
『共感力を育む: デジタル時代の子育て』(2021/10/19・ミシェル・ボーバ著)からの転載です。
子どもたちの人間的スキルが発達し損ねていることを示すデータが心配だ。アメリカの10代の共感力(ほかの人の立場に立つ能力)のレベルは、ほんの30年の間に40%も落ち込んだ。しかし、それはアメリカだけの問題ではない。日本人の利他心について研究している東洋大学の中里至正名誉教授は、ある実験で小学生にゲームをさせ、勝った子どもが獲得したポイントをどのように使ったかを調べ、思いやりの度合いを測定した。1980年代半ばでは、勝った子どもの80%が、獲得したポイントをある程度、負けた子どもに与えていた。しかし、1980年代の後半になると、その割合は40%に突然落ち込んだ。皮肉にも、これはアメリカと同程度の落ち込みになる。しかも、私が講演する世界中どこの国でも同じ懸念を耳にする。
子どもたちの人間的能力が低下しつつあるのだ。原因の一つは、私たちの子育てが、共感力を育むうえで科学が証明している最新・最良の方法になっていないこと。今一つは、忙しさに追われ、デジタル機器に繋がれっ放しで、直接の対面交流が少々くなった丈化につきまとう多くのマイナス要素が、共感力の構築を損なっていること。子どもたちが、共感力とともに幸せな人生を送れるために、私たちの努力のあり方を変えなければならないところに差し掛かっている。
セルフィ症候群の増加と共感力の衰退
自分の写真を次々に撮ってばSNSに投柚し、「いいね」と賞賛してもらう「セルフィ」(自撮り)は大流行である。「私を見て」という、ネット上の流行りは現実世界にも波及して、子どものネット外での態度も変えつつある。特権意識を持ち、競争的で自己中心的な、これまでになかったような、種族を作り出している。
私はこの近年の自己没人型の熱狂を「セルフィ症候群」と呼んでいる。それは、あらゆることについて自己宣伝、自己ブランド化、自己の利益を優先し、相手の感情や必要は退ける。これが私たちの文化に入り込んで、ゆっくりと子どもたちの心を侵食している。
憂慮すべき点を四つ挙げる。
1。共感力の顕著な落ち込み
セルフィ[または、セルフィに代表される自己中心の文化)が今日の若者に取り返しのつかない害を与えている最初の兆候は、大学生の間にナルシシズム(自己陶酔)が増加している点てある。ナルシシストは、自分にとっての得にだけ関心がある。同時に他者への関心も増しているのなら、多少心配は薄れるかもしれないが、そうはなっていない。今のティーンは30年前に比べて、共感力のレベルが四〇%も低くなっているし、ナルシシズムは58%増加している
2。いじめが明らかに増加している
共感力が衰退するところでは、攻撃といじめが増加し、加害者は被害者を、人間というより物と見なし始める。ある研究によると、2003年から2007年までのたった四年間に、若者のいじめが52%も増加している。また、五歳の幼児の間でもいじめが始まるという調査もある。2014年の研究は、ネットいじめの件数が。一年間で3倍に増えたとしている。過酷ないじめが子どもの精神衛生に影響し、中学生の5人に一人はいじめを苦に自殺を考えている。行政も大変憂慮しており、現在では〔合衆国〕の50州すべてが、いじめ防止政策を法律化している。いじめは、学習されるが、その。学習を無効にすることもできる。共感力を培うことは、最良の解毒剤である。被害者の苦痛を我が身に置き換えて想像することができれば、苦しみを与えることは不可能に近い行為となる。
3。カンニングが増えるなど、道徳的判断力が弱まっている
倫理・道徳に関わることがもう一つの憂慮の種である。若者が道徳的価値観を学んでいないことについて、60%の大人は、深刻な国民的問題であると思っているし、この20年間に子どもの道徳心は低下し、72%のアメリカ人は道徳的価値観が「悪化している」と思っている。大部分の大学生心「人に勝つためにはカンニングが必要だ」と言い、70%の学生がカンニングの経験を認めている。最近の大学生の最も典型的な判断基準は、個人の利益であって、相手への公正さではない。
4。プレッシャーによる精神疾患
合衆国の若者の五人に一人は、一度は精神疾患を経験している。ティーンは今や、大人よりも高いストレスを受けている。不安が増加すると、共感力は衰退する。自分の生存が危ういとき、相手のことを思いやるのはむずかしい。
思いやりを持ち、幸せでしかも実りある人生を送ることのできる人間を育てるためには、子育てと教育に関して、最新の科学と提携した大きな変化が求められている。本書では、この青写真を提供し、証明済みの最良の方策を育児や教育に応用できるようにしたい。(以上)
1/h^n=1/f^n+1/g^n、
第一式おもしろい着想ですね。経済学のホットな話題として財政均衡主義と現代貨幣理論(MMT)の競合モデルなんてものはできないのでしょうかね。
何年か前にノーベル賞候補(化学賞)にも挙げられていたCCSCモデルという境界潤滑理論(摩擦理論)の提唱者でもありますね。摩擦プラズマにより発生するエキソエレクトロンが促進する摩耗のトライボ化学反応において社会実装上極めて重要な根源的エンジンフリクション理論として自動車業界等の潤滑機素設計のコア技術として脚光を浴びつつありますね。人類というものは機械の摩擦や損傷という単純なことですら実はよく理解していないということを理解させられる理論です。