『桃太郎は盗人なのか?―「桃太郎」から考える鬼の正体』 (2019/9/28・倉持 よつば著)、小学校5年生の倉持よつばさんが2018年度「図書館を使った調べる学習コンクール」で文科大臣賞を受賞した研究を書籍化したものです。かなり興味深い内容です。
『空からのぞいた桃太郎』(影山 徹著)上空から桃太郎の話を見た絵本です。その絵本の解説に4人の考えが書いてあり、その人たちの桃太郎観から、研究を深めていきます。
その4人は「福沢諭吉」(『ひゞのをしへ』、
「芥川龍之介」『桃太郎』、
「池澤夏樹」朝日新聞に掲載された随筆「桃太郎と教科書」著作『母なる自然のおっぱい』(1992年に掲載。
「高畑勲」(かぐや姫の物語監督)→スタジオジブリ発行の小冊子『熱風』に収録さ れた「『日本人の心性』の、ある側面について」 (2015年2月号)
芥川龍之介
桃太郎が、鬼が島に行ったのは、鬼の宝を取りに行くためだったということです。けしからぬことではないですか。宝は、鬼の大事なもので、大切にしまってあるものなのですから、宝のもち主は鬼です。鬼のものである宝を、意味も無く取りに行くとは、桃太郎は、盗人とも言える悪者です。(中略)鬼の宝をとって家に帰り、おじいさんとおばあさんに、その宝をあげたということは、ただ欲のためにしたことで、卑劣千万なことです。
芥川龍之介
「鬼はあなた様にどういふ無礼を致したのやら、とんと合点が参りませぬ」
池澤夏樹
この話は戦略戦争の思想以外の何物でもない。
高畑勲
元々「桃太郎」は、もう明治初年からきわめて侵略的な物語だったことを忘れるわけにはいきません。
研究では、芥川龍之介が、なぜ「鬼はあなた様にどういふ無礼を致したのやら、とんと合点が参りませぬ」と思ったのかを調べ次のように書いています。
現在は[宝ものをあげるからゆるしてくれ]というのが多いが、江戸時代~明治時代のはじめは、ぶんどって奪い取ることになっている話が多い。
1894 (明治27)年発行の巌谷小波著の桃太郎では、鬼が自分の角を折って助けてくれと言っているのに桃太郎は鬼の首を 切って屋根の上に置くなど、残虐な桃太郎になっているものもある。
読み物としても興味深い本でした。