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『自閉症は津軽弁を話さない』

2021年01月17日 | BOOKS
『自閉症は津軽弁を話さない』
松本敏治
福村出版(2017年)

角川ソフィア文庫版(2020年)

 言語学や言語習得論を勉強していることもあって、興味を持った1冊です。
 夫婦喧嘩(?)がきっかけで、「言葉を身につけることの不思議」に取り組んでいく研究者の記録です。

 実際に子どもと接する立場と、大学で研究する立場。
 現場の実感と、一般的な知識。
 敵対しているわけではありませんが、現場側を応援したくなるのは、私も似たような立場だからかもしれません。

 小学生の支援ボランティアに入ると、子どもたちは本当に一人一人が同じではないと痛感します。
 得意不得意も、好き嫌いも、感覚も、みんな違います。
 そんな中で、私も、自閉スペクトラム症の子は共通語を話す傾向があるように感じていました。
 「共通語だな」と思ったというよりも、「アナウンサーのように丁寧な話し方をするな」という印象でした。
 なので、この本のタイトルを見たときにワクワクしました。
 はっきりと方言が現れない地域(都会)では気がつかない現象が、方言をよく使う地域(地方)で発見されて研究されることも興味深く感じました。

 社会言語学的にも、方言(地域変種)は場面や状況を判断しながら使う言葉です。
 習得する段階でも、相手の意図を読み取ったり、推測したりしながら身につけているのですね。
 日本語は「高コンテクスト文化(高文脈文化)」といって、「言外の意味」が多く含まれる言語だと言われています。
 「言外の意味」を察することが難しい人にとっては、少々生きづらい社会なのかもしれません。

 この本には続編『自閉症は津軽弁を話さない リターンズ』が出ています。
 そちらも是非読んでみたいと思います。

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