ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

起業家精神

2023-06-30 09:17:35 | 社会・政治・一般

馬鹿なのか?

文部科学省が推進しているのが、「アントレプレナーシップ」教育である。なんだと思ったら、起業家精神を学校教育で推し進めていくことだそうだ。山本・文部科学省政務官によると、子供の可能性を拡げ、失敗しても挑戦できる社会への転換を含め、官民一体で取り組んでいきたいとのことだ。

まぁ本音は、新しい予算獲得のための方便であろう。霞が関で出世していく手段として、新しい予算獲得は王道である。その意味は分かるが、果たして中身を理解しているのか疑わしい。いや、頭の良い官僚様であるから、当然に分かっているはずだが、私のみたところ木を見て森を見ずに過ぎない。

日本の学校教育の目的は、優秀な役人を育成することにある。優秀な役人とは、前例踏襲とミスをしない人材のことである。そのことが分かっていれば、起業家精神の育成とは真逆の方向性を持っていることは明白だ。

起業家精神とは、失敗を恐れず、失敗を糧として新たな価値観を育て上げることにある。明治維新以来、日本の学校教育が育んできた教育とは真逆である。事実、近代日本において、起業家精神を発揮して、新たな事業、新たな企業を生み出してきたのは、優秀な役人ではない。

優秀な役人とは、失敗をせず、過去の前例に現実を当てはめて政策と制度の整合性を維持することこそ真髄がある。いや、戦後の高度成長を導いてきたのは、優秀な役人がいてこそだと主張する方がいるのは承知している。

でも、勘違いしていると思う。アメリカのGHQは戦前の優秀な官僚たちを政府から追放してしまっている。残されたのは、エリートはエリートでも三等エリートである。具体的に言えば、戦前の一等エリートとは、陸軍中野学校と海軍江田島学校の出身者を言う。

東大であろうと京大であろうと、この最上位の二校の下に居たに過ぎない。作家の源氏圭太はいみじくも「三等重役」と称したが、この三等重役たちが戦後の高度成長の旗振り役を果たした。同時に戦後の日本を代表するであろう新興企業は、非財閥系どころか下町の工場から育った企業が珍しくない。ソニーにせよ本田、松下にせよ、エリートとは程遠い現場の叩き上げ職人が原動力である。

そして日本のバブル崩壊と停滞の30年を演出したのは、東大出のエリート様たちであることを銘記していただきたい。同時に現在、日本が得意にしている漫画やアニメーション、TVゲームなどを育ててきたのは、エリートとは程遠い若者たちである。

また現在、外国人観光客を魅惑して止まない日本の料理は、これまた学校エリートではない料理人たちである。

では、日本のエリート様たちは、何をやっていたのか。それは世界でも最も成功した社会主義国としての日本社会を作り上げたことだ。データーをもとに最適と思える資源人材の配置を行い、系統だった統治機構を作り上げ、安定した平和な日本を維持管理してきた功績は、このエリート役人たちの功績である。

しかし安定した社会は、変化する社会への対応が苦手であり、失敗を厭う減点主義の人事考課は、チャレンジ精神を摩滅させてしまった。

だからこそ、「アントレプレナーシップ」起業家精神の育成を言い出すのは理屈としては分かる。でも、本当に分かっているのかな。これは従来の優秀な役人を育成する教育とは真逆の方向性を持つことを。

多分分かってない。分かってなくても問題ない。何故なら新たな予算獲得こそがエリート官僚に認められた最大の功績だからだ。予算さえ獲得すれば、それが成功しようとしまいと彼らは気にしない。これは、過去の霞が関主導の政策の末路をみれば明白だと思う。

日本の役人は、ある面では優秀であることを認めるのはやぶさかではない。しかし、やった仕事の結果責任を取らない以上、この新しい政策はおそらく失敗しますよ。方向性は間違っていないけど、役人主導では無理です。ネズミが猫に鈴を付けるようなものですからね。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新兵器の実験場

2023-06-29 11:43:30 | 社会・政治・一般

20世紀に二回あった世界規模の戦争には、前兆というか、予備試験的な戦争が幾つかあった。

南北戦争、クリミア戦争、そして日ロ戦争である。この三つの戦争では近代兵器の試作品が多数投入された。鋼鉄製の砲身を持った巨大りゅう弾砲や、一基であるだけで戦線を維持できる重機関砲などの試作品が持ち込まれ、実戦で使用されてテストされた。

連発式の小銃や、鉄道軌道で動く列車砲、キャタピラーを装備した輸送車など二十世紀では当たり前となる兵器の大半が、この三つの戦争で試され、第一次世界大戦及び第二次世界大戦において、大量破壊兵器として活躍することになる。

武器というものは、いくら試作して演習場で使ってもなかなか真価は分からない。実戦に投入し、そこで初めて泥と埃にまみれ、兵士を大量に殺戮し、建物や要塞を破壊して、そこで初めて長所や短所が見つけられる。

今回のウクライナ戦争も、新型兵器の実験場となっていることは既に承知の方も多いと思う。ドローン兵器が本格的に運用された戦争であることはよく知られている。しかし、私の見たところ、これは表向けの軍事情報であり、ウクライナ戦争の真の主役は歩兵だと考えている。

歩兵が携行する対戦車ミサイルや対空ミサイルなどが一番戦火を上げているとの情報があり、私はこれは真実に近いと思う。最近、日本の防衛省は、戦闘ヘリコプターの採用を止めてしまうことを公表している。アパッチなどベトナム戦争から中東戦争まで活躍した実績ある戦闘ヘリを持つ自衛隊だが、今回のウクライナ戦争を見てその損失の多さから採用を諦めたと伝えられている。

もっともこれは表向きの情報で、実際には後継機と考えていた戦闘ヘリが、すでに陳腐化して生産を止めるので、仕方なく断念したのが実際の理由らしい。今も昔も日本の軍務官僚は、情報判断があまり上手でない。

実際、日露戦争で重機関砲により若き日本兵を無駄に死なせたのを知りつつ、従来の小口径の単発銃に固執し、ロシアに勝てたことを精神論で取り繕ったのが日本の参謀本部である。まぁ本音は、高額な銃弾を雨あられと浪費する経済的負担を嫌い、若い日本兵の突撃精神論で胡麻化したのが本当らしい。

また日露戦争で航空機の有用性に気が付き、世界で初めて航空母艦を建造(アイディアはイギリスだけど)したにも関わらず、老兵たちが従来の大鑑巨砲主義に固執し、結果的にアメリカ海軍に敗れたことは教科書には書かれていない。

重要な情報を知っていながら、それを未来に向けて活用するのが下手なことが日本軍の弱点だ。でも、それに気が付いても、表立って改善する気がなく、隠して済ませる悪癖は100年前、すなわち日露戦争以来、変わりがないことは是非とも覚えておいて欲しい。

別に防衛省のエリート官僚に限らないが、日本のエリート官僚は失敗を厭い、失敗するくらいなら何もしない事なかれ主義が蔓延している。今回のウクライナ戦争で21世紀の戦争の在り方が、かなり判明してきたが、おそらく日本はその情報を活用することが出来ない。

相も変わらずアメリカの金魚の糞の立場に安住し、アメリカ様の言うとおりにすることだけが正しい道だと思っている。それは政治的判断としては、そう間違っていない。でも、それだけではダメなことも自覚しておくべきだろう。何故なら、そう遠くない将来、アメリカは大きく変質すると予想できるからだ。

別に不思議なことではない。一旦、覇権国の頂点に立ってしまったら、あとは下るだけ。それが歴史が教える大原則だからだ。我が日本としては、アメリカの後を追いつつ、穏やかに衰退することが最上だと私は考えている。

それが出来るとは思えないのが、日本の不幸だとも考えている私が少し嫌ですね。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

通い猫アルフィーの奇跡 レイチェル・ワイズ

2023-06-28 09:16:36 | 

犬を飼うには覚悟がいる。

それが分かっているから、その覚悟に相応しい環境を用意できないがゆえに、40年以上犬を飼っていない。でも家に帰って、そのモフモフ感を味わい癒されたい願望はある。肉球をプニプニしたい人もいるが、私は毛皮ムクムク感を味わいたい方である。

しかし、朝から夜まで犬を孤独にさせておくのは嫌だ。広い庭があれば、2頭飼って遊ばせておくこともできるが、そんな余裕はない。庭どころか狭いベランダが精いっぱいなのだ。

別に一人暮らしの孤独感に悩んでいる訳ではない。この生活に慣れすぎて、同居人がいることのストレスに耐えられるかどうかのほうが問題なくらいだ。

それでも帰宅して、お家でモフモフ感を楽しみたい。なまじ子供の頃にワンコのモフモフ感を楽しんでいただけに、あの快楽は忘れがたい。でもなぁ~、下手すると私、ワンコよりも先に死ぬぞ。それはあまりに酷だ。私はたぶん病院で死ぬことになるはずなので、お家で一人寂しく待っているワンコの姿を考えると、迂闊には飼えない。

そんな悩みを抱えながら手にとったのが表題の本だ。

なに?通いネコって。おいおい、平安時代の貴族かよ・・・ところがどっこい、この本面白い。優しい飼い主であった老婆の死と共に住まいを追い出されたアルフィーが、苦闘の野良猫生活の末にたどり着いたのは、通いネコとして生きること。

複数の飼い主のもとを日々、渡り歩く理想の生活は果たして上手くいくのか。ちなみにこの本、シリーズ化されて現在7巻まで出ています。

私の家にも通い猫、来ないかしらん。そう思わせる幸福を運ぶ猫なんですよ。あぁ、シリーズを全部買いそろえたくなってきた。やばいなア~、蔵書を減らしたのに。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

LGBT法

2023-06-27 12:15:01 | 社会・政治・一般

少数派が生き残る方法はそう多くない。

代表的なのは、少数派同士が固く連帯することだ。もう一つは人材教育に力をいれて優秀な人材を育成することだ。

具体的には、欧米社会におけるユダヤ人がその典型例だと思う。実際、現在、世界中で使用されるコンピューターの基礎原理は、ハンガリー系ユダヤ人でアメリカに帰化したフォン・ノイマンがチューリング、シャノンらと共に開発したものだ。

二進法をベースとしたプログラムであり、ノイマン型コンピューターとして知られている。アインシュタインもそうだが、天才的な才能を持つ多くの科学者を輩出しているユダヤ人は、ノーベル賞受賞者のなかでも際立っている。

ユダヤ人の優秀さは、家庭での教育が大きいと言われている。これは中世のヨーロッパで異端の民族として迫害されたが故に、生き延びるための優秀さを家庭で育む伝統が今も続いていることを意味している。

ただ優秀すぎるが故に孤立を招きやすいのも事実だと思うが、孤立を恐れず、自らの信念に従い立派な結果を出すことで生き延びてきた。嫌われるのも覚悟のうちであり、それだけに一度信頼されると、その絆は長く続く。

アメリカは優秀なユダヤ人を積極的に保護してきたが故に、優秀な人材を集めることに成功し、今日の覇権国としての地位の地盤を作ることに役立てた。

昨今、あれこれと話題に上がる性的マイノリティの人たちも、ユダヤ人同様に優秀さを身に着けて社会の荒波を生き延びてきた。実際、私が見てきたなかでも、経営コンサルタントや音楽家、舞台監督や俳優など公表こそしていないが、著名な人が少なくない。

そして知っておいて欲しいのだが、彼ら、あるいは彼女らは現在国会を通過してしまったLGBT法案に対して厳しい視線を送っている。自ら努力して成功への道を切り開いただけに、むしろ迷惑に捉えているそうだ。

私は性的志向は至ってノーマルなので、正直共感はしないが、特段積極的に差別する気はない。私の知る範囲では、性的マイノリティの人たちは自らが少数派であることを強く自覚しているので、他人の善意にすがって守られることは望んでいないように思える。

むしろ虚心にその努力と結果を認めて欲しいと考え、地道に生きている人が多い。

私は偏屈なので、今回のLGBT法案は一部の政治家が自らの善人ぶりをアピールしたいが故に、性的マイノリティの人たちを利用したように思えてならない。別に私は差別しようとは思わないけど、肝心の性的マイノリティの人たちから支持されないLGBT法案ってどうよ、と思いますね。

コメント (4)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マイナ保険証

2023-06-26 10:33:54 | 社会・政治・一般

役人は間違いを認めない。

間違いをしない訳ではない。ただ人事考課の基準が減点主義であり、また連帯責任の気風が強いので、間違いがあってもなかったものと見做す悪習が根付いている。

私はマイナンバー制度自体は否定しない。情報の一元管理が行政効率を上げる効果があるであろうことは、行政職の経験がほとんどない私でもわかる。日本の行政は徹底して縦割りなので、それだけに非効率なのは確かだ。

しかし、この縦割り行政の壁は、ベルリンの壁よりも厚く固い。同じ建物の中にあってさえ、部門が違うと情報を他部門に出すことを渋る。まして異なる役所に対しては、可能な限り情報を出さない。だからこそマイナンバー制度が設けられたのだが、未だに上手く機能しているとは言い難い。

運転免許証をマイナンバーカードに共有させようとの発案は、一見受け入れられたかに思えたが、未だ音無し。水面下で警察が徹底的に抵抗したのだと予想している。一方、健康保険証のマイナンバーカードへの移行は、厚生労働省も乗り気に思えた。

しかし、これは国民の反発が強い。また医師会、とりわけ地方にあって医療を支える医師たちが大反対だ。霞が関に従順な岸田内閣ではあるが、さすがにそろそろヤバイと気が付いたようだ。おひざ元の選挙区に足しげく通う政治家ほど、国民の反発を肌で感じている。

問題は岸田首相を始め、閣僚クラスが異様に鈍いことだ。自民党の幹部も、揃いもそろって有権者たる国民の気持ちから離れすぎている。正直非常にまずいと思う。野党はそもそも国民の声を聴くことに関心がない。彼らは国民は我らの言うことを聞け、我に従え、我を賛美せよとの気質が強すぎる。

その点、自民党はまだ多少は有権者の声に気を使う。だからこそ選挙の話が立ち消えになったのだろう。マイナンバー制度のゴリ押しは、下手すると自公連立政権を瓦解させる可能性がある。

岸田首相がそのことに気が付かないと、本当にまずいと思いますよ。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする