仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

なぜ日本人は怒りやすくなったのか?③

2022年03月31日 | 現代の病理

『アンガーマネジメントで読み解く なぜ日本人は怒りやすくなったのか?』 ③(2022/1/7・安藤俊介著)の続きです。 以下転載。

 

③ネガティブ思考

人には、ネガティブティーバイアス(ネガティブ偏向)という性質があります。 これはポジティブな情報よりもネガティブな情報に反応しやすい、学習しやすいというものです。 人が生物として進化する中で、身につけてきたものと考えられています。

動物はりんごを取ることよりも、蛇から逃げることを優先したほうが生存確率は高くなります。 目の前のりんごが取れなくても、すぐに餓死することはありませんが、目の前にいる蛇から逃げなければ、ただちに命の危険にさらされるからです。

そのため、人はネガティブなことのほうが意識を向けやすい、学習しやすいとされています。 言い方を変えると、これは快楽を求めることよりも、苦痛から逃げるほうが学習しやすいということです。

 

 自己肯定感の低い人は、物事をネガティブな方向に捉えがちです。

それまで、うまくいったことも星の敖ほどあるはずなのですが、そちらには意識が向きません。 自己効力感の低さがそうさせるのですが、「自分なんかがうまくいくわけがない、どうせ今度もまた失敗するに決まっている」と心の底で思っています。

 

 

④劣等感が強い

劣等感の強い人は、とかく人と比べる癖があります。 子どものころから誰かと比較することで、自分の現在地を確認してきています。

 劣等感の強い人は、人から攻撃されることを極端に怖がります。

たとえば、同僚が何か意見をしたとします。 同僚にしてみれば、別に攻撃をしたつもりはなく、ただ意見を言っただけなのですが、劣等感の強い人にとっては、とくにそこに強く劣等感を感じるポイントであれば、攻撃を受けたと感じ取ります。 自分の大切なものが攻撃されたとなれば、怒りをもって防衛しようと動きます。

劣等感の強い人は、劣等感ポイントを触られたくないので、触られまいとピリピリします。 誰も攻撃をしていないのに、いつでも臨戦態勢に入っているのです。 また、劣等感を埋めるために、いろいろなステータスを身につけようとします。

たとえば、学歴コンプレックスがあり、そのコンプレックスを埋めるために何か資格を取るといったことです。 その資格に向けた努力が、自分や他人の人生をよりよくしたいという建設的なものであればいいのですが、ただ劣等感を埋めたいから、資格を取って人を見下したいからといった理由であれば、それはなんとも残念な努力です。

劣等感の強い人は、とてもプライドが高いです。 劣等感が強いから、謙遜したり、謙虚になったりするのではないかと思われるかもしれませんが、それは逆です。 劣等感が強いからこそ、プライドが高くなるのです。

なぜなら、小さなことでもプライドが傷ついたら、自分の価値がとても下がると思っているからです。 劣等感の強くない人であれば、プライドが傷つくことを恐れません。 それくらいのことで、自分の仙値がドがるとは思ってもいないからです。

 そのため、劣等感の強い人は、自分のプライドを傷つけるようなあらゆることんび敏感になり、過剰防衛とも言えるくらいの反応で怒ります。

 

⑤渇望感が強い

渇望感が強いとは、どれだけのことをしても、されても満足をしないことです。

「足るを知る者は富む」とは、老子の道徳経が由来のことわざです。 「満足を知る人はたとえ貧しくても、精神は豊かで幸福である」という意味です。 このことわざに照らしわせれば、渇望感が強い人は心が貧しい人と言えそうです。

自己肯定感の低い人は、自分に足りないものが多いと感じています。 そのため、いろいろなものでそれを埋めようとします。

 満足していること、うまくいっていることよりも、満たされていないこと、うまくいっていないことに目が向きがちです。

コップに水が半分入っている状態を、半分も入っていると思うのか、半分しか入っていないと思うのかで言えば後者です。 減点主義で物事をとらえます。

 渇望感の強い人は、よく言えば上昇志向の強い人とも言えますが、自己肯定感の低さからくる渇望感であれば、それは一生満たされることはありません。

自己肯定感が低ければ、どんなに天が羨むようなものを手にしたとしても、自分でその価値を認めることができません。 人から価値があると言われたとしても、本人はピンとこないのです。

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なぜ日本人は怒りやすくなったのか?②

2022年03月30日 | 現代の病理

『アンガーマネジメントで読み解く なぜ日本人は怒りやすくなったのか?』(2022/1/7・安藤俊介著)の続きです。以下転載。

 

自己肯定感の低い人が持つ五の特徴

 

 これらの特徴は、一つだけあるということではありません。むしろ一つしか特徴がないほうが珍しく、人体の場合は複数の特徴を併せ持っています。

 

①承認欲求が強い

 承認欲求の強い人は、言わずもがな自己肯定感の低い人です。なぜなら、自分のことを自分で価値があると思えない、自分を受け入れることができないので、つねに他者からの承認を求めることで、自分に価値があることを確認するからです。

 SNSは承認欲求のメディアとも言われていますが、SNSが登場したことで、手軽承認を求めることができるようになり、また、承認欲求も「いいね!」などを押してもらうことで、簡胆にある程度は満たされるようになりました。簡単に承認される術を覚えたことで、承認欲求がより強化されているという印象です。

 

 

②依存心が強い

依存心が強い人も、自己肯定感の低い人です。依存心が強い人は、自分で物事を決めることができず、まわりの人に判断を仰ぎます。会社であれば、上司や同僚などに判断を求め、自分で決めることができません。

 

自分で決めることができないのは、人に判断を仰ぐからということもありますが、自分で自分の選択に責任を取りたくないという心理が慟いています。自分で決めて失敗をすれば、責められるのは自分です。そのことで、自分の価値が傷つくと考えています。 依存心が強い人の反対は自立心の強い人です。つまり、依存心の強い人は、自立のできていない人とも言えます。

ところが依存心の強い人は、自分の感情さえも自分で責任を取ることができません。

自己旨定感の低さは自己評価の低さですが、自分で自分の感情、行動、結果に責任が取れるとは思っていません。

 そして、依存できる相手を探し続けます。この人に受け入れられないのであれば、受け入れてくれる人を探さなければいけません。なぜなら自立できていない以上、誰かに頼る以外の方法がないからです。

 依存心の強い人は共依存といって、依存されることに依存するという関係になりやすい傾向があります。共依存な関係は健康的ではない関係です。

 よくあるのは、DVする相手に対して「私かいなければこの人はダメになる」と思うような関係です。自分かどうしたいかよりも、自分か相手との関係をどうっくりたいかよりも、相手から求められることに価値があると感じます。

 自立とは自分で立つと書きますが、自立できていない人、自己肯定感の低い人は、自分一人で自分の価値を確認することができないので、何かの関係の中で自分の価値があると感じようとするのです。

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なぜ日本人は怒りやすくなったのか?

2022年03月29日 | 現代の病理

『アンガーマネジメントで読み解く なぜ日本人は怒りやすくなったのか?』(2022/1/7・安藤俊介著)、「アンガーマネジメント」とは、「怒り」を上手にコントロールすることを言うのだそうです。

 

私たちは、多くの「~べき」を持っていて、「~べき」が裏切られることは、自分が大切にしている理想や願望に傷がつくことであり、怒りの火花を散らして、その大切にしているものを守ろうとする。これが、怒りは防衛感情と言われる理由だとあります。

 

本から少し転載します。

 

怒りは防衛感情です。怒ることで体を臨戦態勢にして、大切なものを守ろうとします。

 犬切なものには価値観、考え方、立場、プライド、家族、仲問といったものがあげられます。守らなければいけないものが多い人は、必然的に怒ることが増えます。

 自己肯定感の低い人は、守らなければいけないと思っているものが多い人です。それは、意識しているものもあれば、無意識のうちに感じているものもあります。いろいろなものを守らないと、自分を保つことができないと思い込んでいるからです。

 

 素直に自分のミスを認められないのは、些細なミスであろうとも自分がミスを認めることで、自分か悪いことをしたと思いたくない、それを認めてしまえば自分の価値がなくなるのではないかと、無意識に思っているからです。

 

自己肯定感が高ければ、自分のミスはミスとして素直に認めることができます。ミスを認めたところで、自分の価値が下がるとは思っていないからです。ミスはミスとして認めればいいくらいの感覚でいられます。

 

 しかし、自己肯定感の低い人にとっては、自分の非を認めることは、それがどんなに小さなことだとしても、とても難しいことなのです。(続く)

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みんなの法話ー無明=

2022年03月28日 | 浄土真宗とは?

『本願寺新報』(2022.4.1日号)「みんなの法話」に、法話原稿が掲載されます。

 

闇を照らす光にあう

 

宝くじに当たった

 

 阿弥陀さまのさとりの世界を「浄土」といいます。その反対は「穢土」です。穢土とは、煩悩にけがされた世界、この世のことです。しかし、私たちは自分が煩悩にけがれているとは思っていません。 私たちは物事を見るとき、自分の経験や思惑といったフィルターを通して物事を見ています。

 たとえば、黒い豆と白い豆を混ぜて、一つの鍋で煮ました。煮上がったので黒豆と白豆に分けましたが、2、3杪もかからなかった。なぜでしょうか」というクイズがあます。

 「黒豆と白豆を混ぜる」というのは、黒豆と白豆が「半分ずつ」という思い込みを誘い出します。。「黒豆は1粒だった」というのが答です(『織田正吉著『笑いのこころユーモアのセンス』より)。

 人は、常に思い込みをもって物事を考えてしまいます。何ごとにおいても先入観が、正しい判断の障壁となるということでしょう。煩悩のなせるわざです。

 私たちは毎日、かけがえのない命をいただいて生さていますが、あって当たり前だと思っていることも、私の煩悩のなせるわざだといえます。

 以前、肺がんを患われて、あと半年という余命宣告を受けたIさんにお話をうかがったことがあります。

 私が「今の心境はいかかでしょうか」とお尋ねすると、 「毎日がジャンボ宝くじに当たった気持ちです」と返答されました。

  「といいますと」とさらにお尋ねすると、「ジャンボ宝くじに当たると、この世で欲しい物が手に入る。いま最も欲しいと思っている一日が、朝目覚めると手の中にある。それはジャンボ宝くじに当たったような気持ちなんです」と言われました。

 病院を一時退院された時、「入院している間で、うれしかったことがありますか」とお尋ねしたことがあります。

「抗がん剤で味が感じられずに無理やり食べていたら、ある日、ご飯のじみを感じました。その時、病気が冶りつつあるという思いとともに、その甘みに感動しました」とのことでした。

 私はといえば、かけがえのない1日を、よかった日、悪かった日と、自分の思いで色づけし、命を養う食べ物を、うまかった、まずかったといって暮らしています。そんな私は、仏さまのまなざしからみれば、煩悩に汚染されている姿なのでしょう。しかも、煩悩に汚染されていると思っていないこと自体が、煩悩の証でもあるようです。

 

「無明の闇」

 少し前、メモ書きを整理していたら、1965(昭和40)年の映両「妻の日の愛のたみに」のメモがありました。この映跏は、歌人の故池上三重子さんの同名手記をもとにして制作されました。あらためて図書館から本を偕りてきて読んでみました。

 三重子さんは、幸せいっぱいの結婚生活の4年目、悪夢のような多発性関節リユウマチに悩まされ、4年で全身の関節が麻痺して寝たきり状態となります。重病にあえいだ三重子さんは、悩み考えた末に、「真に真に彼を愛するならば、私は、積極的に彼の愛を私から引き離さねばならないのだ」と、純粋に彼を愛するが故に、夫の幸せを思い離婚を決断します。

 ところが、夫にとってよかれと思った別れでしたが、彼から再婚の話を告けられた時、思いもかけず、自分の心に憎しみが湧き起こってきたのです。

  「後の妻の候補についてのあれこれを聞きはじめたとき、羨望と嫉妬と増悪が、思いがけなく、むくむくと頭をもたげて、揺り覚まされる女心を感じた。どこに、いったい私のどこに潜んだあたのであろうか」

 三重子さんは僧しみと嫉妬に1年間苦しみます。そんな自分を「無明の闇」と表現しています。その闇との出会いを通して、自分の愚かさを受け入れる境地が開かれていったのです。

 純粋な愛を求め、どれほど相手の幸せを念じでも、自分中心というとらわれから離れることはできないということでしょう。

  無明(愚痴)とはまさに煩悩です。しかし、私たちはその無明の閤を通して、その闇を照らし、抱き取ってくださる阿弥陀さまと出遇っていくのです。

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コロナ禍で少子化加速

2022年03月27日 | 現代の病理

『日本経済新聞』

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA251RA0V20C22A2000000/より転載

 

21年の出生数、過去最少84万人 コロナ禍で少子化加速

2022年2月25日 14:33

 

 

厚生労働省は25日、2021年の出生数(速報値)が84万2897人だったと発表した。20年と比較すると2万9786人(3.4%)減り、6年連続で過去最少を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、婚姻数が減り妊娠を控える動きも強まった。死亡数は大幅に増えて戦後最多だった。

21年の死亡数は20年比6万7745人増の145万2289人。出生から死亡を引いた自然増減は60万9392人減となり、初めて60万人を超えた。

出生数は21年1~2月の落ち込みが目立つ。この時期は20年春に妊娠した人が出産を迎えるタイミングにあたるが、新型コロナの感染拡大初期と重なっており妊娠控えの影響が出た。

21年後半にかけては20年並みの出生数に戻ったものの、コロナ禍前の19年の水準には戻っていない。婚姻の件数は51万4242組で、20年に比べて2万3341組(4.3%)減り、戦後最少だった。

速報値は日本に住む日本人のほか、日本に住む外国人と外国に住む日本人も含む。毎年6月にまとめる概数や9月の確定数は日本に住む日本人のみで、速報値より出生数などは少なくなる。(以上)

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