ロシアとウクライナの戦争についての感想など。
最初は、クリミアの時のように東部2州を拠点にして、工作員を入れるなり情報戦するなりしてじわじわと浸透、東部の実効支配を既成事実化してしまうのかと思っていた。プーチンが特別軍事行動に出ると発表したときも、どうせ東部地域限定でダラダラ小競り合いするんだろうとタカをくくっていた。
ところがその30分後くらいにロシア軍が全面的に侵攻開始。早い。ウクライナの軍事施設、特に航空基地はあっという間に制圧された…と報道された。
僕はTwitterで信頼できる軍事論客のリストを作っている。論客の一人は、ロシアは精密攻撃兵器の在庫があまりないので、このピンポイント攻撃はそれほど続かず、民間人にも被害が出るだろうとこの時点で予測していた。
2月24日くらいまでは、キエフ陥落も時間の問題だと思っていた。制空権を握られると厳しい。ロシアは伝統的にヘリを多用するが、ヘリは低速なので制空権下でないと運用できない。そのヘリが何の妨害もなく飛び回っているのだろう。その一方で、ロシア軍機が6機撃墜されたという情報もあった。撃墜したパイロットは「キエフの幽霊」と呼ばれているとか。ウクライナ側の士気を高めるプロパガンダかもしれないが、もし本当なら文字通りのエース、撃墜王の出現である。
テレビなどのマスコミでは、ロシア軍の電撃戦を伝える情報と、ウクライナ市民の厳しい避難生活と限定的な反撃が報道される一方、Twitterなどでは、いや意外にウクライナ軍善戦しているぞという呟きやリツイートも多く、情報が錯綜していた。
僕は昔、シミュレーションウォーゲームを少しやっていた。一番好きだったのは第3次世界大戦をシミュレーションした伝説の超大作、GDWの「The Third World War」であった。ゲームを持ち出して現実を語るなと言われそうだが、このゲームは実在の装備の火力と装甲からユニットの戦闘力を数値化していた。T-80はこのくらいの強さ、ではなく、ソ連の第○戦車師団は何個連隊何個大隊何個中隊あって1個中隊にはT-80が何輌あり、T-80の125ミリ滑空砲は係数x.xxだから、この師団ユニットの攻撃力と防御力と練度はこう、というデータの作りかたをしていた。つまり、本物のデータを使っていた。
そのゲームでワルシャワ条約機構軍を指揮していつも感じたのは、突撃の異常な速さ、突破に失敗したらすぐ止まる粘りのなさだった。戦後のソ連陸軍は、ヒトラーに国土を蹂躙された教訓からか極端に攻撃的で、第一撃は強力だが、後が続かない。昨日今日の戦況は、この、急速突破しても抵抗に遭うと停滞する「The Third World War」のワルシャワ条約機構軍を思い出させる。20年前から戦術ドクトリンが変わってない。まあ、あくまで僕のイメージなんだけど。
そもそも、北のキエフ方面、東のドンバス方面、南のオデッサ方面と同時に侵攻するのは戦線正面が広すぎる。広げすぎた戦線各所でZOCに捕まった赤いユニット群が身動き取れなくなっているのではないか。テレビではどこもウクライナは最終的に(軍事的には)負けると言うが、もう少し耐えればロシア軍の兵站は崩壊し、侵攻が止まるような気がする。微かだが希望の光が見えないわけではない。
武力で国境を書き換えるような行為をやろうとしている国は他にもある。このままプーチンが勝つと、それが今後の世界秩序になってしまう。条件を受け入れて停戦し、市民の血をこれ以上流させないほうがいいのではとも思うが、ゼレンスキー大統領以下、ウクライナ国民の士気は高く、徹底抗戦するらしい。今のところ。
アメリカもNATOも、ウクライナが加盟国でないという理由でロシアと直接交戦しないだろう。世界のルールが武力で書き換えられるかどうかは、ウクライナ軍とウクライナ市民の踏ん張りにかかっている。だが、簡単に頑張ってくださいと言えるような状況ではない。第一に命を大事にしてください。その上で国を守れるように祈っております。