ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

暗黒大陸中国の真実 ラルフ・タウンゼント

2009-05-29 12:37:00 | 
日本人は、宗教に対する理解が乏しいと思う。

よく自分は無宗教だと平然と言う。日本人同士なら分る感覚なので構わないが、外国人とりわけ一神教(キリスト教、イスラム教、ユダヤ教)信者相手の場合、無宗教と宣するのはまずい。

無政府主義者をアナーキストと呼び危険人物扱いするのは当然だが、無宗教を掲げる人間は、神を否定する者であり、キリスト教などの一神教の信者からすれば、きわめて危険な思想の持ち主だと理解されやすい。もっといえば、神を否定するものは、敵対者として規定される。蛮族扱いしてくれれば幸いだといってもいいぐらいだ。

科学と言う神を奉じる近代社会の下では、すべての宗教にたいして寛容であることが通例なので、無宗教も許される。ただ、宗教的感覚は根強いもので、無宗教のものへの蔑視感や敵対観は容易には拭えない。

アメリカという国を民主主義の国だと理解するのは構わない。しかし、宗教的自由を求めて新大陸に渡った入植者が築き上げた国でもあることを理解することは必需だとも思う。

より正確に言うなら、プロテスタント(ピューリタン)が自らの信じる宗派の自由を確立せんとして造られた国でもある。見方を変えれば、キリスト教原理主義の国としての顔を持つ国でもある。

ところが、日本の歴史教科書は、このアメリカにおけるキリスト教の役割を無視、あるいは軽視したものとなっている。これは非常に問題だと思う。宗教の軽視は、マルキシズムの強い影響下にあった歴史学者に固有なものだが、彼らが教科書を執筆しているから困る。

たとえば、アメリカの西部開拓史は、原住民討伐の歴史でもあり、侵略行為そのものでもある。しかしアメリカ人には罪悪感などない。むしろ崇高な使命感すら持っていた。その思想的バックボーンを「マニフェスト・ディスティニィ」という。直訳すれば明白なる運命だ。

意図するところは、遅れた野蛮人どもに文明の恩恵を与え、素晴らしきキリスト教社会の理想郷を教え広めることは、神に命じられた明らかなる使命であり、定められた運命でもある。神の意志に逆らうものを、正義の鉄拳をもって排除し、神の御心に叶う世界を作ることこそ、我々に与えられた崇高なる使命なのだ。

だからアメリカ人には原住民を残酷に排除したことに罪悪感など存在しない。ハワイを侵略したことも同様だ。カトリックの国であるメキシコ(スペイン)から領土を奪ったことを恥じ入る気持ちなどありえない。

太平洋を渡り、日本に文明をもたらし恩恵を与えてやったとの満足感はあっても、彼らの伝統的慣習などを踏みにじることに罪悪感などありはしない。

その日本が、天皇を神として抱き、与えてやった文明の利器をもって大きく発展し、あまつさえ我がアメリカの権益をそこなうとは何たる所業か。正義の鉄槌は、断固下されるべきである。

近代日本の開国と発展に大きく寄与したアメリカが、日本を敵国と定め、さまざまな圧迫を加えるようになった背景には、このようなキリスト教徒としての意識があったことは間違いない。

とりわけ日露戦争後、世界の五大国として覇を唱えた日本帝国は、アメリカ人の目には異教の神を抱く悪の帝国と捉えざるえなかった。だからこそ、それまでの親日的姿勢から反日的態度に豹変した。

このことは、1920年代のアメリカのメディアに顕著だが、それ以外にキリスト教会の働きも無視しえない。ラジオや教会での説教で、反日煽動がなされ、それが真珠湾奇襲で爆発することになる。

ところが何故か、日本の歴史教科書は政治、経済、軍事面だけしか捉えようとしない。そりゃ、シナ大陸におけるアメリカの権益を求めた経済的理由、海を挟んだ強大な軍事力をもつ相手への警戒感も、アメリカをして反日に追いやる重大な根拠であった。しかし、それだけではない。

アメリカの対日政策におけるキリスト教勢力の影響が、きわめて重要な要素となった事実が不当に押し隠されている。それはアメリカ側でも同様で、そのことをアメリカ国務省の外交官として指摘したのが表題の作品です。

著者であるタウンゼント外交官は、中国における宣教師たちが貧困と不平等に喘ぐ可愛そうなシナの人たちへの憐憫に囚われる一方、整然とした文明社会である日本へは憐憫の情がわかず、布教活動に積極的になれないことを指摘する。そしてシナでの布教活動がうまくいっていないにもかかわらず、シナでの活動に拘る様を批判する。

シナでの布教を目的に、シナの敵としての日本を批判してシナ人の歓心を買い、アメリカの対日政策に影響を与えたキリスト教勢力。タウンゼントはそのことを批判して、あげくに日本擁護の論陣を張ったものだから、真珠湾奇襲の後刑務所に収監された異端のアメリカ外交官でした。

なぜにアメリカが反日政策をとるに至ったか、それを宗教的側面から述べたこの本は一読の価値があると思うのです。機会がありましたら是非どうぞ。
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七都市物語シェアードワールズ 小川一水 他

2009-05-28 17:11:00 | 
地球の地軸である北極点と南極点をつなぐ軸線は、いつの時代も同じ地点にあったわけではない。

地磁気の変化を正確に計測できるようになったのは、20世紀にはいってからだ。理由は不明だが、たしかに軸線は移動していたことが、地磁気の変化から読み取れる。

なぜ変化するのか、いくつかの仮説もあるが、未だ定説とはなっていない。また移動があった場合の影響についての研究も、未だ途上であり、仮説を積み重ね検証しているのが今の現状だ。

では、地軸がいきなり赤道上に移動したらどうなるか?(8億年前には実際にあった!)

北極は温暖な海となり、南極は緑豊かな大陸へと変貌する。海流の流れは激変し、気候は大激変。大地の多くが海に沈み、砂漠は緑地と化す。多くの生物が絶滅する大カタストロフィが起った。

そんなアイディアを用いたのが、田中芳樹が20年ほど前に発表したSF小説「七都市物語」だった。当然に人類は大混乱に陥り、人口は大減少。生き残った人類を支配したのは、月面基地の人々だった。彼らはオリンポス・システムという衛星兵器を用いて地球を制圧した。そして残された技術を用いて、新たな人類の生息域として7つの都市を建築した。

しかし、謎のウィルスにより月面基地の人類は絶滅。ただ、オリンポス・システムはあと200年分のエネルギーを残したまま稼動しているため、地表から500メートル以上の空中は移動できない。

つまり実質、地上と海だけの世界で、七つの都市が互いに覇を競う世界となった。田中芳樹得意の個性的な人物たちが、人の愚かさと欲深さを鋭利な知性で切り裂き、実に面白い戦国絵巻を開帳していた。

SFファンの間では、けっこう人気となり続編が待ち望まれた作品でもあった。しかし、田中芳樹は多忙を極めた。未完の作品だけでも「創竜伝」「タイタニア」「アルスラーン戦記」・・・と五指では足らない。おまけに中国ものに手を染めたばかりか、薬師寺涼子で遊んでいる始末だ。

ついにしびれを切らしたファンの後押しもあり、編集者の悪戦苦闘と若手作家4人の協力を得て書かれたのが表題の作品。要するに丸投げである。

田中芳樹の設定した世界を活用して、異なる主人公を活躍させるならともかく、AAAやギルフォードらもしっかり登場する。若手作家が原作の雰囲気を壊さぬよう努力しているので、そこを腐すつもりはないが、やっぱり田中芳樹の手抜きの感は否めない。

資料地獄にはまっているのか、はたまた気力が落ちたのかは知らないが、あまり感心できません。作品の内容自体はそれほど悪くないのですが、どうも好意的に評価できない。

「アルスラーン」はそろそろ完結しそうだが、「灼熱の竜騎兵」や「地球儀世界」はどうした?「もう少し待つのじゃぞ」@リディア姫と聞かされて5年は経つ。私はバルアミーより気が短い。そろそろ怒るゾ!
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スケバン刑事 和田慎二

2009-05-27 21:31:00 | 
読むべきか、読まずに済ますか。

表題の漫画は、TVドラマ化されたほどの人気作だが、私は漫画でしか読んでいない。TVドラマの主役が斉藤由貴だと知って、ずっこけた。いくら可愛くとも似合わん。二代目の南野陽子のほうがまだイメージに合うが、アクション苦手そうだ。

元来あまりTVを観ない上に、TVドラマ自体全く観ない。漫画は好きだったが、アイドル・ドラマなんぞ観る気になれなかった。漫画が名作であっただけに、それを汚された気がして不快に思っていたぐらいだ。

ところがだ、私の知らないうちに、第二部が漫画で始まっていた。記憶喪失のサキだと?ではレミはどうした?

読みたい気もするが、第一部の出来が非常に良かったため、それを汚すような展開は嫌だ。いくら人気があったとはいえ、第二部開始とはどういったこったい!

私は当時、無節操に復活した宇宙戦艦ヤマト3に腹をたてていたので、この復活した麻宮サキの続きを読む気になれなかった。無事完結したらしいことは伝え聞いていたが、未だに読んでいない。

でも漫画喫茶などに行くと、ついつい目がいく。手をのばしてみたい誘惑に駆られるが、未だ耐えている。むしろ先に「少女鮫」を読むべきか。

ああ、悩ましい。第一部だけでも十分なのだから、第二部なんて止めて欲しかったよ。名作なのに、素直に褒める気になれないじゃないか。
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口先平和主義

2009-05-26 12:21:00 | 社会・政治・一般
背に腹は変えられないのか。

ソマリアの海賊対策のため、自衛隊の艦船が派遣された時、海上保安庁の船で十分だと執拗に反対したのが社民党の面々だ。疑惑の個人商店こと辻本清美もその一人である。

その辻本らが設立に深く関与したことで知られるNPO、ピースボートの主催する世界旅行の客船がソマリア沖を航行した時、護衛についた軍艦のなかに自衛隊が含まれていた。

ピースボートの広報担当者は「海上保安庁の船でないのが残念だが、参加者の生命を考えるとやむを得ないことだった」とコメントしていたのが滑稽でならない。

旅行を企画した主催者としては当然の判断だと思う。何しろこの世界旅行は、ピースボートの大事な資金源ですから。でも、盛んに自衛隊の艦船派遣に反対していたNPOであることを考えると、その言行不一致は失笑というより侮蔑を禁じえない。

あれだけ騒いでいたのだから、軍艦の護衛なんて不要だとつっぱねたのなら、相応に敬意を払ってやってもいい。ただし、海賊に捕まって身代金やらなんやらで、迷惑をかける羽目になった場合の責任は生じるとも思う。多分、そのほうがよっぽど迷惑だし、今回は大人の判断をしたのだろう。

だったら、今後は自衛隊の派遣に反対するなよと言いたくなる。いや、彼らが今後も反対することは分っている。彼らは元々責任ある言動をする人たちではない。ただ、その場かぎりの善人を気取っているだけだ。口先だけで平和を唱えていれば、それで自らを「イイ人」だと納得できる思慮なき愚者なだけだ。

先月も書きましたが、近代兵器で武装したソマリアの海賊に対峙するに、軽武装の警察では無理なのです。海賊業で生活するソマリアの民には、外国の警察に膝を屈する理由がありません。力づくで自らの生計をたてんと志す相手から身を守るには、やはり軍隊でないと無理なのです。

その軍隊に反対し、その軍隊に守ってもらっているピースボート。恥を知れといいたい。それともう一点。この茶番劇を報じていたの、もしかして産経新聞だけか?最近忙しいので、他のメディアにすべて目を通しているわけでもないので、確信はないけど、他では目にしてないぞ。どういうこったい!
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不機嫌な果実 林真理子

2009-05-25 07:04:00 | 
逢いたいけど、逢わずに立ち去ろう。

銀座三越の食品売り場を散策していた時のことだ。美味しそうな食材に目移りしながら、人ごみのなかを縫うように歩いていると、どこかで聞いたことのある声が耳に飛び込んできた。

忘れもしない、あの穏やかで深みのある温和な声だった。思い出が、どっと脳裏を駆け抜けた。

あの頃、私は彼女が読み上げるガイドブックの内容なんて、まるで頭に入らなかった。聞いているのといぶかる彼女に、全身全霊をもって聞いているよと答えたものだ。私はあの声が好きだった。

耳元で囁かれようものなら、それがどんなわがままでも叶えてやりたくなった。黒目がちの瞳も、こぶりな鼻も好きだったが、その小さな口から出る言葉の響きにほれこんだものだった。

短気な私をたしなめるのが、誰よりも上手な女性だった。私は喜んで彼女の手の平で踊ったものだ。わかっていも、私は騙されてやったものだ。それでも幸せだった。

ただ、学生と社会人の違いは如何ともしがたく、私が卒業するまえに結論は出てしまった。

あれから20数年、あの声は聞き間違えようがない。そっと振り向くと、二人の子供をつれた女性の後姿が覗けた。角を曲がっていくの注視していると、その横顔は間違いなく彼女のものだった。

視線に気付かれた気がして、思わず顔をそむけた。

ぐっと身体に力をこめて、強く息を吐いて、それからその場を反対方向に立ち去った。

間違いないけど、あれは見間違いだった。そうしよう、そういうことにしよう。私には不似合いなことって、たしかにあるのさ。表題の作品なんて、まさのその典型だと思う。無いものねだりとは言わないが、遠くから見るだけに留めたほうがいいことって、たしかにあるんだよね。

いけね、夕食の食材買うの忘れた。まっ、いいか。今夜は外食で済まそう。ちょっとぐらい飲んでもいいよね、こんな夜はさ。
コメント (2)
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