出てしまいました。

法定相続分にせよ、遺留分にせよ、そろそろ見直したほうが良いのではないかと思う、今日この頃です。
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民法あれこれ その二

2010-09-27 17:15:00 | 経済・金融・税制
都会の相続と、田舎の相続は違う。

都会では土地の値段が高いが故に、相続問題は土地問題でもある。土地の評価額があまりに高すぎ、相続税が払えずに止む無く土地を売り払った相続人は少なくない。おかげで、都心の老舗の店舗は激減してしまった。

しかし、地方ではそれほど土地の値段は高くない。だが、地方には創業100年を超すような老舗企業が、今も元気に頑張っている。この会社の株式が相続で問題になる。

証券市場に上場されて市場価格が決まっている企業とは事情が違う。ほとんどの老舗企業は株式を公開していない非上場会社なのだ。

その株式の評価は、財産評価通達に基づいて算定される。しかし、税理士の私が言うのもナンだが、この評価額なんてフィクションに過ぎない。

赤字会社ならともかく、この不況下でも頑張る老舗企業の株価は現実離れして高い。かつて一株5円で設立された某企業が、現在一株100万円を超える高評価になっている場合も珍しくない。

そして、この株を数千、数万株持っている株主が死亡した場合、当然に相続財産として課税対象となる。上場株なら市場に売却して現金化でき、そのお金で相続税を納めることが出来る。

しかし、非上場株式は現金化が出来ない。そのため、相続税が払えず老舗企業の存続が危ぶまれる事態が起きる始末であった。さすがに政府が慌てて株式を発行会社が買い取る(自己株式の取得といいます)ことが商法の改正に織り込まれ、現行の会社法で整備され、とりあえず老舗企業は生き延びることが許された。

ところが、まだまだ問題は終わらない。かつては顔見知りの親族だけが株主であったが、数十年たつと顔も名前も知らない遠い親戚が株主として現われる。そして株主として役員にさせろとか、株を買い取れとか言い出し始める。またしても老舗企業の危機である。

企業経営者にとって最大の悩みは後継者問題であり、同族経営の老舗企業にとって見知らぬ株主の問題は無視できない。だから、なんとしても円滑に株式を後継者に譲りたい。しかし、株価が高すぎて安易に動かせない。

そこで通産省肝煎りで作られたのが事業承継税制だ。なぜに財務省ではなく、通産省なのか疑問に思う向きもあろうかと思うが、要するに役所の縄張り争いの結果だと思って欲しい。まあ、通産省が地方経済を心配し、地方を支える老舗名門企業の存続に配慮したのも事実ではある。

その目的は、老舗企業の存続のため後継者に対し生前の株式の贈与について、一定の制約の下で無税とし、安定した経営が出来るようにするといった措置が講じられている。

ところがだ・・・あまりに煩雑な制約が多すぎる。また不測の事態(親より子が先に死ぬ等)に対する配慮がないなど問題点が多く、私としては首をひねるばかり。

なかでも最大の問題は、この贈与税の納税猶予(条件を満たせば非課税)の正体が生前家督相続、すなわち江戸時代の隠居制度であることです。だから後継者に株を無税で譲りたい経営者は、まだ働けようと、働けまいと引退しなければなりません。まさに戦前の旧・民法752条が復活したといっていい。

私はこの隠居要件に納得ができず、未だこの制度をクライアントに奨める気にはなれません。もしかしたら、贈与税の納税猶予制度を使わせたくない財務省の陰謀ではないかと勘ぐっているぐらいです。

いったい何時から戦前の民法復活を求める声があったのだ?これだから現場を知らぬエリートは度し難いのです。
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民法あれこれ その一

2010-09-24 17:13:00 | 社会・政治・一般
おかしな、おかしな民法。

私の本分は、税法の専門家であることだ。もっとも実務の上では商法(会社法)と民法を知らないでいられないことが多い。ところが、この民法って奴には随分と悩むことが多い。

いや、民法自体はそれほど難しいものではない。はっきり言えば、高卒程度の学力でも読めば分る。

だが、分るからといって納得できる訳ではない。いろいろ思うところがあるので、またまた数回に分けて、あれこれ書き散らかしたいと思います。

ところで、民法とは本来、その国、社会における生活慣習から成立し明文化されたものだ。だから日頃、なにをするにしても、それが民法にのっとったものであるかどうか、なんて気に留めない。

つまり常識を書き取ったものが民法なのです。民法を知らなくても契約はできるし、貸した金は返ってくる。民法は日頃、意識されることない法律なのです。

しかし、時と場合によっては民法は我々の生活、人生に強い影響を与えるのです。これが常識?と疑問に思うことが少なくないのが民法。

たとえば、あるところに若くして夫に先立たれた女性がいました。彼女は女手一つで子供たちを育て上げました。子供たちは無事に育ち、社会に出て一人前の地位を得た頃には、女性も退職して悠々自適の毎日。

そんな彼女が恋をした。これまで散々再婚の話を断ってきたのに、突如子供たちの前で再婚を宣言したのです。子供たちは戸惑いつつも、大きな声で反対することも出来ず、あっという間の入籍でした。

その半年後に突如、女性は死去されました。

さて、そこから巻き起こったのが相続問題。現在の民法では、配偶者に対して二分の一の相続権を認めています。子供たちは憮然とした気持ちを抑えられません。長年母と共に暮らした家は、ほとんど見ず知らずの男性のものとなり、もらえるはずだった遺産は半分になってしまったのです。

一方、男性の方はわずか半年あまりの婚姻生活で、住まいと少なからぬ預貯金を手に入れました。仕事らしい仕事をもっていなかった男性にとっては、絶対に逃したくない遺産です。

民法は配偶者への二分の一の権利を保証しています。しかし、これは長年連れ添ったことに対するものであることは、立法主義に照らして明らかなのです。果たして、このような保証は常識にのっとったものだと言えるでしょうか。

敢えて言わせてもらえば、法定相続分って奴は正義でもなければ倫理でもない。現実を無視した理想を正当化しただけの代物です。

容易に想像がつくと思いますが、この相続はもめました。実は遺言が残されていたのですが、民法の法定相続分をたてに、遺言には従わぬ相続を主張する相続人たちが混乱に拍車をかけました。結局、裁判所と弁護士の仲介が入っての和解となりました。でも、誰一人満足のいく結論でなかったことも確かでした。

もし、この話が若い後妻を迎えた男性の死去と相続だったら、どうでしょうか?いささか印象は異なるかもしれません。ですが、民法が強制的に相続分を保証していることの歪みがあると感じるのは、決して私だけではないと思います。

自分が築き上げた財産が、自分の死後どうなるか。誰もが関心を持つ問題だと思いますが、日本では法定相続分により拘束がかかっているので、遺言でさえ十分役にたちません。

自分の死後、配偶者や子供たちに禍根を残すような相続を誰が望むのでしょうか。

この問題の下地になっているのは、我が国の民法が、本当に日本の社会の常識から成り立っているのか、どうかにあると思います。社会も、常識も時代により変化するのですが、民法は果たして、その変化に対応しているのか。もっといえば、立法府(国会)がその役割を十分果たしているのか、の問題でもあります。

私は相続に関しては、もう少し故人の意思が尊重されるべきだと思います。しかし、現行の民法はそれを許さない。絶対的な正解がないことは分っていますが、もう少し社会や家族の変化を考慮した法律になって欲しいものです。
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