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仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

日弁連の「宗教ガイドライン」

2025年01月27日 | 新宗教に思う
古本で宗教法人問題連絡会刊
日弁連の「宗教ガイドライン(判断基準)」と宗教法人法「改正」問題をめぐって
の古本を入手しました。
その中に「宗教ガイドライン(判断基準)」ありましたので下記転載です。

 宗教的活動にかかわる人権侵害についての判断基準
反社会的な宗教的活動がもたらす消費者被害等救済のための指針
                          (日弁連)
1.献金等勧誘活動について
⑴献金等の勧誘にあたって、次の行為によって本人の自由意思を侵害していないか。
① 先祖の因縁やたたり、あるいは病気・健康の不安を極度にあおって精神的混乱をもたらす。
② 本人の意思に反して長時間にわたって勧誘する。
③ 多人数によりまたは閉鎖された場所で強く勧誘する。
④ 相当の考慮期間を認めず、即断即決を求める。

⑵.説得・勧誘の結果献金等した場合、献金後間もない期間(たとえば1ヶ月)はその返金の要請に誠意をもって応じているか。
(3)一生を左右するような献金などをしてその団体の施設内で生活してきた者がその宗教団体等から離脱する場合においては、その団体は献金などをした者からの返金要請にできる限り誠実に応じているか。
(4)一定額以上の献金者に対しては、その宗教団体等の財政報告をして、使途について報告しているか。
(5)お布施、献金、祈祷料等名目の如何を問わず、支払額が一定金額以上の場合には受取を証する書面を交付しているか。

2.信者の勧誘について
⑴勧誘にあたって、宗教団体等の名称、基本的な教義、信者としての基本的任務(特に献金等や実践活動等)を明らかにしているか。
(2)本人の自由意思を侵害する態様で不安感を極度にあおって、信者になるよう長時間勧めたり、宗教的活動を強いて行わせることがないか。

3.信者及び職員の処遇
⑴・献身や出家など施設に泊まり込む信者・職員について
① 本人と外部の親族や友人、知人との面会、電話、郵便による連絡は保障されているか。
② ・宗教団体等の施設から離れることを希望する者の意思は最大限尊重されるべきであるが、これを妨げていないか。
③ 信者が健康を害した場合、宗教団体等は事由の如何にかかわらず、外部の親族に速やかに連絡をとっているか。
(2)宗教団体やその関連の団体・企業などで働く者については、労働基準法や社会保険等の諸法規が遵守されているか。

4.未成年者、子どもへの配慮
(1)宗教団体等は、親権者・法定保護者が反対している場合には、未成年者を長期間施設で共同生活させるような入信を差し控えているか。
(2)親権者・法定保護者が、未成年者本人の意思に反して宗教団体等の施設内の共同生活を強制することはないか。
(3)子どもが宗教団体等の施設内で共同生活する場合、親権者及びその宗教団体等は、学校教育法上の小中学校で教育を受けさせているか。また、高等教育への就学の機会を妨げていないか。
(4)宗教団体等の施設内では、食事、衛生環境についてわが国の標準的な水準を確保し、本人にとって到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を確保するよう配慮されているか。(以上)
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『宗教を「信じる」とはどういうことか』③

2024年08月25日 | 新宗教に思う
『宗教を「信じる」とはどういうことか』(ちくまプリマー新書・2022/11/10・石川明人著)からの転載です。


宗教を信じることは非科学的な態度なのか
 アンブローズービアスの『悪魔の辞典』という本をご存知でしょうか。いろいろな単語を皮肉な文言で辞典風に解説してみせることで知られているものです。例えば、「外交」という言葉については「自国のために嘘をつく愛国的な技術」であると言い、「運命」という言葉については「暴君が犯罪をおかす際の根拠、および愚者が失敗をおかす際の言い訳」であると説明するといった具合です。
 この本には、宗教に関する項目もいくつかあります。例えば「祈り」という言葉について、ピアスは、「一人の取るに足らない請願者のために、宇宙の法則を無効化するよう求めること」と説明しています。これは要するに、「祈り」とは自分にとって都合がいいようになることを求める行為に過ぎない、という冷笑的な見解を述べているのかと思われます。彼の言う「宇宙の法則」というのが近代科学のことを念頭においているのかどうかははっきりしませんが、一般に宗教を「信じる」というと、非科学的な思考や態度だというイメージを持たれる傾向は確かにあるかもしれません。(以上)
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ホモ・サピエンスの宗教史③

2024年04月08日 | 新宗教に思う

『ホモ・サピエンスの宗教史-宗教は人類になにをもたらしたのか』 (中公選書・2023/10/10・竹沢尚一郞著)からの転載です。

 

ところで、集団規模を拡大することは、危険な敵からの防御や食物獲得の観点では有利だが、集団内の緊張を増加させるという点ではマイナスに作用する。そのことは、うまく対処できなかったなら集団の分裂につながる危険かあるだけに重大な課題といえる。ヒトの先祖とおなじように集団で生きる類人猿はそれに対処する手段を講じており、チニパンジーの場合には、緊張緩和の手段は複数の個体が接触しておこなう毛づくろいであり、これによって脳内に「脳内麻薬」と呼ばれるエンドルフィンが分泌され、幸福感が増大ことが確認されている。しかし、ヒトの先祖のように集団規模がさらに拡大されたケースでは、これだけでは緊張緩和の手段としては不十分であっただろう。

直接接触を必要とする毛づくろいでは、より大きな集団のレベルで生じる緊張を緩和することは不可能なのであり、集団内の緊張を緩和し、巣問を維持していくためのなんらかの手段をつくり出すことが必要だったと考えられるのだ。

 そこで、大規模な集団の「緊張緩和および抑制」」の手段として考えられているのが、笑いであり、食物分配である。まず笑いだが、その効用をロビン・ダンバーらはつぎのように説明する。赤ん坊が誕生すると、腹が減った、おむつか濡れたといって人声で泣くが、四か月ほど経過した頃から、赤ん坊は世話をしてくれる人を見分けるようになり、その顔を見るとキャッキャッと笑うようになる。

その後も赤ん坊や幼児はよく笑い周囲の人間をなごませ喜ばすようににする。笑いには毛づくろいとおなじようにエンドルフィンか放出するほか、ドーパミンやアドレナリンを分泌して意欲や多宰感を増加させる働きがあることが確認されている。笑いは直接的な肉体的接触をもたない複数の個体のあいだでも共有されるから、緊張緩和の手段としては毛づくろいより効率的だし、生後四か月の赤ん坊でも笑うのだから、言語使用以前のヒトかそれを活用したと考えることは不可能ではない。

笑いという人間に特有の身体技法をつくり出したことで、ヒトの先祖は大きな社会を維持することができるようになったというのだ。(以上)

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ホモ・サピエンスの宗教史➁

2024年04月07日 | 新宗教に思う

『ホモ・サピエンスの宗教史-宗教は人類になにをもたらしたのか』 (中公選書・2023/10/10・竹沢尚一郞著)からの転載です。

 

 ヒトのつかい、つまり婚姻関係の形成についてのモリスの解釈が妥当か否かは不明だが、チンパンジーは雑婚をするのに対し、すべての人間社会は婚姻制度をもつことが確認されているので、社会が生物学的な適応の過程で生じたことは確実だろう。つがいの形成の問いは別にして、ここで確認しておきたいことは、ヒトの固有の特徴である乳幼児期の引き延ばしと母親や周囲の人間に対する依存関係の延長が、ヒトが進化する過程で生じた生物学的適応にほかならないということだ。

 私たちは先に、二足歩行を始めたヒトの先祖が、ぶざまで、脆弱で、無防備な身体をもっていたことを見てきた。そして、ヒトがそれほど脆弱で無防備な身体をもつ存在になったことが、彼らがチンパンジーやボノボより大きな集団を形成するようにたった必然的理由であった。こうした身体的な脆弱さに加え、ヒトが進化の過程で新たな脆弱さか帯びるようになったことがここで体認されたのであり、それは、ヒトの脳が巨大化したために十分に成熟する前に出産するようになったことで、他の動物のようには誕生後すぐに立って動くことができず、長期にわたってけ親などの保護が必要になったことである。この意味において、ヒトは二重の脆弱さ、傷つきやすさを抱えた存在になったのであり、そうした事態に対応するには、十分な武器をもちえなかったこの段階では、巣団規模を拡大することが生存のための唯一の手段であったはずだ。現代の狩猟採集民は50人程度の基礎集団を形成するのが一般的であり、これはチンパンジーやボノボのパーティの数倍の規模をもっている。優れた武器をもつ現代の狩猟採集民でこの規模だのだから、十分な武器をもたなかったホモ・エレクトスはより大規模な集団を形成することが必要だったとちえられるのだ。(つづく)

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ホモ・サピエンスの宗教史①

2024年04月06日 | 新宗教に思う

『ホモ・サピエンスの宗教史-宗教は人類になにをもたらしたのか』 (中公選書・2023/10/10・竹沢尚一郞著)からの転載です。

 

 ネオテニーによるヒトの進化

 ホモ・エレクトスが脳を巨大化させたことは、さまざまな能力を彼らに与えた一方で、新たな困難を課すことになった。二足歩行をすることで骨盤が狭くなり産道が広がらなくなったために、出産がいちじるしく困難になったことだ。そこで、ホモ・エレクトスは胎児の脳が十分に成長する前に出産し、胎外で成長を継続させることが必要になったと考えられている。研究者はこれを「外的妊娠」と呼び、「ヒトでは生後八~一〇ヵ月が」それに相当するという。動物学の知見によれば、ニホンザルは生まれるときに成体の七〇%の脳を完成させており、しかも残りは生後六か月のあいだに完成する。チンパンジーの場合には脳が完成するのは生まれて12か月あとである。

一方、人間の場合には、出生時の・脳の大きさは成体のそれの二三パーセントにすぎず、脳は六年のあいだ急速な成長をつづけ、成長が止まるのはようやく二三歳になったときである。これは現生人のケースだが、頭蓋骨の容量が1000ccと私たちのそれの四分の三まで拡大していたホモ・エレクトスにおいても、事態は大きく変わらなかっただろう。

 ヒトの新生児が十分に成員する前に出産されるようにたったために、ヒトの乳幼児期が引き延ばされ、母親や周囲の大人に対する依存度が増したこと、それによってヒトに固有の身体的および精神的特徴が出現したことは、一般にネオテニー(幼形をたもちながら成熟すること)と呼ばれている。著名な生物学者であるスティーヴン・ダールドによれば、ヒトは遺伝子の変異によって成体になっても幼児期の特徴の多くを保持するようになったのであり、彼はこれを「遅延」と呼んでいる。図11が示すように、ヒト以外の霊長類は成体になるにつれて環境適応のために大きく変えるのに対し、ヒトだけは成人しても新生児の頭蓋骨とほぼおなじかたちをたもちつづけている。それだけでなく、顔の・門凸が少なく平たなこと、肌がつるつるしていること、顎が小さいこと、歯が小さいこと、休毛が少な卜こと、頭蓋骨の縫合が二〇歳代まで延ばされること、頭が丸いこと、頭骨が薄いこと、女性の腟が前方にあることなどが、ネオテニー=遅延によるヒトの身体的特徴とされている。

 こうした身体的次元でのネオテニーに対し、人類進化においてより大きな影響をもたらしたのが、精神面における遅延であったとグールドはいう。

 

十分に成熟して自立可能になる以前に出産されるヒトは、母親や周囲の人間による保護を必要とし、その結果、大人になっても幼児期に特有な精神的特性をたもちつづけるというのだ。母親をはじめとする近しい人への依存感情、遊び好きであること、他に対する警戒心や攻撃性が少ないこと、身体的接触を好むこと、未知のものに対する好奇心が強いこと、新しい物好きであることなどの特性であり、それらの特性をもつことによってヒトは長期にわたって学習をつづけ、新しい知識をたえず吸収し発展させることが可能になったというのだ。

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