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仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

「堕胎の悲しみ」への返信

2025年09月05日 | 正しい絶望のすすめ
家族が自死で悩んでいる人へのアドバイスを求められ、実際に出した手紙を、参考例として送りました。その一本目です。

「堕胎の悲しみ」への返信

「拝復 お手紙ありがとうございました。お辛い日々をお過ごしのこと、ご心痛お察し申し上げます。やっと恵まれたお子さん、ご出産の希望、将来への夢、そうしたなかでの苦渋の決断、後悔や自分に対するその怒り、失ったことの悲しみや懺悔、解決できないその思いは、経験したことのない私の計り知れるところではないほどに深いことでしょう。
 思うところを、そのまま言葉としてお伝えしますので、非礼がありましたらお許しください。
  私は常々、人が存在することの不思議を考えることがあります。隣に住んでおられても、縁のない方であれば、事故で死亡しても悲しみは起きません。
しかし遠く離れていても、情の通った人であれば深い悲しみをもちます。人と人の関係は、距離の遠近や関係をもった時間の長さではなく、その人が私にどのような影響を与えた方なのかが、私にとってのその人の本質なのだと思います。
  今、死別という悲しみのなかで、あなたの上に、この子が宿らなかったら、縁をもたなかったであろう、さまざまな出会いが、池にできる波紋のように広がっていることでしょう。今、こうしてお手紙を差し上げるということもその一つです。
こうした亡きお子さんをご縁として生じた新しい波紋こそが、大きな意味で、先に逝ったお子さんの人格であり、存在の証なのだと思います。お子さんのエネルギーは、五体の枠を越えて縁のあった私たちに、さまざまな形で影響を与え続けています。お子さんは遠い手の届かない世界に行ったのではありません。
もし、あなたが亡き子を思い、その短かかった存在を通していのちの不思議、いのちの尊さを思うならば、今、あなたにいのちの不思議、いのちの尊さを思わせた存在として、共にここに居てくださっています。
 お手紙のなかに『神様のもとへお返ししよう』と決断したとありました。おそらく神という言葉で現実を受け止められたということで、ご自身の信仰から導かれた言葉ではないのだと思います。もし間違いでしたらお許しください。
  私は、『神様のもとへ』は自分を慰めるための言葉ではなく、真実なのだと思います。お子さんはあなたの上に受胎して何か月か過ごされ、また神のもとへ行かれた。
その事実は、私の言葉で言えば、仏さまのお仕事をされに来られた。その仏さまのお仕事がなんであったのかを見つめていくなかに『神のもとへ』と、あなたが本当に頷いていける世界が開かれてくるのだと思います。
 悲しみや苦しみには、大切な意味があります。その悲しみや苦しみを通して、今まで経験したことのない心の領域に到達していくことが、亡き子から頂いたご縁を深めていくことなのだと思います。
 思うところを書きました。どうぞご自愛の上、頂かれたご縁を大切にご相続ください。」

 
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血液さらさらの副作用

2025年09月03日 | 正しい絶望のすすめ
先月(2025.8月)8日、午前中にお盆の出勤での帰り際、急に目眩がして、午後の疲れは相当なものでした。
結局、次の日の午前中、クリニックへ行くと、消化器から下血していることが判明、原因は、どうも血液さらさらの薬の服用のため。お盆中は、息も絶え絶えの疲れ、それからずっと疲れがつづくので、先ほどクリニックへ行くと、約400cc下血したので、そのためですとのこと。

クリニックから帰ってきて調べると次のようにありました。

普通の人の体には、いったいどの位の血液があるのでしょう?
個人差はあるものの、成人では体重の1/12~1/13の血液があるといわれています。
つまり60kgの成人では約5リットルの血液があることになります。
怪我や病気など様々な原因で、血液の20%(1リットル)が失われると、出血性ショックという重篤な状態になり、30%(1.5リットル)を失えば生命に危険を及ぼすといわれています。(以上)

血液さらさらの薬は、消化器系の器官からの出血の契機になるようで、血液さらさらの薬を止めて脳梗塞になる機会を増やすか、消化器系からの出血を覚悟して服用するか、医者曰く、どちらの方が延命効果が高いかと言えば、血液さらさら服用の方が、若干有利だとのことです。
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損失回避

2025年07月30日 | 正しい絶望のすすめ
『世界は行動経済学でできている』(2025/2/27・橋本之克著)からの転載です。
「もう使わないもの」が  捨てられない理由

ポイントカードをつくらなかったことへの後悔

人気お笑いコンビ「かまいたち」のネタに「タイムsマシン」というものがあります。
「もしタイムマシンがあって、過去に戻って何か1つだけやり返せるとしたら何がしたい?」という、濱家さんの問いかけから始まります。そこで山内さんは「コンビニのポイントカードをつくる」と答えます。
 最初に「ポイントカードをつくりますか?」と聞かれたときになんとなく断ってしまい、それから毎回「つくりますか?」と聞かれるものの、今カードをつくるとこれまでに得られなかったポイントを損した気持ちになってしまうため、意地を張って結局つくっていないというネタです。
「つくりますか?」とはじめて言われた日に戻って、ポイントカードをつくりたいと、レジで支払いをするたびに思うとのこと(オチはここでは割愛しますが、とても面白いネクなので機会があればぜひ見てみてください)。
 このネタには、まさに行動経済学における「不合理な判断」がうまく表現されています。


「損をしたくない」気持ちが損を生む?

人がポイントを集めたくなる背景には、「保有効果」というバイアスが働いています。

「保有効果」とは、自分が所有する物に高い価値を感じ、手ばたしたくないと感じる心理です。この心理は、123ページで少し触れた「損失回避」とも関連があります。
 「損失回避」とは、人が損失に対して過大に反応し、なんとしてもこれを避けようとする傾向です。
「保有効果」は、自分が保有する物事に対して、手放すことを損、手に入れることを得と捉えたときに生まれる心理です。元は「損失回避」と同じものと考えられます。
 これらの心理を提唱したダニエル・カーネマンは、著書『ファスト&スロー』(早川書房)で、「損失回避」を示すエピソードを紹介しています。
 コイン投げの賭けの実験で、被験者に「コインの裹が出たら100ドルを支払い、表が出たら150ドルをもらえます。賭けをしますか?」と尋ねたのです。
 コインの裹と表が出る確率は、それぞれ2分のIで同じです。そしてもらえる額のほうが多いのですから、賭ければ得をする可能性が高いわけです。しかし実際は、被験者の多くが賭けを断る結果になりました。理由は、100ドルを支払う悲しさのほうが、150ドルを得られる嬉しさよりも大きいからです。
と尋ねたのです。
 
 「スポットライト効果」のところで、限定顧客向けのサービス、希少な商品の限定販売などの例を紹介しましたが、この「限定」という言葉は「損失回避」で買いたくなる心理を生むキラーワードでもあります。

期間限定‥[本日限り○%オフー][今月末までの入会で入会金無料‐ここ地域限定‥「当店限定販売」 「名古屋限定販売」「個数限定」「限定200個のみ販売」 「売り切れ次第販売終了」
このような「限定」を強調したキャンペーンやキヤッチフレーズを見ると、顧客は「限られたチャンスを失う」 ことを「損失」と捉え、これを避けようとする「損失回避」が慟くのです。
 その場の表層的な損失を避けようとするわけですが、無駄なものを買ってしまうことによる「本質的な損失」には目が向きません。結果的に、その商品が本当に必要なのか、本当に欲しいのかを考えずに回ってしまうのです。
このような指失を避けたい心理を逆に活用する事例があります。東京鄒八王子市が実施した大腸がん検査の受診促進策です。
 大腸がんは日本人の死亡者率が二番目に多いがん(令和4年「人口動態統計(鎗定数)の概況」[厚生労働省])であり、その対策として大腸がん検診による早期発見が有効です。
 八王子市では、前年度の大腸がん検診受診者に対して、本人からの申し込みがなくとも自動的に「便検査キット」を送付していました。ところがキットを受け取っても受診しない人がいるため、はがきを送って受診を促したのです。その際の文言を2パターンつくり、実際に受診したかとうかを訓べました。

A 今年度受診すれば。来年度も検査キットがもらえます。
B 今年度受診しないと、来年度は検査キットを送付しません。                       

同じことを言っているのですが、Aでは利得を、Bでは損失を強調しています。その結果、Aの受診資加22・7%ごったのに対して、Hの受診率は29・9%と、損失を訴えた文面のほうが受診率が高くなったのです(*20)。
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サンタコスト効果

2025年07月28日 | 正しい絶望のすすめ
『世界は行動経済学でできている』(2025/2/27・橋本之克著)からの転載です。

「やりたいこと」に なかなか挑戦できないわけ

年々「新しいことへの挑戦」が難しくなるのはなぜか

 あなたが、今の仕事を10年間続けてきたとしましょう。
 この10年、あなたは時間と労力を費やし、まじめに仕事に取り組んできました。しかし、最近はあまり仕事にやりがいを感じられなくなり、本当に好きなことを仕事にしたいと考えることが増えてきました。
 そんなとき、「今の仕事を辞めて、やりたかった業界に転職しよう」「自分で起業してみよう」などという選択をスパッと決断できるでしょうか。
 もちろん年齢や自分を取り巻く環境(家族がいるかなど)、給料やそれまでのキャリアなどによって判断は変わるでしょう。ですが、もし制約があまりなかったとしても、多くの場合、「10年も続けてきた什事を手放すのはもったいない」「これまでのキャリアを捨てて新しいことをやる自信がない」などと考えてしまうのではないかと思います。
 このような、「それまでに費やしてしまったコスト(時間、お金、労力など)に固執してしまう心理」は、行動経済学では「サンタコスト効果」と呼ばれます。「サンタ」とはsunk=沈んだという意味の英語で、「サンタコスト」はまさに、沈んでしまって手元に戻ってくることはないコストを意味しています。

「ダメだ」とわかっていてもやめられない
「覆水(ふくすい)盆に返らず」ということわざは、失ったものを取り戻そうとしても仕方ないといさめる言葉ですよね。
 人は、過去に失ったもの、もはや取り戻せないものに固執してしまう生き物です。
過去にこだわってしまった結果、れから先の未来を合理的に考えられなくなることがあります。それが「サンタコスト効果」なのです。
 この「サンタコスト効果」、先はどの転職の場面以外にも、大小さまざまな例が身近にあります。
 例えば、「ダメな恋人とわかっているが、長年付き合っていてなかなか別れられない」といった恋愛のケース、また[何年も前から進めている大きなプロジェクトの雲行きが怪しいが、すでに人もお金も投資しているため、今さらストップさせることができない」といったビジネスのケースも考えられます。

あと○○円分買えば、△%割引
2点セットなら、送料無料―
日常の買い物でも、このように言われると、[そうしないと損をしてしまう、お金が無駄になる]ような気がして、欲しくないものまで買ってしまったりします。

これも「サンタコスト効果」です。
 割引や送料無行までもう一息と思うと、買い足さずにいられなくなること、誰でも経験があるのではないでしょうか。その結果、不安なもの、量が多すぎるもの、よく考えると使い道のないものを買う羽目になったりするわけです。

無料でもらった招待券で入場した映画なら、つまらなければ途中で出てしまえばいいと考えられますが、自分で買ったチケットとなると、なかなかそうはいきません。
 

「もったいない」がさらなる浪費のもとになる

企業の立場で考えると、顧客にサンタコストを意識させると、より多くの支出を促せることになります。
 例えば、オンライングームなどでキャラクターのレベルアップや、アイテムの強化などに少しずつ課金をさせていくと、ユーザーは「ここまでお金と時間をかけて育ててきたキャラクターを捨てるのは惜しい」という意識が働くようになり、なかなかゲームをやめられなくなります。

出版業界における、いわゆる「分冊百科」も「サンタコスト効果」を巧みご利用しいる例でしょう。1巻目、2巻目……と取り組んでいるうちに、実は思ったよりお金がかかりすぎる、想像以上に完成までが長いと感じても、いったん買い始めたのだから途中でやめるのはもったいない、といブレーキが働くのです。
 売り手はこの点をよく知っているため、特に創刊号は大きく値引きしたりすることで、とにかく一度体験させる=始めさせるように努めるわけです。
 何十巻も続いている漫画を途中でやめられずどこまでも読み続けてしまう、といったことも「サンタコスト効果」と言えます。
 このような例は、枚挙にいとまがありません。
食べ放題で払ったお金の元を取るために、おなかがいっぱいでも詰め込んでしまう。
・自分の足に合わなかった靴を「高かったから」 と捨てられず取ってある。
・クレーングームで目当ての商品があと少しで取れそうだと感じると、取れるまで ゲームを継続してしまう。
・勤めている会社に強い不満があるのに、なかなか辞める決心がつかない。
本項の冒頭の話は、自分にとってのやりがいが感じられなくなっても転職や起業ができないという例でした。それどころか会社に対して明らかな不平があるのに辞められないというケースも多いようです。
 「サンタコスト効果」は。表現を変えると「一度始めた物事をやめられない」状態を生み出す心理的バイアスと言えそうです。
結果的にやめられない状態に陥るのです。
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現在志向バイアス

2025年07月25日 | 正しい絶望のすすめ
『世界は行動経済学でできている』(2025/2/27・橋本之克著)からの転載です。

「1年の計は元旦にあり」は、行動経済学的に誤りだった

立てた目標に挫折してしまう理由
「1年の計は元旦にあり」と言われますが、みなさんは年始に何か「今年の目標」を立てたでしょうか。

「今年中に10キロやせる」
「年間100万円貯金をする」
「資格試験合格を目指して勉強をする」

そんな目標の数々は、予定どおりに達成できましたか?

ちなみに私は、毎年年明けに「今年こそこれをやろう!」という目標を立てていますが、だいたい途中で挫折してしまい、ほとんど達成できたことがありません。
 詳しくは後述しますが、これには人間に共通の「習性」が関係しています。

例にあげた、健康や美容のためのダイエット、お金を貯めるための節約、試験に合するための勉強……。

 どれも現時点よりも先の利益を得るための行動ですよね。

 一方、目の前のお菓子を食べる、ネットで服を購入する、勉強のテキストを閉じてオンラインゲームをするなど、目標達成を妨げる誘惑の数々は、今この瞬問に手に入る利益です。
 私たちはしばしば、「将来手に入る利益」よりも。「目の前にある利益」を優先してしまいます。「やらなきやいけないのはわかっているけど、とりあえず後回しにして今はこれを楽しもう」と思ってしまいます。
 これを「現在志向バイアス」と言います。

「先送り」にまつわる一連の行動には、「現在志向バイアス」以外にも、さまざまな行動経済学の理論が当てはまります。

現状維持バイアス(315ページ)……変化を避けて現状を保とうとする心理。変わることによる損を避けようとする(例・今の仕事に不満はあるが転職の決断が できず、同じ会社に居続ける)。

決定麻痺(16ページ)……選択肢が多すぎて決断を先送りしたり、決断自体をやめ てしまったりすること(例・携帯電話の料金プランを見直したいが、プランやオプションが多すぎて、結局変えられない)。

・投影バイアス……(この状況が延々と続くと見込み、リスクを未然に防ぐ発想になり計画錯誤……計画の見通しがけいために達成できないこと(例・夏休みの始まりには宿題の計画を立てるが、拮局そのとおりに終わらずギリギリになる。

このように、「ついつい先送りしてしまう」という行動には、さまざまなバイアスが影響しているのです。

目の前の利益を優先したくなるのは「原始人」の名残?

「現在志向バイアス」とは、人が判断をする際に、未来よりも目先(現在)の利益を優先する傾向を指しています。
 目の前のおいしいお菓子を食べる「利益」と、そのお菓子を我慢して将来やせるという「利益」を比較すると、前者を優先してしまいます。
 前者の利益を受け取ってしまうと後者の利益を得られなくなるとわかっていても、目の前の利益を求めてしまうのです。
 その結果、口標を軽視したり、先送りにしたりしてしまいます。
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