ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

USスティールの買収

2024-09-13 09:18:16 | 経済・金融・税制

選挙はどこの国でも厄介な問題を引き起こす。

新日鉄によるUSスチールの買収が暗礁に乗り上げている。実に馬鹿らしい限りである。反対しているのは、全米鉄鋼労働者組合であり、彼らの組織票による政治への影響力は無視できないと考える政治家は多い。

実際、バイデンはもとより今回の大統領選挙の候補者二人とも反対の声明を出している。鉄鋼業は国の産業の基本であり、アメリカの大衆の心に訴えるものがあるのだろう。しかし、そのUSスチールを荒廃させたのは、他ならぬアメリカの投資家たちである。

施設の老朽化を知りながら敢えて無視して配当に回す決議を支持したのは、アメリカの機関投資家たちである。その結果としてUSスチールは企業として立ち行かなくなり、救済の意味で新日鉄が買収に乗り出したのが実態だ。

もちろん新日鉄はボランティアで買収に乗り出した訳ではない。アメリカは現在鉄道事業を強力に推し進めており、特に貨物列車の大幅な増加によりトラック運送よりも効率的な物流網の構築を目指している。そのために必要なのが従来の1メートル当たり60キロの鉄道軌条ではなく、80キロの鉄道軌条である。

この80キロの鉄道軌条は日本の新日鉄とJFJEの二社しか製造できない。そして新日鉄はUSスチールの買収により、アメリカ国内に新たな生産拠点を設けて80キロの鉄道軌条を広める心算であった。貨物列車の増速と重量増加に対応するには、従来の60キロの鉄道軌条ではなく80キロが必要になる。

これはオバマ大統領時代に要請があり、優先的にアメリカへ輸出していたのだが、将来を見据えてのアメリカ国内での生産を目指したものであった。

ちなみに新日鉄に替わってUSスチールの買収に名乗りを上げたアメリカの製鉄会社には、80キロの鉄道軌条を作ることはできない。USスチールの経営陣もそれが分かっているからこそ新日鉄に売却することを望んだはずだった。

しかし、アメリカの大統領選挙が事態をややこしくさせてしまった。世の中すべてが経済原理で動いている訳ではないが、少々馬鹿らし過ぎる結果になりそうだ。

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ロングパス

2024-09-12 09:26:48 | スポーツ

さすがに驚いた。

ワールドカップ大会アジア最終予選の第二戦は、アウェイでのバーレーン戦である。バーレーンは難敵なので、この試合は見逃せないと思い、21時に就寝して25時起床してネットでの観戦である。

結果は既報のとおり5-0の圧勝である。初戦の中国戦に続く大量得点には呆れたが、実際試合を観ていた人は分かると思うが前半は激戦であった。

もし上田のPKでの先制点がなかったら、引き分けもしくは敗戦も考えられるほど前半戦は苛烈であった。でもあの暑さの中での激戦であるから、あのペースで試合が進む訳がないと思っていた。

案の定、後半は勢いが減じたバーレーンの隙をつく形で4得点である。でも闘志を失わないバーレーンの選手は疲労からプレーがラフになり、反則気味のプレーが増えた。特に伊東に蟹ばさみを掛けるような形になったプレーは本当に悪質だと思う。

ただこれは認めなければいけないが、ウズベキスタンの審判団のジャッジはかなり公正であったと思う。あの暑さの中で正確なジャッジをするのは本当に大変だと思います。でも、あれはレッドカードものだと私は思いますけどね。

私がこの試合で一番驚いたのは、後半40分の久保のプレーだ。ほぼ50メートルはあるロングパスである。遂に日本人選手もここまでレベルが上がったのかと鳥肌が立ったほどの驚きである。

ただ力任せに蹴るだけのロングキックならいくらでもある。しかし、勝利に結びつける意思を感じるロングパスを蹴れる選手は少ない。私が初めて見たロングパスは1980年代のトヨタカップだ。ジーコ率いるフラメンゴとイングランドのリバプールの試合であった。

大柄なリバプールの選手3人に囲まれながらジーコは、いきなりロングキックを蹴った。え!?と思ったら、そのボールの先にはFWのレナトがいて、その足元にピッタリとボールは収まった。この一発でリバプールの選手の足が止まり、前線への攻撃参加が激減した。正確なロングパスは相手選手の闘志をも削る。これこそ本当のキラーパスである。

後にJリーグが始まり、平塚ベルマーレに入団した中田英は、しばしばロングキックを多用したが、これを一々キラーパスだと叫ぶアナウンサーに閉口したものだ。ただの正確なロングパスに過ぎないからだ。中田は当時、一番基礎的なパスが優れたJリーガーであったと思う。でもキラーパスには遠かった。

久保のロングパスで、どうしても得点が欲しいバーレーンの選手は、このパスを恐れて守備を重視せざる得なくなった。久保はラフプレーの対象になりやすい選手だが、あの位置まで下がれば相手もそうそう削ってこれない。試合終盤での極めて効果的なプレーであったと思います。

とはいえ、最終予選はまだ序盤。有利な立場にいる日本ですが油断大敵。しっかりと勝って兜の緒を締めて欲しいと思います。

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看守眼 横山秀夫

2024-09-11 09:18:53 | 

どちらかといえば、過去に囚われるのは男の方が多い気がする。

私は過去を悔いるのが嫌いな性分で、過去の失態、醜態を可能な限り忘れるようにしていた。幸か不幸か、私の人生は毀誉褒貶が激しく、いちいち過去を悔いている暇はなかった。いや、現在の悩み、未来への不安が大きすぎて過去を省みる余裕がなかったのが実態に近い。

で、人生の終盤に入り、多少余裕も出てきた今頃になって何故に貴女は私の夢に出てくる。私としては忘れたはずの記憶であり、思い出す動機もない。なのに夢に出てきて話しかけてくる、あの得意な科白で。

「うぅ~ん、いいじゃない」

甘えているのか、それにしては強引なあの科白で私を振り回した。不快になるには心地よすぎる甘い科白であり、怒るほどにはなれない程度の強引さ。まだ十代前半の未熟な私はどれほど困惑したことか。今だから分かるが、私が従うことを確信している科白だった。

で、私は不満と微かな甘い予感を伴った奇妙な気持ちで、貴女の意向に従っていた。だから完全に関係が途切れた時、奇妙なほどに安堵感を抱いた。これで新しい人生に踏み出せると。

もう忘れていたのだ。それなのに還暦過ぎて何故に思い出すのか。私は自分が分からない。

昔、ある女性歌手が「女はみんな、さよなら上手」と歌っていたが、そうなのだろうと思う。それに比べて男どもの未練がましいこと甚だし。未練なんてないつもりだったのだが、心の奥底に沈殿していたのだろうか。

そんな微妙な気持ちにさせられたのが表題の短編です。長編に秀作の多い横山秀夫ですが、この短編集はなかなかに珠玉の作品集だと思いましたよ。機会がありましたら是非どうぞ。

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鯖味噌

2024-09-10 09:22:07 | グルメ

この店、いつまで楽しめるだろうか。それが心配だ。

神田の街に越してきて一年以上経つと、だいぶ勝手が分かってくる。仕事については、別段問題はない。やはり最大の問題は昼飯をどうするかであろう。

30年以上銀座の街で仕事をしてきた私からすると、正直多少の不満はある。例えばお昼の定番である「刺身定食」である。はっきり言ってメインの刺身そのものには、銀座であろうと神田であろうとほとんど差はない。いや、店にもよるが、何軒かの割烹料亭は銀座と変わらぬクオリティだと思っている。

しかし明確に差が出るのが副菜というか、小鉢である。あくまで今のところだが、これは銀座の圧勝だと言わざるを得ない。想像だけど、これは店の質とか、料理人の技量ではなく、舌の肥えた銀座の客層に鍛えられたが故の差だと思う。銀座雀は足が速い。味が落ちたと思ったら、すぐにその店から消える。

小鉢と云えども手抜きは許さないのが銀座雀だ。小鉢のデザインもそうだが、中身の総菜も一手間加えた逸品が当たり前のように供される。名店とは腕の良い料理人だけでなく、舌の肥えた客によって育てられるものだと思う。

もっとも私はさほどグルメではない。元々は空腹が満たせて栄養のバランスが良ければそれで良しである。だから店で出される料理に文句をつけたことはない。不満ならば次から行かないだけである。

ただしメインの料理は美味しくあって欲しい気持ちはある。なので神田に越してきて以来、満足のいく店を数十店探し回っている。そのなかで割と気に入っているのが神田美土代町にある定食屋うお幸。

初めて見かけた時の印象は外見がボロいの一言。ただ人気はあるようで、数人が並んでいた。が、店頭の立て看板には既に今日の定食は売り切れと出ている。まだ12時15分くらいだぞ。並ぶのは嫌いなので通り過ぎようと思ったら、食べ終えた客が数人出てきた。これなら入れると思い、行列の最後に並ぶとすぐに入店できた。

店はL字型のカウンターのみ。70過ぎは確実な料理人と、その息子さん(?)らしき中年男性の二人だけで店を回しているようだ。カウンターに座った私に「もうマグロのブツ切りと鯖味噌しかないよ」とぶっきらぼうに伝えてきた。

その時は店の売りがマグロだと知らなかったので、鯖味噌をお願いした。数分で出された鯖味噌は望外に美味しかった。臭みはなく、柔らかい肉質は料理人の腕の良さが良く分かる。まぁ小鉢はそこそこだが、これだけの鯖味噌、銀座でもそうそうないぞ。隣の客のマグロのブチ切り定食も美味しそうだ。

翌週は少し早く行って看板メニューのマグロの刺身定食を頂く。これもなかなかだ。多分、市場で見繕って選んで仕入れているように思う。筋切りもしっかり入れているし、角の立った刺身は見た目も美しい。ちなみにメニューは5種類くらいしかない。そして12時半過ぎには売り切れる。

客筋は中高年の男性が多いが、若い男性も散見する。決してお洒落な店ではないが、女性客もよく見かける。明らかに魚の美味さを目的に入店していると思う。

ちなみにこの店の前の通りは、この近辺のサラリーマンやOLがお弁当を買いに来る名所である。500円前後で弁当が売られている激戦区である。その倍の値段の定食ではあるが、確実に売り切れるところをみると、根強いファンがいるのだと分かる。

ただ唯一の心配は高齢の料理人の爺さんだ。まだシャキッとしているが、人の寿命は儚いものだと分かっている。しばらくは、この店を中心に昼飯を楽しもうと思っています。

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小賢しい

2024-09-09 09:31:24 | 社会・政治・一般

私が大学生の頃、若い女性のタレント、いわゆるアイドルの全盛期を支えた82年組がいた。中森明菜、早見優、石川秀美、堀ちえみ、松本伊代、そして小泉今日子は粒ぞろいのアイドルであったと思う。

正直、あの頃はTV画面の向こうでほほ笑んでいるアイドルよりも、手を伸ばせば抱きしめられる女性の方に夢中であったので、アイドルにはあまり関心はなかった。もっとも、それを気取っていると彼女に説教されていたのだから、女心とはよく分からんと心の中でぼやいていた。

ただ、歌の上手いアイドルは別格で、松田聖子や中森明菜はLPを買って良く聴いていた。カセットテープに録音して良くドライブの際に流していた。どちらかといえば、ニューミュージックの方が良く聴いていたと思うが、アイドル歌謡だって馬鹿にしてはいなかった。

アイドルは特に好きでもなかったが、嫌う理由はなかった。ただし一人だけ気に食わないと思っていた娘さんがいる。それがキョンキョンこと小泉今日子だった。ルックス的には十分可愛かったし、歌も決して下手ではなかった。

ただ、今風に言えば「意識高い系」とでもいいたくなる小賢しさが鼻についた。なんとなくだが、「私、可愛いだけのお人形さんではなくてよ、自分なりのアイドルの形をプロデュースしてるのよ」との自己アピールが感じ取れた。

もっとも私の周囲には真面目にアイドルを愛好する男どもも多かったし、それを小賢し気に論評するのも大人げないと思い黙っていた。アイドル談義をするくらいならばプロレス談義に熱くなるおバカでありたいと思っていた。今にして思うと50歩100歩である。

あれから40年近く経つが、やはり明菜の歌は別格だとYouTubeを視ながら楽しんでいる。半面、馬鹿は直らなかったのだと思ったのがキョンキョンである。

おそらくだが周囲にろくな取り巻きがいないのだろう。憲法改正を危険視して戦争への道を開くなどと世迷い言を口にしている。おそらく兵站が戦争行為だと認識していないのだろう。銃を撃たず、ミサイルを撃たなければ戦争ではないと思っているのだろう。

平和憲法?

冷静に戦後史を鑑みれば、既に日本はアメリカ軍の補給基地として立派に機能している。アメリカ軍に武器弾薬を供給し、空母や戦闘機のメンテナンスを請け負い、戦場で疲れたアメリカ軍の兵士たちの慰安場所を提供してきた。まさに戦争協力に他ならず、このような兵站行為は広い意味で戦争に加担していることを意味している。

アメリカ軍と戦った北コリアや北ヴェトナムの政府首脳は、いくら叩いても近場の日本で休憩し、英気を養い再び戦場に戻ってくる様子に腹を立て、なんとか日本列島の米軍施設や日本の軍需企業を叩きたいと切望したという。

憲法を守れ?

日本は戦後から一貫して憲法9条を踏みにじり、戦争に協力し、そのくせ平和国家面をしている厚顔無恥な国です。およそ羞恥心というものがあるならば、憲法は改正されて然るべきなのです。まぁ黙って戦争に加担して利を得ることも、ある意味賢いとは思いますけどね。

実際には平和憲法の看板に隠れて、戦争を商売のネタにするほうが利に適うというか、事なかれ主義で済ませている良心的な平和を愛する日本人を演じている方が大半なのでしょう。

もちろんアイドルに限らず芸能人が、スポンサーなど多くの関係者に配慮して如何にも人道的良心を前面に出すことがあることは承知しています。だから芸能人の浅はかな政治的言動に目くじら立てるのも大人げないとも思っていますが、どうにも不快感は拭えないですね。

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