映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「華麗なるギャツビー」

2013年06月20日 | 古典名作

ヨーロッパの、王侯貴族を中心に培われてきた文化の絢爛豪華さも
素敵だなあ、って憧れるんですけど、
アメリカの、大富豪たちの絢爛豪華さも
うむむ、見応えあるなあと思います。
ゴージャスで、陽気で、パワーがあって、空虚で。

青年ニックを通して語られる、
ギャツビーという謎の富豪の物語です。
私はむかし原作を読んだとき、
「ギャツビーは女を見る目がないなあ」
「ギャツビーのどこがグレートなのか分からないなあ」
というのが2大感想でしたが(もう少し歳を取ってから読むべきでした)
この映画のデイジーは綺麗すぎたので、
これはギャツビーでなくてもころりと参るだろう、というのと、
あとラストで「あ、うん…グレートですね。了解です」って納得しました(笑)。

ギャツビーの城で繰り広げられるパーティーがすごかったです。
シャンデリアと音楽とシャンパンと、綺麗なおんなのひと、
タキシード、照明に照らされるプール、降ってくるスパンコール、カクテルの中に映る光、
何もかもきらきらと輝いていて、
大富豪のお屋敷に数日滞在していたかのような気持ちになる映画でした。
これは大画面で見た方がいいかもしれない。
(動画サイトの予告映像を貼ろうと思ったんですが、色が汚いのでやめた)

内容ばれ

ニックを演じたトビー・マグワイアさんの
あの堅実で謙虚で清潔な感じがギャツビーと真逆で際立ってた。
柔和に微笑したままでドン引きしていたり、
柔和に微笑したままで軽く非難していたりする表情が良かったです。

ギャツビーの名乗りと同時に花火が開くところ、
笑ってしまったけど、あの演出のために前日から予行で花火を上げて練習して
ギャツビーがニックに声をかけるタイミングを完璧に計算していたとしたらちょっと泣ける。

自分のことをよりよく見せようと
ニックに必死でマシンガントークをするギャツビーの表情を見て、
ああ…と顔を覆いたくなりました。
カラオケでも自分ばかり歌って
人にマイクを渡さなかったら引かれるのと同じで、
「自分を尊敬して!」「すごいと思って!」「信用して!」って
押しつけてはいけませんギャツビー…。あと息継ぎしようね。

デイジーは魂のない女性で、理想の女神像を投影しやすいのですが
その実、おしめが不快で泣いている赤子くらいの自我しかなくて、
自分を楽しませて快適な状態にしてくれるひとなら誰でも何でもいいんです。
でもギャツビーも、デイジーが何を考え、芯のところはどういう女性なのか
見る能力がないし見ようともしていなかったのでお互い様です。
デイジーなんかやめてニックにしておけばよかったのに……。


この映画の監督バズ・ラーマンは「ロミオ+ジュリエット」とか撮った人。
(あの映画すごく好きなんですよ)

フィッツジェラルドも、あまり幸せにはしてくれなさそうな女性を好きになり、
酒で体を壊して亡くなったんですね。
うんまあ平穏に天寿を全うさせてくれるパートナーと、
芸術的天啓を与えてくれるミューズは違いますもんね。

wikipediaを見たらヘミングウェイさんに
「フィッツジェラルドは変な所がいっぱいあるけど
あれだけ書けたらやっぱ友逹になって、
親切にしてあげないといけないよね!天才だもんね!」
って言われてる…。ヘミングウェイさんが大人だ…。

せっかくなのでハルキ・ムラカミ訳のギャツビーを読んでみようと思います。


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「アンナ・カレーニナ」

2013年04月16日 | 古典名作

まあ端的に言えばお花畑不倫脳の女性がやらかしちゃった話…
なのですが、監督が時代もの大好きな完璧主義なので、
圧倒的な美しさです。浴びるように贅沢に、ザブザブと美しい。
最初は舞台劇の体裁で始まります。
めまぐるしくセットが組み換わり、天井の簀の子の上や
本来なら客席のあるスペースもセットとして使われ、
人々はときにバレエのような、パントマイムのような奇妙な動きを見せ、
あるいは停止し、音楽に合わせて動き、演奏者が画面に姿を見せ、
様々な表現の交差した、不思議な世界です。
でも題材が古典で、衣装と美術はクラシカルなものなので
尖りすぎていて疲れるという事はありません。
たっぷりとして優雅なロシアのドレス!(とマントとマフと帽子!)

フリンアカン
カレーニンくんが気の毒すぎる。演じたのはジュード・ロウ。
眼鏡のジュード・ロウを捨てるなんて!アンナのばか!オタンチン!
アンナの兄のオフロスキー(違)も家庭教師とよろしくやっているので
たぶん不倫DNAが受け継がれているんでしょう。

映画を見て気付いたが、私たぶん原作未読です。
世界の文学ベスト10には必ず入る古典なのに!あらやだ!
そういえばマッシュアップ小説の流行っているアメリカでは
「アンドロイド・カレーニナ」って本も発売されているらしいですね。


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「ファウスト」

2012年07月23日 | 古典名作


アレクサンドル・ソクーロフ監督
権力者4部作最終章。
ゲーテの「ファウスト」を下敷きにした物語です。
全てのシーン全ての瞬間が絵画のモチーフのようでした。
狼藉者が洗濯場から若い娘をかどわかそうとするのを
張り手で阻止しようとするおかみさん方、
なにかに気を取られている若い娘のスカートをめくって
パンツを見るおっさんたち、
押し合いへしあいする葬儀の列、
酒屋での軍人たちの喧嘩、
薄暗く埃っぽい店の中に差す光。

しかしながら割と序盤のシーンで気持ち悪くなってしまって
監督には申し訳ないですが「早く終われー早く終われー」
とずっと念じていました。うん…ちょっと夏バテ気味かも…。

難解、というのではないが、
なんとなく納得できない不可解な展開が続きます。
私は物語の中の暗喩は、よほど興味が持てない限りは一切スルー派なので、
誰かの夢の世界を見ているようでした。
常に飢えていて、常に金に困っていて、常に怒っている。
男が恋をしているが、発情期の犬のようなそれである。
私が眠っている時に見る夢は全然あんな風ではないし、
ああいう夢を見たいとも思わないけど。

内容ばれ(気持ちの悪くなる話)

死体の解体で内臓ドベチャァァァー!とかは平気だったんですが、
ゆでたまごを食べるところがね…。
私、体から出たものを再度口に入れるのがどうも苦手っぽいです。

監督のインタビューを読むと、
「最後にファウスト博士は、魂を要求する存在を打ち倒し、
自由を得て権力者になった」
というような事が書いてあり、えええーっ!ってびっくりしました。
最後ファウストは破滅したんだと思ってた…。

やたら狭い所にぎゅうぎゅうおしくらまんじゅう状態になるのと
男同士の過剰なスキンシップのシーンが多かった。
監督の萌えなのかしら。



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「ジェーン・エア」

2012年06月08日 | 古典名作



不朽の名作を映画化。
19世紀初めの英国のお屋敷と衣装の好きな方は必見。
とても素敵でした。
窓辺のソファ。手吹きガラスの陰影。豪華なドールハウス。
お花がいっぱいの庭。生垣。周囲の湿地。
お客様をお迎えするための準備の忙しさ。サロンでの退屈な談話。散歩。
逆に夜の暗さ寒さ陰鬱さ。蝋燭の明かりのまぶしさと頼りなさ。
妙にホラー風の演出が多くて、冬にいたら心を病みそうだなと思いました。

撮影はハドン・ホール(Haddon Hall)で行われたそうです。
画像検索してうっとりしました。
後のお屋敷の撮影はウイングフィールドマナー(Wingfield Manor)で。
こちらもまた違う意味で大興奮です。

古典なので反転しませんが内容ばれ

・ああうん、現代でもいるよね、電波ばかりに妙にもてる女の人…
 という感じ……ロチェスターくんがダーシー卿を電波にしたような人で、
 牧師の人もそうですが、なぜ分かりやすく平易な言葉を使わず
 宇宙からのメッセージみたいな文章でジェーンを口説く?
 それともあれが当時の格好良さ?
・おたくは(私も)下手な例え話が好きで会話が空転しがちですが、
 ロチェスターくんもまさにそれ。
・美男ではない設定への努力か、ファスベンダーは変な髪型だった。
 ちょっと前の、稲垣ごろうさんの「その頭はやめておきなされ…」って思った髪型だ。
・ジェーンの相続した2万ポンドってどれくらい?と調べてみましたが、
 「高慢と偏見」のベネット家の年収が2000ポンドだから、
 一生豪遊して暮らせる額ではないが、贅沢しなければまあなんとかくらい?
・洋服はどれも良かった。特に襟のデザインが。
 ジェーンの引き取られた 学園みたいなところの制服までかわいかった。
 あとレースの飾り襟ってお洒落ですね!
・胸と背中に逆三角形の布のパーツがあるとウェストが細く見えますねー。
 このトリックアートは現代の服で何か応用できないものか。
・英国にパジャマがもたらされたのは1870年だそうです。
 就寝中のロチェスターくんが着ておったのはたぶんナイトシャツ。
 それにしても足を見せすぎだ。
 X-MENの女装とシェイムの全裸で何かが吹っ切れたのかファスベンダー。
・あの劣悪な環境の学院は作者の通っていた学校がモデルで、
 作者の姉2人がその学校で死んだってwikiに書いてあって、びびりました。
・ヘレンの死相メイク、なぜ首までちゃんとファンデを塗ってあげないのだ!
・三銃士と同じく自分が原作を読んだのか読んでないのかウロだったのですが、
 ラスト近くで「あれ?読んでないのかな?」と思った。


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