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勢いの形、$53百万のKTM北米新社屋

2023-04-03 06:34:29 | 二輪事業
3月31日付けの”Motocross Action mag”の「RUMORS, GOSSIP & UNFOUNDED TRUTHS:」の中に「KTM NORTH AMERICA’S ALL-NEW $53 MILLION HEADQUARTERS OPENS ON 20 ACRES」と言う記事があった。総費用$53百万(約70億)のKTM北米新社屋を紹介している。
 
“This is an emotional day for me,” said Stefan Pierer, CEO of Pierer Mobility AG. “Exactly 30 years ago I started in the USA with only a dozen employees. Today, we are Europe’s leading Powered Two-Wheeler group, we’re selling approximately 100,000 units annually in the US market, so more than one billion dollars in sales. The most important success factor for us is racing, that is the driving force that pushed us over the years, even in the US market. Building our new North American headquarters in Murrieta was the biggest single investment we’ve ever made yet. We set a new standard for the whole US market.”
北米KTMは KTM、 Husqvarna、 GasGasの各ブランドの二輪や幾つか電動を含む自転車そしてWPブランドの高級パワーパーツ部品を取り扱う会社で、CEOのStefan Piererは「今日は私にとって感慨深い一日だ」と述べ、「ちょうど30年前、アメリカでわずか10数名の従業員でスタートした事業が今日、KTMはヨーロッパを代表する二輪事業のリーディングカンパニーにまで成長し、米国市場で年間約10万台を販売して10億ドル以上の売上高を達成している。KTMがここまで成長してきた大きな要因はレース活動を中心にした企業活動であり、レース活動こそが、それが米国市場でも長年にわたるKTMの原動力であった」と話した。
そして、「北米グループの組織は、2009年の30人の従業員から2023年には約360人の従業員へと成長し、3棟からなる新しい複合施設は、北米にある1000以上のネットワークをサポートするために、さらなる拡張を計画している」と続けている。

KTM社と言えば、2016年の”racerxonline.com”に「KTM FACTORY TOUR IN AUSTRIA」の記事では、オーストリアに本拠地がある、KTMの新しい開発部隊の本陣が公開されている。KTM社といえば、今や世界のオフロード界では押しも押されぬ頂点に立つ雄で、かってこの領域を占拠していた日本企業を蹴散らし、世界選手権や米国のモロクロス・エンデューロ界の世界の覇者の社内公開であった。 

それが、2020年には、米国の専門誌”Motocross Action mag”でこう解説「KTM SET SALES RECORD FOR THE NINTH YEAR IN A ROW)するまでになった。
KTM and Husqvarna combined for a total of 280,099 motorcycles sold in 2019, an increase of seven per cent over 2018’s sales totals. That makes it nine years in a row of sales growth for the company as a whole. Of the 280,099 units sold, 234,449 bikes were KTMs, and 45,650 were Husqvarnas.
「KTMとハスクバーナを組み合わせた2019年の合計販売台数は280,099台で、2018年の販売台数比+7%。 これにより、会社全体の売り上げが9年連続プラス。 280,099台の販売台数のうち、234,449台がKTMで、45,650台がハスクバーナだった。 さらに別の原文には、KTMグループの主要市場は米国で、特に米国のオフロードユーザーに支持されていると述べ、米国市場における日本のビッグ4の販売が低迷する中にあって、KTMは著しく販売を伸ばしたともある。加えて米国市場でもKTMの2ストロークモデルは強く支持されているとある。
そして、
Pierer Mobility, formerly known as KTM Industries, just released its year-end numbers and they were positive, especially in the US market, where overall motorcycle sales of most brands are either down or flat, but in KTM’s and Husqvarna’s case sales were up. Stefan Pierer has a five-year plan to sell 400,000 motorcycles a year, which would surpass Kawasaki as the third-largest motorcycle manufacturer in the world.
「米国市場では、ほとんどのブランドの二輪車の売り上げが減少または横ばいの中、KTMおよびハスクバーナは販売を伸ばした。次の目標は、5年以内に年間40万台販売する計画で、目標達成時はホンダ、ヤマハに次ぐ世界第3位の二輪企業となる」とある

欧米の二輪販売が低調傾向にあるにも拘わらず、自社ブランドの販売は伸び続けているとするKTMの経営は素晴しいと思う。
1991年に会社倒産(1991年の前年、KTM社が倒産する可能性があると、世界モトクロス選手権の会場、イタリアでこの話題を直接聞いたことがある)に会いながら「RacerXonline.com」の記事「KTM FACTORY TOUR IN AUSTRIA」の説明によると、1992年、KTM社は再び小さなワークショップから出発、エンデューロレースのニッチ領域に参戦しながら成長し、その後、ラリーやモトクロスの世界で輝かしい成功を収めてきた。” Ready to race ”と言う明快な企業コンセプトロゴを旗印に、 モータースポーツへの飽くなき挑戦によって KTMはグローバルに成長し続けている。その目標とするのが、5年以内に世界第3位の二輪企業に成長することだと言う。超優良企業だった米国のハーレーダビッドソンでさえ2019年の世界販売台数は22万台弱に低下し、メディアによる二輪の将来は必ずしも明るいと言えないとする論調もしばしばあるが、大きく成長しているオーストリアの二輪企業KTMの話題は明るい。

過去、KTMの話題が顕著になってきた例の一つに、”Motorcycle USA.com”の「KTM Claims Biggest Sales Growth in 2013」では「2013年、米国で最も急成長している二輪企業はKTMだった。KTMの11月の販売台数は2012年同月比+49%、11月末時点では年初来の数字は28.8%の増加」の記事があった。リーマンショック後、二輪の大市場米国市場が半減したのを契機に、IR資料によると、世界の二輪事業を牽引してきたホンダ、ヤマハは欧米主体から新興国に活路を見出した。日本企業が落ち込んだ欧米の二輪市場に浸食してきたのが、強いブランド力をもつ欧米の二輪企業だと言われていた。その中で、KTMは、その明快なコンセプト”KTM Ready to Race”でON,OFF車とも豊富な品揃えと地道な「草の根活動」を展開し、日本二輪企業の販売が低調な、この時期を絶好の機会だと捉え、アメリカのオフ市場を席巻する動きをみせた。結果、モトクロスの分野では、世界選手権や米国のスーパークロスレースの王者として君臨し、そこから生み出す製品の優秀性を訴求し続けることでKMT信者を増し続けた。今まではハーレーは別格で日本企業間で其々の立位置を論議していれば良かったが、今や、そうではないようだ。

KTMの企業コンセプトロゴ”Ready to Race”は企業倒産後の出発点から何ら変わらず、その持つ意味は、KTMはレースばかりする企業ではなく、KTMはKTMユーザーと一緒に楽しみ、KTMユーザーと良い時を過ごしたいという意味だろう。末端市場はKTMの真の意味を理解し信頼し続けているのは間違いない。レースという言葉を企業指針にするなど以ての外だとする企業人やレースと聞くとそっぽを向く二輪関係企業人もいると聞くが、欧州二輪企業は自身の立ち位置を明確にすることでブランド構築に躍起になっており、結果、世界中の二輪愛好家は必然的に気にかけざるを得なくなる。オフロードのKTMの印象が強いが、オンロードの分野でも2018年にはロードレースの世界選手権のMoto3クラス、Moto2クラスおよびロードレースの最高峰MotoGPクラスの3クラスにワークスチームを送り込む唯一の企業でもある。勝つには三桁前後の億予算が必要と言われるMotoGP参戦だが、2020年のプレシーズンテストから著しい成長を見せ、2022年には王者Ducati と覇権を争う技術力を高めるまでになった。
 
こうしたKTM成長の事例を見ると、二輪事業は経営手腕によってはまだまだ「未来ある事業体」と言えるのではないだろうか。当たり前のことだが、最後は結局、経営戦略の優劣が勝敗を決する。

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