仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?④

2020年09月12日 | 現代の病理

 

『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか? 結婚・出産が回避される本当の原因』 (光文社新書・ 2020/5/19・山田 昌弘著)のつづきです。以下転載です。

 

少子化対策は行なうべきなのか

「親が比較的豊かな生活水準を保っている」のに、「自分が将来築ける生活は親の水準にも達しない」と考えている若者たち、つまり、前節で見たタイプ②の若者たちの増大が、少子化をもたらしている。

  

②親並みの生活水準に達することを諦めてもらい、結婚、子育てをする方を優先するようにする。

 

前者は、経済状況、階層のあり方を大きく変えることである。後者は、若者の意識、というより、日本人が多く持つ、「リスク回避意識」「世間体意識」を変えることである。

 私は、どちらの対策も必要だと思っているが、両方とも簡単にいくものではない。

 

全ての若者に、10年後、20年後、30年後、世間並みの生活を保障できるか?

 

 若者の間で、将来の生活に関する格差が生じていることが、少子化の第一の原因であるなら、それを反転させる必要がある。つまり、若者だれもが、育てている子どもにつらい思いをさせなくてすむような見通しをとることができる社会にすべきである。

 安倍内閣が「全世代型社会保障」と唱えている。その目指すものが、全ての世代の人に世間並みの生活を保障するという政策であるとしよう。それが少子化対策にとって有効になるのは、今の若者が、10年後、結婚して子育てをしているとき、20年後、子どもが大学に上がるようになったとき、そして、30年後、高齢者になったときに、世間並みの生活ができるという期待を持たせなければならない。

 若者は、上の世代を見ている。10年前に非正規雇用になった若者、不安定な中で子育てをしている中年世代、そして、貧困化する高齢者を見ている。そうならないために、結婚や出産に慎重になっているのだ。

 仕事においてやり直しがきいて、不利にならない職業環境、共働きがしやすい社会環境、いざとなったときには社会保障で自立に向かっての再スタートが切れる社会-それは、「子どもにつらい思いをさせなくて済む」生活水準でなければならない。

 

リスク回避意識、世間体重視は変わるのか?―-若者に見る新しい傾向社会制度以上に、人々の社会意識を変えるのは難しい。「リスクをとれ」「世間体など考えるな」といっても、無理なのである。ただ、そのような方向に動く芽は出ていると思う。(以上)

 

高度成長の時代は、結婚時は困窮していても、未来に嫁があり、その夢に向かって互いに努力していけば、その努力が達成するという構図がありました。現代は将来への夢を描けない時代です。未来の保証と言ったものによる安定から、将来どう転んでも大丈夫という信仰が重要な時代なのかも知れません。自己肯定感を未来ではなく、「おまかせする」という大きな力に委ねることによって得るという構図です。

 

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする