真面目に主婦業をやっていた、 少し変わった性格の女性が、
隣人とのトラブルをきっかけに突然何もかもを投げ出して
南極に向けて旅立つハートフルコメディだと思っていたが、
かなり違って、若くして業界の注目と期待の的だった天才建築家が、
現在は主婦業をやっており、
天才特有の社会性の欠落からトラブルを起こし、
それでも彼女なりに必死に家族へ愛を向けようとした結果…という話だった。
類型としては 「破天荒な天才話」。
でも男性主役の天才話と、 女性主役の天才話は展開が違って面白い。
「TAR」 も破天荒な天才話ですが、
全然違う人に見えるので演じ分けがすごい。
そしてエキセントリックな女性が何事かを成し遂げる話という事で
「ロスト・キング」とフォルダが同じ映画ともいえますが、
どちらも配偶者の夫が超超いいひと。
(破天荒男性主役の癒し系妻or彼女ちゃんの男性版ですね)
同時に母と娘の物語でもあります。
(破天荒父話には彼をリスペクトする息子くんが付いてくることも多いですが、 反転版だ)
ラストまでばれ
タイトルと内容紹介が少しミスディレクション気味に感じられるが
昔はすごかった変わり者のママの自分探しの物語ではない。
でもまあ普通の身近な存在の女性主役でないと集客できないというのは分かるし、
その読みは多分正しい。
まず彼女は天才で、 そんな彼女が創造をせずに普通の暮らしを送るのは、
スーパーカーが自転車と並走するようなもの。
そして彼女は重度の鬱病で自殺の危険があるという疑いがかけられますが、
精神科医は普通の人間の精神には詳しくても、おそらく天才の精神のプロではない。
天才のスランプが、 鬱病の症状と酷似している可能性があるのでは?
あと鬱病や双極性障害は、普通の人間が健康的に過ごし、
毎日労働し周囲とコミュニケーションをとるのには障害となるが、
天才が創造性を発揮するには不可欠なプロセスなので治療は不要では。
(当人が健康と長寿と交流を犠牲にしても創造したい場合に限るけど)
ラストのバーナデッドがパワーに満ち、 全開の笑顔だったので
私は長期スランプだった説をとりますけども。
今の南極の基地ってあんなAT-ATみたいなデザイン?って調べたけど
英国の研究基地ハリーVIで、デザインコンぺで勝利した
ヒュー・ブロートン建築事務所のアイディアのようです。
すごく画期的でスーパークールなデザインらしい。
しかしよく風圧で転倒しないな。