野々池周辺散策

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二輪の燃費 

2011-10-12 06:28:52 | 二輪事業
8日の神戸新聞に、四輪メーカーのマツダが一面広告をだしていた。
マツダの広告は最新技術を前面に押しだしたものだが、技術を前面にだした車の広告など暫く見ていなかったので、新鮮に映った。
その技術の第一は低燃費30km/l(10・15モード)の実現、第二は高効率トランスミッションによる新感覚ダイレクトドライビングとある。

今回のマツダ車の一押しは燃費だが、最近の日本車の広告は燃費主体が多く、
内燃機関を動力源とする最近の燃費を見ると、30km/lが標準燃費に設定されたようだ。

「マツダ デミオ」2011年9月20日 読売新聞
 30km/l(10・15走行モード)

「ダイハツ ミラe:S*1」2011年9月20日 ダイハツ工業 ニュースリリース
 30km/l(JC08走行モード)
 32km/l(10.15走行モード)


一方、二輪の燃費はどうかというと、下記記事があった。

ホンダ(Honda Motor)は26日、中型二輪車用の新型エンジンを開発したと発表した【9月26日 AFP】
「新たに開発したエンジンは、欧州で人気のある排気量500~750ccのミドルクラスに入る4ストローク、直列2気筒の700ccエンジン。
 燃費性能はミドルクラスのエンジンとしては最高の1リットル当たり約27キロで、
 同社の測定では同クラスの既存エンジンと比較して燃費性能が40%も向上したという。
 新型エンジンを搭載した3モデルは、イタリアのミラノ(Milan)で11月に開催されるオートバイの国際見本市「EICMA2011」に出展される予定」

二輪の燃費に関しての具体的な数値は余り見たことがないが、ホンダの新型700ccクラス二輪の燃費は27km/lだと言う。
それでも、既存エンジンに比べ40%も向上したとなっている。
ホンダ新型700ccの燃費測定の走行モードが記述していないので単純比較はできないが、
この値では既に30km/lを常識化しつつある四輪の燃費の方が二輪よりは優れていることになる。


二輪は、自動車と同じ様な、安全性、静粛性や快適性、あるいは燃費等の追求しても限界がある事を既に書いたが、
四輪と二輪の燃費に此処まで差異があり、より小さいコンパクトカーの計画が報道されている現在では、
二輪の歩む方向性、つまり四輪との差別化とは何かをより明確にしていく事の方が、競争相手より燃費が少し良いと宣伝するよりも重要性が高いのではないだろうか。

たとえば、こんな資料もある。

「「二輪は交通渋滞解消の切り札にある得るか」として、 ACEMの報告では、
「四輪の10%を二輪に置き換えると渋滞は大幅に減少し40%も渋滞が緩和され、
 25%を二輪に置き換えた場合は通過時間に関係なく渋滞は発生しないとある。

 そして、渋滞が発生しないことによって受けることのできる恩恵は、ベルギー全体に当てはめてみると、
  渋滞に寄って損なわれていた時間による生産性が改善され、 1日でおよそ35万ユーロ(約3570万円)の価値があると試算している。

 Leuven大学で行われた研究では、
 効果的な渋滞の問題と欧州の日常生活における悪影響に対応するために間違いなく最も現実的、実現可能と手頃な答えとして、
 二輪はモビリティを向上させる強力な潜在的な可能性を持っていると報告している」

四輪が発達した欧州で、一挙に二輪に置き換わるとは考え難いが二輪の良さを再認識させる資料としては有効な考え方である。

社会インフラが発達していない東南アジアでの二輪の役割は計り知れないものがあるが、
逆に東南アジアで二輪が一挙に四輪に置換した場合の混乱も予想出来るものだし、生活必需品としての役割は大きいだけに、
交通渋滞だけを考えても新興国でのバイク需要は今後ますます加速度的に増加するのだろう。


また一方では、こんな記事(response HP)もあった。

「新型車高出力高回転バイク「そういう時代じゃない」
「本田技術研究所の鈴木哲夫取締役常務執行役員は9日、高回転・高出力型の大型バイクについて
「そういう時代じゃない。乗りにくいものを造ってもしょうがない」との認識を示した。
 鈴木常務は同日、ツインリンクもてぎで報道陣と懇談し語った。

 鈴木常務は「どんどん高回転、高出力になり、排気量メリットは200km/h超えた領域で初めて意味があるようになってしまった。
 『CBR1000』などのクラスのオートバイは10年前にホンダ・レーシングが8時間耐久レースに出ていた車と全く同一スペックになっている。
 そんなものは街中で楽しいはずも無いし、そういう時代じゃない」と強調。

「基本的には、乗りにくいものを造ってもしょうがない。
 ハーレーやBMW、ドゥカティみたいに他の人に見せる盆栽のようなものはホンダには無理。
 だから少なくとも実用品というか、乗ってどうのというのは絶対負けないようにしろと、
 見せてどうとか飾ってどうとかという所はあきらめてもいいから、乗ってどうだけちゃんとやれと社内には言っている」と述べた。」



この景気が悪い世界の二輪市場で、最も販売を伸ばしているハーレーダビットソンそしてBMWやドガッティを、ただの見栄えを楽しむだけの「盆栽」と称し、
今後のホンダは彼らとは一線を引いて、より実用性の高い二輪の開発に専念し、性能一辺倒の二輪はレースの世界に反映させたいとの意向と解釈できる。

しかし、ホンダが自賛してきた自社の高性能バイクの販売を中止し、実用性を中心においた二輪の開発に専念するとの強い意思表示の具体的表明であれば強い説得力があるが、
発言の本当の狙いは、今回ミラノショーで発表する燃費を重視した新型700cc二気筒の優秀性を説明したいだけとも受け取れるだけに、なんとも理解し難く寂しい。
ホンダの700cc車は、そのうたい文句である燃費性能においては既に四輪の後塵を浴びているだけに、何等新規の公共性もないのにだ。


過去の歴史や発言の変遷からホンダ二輪開発トップの意向を素直に解釈できないが、ただ素直に解釈できる点があるとすれば、
ホンダはハーレーそしてBMWやドガッティに絶対的な脅威を感じ、彼らと一線を引くことでしか眺めることが出来ないもどかしさがあることだけは感じられる。

独自性を強烈に打ち出した欧米二輪メーカーの戦略は、現在のところ先進国の二輪ユーザに素直に評価され、
かつ新興国の一部ユーザにも支持を伸ばしつつある。

四輪のハイブリッドや低燃費が評価され販売を伸ばしているのは日本市場だけに限定されているなかで、
世界各地の市場が素直に要求する二輪を的確にマーケッティングし開発して販売するスピードが勝敗を分けるかも知れない。
時代が要求する二輪車をいち早く提供し、合わせて公共性の高い活動を行っていくことが企業の役割と思う。

ホンダはその企業自体がブランドなので、二輪事業の先頭役を自負している事は高く評価すべきだと思うが、
生活に密着した二輪需要が主体の新興国と違い、成熟した二輪市場における二輪の役割に二面性があることを、
ホンダの会見からくみ取る事が出来る。



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