ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「詩的私的ジャック」 森博嗣

2008-03-21 09:06:33 | 
俺って頭、良くないなあ~と森博嗣を読むたびに思う。

透徹した論理と、明敏な洞察力が私の遥か先の水準にあるからだ。読みながら、そのロジックの展開をアバウトにしか理解しえない自分の頭の悪さに気がついてしまう。じっくり読んで、理解するよりも、先を知りたくて読み進めてしまう。このあたりが、私の敗因らしい。

素人探偵役の犀川助教授は、おそらくは森先生自身をモデルにしていると思われる。いや、森先生がなりたかった自分なのかもしれない。犀川助教授は、いささか常識はずれだ。真面目にちょっとはずれている。おそらく常識人の森先生は、そこに憧れるのではないか。

本来、研究者として研究に打ち込みたい気持ちとは裏腹に、現実の研究者たちは様々な制約と軋轢に悩まされ、煩わされる。現実の森助教授は、教授会やら予算やらの雑事に惑わされ、なかなか研究には集中できないと見受けられる。

そんな作者の不満が、犀川助教授を生み出したのだと思う。このキャラクターには、作者の微妙な願望が時々顔を覗かせるから面白い。変わり者だよな~と思いつつも、密かに共感している自分が怖い。

一方、コンビのもう一人である萌絵嬢の存在が面白い。ある意味、犀川助教授以上の変わり者だが、女性としてもかなり異質に思える。もしかしたら、作者の理想の女性なのだろうかと勘ぐりながら読んでいる。

今の自分に不満があるわけではないが、それでも、もしかしたらそうあったかもしれないもう一つの自分を思い浮かべてしまう。学校の勉強があまり好きでなかった私だが、それでも興味をもったことへの関心は深く、その分野への学究の道を考えたこともある。

もし、もう一度人生をやり直せるなら、しっかり基礎から勉強して、学究への道を歩みたいと思う。まったく異なる人生ではなく、少しずれたところに道を見出すあたり、森博嗣と相共通するところかもしれない。
コメント (2)
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