仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

願寺フアンの創出?

2024年08月23日 | 都市開教
『宗教を「信じる」とはどういうことか』(ちくまプリマー新書・2022/11/10・石川明人著)からの転載です。


 これまで宗教学者たちは、こうした傾向をどのように理解すべきか、さまざまに議論してきました。ある宗教学者は、日常的に心から信じているわけではないけれどもゆるやかな情締や関心から伝統的宗教と関わり続けることを、「信仰のない宗教」と表現しました。また別の宗教学者は、特定の宗教団体には所属しないけれども広い意味での宗教的関心はあるといった状態のことを指して「所属なき信仰」と呼びました。また逆に、厳密な意味での信仰的動機ではなく、もっぱら音楽や歌などと関わることを求めて教会とつながり続けるなどのあり方を指して「信仰なき所属」と呼んだ人もいます。
 岡本亮輔は「宗教と日本人  葬式仏教からスピリチュアル文化まで」という優れた現代宗教論のなかで、これらの議論を紹介しながら、日本人と宗教の関係を捉えるには「信仰なき実践」や「信仰なき所属」が鍵となる、と指掵しています。彼は、宗教を信仰・実践・所属という三要素に分解する視座を採用し、例えば葬式仏教を「信仰なき実践」、神社は「信仰なき所属」、そしてスピリチュアル文化については「所属なき私的信仰と実践」として特徴づけました。(以上)

「宗教と日本人  葬式仏教からスピリチュアル文化まで」は、以前転載しました。今一度、一部を転載します。

 端的な例を挙げれば、阿満利麿『日本人はなぜ無宗教なのか』では、日本には「ご先祖を大切にする気持ち辛村の鎮守にたいする敬虔な心」という「自然宗教」が存在し、初詣やお盆を行う大半の日本人はその信者とされる。
 一方、礫川全次『日本人は本当に無宗教なのか』では、実存的な問いに答えを与える信仰はすでの宗教はすでに形骸化し、さらに実践としての習俗も崩壊しつつあるため、現代の日本人は無宗教だと結論される。
 こうした宗教を心や信仰に還元する議論に対し、本書では、宗教を信仰・実践・所属という三要素に分解する視座を採用し、葬式仏教は信仰なき実践、神社は信仰なき所属、スピリチュアル文化は所属なき私的信仰と実践として特徴づけてきた。


 そして、こうした傾向は、神仏との合一や劇的回心としった従来の宗教体験のイタージを掘り崩してゆくだろう。世俗社会で求められているのは、死後・の生や魂のゆくえといった救済ではない。現在の世界のあり方を悲観し、それを根本的に変えたり、来世に期待したりする人は少数である。あるいは、現状に問題があると感じても、多くの人は、それが信仰によって解決されるとは考えていない。
 消費者優位のスピリチュアル・マーケットで主題になるのは、魂の救済ではなく、心身の癒やしや気分転換だ。瞑想で集中力が高まり仕事が捗る、宿坊に泊まってリフレッシュする、滝行体験で自己を見つめ直す、週末修験で自然に癒やされる。様々な寺社とそこで提供される実践は、現代の消費的な宗教需要に応えるための商品なのである。問題のある世界を作り変えるのではなく、そうした世界を少しでも快適に生きるための道具として宗教が利用されるのだ。
 
気分転換したりするための清涼剤のようなものだ。そうであれば、その体験についても、たとえは観光や映画と同じような、一般メディアで流通しやすいガイドブック的な語りがますます広がり、宗教は世俗社会の文化としての性格を強めてゆくだろう。(以上)

本願寺が「あらゆる世代に向けた新たな本願寺フアンの創出」を掲げているが、どのような結びつきを求め、何を理想としているかが明確ではないので、言葉かけだけで終わることが明らかな現状です。これは本願寺だけの問題ではない。
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葬式用写真撮影

2024年08月22日 | 都市開教
6月頃であったか。長男に第三子が産まれ、その初参式でお寺に参拝に連れてきました。カメラマンも同行していたので、70歳になったら葬式用の写真をと思っていたので、その願いが実現しました。
丁度、8月に、本堂建設特集の冊子を出し、その冊子の巻頭に掲載された住職挨拶の写真にも利用出来ました。
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参拝者の中身が問題

2024年08月11日 | 都市開教
『週刊新潮』(2024.8.15.22日号)に、「開発途上国型の観光から先進国型に転換」という記事が掲載されていました。
本願寺も「おまえりしたくなる本願寺へ」という目標を掲げているので、清水寺のように人が多く集まれば良いのではなく、そこに質をどう入れこんでいくか、参考になるので、一部転載して、記憶に留めます。


「2030年に(年間)訪日客6000万人を目指す」

 今年4月、政府は改めてこうした方針を打ち出しました。訪日外国人観光客の数が増え、日本の素晴らしさが多くの人に伝わり、そして日本経済が潤うことは、観光に関する研究を続けてきた私としても大いに歓迎するところです。
 しかし一方で、こうも感じました。
 「政府はどれだけ。本気”なのだろうか」
 こう話すのは、九州大学アジア・オセアニア研究教育機構准教授の田中俊徳氏だ。
 環境政策・ガバナンス論を専門とする田中氏は、ユネスコ本部世界遺産センターなどで研究し、観光のあり方についての論考を重ねてきた。
 6月に著書『オーバーツーリズム解決論』を上梓した田中氏が続ける。
なぜ、「6000万人目標」の本気度が気になったのか。それは、もし今のような状況のまま訪日客が増え続けたら、日本が“パンク”してしまうのは目に見えているからです。
 オーバーツーリズム。
 この問題が解決しない限り、6000万人どころか、3477万人(今年の訪日客の予測値)ですら多すぎると、眉をひそめる人もいるのではないでしょうか。実際、外国人を含む大量の観光客による大混雑に巻き込まれ、不快な思いをした経験がある人は少なくないはずです。
 にも拘らず、入域者数の上限設定や入域料の徴収等を行ってきた諸外国に比べ、日本のオーバーツーリズム対策は後手に回っていると言わざるを得ません。
(中略)

しかし、観光客の平均消費額はハワイの3分の1、滞在日数は2分の1に留まっています。その上、マナーの悪い観光客によってサンゴ礁が踏み荒らされたり、便乗的に観光業に乗り出してきた悪質な事業者がガイドを行ったりと、環境破壊やトラブルが後を絶たず、観光の「質」の面ではハワイに及びません。
 つまり日本の観光は、数を求める「開発途上国型」であり、環境を保全しつつ高付加価値を生み出していく「先進国型」にモデルチェンジすることができていないのです。
 ハワイでは、2018年に「日焼け止め法」を制定し、21年から、環境を破壊する特定の成分が入った日焼け止めの販売・流通を禁止しています。また、コロナ禍によって観光客がいなくなったことで、海の水質改善や野生動物の増加といった自然にとっての好環境が生まれました。
 規制を設け、観光客に“不便さ”を強いる。一見、観光客を排除する措置に映るかもしれません。しかし、ハワイの海の美しさを守ることによって、結果的に高い付加価値が生み出されます。同時に、環境保全に対する意識などのリテラシーが低い観光客は自ずと足が遠のき、魅力的で過ごしやすい観光地としてさらに付加価値が高まる。自然と観光客の滞在日数は増え、お金もたくさん落としてくれるーこの好循環を生み出していくことが、まさに先進国型の観光です。
反対に、観光客をとにかく受け入れるだけ受け入れ、そのために地域住民が迷惑し、自然は破壊され、観光地としての価値が損なわれて観光客が寄り付かなくなる。この「負のスパイラル」を招いてしまうのが開発途上国型の観光です。
 今は円安の影響もあって日本への観光は世界でも人気の的になっていますが、先進国型に転換しなければ、いつ「ニッポンに行っても満足度は低い」と飽きられ、見捨てられてしまうか分かりません。したがって、観光立国を目指すのであれば、「数」から「質」への転換を図るオーバーツーリズム対策が必要不可欠だと私は考えます。(以上)
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家単位の門信徒からの脱去

2024年07月27日 | 都市開教
『「2020」後―新しい日本の話をしよう』(2020/5/30・河合雅司著)からの転載です。

「そもそもマンションのような財産の区分所有は、少子高齢化の時代にマッチしないシステムといえるよね。次世代の人口が少なくなるんだから、将来的に物件の流動性は今よりも低くなるだろう。かっこのように現有物件を売って買い替えようとしても、思うように売れないという事態が起きるのは目に見えている」
・「住まいに対する考え方が、がらっと変わるんでしょうか。。持ち家は財産”という発想は過去のものに?」
「修繕を考えるならば、所有者が個々にすべてを決められる一戸建てのほうが無難だね。ただ、将来的には不動産は所有するものではなくなるかもしれない。ITや地方の高速交通網が発達してくれば、企業を都市に集中させなくともよくなるし、自分が住みたい場所、あるいは必要とされる場所、趣味と両立させられる場所など、どこでも仕事ができるようになる。リモートワークを経験した人が増え、「コロナ後」はこうした働き方が一挙に広がるんじゃないかな。しかも人口が減ってくると、豊かに暮らすために必要なのは家を持つことじゃなくて、居心地のいいコミュニティや助け合いの仕組みがある場所に身をおくことになると思うよ」。まづ『家を買ってはじめて一人前』なんて言いますけど、そんなことないんですね」

高額のローンを組んでまで買うべきか、立ち止まって考える
住む場所を決めるときは、物件そのものよりも、組合などのコミュニティや町の世代構成をチェック
1ヵ所に留まらずに移り住みながら働く選択肢も考えよう。
(以上)

家単位の門信徒からの脱却が不可欠なようです。

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ゲストハウス

2024年07月06日 | 都市開教
6.7日と京都でした。以前は、京都駅から本願寺まで、よく歩いて行っていましたが、最近は、バスの乗り方を憶えたので、ほとんどバスで歩く事は無くなりました。この4月から「本願寺監事」を仰せつかり、6日6時~、懇親会があったのでホテルから食事会場まで,歩いて行きました。写真のような、昔ながらの家屋を利用したゲストハウスが、そこら中にあるのに驚きました。あとでネットで検索すると、値段もピンキリで、京都の外人観光客の宿泊は、こうしたゲストハウスが需要を引き受けているのだと、あらためて感心しました。

こうすたゲストハウスを利用する、外人客を本願寺と縁を結ばせるか。一考に値します。宗門の教化活動は、寺院という組織教化で実施されています。寺院を介さずに、一般の人とご縁を結ぶことが、これからの課題です。
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