ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

税収好調

2024-06-27 09:14:21 | 経済・金融・税制

どうやら令和5年の日本政府の税収は70兆円を超えそうである。

コロナが終わり、外国人観光客が戻り、円安効果で輸出が好調なのだから不思議ではない。

私が不思議でならないのは、日ごろ財政赤字を声高に叫ぶ役人様や、その手先と化しているマスコミ様におかれましては、一向に減税の声が出てこないことだ。日ごと財務省の発表する財政赤字のニュースは大々的に報じる癖に、いざ税収が増えているにもかかわらず黙り込む。

私は何度も書いているけれどマスコミ様は報じたがらないので、嫌みったらしく再び書くぞ。

日本政府が膨大な財政赤字を抱えているのは事実だ。しかしその赤字の中身は国債が中心だ。国債は借金であり返済しなければならない。既に国債の返済は始まっており、日本政府の支出のうち4割近くがこの国債という借金の返済に充てられてる。だから財政危機だとの財務省の主張は嘘ではない。

嘘ではないが、真実から遠く離れている。

確かに日本政府の抱える借金は巨額だ。しかし、日本政府の有する資産、とりわけ金融資産もまた巨額である。アメリカの国債が中心だが、その保有により得られる利子収入も巨額であり、外貨準備高の裏付けとなっている。

総資産から負債を控除した純資産が、その企業や国家の財務的安定性を保証する。その視点からすると、日本政府の財政状態は赤字ではあるが、実は少額である。理由は簡単で膨大な借金だけでなく、巨額な対外資産を保有するからだ。

だから外資の格付け会社が日本の国債を評価してB+などとしているのも正直当てにならない。当てにならない理由の一つは、日本政府が有する資産が、評価の簡単な金融資産だけでなく土地などの評価が難しい資産が多く、そのために評価に変動が生じやすいからだ。

だが、断じて増税をしなければならないほどの財政赤字ではない。では、何故に財務省は財政赤字を声高に叫ぶのか。それは各省庁が自由に使える予算が年々制限されてしまうからだ。これは過去に発行した国債の償還(負債の返済)が年々増加するため必然的に各省庁で使える予算は減額されてしまう。

これが嫌で増税を繰り返しアピールし、記者クラブを通じて国民に周知させようとしている。たとえ税収が増えたとしても、将来も増え続ける保証はないので、断固増税を求めて止まない。本来廃止して然るべき石油取引税のトリガー条項を止めないのも、この流れのなかでは当然だと考える。

霞が関の官庁に対しても強気な姿勢を崩さなかった安倍政権と異なり、党内基盤がぜい弱な岸田政権はどうしても霞が関に媚を売らざるを得ない。だから税収が増えても増税路線を止められずにいる。ただ、さすがに増税眼鏡呼ばわりされるのは嫌らしく、言い訳みたいな小規模な減税(特別減税)を急遽採用して印象操作に必死である。

この定額減税についても言いたいことは数多あるが、長くなるので別稿で取り上げます。取り敢えず大声で言いたいのは日ごろ社会の木鐸だと偉ぶるマスコミ様の二枚舌ぶりですね。いい加減に官庁の広報誌に堕していると、読者から見放されると知れ。かつては税金の無駄遣いを社をあげて報じていた産経も、今じゃ大本営発表に異議を唱える気概を無くして久しい。

他の大マスコミ様に至っては、増税と生活費の値上げに苦しむ庶民の声を紙面の片隅に乗っけて誤魔化す卑屈さである。そんなに記者クラブから弾かれるのが怖いのか。年々収入が減少している大マスコミ様にあっては、もはやお役所に逆らう気力なんぞないのが本音だろうけど、それって自業自得ではないか。

せめて令和5年度の日本政府の歳入が増加している事実くらい堂々と報じろと言いたいですね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

漫画家と脱税

2024-05-17 13:27:00 | 経済・金融・税制

先月の話だが、現在大ヒットしている「薬屋のひとりごと」でスクエニ社版の漫画化を担当している漫画家のねこクラゲさんが脱税で検察から起訴された。この報道で多額の脱税をした漫画家を賢しげに誹謗する声がずいぶんと上がっていた。

脱税は罪である。そのこと自体に異論はないが、この記事を書いた記者は、間違いなく実情を知らず記者クラブでの役所側の広報を真に受けた垂れ流し記事を書いたのだろうと容易に想像がつく。

一般的に出版社などから漫画家や小説家、イラストレーターなどに報酬が支払われる場合、予め源泉所得税が天引きされている。一回当たりの支払いが100万円以下だと10%が天引きされ、100万を超えた場合、100万以下は10%、100万円を超えた部分は20%の源泉所得税が天引きされる。

そのため、多数の売れない漫画家や小説家は、確定申告をすると税金が還付される場合が少なくない。ただし、これは所得税の話であり、住民税が後から送られてくる。これに驚く人は少なくない。実際、私が業務上受ける相談のうち数回は、この後払いの住民税についてのものが多かった。

まぁ現実問題、圧倒的多数の作家、漫画家、イラストレーターなどは確定申告をすれば還付になるが、なにもしていないケースも多い。なぜなら所得税は納税済みであるからだ。そう認識している若い作家たちは多い。

しかし、大ヒットを出した小説家、漫画家の場合は事情が大きく異なる。まず所得税は累進課税である。また暦年課税(1月から12月まで)でもある。一回当たりの支払金額毎に支払調書をもらっている場合、天引きされた20%の源泉所得税で足りるかもしれない。

でも一月から12月までの集計された支払調書に記載された源泉所得税は上限が20%である。総収入から必要経費を引き、更に社会保険料、扶養控除等を引いた残りが所得であり、この所得が695万円以上ならば税率は23%、900万円以上で33%、1800万以上ならば40%である。

報道などによるとねこクラゲさんへの追徴課税は数千万だというから、おそらく最大税率である45%が適用されたと思われる。報道がいい加減なので詳細は分からないけど、おそらく白色申告で所得率を適用されたとすると、必要経費はほとんど認められないはずだ。

私の知る限り、税理士などがついて当初から適正に申告していれば、おそらく納税額はその半分以下だと思う。事前対策あってこその節税であり、これまで天引きされた源泉所得税で満足していた納税者には非常に辛いと思う。ちなみに小学館版の「薬屋のひとりごと」の漫画化を担当している倉田先生は既に単行本を数冊出しているので、しっかりと申告していたと推測できる。

あくまで私の経験上だが、税金が天引きされているので自分はしっかり納税していると勘違いしている人は少なくない。出版社側から支払われる印税等の情報は、毎年一月に法定調書として税務署に提出されているので、これでバレるケースは多い。まぁ大概の場合、税務署に呼び出されて適正な申告を奨励されて終わる。もちろんこれは非公開である。

しかも検察に起訴されたとなると、これは一罰百戒を狙った政策的公開処刑のようなものだ。これをろくに取材せずに記者クラブ配布の資料垂れ流しで記事にするマスコミ様のやり様には吐き気がする。権力に媚びているだけじゃないか。

そもそも日本の義務教育では、ろくに租税教育をしていない。私ども税理士会に市町村から学校で授業をして欲しいと要望が一部あるくらいである。これでは天引きされる源泉所得税と、確定申告の違い、白色申告と青色申告の違いなど分かるはずもない。

一応書いておくが納税は国民の義務である。それは確かだが、何故だかこの国はその義務を詳細に教えることを避ける。知らなくても脱税は脱税だが、初めてのヒット作であり、初の単行本で巨額の印税収入をどうしたら良いのか分からなかった漫画家に対して、いささか酷に過ぎる。

私に言わせれば、ハリーポッターの翻訳者のように国外に仮の住居をもって納税を免れようとしたり、課税時期の判断時期を利用して大幅な節税をやらかした元財務大臣のT氏のほうが余程悪質である。

まぁ、マスコミ様は叩いても怖くない弱い納税者を利用して正義感ぶっているのでしょうけど、それって役所の手のひらで踊っているだけですから。ホント、滑稽極まりない醜聞ですね。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

定額減税

2024-04-23 11:34:14 | 経済・金融・税制

役人は間違えを認めない。

認めないのだから失敗は存在しないし、反省する必要もない。法制度の改正を実施した段階で成功であり、その改正が現実にどのような効果を出したのかは人事考課には影響しない。

これは日露戦争以来、日本政府の伝統であり、何人たりともこの伝統を崩すことは認めない。だからこそ日本政府、特に霞が関は同じ過ちを繰り返す。

その典型的な具体例が、今年度の景気対策の目玉である特別減税である。初めに結果を予言しておくと、この特別減税で景気回復は見込めない。この場合の景気回復とは、個人景気のことである。外国人観光客によるインバウンドでもなく、また史上最高値を更新した株式市場のことでもない。もちろん大企業の経営成績とも関係ない。

本来の目的は相変わらず冷え込んだままの個人消費を刺激して、個人の財布のひもを緩めることだ。そこで岸田内閣が打ち出したのが定額減税である。所得税が一人3万円、扶養家族一人に付き3万円である。夫婦と子供一人ならば9万円だが、単身者は3万円で打ち止め。住民税も一人1万円である。

サラリーマン、OLの場合6月から天引きされる源泉所得税で調整される。事業所得者は来年の確定申告時に精算される。

事務所に送られてきた税務署からの資料を読みながら私はボヤいた。「また同じこと、繰り返すのかよ・・・」と。

実は似たような定額減税を平成10年に実施している。しかし景気浮揚効果は薄く、むしろ批判を招く醜態であった。だから翌平成11年には最大25万円の定率減税を実施している。こちらの方が効果は大きかったと記憶している。

おそらくですが、今年のこの定額減税は上手くいかないでしょう。それは平成10年に既に立証されている。しかし、自分たちの政策立案にミスを認めない官庁と、それに追随するだけのマスコミ様が放置したため再び同じ過ちを繰り返す。

官庁は政策を立案し、それに予算を付けられれば成功と見なし、その効果については知らん顔。記者クラブで飼い慣らされたマスコミ様は、餌付けされた土鳩よろしく賛同するだけ。

これが日本の現状です。馬鹿は馬鹿を繰り返す典型でしょうね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

積み立てNISA

2024-04-22 12:06:30 | 経済・金融・税制

あまり褒められた話ではないだろうが、私は投資が苦手だ。

税理士としてどうよ、との思いはあるのだが、どうも余計な知識とか邪念があり過ぎて狙いは良いのに時期を失したり、その逆だったりと失敗ばかり。だから投資には手を出さなくなって久しい。

大蔵省がバブル崩壊後、低迷した株価対策で渋々設けたNISA制度だが、今年に入り日経平均で4万円台となり、更に利便性の増した新NISAを打ち出してきた。低金利はまだまだ続くと思われるので、株式配当と株の値上がり益に期待する方は多いと思う。

実際、堅実に投資を続けて利益を上げている普通のサラリーマンや主婦も珍しくないのは事実だ。だが、今の日本の株式市況はいささか加熱し過ぎな感もある。一ドル150円台の円安状況だと、海外の投資家からすれば、まだまだ安く感じる日本の株式市況なだけ。国内景気は低空飛行で安定しているのが実情。

ウクライナ戦争とガザ紛争が終結しない限りアメリカ・ドルの優勢は続くと思う。また日本政府が経済を活況させるための有効な政策が打ち出せるとも思えないので、当面は日経平均4万円台が維持されそうだ。市場価額は上がる時もあれば下がる時もある。

私は新しいNISA制度自体は悪いとは思わないが、今だと高値でつかむ可能性が高い。10年単位の長期投資であれば構わないが、短期的視点での投資を考えると今は買いではなく、待ちだと思う。

ちなみに金価格だが、やはり戦争等の危機がある状況だと値上がりが続く。ただ世界経済が大不況に陥っても金地金への信頼性は揺らがないと思うので、長期投資ならば金だと思います。株や紙幣と違って金はそれ自体に価値がある。ユダヤ人が長年金に固執するのも、ある意味当然だと思いますね。

コメント (11)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

円安は続く

2024-04-08 09:30:14 | 経済・金融・税制

嫌な予測だが、まだまだ当分は円安は続くと思う。

先週、財務省やら日銀やらのお偉いさんが、投機的な円安誘導は許さないなどとほざいていたが、相変わらず責任回避が上手い人たちである。

その国の発効通貨の評価は、その国の経済状況だけでなく政治的安定度、軍事的安定度などが複雑に絡み合って決まる。もっとも投資家の対象となる一定の先進国の通貨だと、投資の有効度なども評価の対象となる。

現在、一ドル150円台に入っている日本円だが、これは三十数年ぶりの円安であり、ぶっちゃけ日本の評価の低さでもある。先に結論から言えば、岸田政権の間は決して円高基調にはなれないと思う。多少の変動の枠内でも140円台後半に入れば御の字だと思う。

これは岸田首相一人の責任ではなく、むしろ変化を厭う日本国民全体の意向を汲んだ円安だと私は考える。平成のバブル景気の発端は85年のプラザ合意による急速な円高だった。当時の日本も円高不況などと騒いでいたが、円高により国内に利益が蓄積され、その資金の行き先が株と不動産しかなかったことがバブル景気を生み出した。ちなみに当時は一ドル100円を切る円高であった。

実は株と不動産の異常な高騰を招いたのは、国内に根深く残る規制に守られた脆弱な産業が原因だ。お役所日の丸に癒着する建築土木、農業、漁業の他、港湾施設を始め規制緩和により新たな需要喚起を必要とする分野は沢山あった。

しかし天下り利権に拘る官庁と、その官庁に守ってもらい変化を厭う業界とが規制緩和を妨げた。その結果、株と不動産に資金が雪崩れ込んだ。これが平成バブル景気である。

一方、今回の円安はいささか事情が異なる。一言で云えば無為無策の結果の円安である。これは日本国内に新たな投資先、新規事業がないことが大きな原因だ。本当は新規の投資先、新事業はあるのだが、規制によりそれが出来ないだけである。

一例を挙げれば銀行を中心とした金融業界である。ここは財務省の縄張りであり、貴重な天下り先でもあるので、大規模な規制緩和はしたくない。やれば外資という黒船に食い荒らされると思っている。まぁ経営力の引き日本の銀行では、海外とりわけ生き馬の目を抜く苛烈な業界で鍛え上げられた外資系銀行には敵わない。それが分かっているので、外資が求める規制緩和を徹底的に拒否してきた。だから外資系金融機関の日本撤退が相次いだ。

流通業界について云えば、現在日本の港湾は時代遅れに過ぎ、韓国の釜山港や上海に大きく後れを取っている。一言で云えば、大型のコンテナ船を日本の港湾施設では扱いきれないのが原因だ。この港湾は、昭和の頃から規制に縛られているだけでなく、港湾組合という強固な利権組織が仕切っているため、近代化を進めようとしても妨害されてしまう。いわば官民一体となって合理化、近代化を拒んでいる。

他にも規制緩和により新たな投資先、新たな事業展開を期待できる分野はかなりある。しかし、日本は官庁も企業も個人もそれを厭う傾向が強い。だからこそ低金利どころかマイナス金利のような異常な状態が続いた。ようやく日銀が金利のアップを公表したが、市場の予想どおり壁の染みにような地味過ぎる変更であったため円安傾向は変わらない。

一方、株式市場は日経平均が4万円超えであり、一見好景気にみえる。でも、実態は違う。一ドル100円台のバブル景気の頃に比べれば、現在の一ドル150円台の為替水準では、まだまだ日本の株式市場は安く見えるだけである。まぁあくまで海外からの視点ではあるが、このことを無視して史上初の4万円台などと浮かれるのが、如何に愚かかが分かると思う。

この状況を変えることが出来るのは政治だけだが、岸田内閣はこの機に最大派閥の安倍派を潰すことに夢中で、国内経済の立て直しに興味がない。だから当分円安基調は変わらないと思うのです。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする