大阪鋼巴球迷的博客(だあばんがんばあちうみいだぼーくぉ)

熱烈なるガンバ大阪サポの筆者が、世界で最も多くサッカーファン人口を持つ中国にガンバの名前を広めんと日中二ヶ国語で発信する

我々がどんな船に乗って行きたいのか?-監督人事について考える上で大事なことは正にそれ

2008-09-15 10:15:16 | ガンバ大阪
戦術とは絶対に勝てることを保証できるものではなく、あくまでもチームの方向性を決める約束事でしかない。カウンターを得意とするチームは1点をリードされた時点で全てが終わっているかもしれない。チームに方向性を持たせると、相対的に勝てる可能性が大きくなるが、必ず盲点が生まれてくる。だから、この航路(戦術)で行くことを決めて選手だけでなく、スタッフ、ファン、監督、場合によってまでが同じ船に乗っていくことになるが沈没する可能性もある。西部謙司氏の最新の著作にはそのようなことが書かれている。

カントクの解任を云々しない状況は甘い、というお叱りを受けたのでこの問題について自分なりに論じてみようと思い立ったものの、結局は何をどうすればいいとかいう正解はなく、見る側でキッチリと羅針盤を持っていないといけないんじゃないかと思ったりもする。つまり、今ガンバは大きな岐路に立たされているのはないだろうか。

一つはあくまでも攻撃的で面白いスタイルを追求すべきだという見方。これに関しては今でもなお多くの人が望むことであるが、それは極端な話、最悪の事態になったとしても理想に殉ずる覚悟があるかどうかである。セレッソは降格した年は残留の為のサッカーはしなかった。今もなお、単に目先の昇格の為のサッカーはしていない。だからセレッソはアカンねんという物言いは簡単だが、逆に言えばこれからチームの将来の礎となる戦術やチームカラーを植えつけて行く上では目先の結果に一喜一憂してしまうことよりも、長期的な視点に立てば非常に大事なことであるから、このチームは敢えて急がば廻れという選択をしている姿勢に関してだけは私は評価している。だからまあ、そうしたリスクテイキングは、上手く行けば手に入れるものは大きいが、ヘタすりゃ何も残らないというリスクはある。ただ、それでもこの路線をひた走るということは目先の結果云々よりも将来ガンバがガンバであるためには目線を下げないことが重要だということを打ち出すことに他ならないと思う。

もう一つは、今の現在のチーム力を考えると、「残留」が現実的な目標である、という見方。ただ、その場合以下の点を同時に考えておく必要がある:

・現在の順位・勝ち点や本来のポテンシャルを考えると目標を下げすぎる
・相対的に「残留」という可能性が高まるだけであって必ずしも保証できる手法ではない
・スタイルを転換することによって、客足が遠のく可能性があるし、新たな顧客を獲得できるチャンスを喪失する(早い話コアサポしか喜ばないサッカーになるということ)
・来年以降について継続は期待できない

といったところか。

あと、カントクの交代を考える上で以下の論点についても述べておく:

論点1. 不可抗力はどの程度免責材料になりうるか

ヤットの場合、病気とかがなくても北京五輪出場で離脱していたことにもなる。問題はバレーの移籍でこれについてはカントクとしてもどうすることもできない。強いて挙げればなぜフロントは引き止めなかったのかなんだけども、あの当時バレーを気持ちよく送り出してやろうと言っていた人たちは内心渡りに船と思っていたのではないか?

まあ、それでもいないならいないなりの戦術を考えないといけない、という人がいるんだろうけども、そういう人たちって具体的に何をさすのか勿体ぶって教えてくれませんねw

論点2.布陣変更は正しかったか?

チーム状態が悪い時に3バックに変更したのは過去何度もあったが、今回の誤算は以前と違って4バックがJで浸透し、3バックの弱点であるサイドを突くようになったということだ。3バックと攻撃的というのがセットにはならなくなったということを今回証明している。ただ、だから4バックでいけば良かったという人がいるが、事はそう簡単ではない。一つには下平の守備力を考えるとカントクは下平を高い位置で使いたかった。ただ、3バックなら、空いたサイドのスペースをボランチがカバーするか、それともCB2枚が両サイドを大きく開くことでカバーするかが条件だがその為には最終ラインと中盤の距離がコンパクトに保たれていることが必要ではあったのだが・・・

もう一つには、4バックをやる上でセンターの人材が質量ともに十分ではなかったということ。ラインコントロール、ビルドアップ、高さ、強さという点では帯に短したすきに長しというのが現実であった。従って筆者は4バックは3バックに比べたら全体的にはベターだが、人的資源の問題もあって、不完全ではないことは認識している。

論点3.選手起用に問題はないか

安田をムリに引っ張ったことに関してはある程度は理解している。トレーナーから状態を聞いて、ムリをさせられると踏んだからであって、逆に言えば下平が本来使えるレベルではなかったからだということだろう。

舶来2トップという布陣に関しては多くの人が指摘するように機能しているとはいいにくい。ただ、ロニーと播戸という組み合わせもオプションとしてはありだとは思うけど、高さがなくなってしまうんやなあ・・・理想は長身でポストプレーができる選手と裏に抜けられる選手との組み合わせであるとは思うけども。まあ、カントクが続投し続ける限りにおいては舶来2トップは続きそうだけども。


論点3 戦術的に行き詰まりはないか

思いっきり行き詰っていますw 欧州ではどんなに強いチームであっても2,3年経って同じ事をやっていれば相手にも研究されてくるし、何よりもチーム内でマンネリ化が進む。今のガンバはブラジル的な4-2-2-2というのを続けているのだけども、世界的には本家のセレソンが行き詰っているようにこのシステムにも限界が来ている。スクエア型の4-4-2を敷く名古屋と比べればバランスの悪さというのがハッキリしてしまう。前にも指摘したが、4-2-2-2というのはルシェンブルゴ時代のレアル・マドリーに似ている。その時のマドリーの置かれた状態というのはモロにガンバにも当てはまることなのであるが。

これを打破するには監督交代というオプションは考えられるのだが、シャムスカ強奪なんて言っている人たちはどんなサッカー観に基づいて言っているのだろうか?それよりはむしろハン・ベルガーとコンタクトを取る方法を探してみた方がいいように思えるのだが。ただ、オランダ人だから無条件に4-3-3に替えるという程単純ではないだろう。男爵だって名古屋に来てからは4-4-2でやっていたように、やはりチーム内の素材を見て決めることになるかもしれない。ただ、オランダというのはシステム論議が盛んなお国柄というのを何かで読んだことがあって、例えば3-4-1-2と4-4-2のチームが対戦したらどうなるのか、4-4-2と4-2-3-1、あるいは4-3-3だとどうなるのか、という議論をまとめると一冊の分厚い本が出来上がってしまう。そうした土壌の中からヒディンクのような名監督が生まれている。

だからまあ、こうした戦術的観点というのは正にどんなサッカーを我々が志向するかが大事なんだけども。

論点4.それでも今のカントクのいいところはどこか?

冒頭で紹介した西部氏の著作の中で、西部氏はデル・ボスケ時代のレアル・マドリーのことを選手の個性を追求したオーダーメイドのチームと評している。一人でも欠けるとチーム力はガタ落ちするが、その分強力なチームを造れる。デル・ボスケは個性を組み合わせる名人で、ジダンの攻撃に専念する分マケレレが守備でカバーするというようにそれぞれが補完し合う関係ができていた。そして苦手なことはやらせなかったせいか、不思議とケガ人も少なかったという。なんかこれって今のガンバに全て当てはまる評論なんですけどね。 

確かに言われてみれば、ガンバでシーズンを棒に振るほどの大きなケガ人はここ数年出ていない。その代わり退団した選手が新たなチームで手術をするほどの大きな怪我をしたのが皮肉ではある(アラウージョ、宮本、家長)。余談になるが、柏も同じく勝てていないが、こちらの場合にはノブりんが選手に対してハードワークを強いるため、運動量が落ちる夏場には勝てていない。また、選手に疲労が溜まる分、昨年はフランサ、今年はチュンソンのように大怪我をする選手が出てくる。解決策としては、ガンバと柏でカントク同士トレードすることなんだけども、それをやるとお互いに別の問題が新たに発生するのでやめておきましょうw

もっとも、ガンバがマドリーと違うところは選手層の厚さであって、後者の場合には主力の誰かが欠けても代わりの選手が穴埋めできる。ただし、それは代わりの選手が本来の主力とは違う持ち味を出すというもので、誰が出てきても同じサッカーができるという戦術をベースにしているわけではない。

これと対極的なのは、戦術家の監督が戦術を理解できる平均レベルの選手を揃えて戦術をベースにすることなんだけども、問題は変わりに出てくる選手の戦術理解度やその選手のレベルが落ちてしまうと苦しむ(その典型が神戸やF東であるが)。いずれにしても、どんなやり方にも一長一短があるんだけども、カントクを替えるということは我々がどんなサッカーを見たいか、そしてどんな船に乗っていくのかがかかっているということには変わりない。

以上のように見てきたが、あなたはどのように考えるだろうか?