
2024年の年末31日、アメリカの著名なオフロード二輪雑誌「Motocross Action(MXA)」ネット誌は「2025 MOTOCROSS ACTION 250 SHOOTOUT: SUZUKI, TRIUMPH, KAWASAKI, HONDA, YAMAHA, GASGAS, HUSQVARNA, KTM」として、250㏄クラスのモトクロスマシンのshoot out 記事を投稿している。昨年11月の450㏄クラスのモトクロスマシンのshoot out に引き続き2500㏄クラスの比較だが、これは面白い。
米国のMotocross Action誌と言えば、オフロード大国アメリカで最も読者数が多いモトクロスに関する専門誌で、彼らが投稿するモトクロスマシン評価の動画は他の専門誌よりはるかに多くのユーザーに読まれているという比較記事が投稿されるほどだから、我々も現役当時から、その記事を意識して読んでいたので、その癖は今も治らない。大昔は、モトクロスマシンと言えば日本の4社が製造販売するマシンの評価だけで良かったが、最近は欧州発のマシンの活躍が目覚ましく、と言うより欧州発のマシンの方がNO1マシンだと評価されてきた実績があるので、今回は新参マシンを含む日欧8ブランドのマシンが評価対象となっている。今回の250shoot outに初めて登場したのは英国のモトクロスマシンTRIUMPH TF250-X。
Motocross Action誌の結果は次の通り。
●FIRST PLACE: KTM 250SXF — $10,399
●SECOND PLACE: HUSQVARNA FC250 — $10,499
●THIRD PLACE:GASGAS MC250F — $9599
●FOURTH PLACE: YAMAHA YZ250F — $8899
●FIFTH PLACE:HONDA CRF250 — $8299
●SIXTH PLACE:KAWASAKI KX250 — $8999
●SEVENTH PLACE:TRIUMPH TF250-X — $9995
●EIGHTH PLACE: SUZUKI RM-Z250 — $8199
NO1評価を受けたのはオーストリアのKTM250。
KTMのマシンは世界中のモトクロスシーンで高く評されてきたが、2025年もNO1の評価だ。
一方、最も評価の低いマシンはスズキのRM-Z450。スズキ社は世界選手権、全米選手権等のファクトリー活動から撤退し、更に2019年市販モデルから何ら改良されていないとのことで、数年前はShootout記事の対象にさえ加えてもらえなかったが、2025年モデルは市場に新規登場した英国のモトクロスマシンより評価は悪く、最下位のまま。
スズキのRM-Z450は2019年以降、何ら改良されていないので、評価ライダー達から、なんだこのバイクはと言われている。「そう、RM-Z250の順位は、始める前からわかっているのだ」と書かれている。 このバイクの最大の特徴のひとつは、その価格で、スズキのディーラーは8199ドルからスタートし、さらに手頃な価格になるよう交渉に応じてくれることが多いらしい、と手厳しい。
スズキよりも評価の良かった7位は英国のTRIUMPH TF250-X。
英国の老舗二輪メーカーのTRIUMPHがモトクロスやエンヂューロマシンを開発中だとの話題は3年前のAMA初戦の場でTRIUMPHの技術者がコメントしていた。米国モトクロス史上#1と称されるRicky Carmichael 選手がその開発を手助けしているとの情報「TRIUMPH MOTORCYCLES TO INTRODUCE ALL-NEW MOTOCROSS & OFF-ROAD DIRT BIKES」は、2021年の中盤に報道されていたので知ってはいるが、TRIUMPHマシンがAMAのSXレースに登場するかもしれないと、しかもそれが近々に見られるとなると、すごく興味があった。
評価者のコメントは、トライアンフTF250-Xはモトクロス市場初登場マシンとは思われないほど、出来はよい。シフティング、ECUのマッピング、パワーバンドに若干の問題が改良さえすれば、Shootoutの上位に食い込んだはず、と書いている。
★ 「評価N01のKTM」

3年連続でKTM 250SXFがMXAの250バイク・オブ・ザ・イヤーを受賞した。特にパワーバンドが広くかつ力強い。快適で信頼性の高いWP製サスペンション、耐久性の高い油圧クラッチ、信頼性の高いブレンボ製ブレーキ、使いやすいツインエアフィルター、手で調整可能なサスペンションクリッカー等は優秀だ。荒れた路面を難なくこなし、直線ではライバルを上回り、コーナーを正確にこなせる。多くの評価ライダーはこのマシンを文句なしの一位だと評価した。
★ そのKTM本社だが現在、法的再建手続き中で、一時期、倒産のうわさも流れていたが当座の資金も確保したようだ。2025年のKTMワークスのレース計画は予定通りに参戦すると表明しているが、31日の”cyclenews.com”には「KTM to Leave MotoGP in 2026?として「KTM’s long-term MotoGP plans are in a precarious state with a report in the Austrian media pointing to the factory withdrawing from the MotoGP paddock at the end of 2025.」として、2026年から MotoGP撤退を示唆している。
昨年2024年の12月に投稿された「KTMニュース」にもあるように「READY TO RACE は KTM にとって単なるスローガンではありません。私たちの存在を定義するものです。レースには、良い時も悪い時もあり、大胆さも失望も、勝利も敗北もあります。2024 年は当社にとって勝利を重ねた年でもありましたが、同時に挑戦の年でもありました。2025 年、そして未来に向けて、さらなるジャンプ、深い轍やバンピーなセクションが目の前に続きますが、私たちはスロットルを緩めることはありません・・・」、と上手く書いているので、若干の計画変更はあるものの、KTMの存在価値そのものである「READY TO RACE 」活動は継続されるのだろう。
★ KTM本社が法的再建手続きに至った主因は在庫処置にあると幾つかの報道にあったが、一方ここ数年のKTM社の勢いには目を見張るものがあった。例えば、2年前の2023年3月31日付けの”Motocross Action mag”の「RUMORS, GOSSIP & UNFOUNDED TRUTHS:」の中に「KTM NORTH AMERICA’S ALL-NEW $53 MILLION HEADQUARTERS OPENS ON 20 ACRES」と言う記事では、例えば、KTMの勢いを象徴しているものとして、総費用$53百万(約70億)のKTM北米新社屋を紹介している。

“This is an emotional day for me,” said Stefan Pierer, CEO of Pierer Mobility AG. “Exactly 30 years ago I started in the USA with only a dozen employees. Today, we are Europe’s leading Powered Two-Wheeler group, we’re selling approximately 100,000 units annually in the US market, so more than one billion dollars in sales. The most important success factor for us is racing, that is the driving force that pushed us over the years, even in the US market. Building our new North American headquarters in Murrieta was the biggest single investment we’ve ever made yet. We set a new standard for the whole US market.”
北米KTMは KTM、 Husqvarna、 GasGasの各ブランドの二輪や幾つか電動を含む自転車そしてWPブランドの高級パワーパーツ部品を取り扱う会社で、CEOのStefan Piererは「今日は私にとって感慨深い一日だ」と述べ、「ちょうど30年前、アメリカでわずか10数名の従業員でスタートした事業が今日、KTMはヨーロッパを代表する二輪事業のリーディングカンパニーにまで成長し、米国市場で年間約10万台を販売して10億ドル以上の売上高を達成している。KTMがここまで成長してきた大きな要因はレース活動を中心にした企業活動であり、レース活動こそが、それが米国市場でも長年にわたるKTMの原動力であった」と話した。
そして、「北米グループの組織は、2009年の30人の従業員から2023年には約360人の従業員へと成長し、3棟からなる新しい複合施設は、北米にある1000以上のネットワークをサポートするために、さらなる拡張を計画している」と続けている。
加えて、2020年には、米国の専門誌”Motocross Action mag”でこう解説「KTM SET SALES RECORD FOR THE NINTH YEAR IN A ROW)するまでになっていた。
KTM and Husqvarna combined for a total of 280,099 motorcycles sold in 2019, an increase of seven per cent over 2018’s sales totals. That makes it nine years in a row of sales growth for the company as a whole. Of the 280,099 units sold, 234,449 bikes were KTMs, and 45,650 were Husqvarnas.
「KTMとハスクバーナを組み合わせた2019年の合計販売台数は280,099台で、2018年の販売台数比+7%。 これにより、会社全体の売り上げが9年連続プラス。 280,099台の販売台数のうち、234,449台がKTMで、45,650台がハスクバーナだった。 さらに別の原文には、KTMグループの主要市場は米国で、特に米国のオフロードユーザーに支持されていると述べ、米国市場における日本のビッグ4の販売が低迷する中にあって、KTMは著しく販売を伸ばしたともある。加えて米国市場でもKTMの2ストロークモデルは強く支持されているとある。
そして、
Pierer Mobility, formerly known as KTM Industries, just released its year-end numbers and they were positive, especially in the US market, where overall motorcycle sales of most brands are either down or flat, but in KTM’s and Husqvarna’s case sales were up. Stefan Pierer has a five-year plan to sell 400,000 motorcycles a year, which would surpass Kawasaki as the third-largest motorcycle manufacturer in the world.
「米国市場では、ほとんどのブランドの二輪車の売り上げが減少または横ばいの中、KTMおよびハスクバーナは販売を伸ばした。次の目標は、5年以内に年間40万台販売する計画で、目標達成時はホンダ、ヤマハに次ぐ世界第3位の二輪企業となる」とある。
1991年に会社倒産(1991年の前年、KTM社が倒産する可能性があると、世界モトクロス選手権の会場、イタリアでこの話題を直接聞いたことがある)に会いながら「RacerXonline.com」の記事「KTM FACTORY TOUR IN AUSTRIA」の説明によると、1992年、KTM社は再び小さなワークショップから出発、エンデューロレースのニッチ領域に参戦しながら成長し、その後、ラリーやモトクロスの世界で輝かしい成功を収めてきた。” Ready to race ”と言う明快な企業コンセプトロゴを旗印に、 モータースポーツへの飽くなき挑戦によって KTMはグローバルに成長し続けている。その目標とするのが、5年以内に世界第3位の二輪企業に成長することだと言う。超優良企業だった米国のハーレーダビッドソンでさえ2019年の世界販売台数は22万台弱に低下し、メディアによる二輪の将来は必ずしも明るいと言えないとする論調もしばしばあるが、大きく成長しているオーストリアの二輪企業KTMの話題は明るいものがあった。
KTM and Husqvarna combined for a total of 280,099 motorcycles sold in 2019, an increase of seven per cent over 2018’s sales totals. That makes it nine years in a row of sales growth for the company as a whole. Of the 280,099 units sold, 234,449 bikes were KTMs, and 45,650 were Husqvarnas.
「KTMとハスクバーナを組み合わせた2019年の合計販売台数は280,099台で、2018年の販売台数比+7%。 これにより、会社全体の売り上げが9年連続プラス。 280,099台の販売台数のうち、234,449台がKTMで、45,650台がハスクバーナだった。 さらに別の原文には、KTMグループの主要市場は米国で、特に米国のオフロードユーザーに支持されていると述べ、米国市場における日本のビッグ4の販売が低迷する中にあって、KTMは著しく販売を伸ばしたともある。加えて米国市場でもKTMの2ストロークモデルは強く支持されているとある。
そして、
Pierer Mobility, formerly known as KTM Industries, just released its year-end numbers and they were positive, especially in the US market, where overall motorcycle sales of most brands are either down or flat, but in KTM’s and Husqvarna’s case sales were up. Stefan Pierer has a five-year plan to sell 400,000 motorcycles a year, which would surpass Kawasaki as the third-largest motorcycle manufacturer in the world.
「米国市場では、ほとんどのブランドの二輪車の売り上げが減少または横ばいの中、KTMおよびハスクバーナは販売を伸ばした。次の目標は、5年以内に年間40万台販売する計画で、目標達成時はホンダ、ヤマハに次ぐ世界第3位の二輪企業となる」とある。
1991年に会社倒産(1991年の前年、KTM社が倒産する可能性があると、世界モトクロス選手権の会場、イタリアでこの話題を直接聞いたことがある)に会いながら「RacerXonline.com」の記事「KTM FACTORY TOUR IN AUSTRIA」の説明によると、1992年、KTM社は再び小さなワークショップから出発、エンデューロレースのニッチ領域に参戦しながら成長し、その後、ラリーやモトクロスの世界で輝かしい成功を収めてきた。” Ready to race ”と言う明快な企業コンセプトロゴを旗印に、 モータースポーツへの飽くなき挑戦によって KTMはグローバルに成長し続けている。その目標とするのが、5年以内に世界第3位の二輪企業に成長することだと言う。超優良企業だった米国のハーレーダビッドソンでさえ2019年の世界販売台数は22万台弱に低下し、メディアによる二輪の将来は必ずしも明るいと言えないとする論調もしばしばあるが、大きく成長しているオーストリアの二輪企業KTMの話題は明るいものがあった。
こうしたKTMの成長過程や法的再建の事例推移を見ると、二輪事業は経営手腕によっては「未来ある事業体」と言えるのではないだろうか。当たり前のことだが、最後は結局、経営戦略の優劣が勝敗を決する。