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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?①

2020年09月09日 | 現代の病理

20年前の寺報を読んでいたら、わたしが有楽町の読売ホールで聞いた平岩弓枝さんの講演の話が紹介されていました。まずは寺報の内容です。

元禄以降の江戸期にはみかんが大変もてはやされ、節分のとき金持ちが豆と一緒に当時高級品であるみかんを路面に捲いた。それほど冨が江戸に集中していた。ところがこの江戸は子捨てが多く奉行所が毎年お触れを出すがどうにもならない。ところがみかんなど回らない貧しい地方では子捨ではそれほどなかった。貧しいから子捨てではなく、豊かさが子捨ての原因だということです。

貧しい地方では皆が貧しいので貧しさに絶えられるが、豊かな土地での貧しさは子捨てに及ぶほど絶えがたいものとなります。(講演趣旨)

現代の少子化も江戸時代と理由は同じ様です。「みかんなど回らない貧しい地方では子捨ではそれほどなかった」とありますが、現在も同じ様です。貧困率が最も高い沖縄県が一番出生率が高い。

この当りを『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか? 結婚・出産が回避される本当の原因』 (光文社新書・ 2020/5/19・山田 昌弘著)に次のようにあります。以下転載です。

沖縄の出生率が高い理由--―子育ての期待水準が低い

 

日本の都道府県の中で、沖縄県の出生率が突出して高い理由が分かる。

 よく、沖縄では親族開の助け合いの習慣が強く、女性が子育てしやすい環境にあるので、出生率が高くなると言われているが、それだけではなさそうである。

 沖縄県は、大学進学率、平均所得ともに、日本の中で最低レベルにある。中流階級の層が薄く、非正規社員率が高い。また、離婚率も突出して高く、母子家庭や再婚も多い。

 沖縄は、本土で工業化が進んだ高度成長期に、アメリカの占領下にあったため、終身雇用・年功序列で収入が安定・増加したサラリーマン男性(と専業主婦の家族)が一般化しなかった。

 その結果、そもそも維持すべき「世間並みの生活水準」、特に子育て期待水準が高くならなかった。大学進学率(短大含む)は、増えているとはいえ40.19%(2019年文科省調べ、全国平均54.67%、第一位の京都は65.87%)である。

 そして、大学の入学定員や大卒者の就職先が少ないので、県外の大学に進学し、入学卒業後も県外で就職する若者が多い。地元に残る若者の中では、大学に進学しない者が多数派で子どもの進学費用を準備しなくてもかまわないと考える若者が多くなる。

 さらに、できちやった結婚、離婚、ひとり親世帯が多く、その結果、周りの人の子育て水準も高くない。それゆえ、子ども数が維持されるのである。

 つまり、子どもを産んで、経済的に不安定な中で育てることが珍しいことではなく、女性から見て、非正規雇用者など低収入の男性と結婚することや、離婚して親族に頼ることが、恥であるという意識が弱い地域だからだと考えられる。(以上)

 

ということは、現代の日本は、子育ての期待水準が高く、この辺りに、現代日本の病理とも言うべきものがあるようです。(つづく)

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