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徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:恩田陸著、『隅の風景』(新潮文庫)

2018年11月21日 | 書評ー小説:作者ア行

このところずっと探偵小説ばかり読んでいたので、ちょっと気分を変えて、買ってから随分と長いこと放置していた恩田陸のエッセイを読んでみました。

『隅の風景』(2013)は紀行エッセイで、作者の趣味と独断が思いっきり炸裂していて面白いです。ビールがそんなに好きか?とかそんなに肉ばっかりよく食べられるな~、と突っ込みたくはなりますが(笑)

目次

ロンドンで絵を買う

チェコ万華鏡

ほどよい距離、ほどよい広さ 郡上八幡

不信心者の「お伊勢参り」

『冷血』と家光の墓 日光

雨の街、風の城 -台湾ブックフェア報告

仙人は飛び、観音菩薩は微笑む 韓国 雪獄山

スペイン奇想曲

阿蘇酒池肉林

熊本石橋の謎+馬刺し憧憬

曽我入鹿の玄昉の首塚 奈良

銀の箸の国で 韓国 ソウル

真昼の太陽を見上げる 北京、上海

付録・旅のブックガイド

ゲニウス=ロキ覚書

あとがきに代えて(2010)

文庫版あとがき(2013)

 エッセイを読んでいると、恩田氏は旅に出ると着実に小説のイメージを得ているのだということが分かります。観光地に行って何をどう感じるかというのは極めて個人的なものですけど、日本の観光は「点と点」を結ぶことしか考えておらず、途中の線がない、だからゆっくり思索しながら歩いて行こうとする人たちのための歩道や休憩所がないという指摘に続いて、「日本は国民が思索することを好まない」という結論を導き出すあたりはなるほどなと感じました。

「スペイン奇想曲」を読んで、今度は北スペインにも行こうと秘かに決意を固めました。

チェコの「ふしぎな庭」の本を読むクジラの話が面白かったです。ビールがたいそう美味しいらしいですが、私はそもそもお酒をほとんど飲まないので、プラハに行った時も一滴も試しませんでした。グーラッシュは散々食べましたけど(笑)

郡上八幡や阿蘇なども訪れてみたいとは思いますけど、ドイツに住んでるので、スペインに行くよりずっと難しそうです。


三月・理瀬シリーズ

書評:恩田陸著、『三月は深き紅の淵を』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『麦の海に沈む果実』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『朝日のようにさわやかに』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『黒と茶の幻想』上・下巻(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『黄昏の百合の骨』(講談社文庫)

関根家シリーズ

書評:恩田陸著、『Puzzle』(祥伝社文庫)

書評:恩田陸著、『六番目の小夜子』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『図書室の海』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『象と耳鳴り』(祥伝社文庫)

神原恵弥シリーズ

書評:恩田陸著、『Maze』&『クレオパトラの夢』(双葉文庫)

書評:恩田陸著、『ブラック・ベルベット』(双葉社)

連作

書評:恩田陸著、常野物語3部作『光の帝国』、『蒲公英草紙』、『エンド・ゲーム』(集英社e文庫)

書評:恩田陸著、『夜の底は柔らかな幻』上下 & 『終りなき夜に生れつく』(文春e-book)

学園もの

書評:恩田陸著、『ネバーランド』(集英社文庫)

書評:恩田陸著、『夜のピクニック』(新潮文庫)~第26回吉川英治文学新人賞受賞作品

書評:恩田陸著、『雪月花黙示録』(角川文庫)

劇脚本風・演劇関連

書評:恩田陸著、『チョコレートコスモス』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『中庭の出来事』(新潮文庫)~第20回山本周五郎賞受賞作品

書評:恩田陸著、『木曜組曲』(徳間文庫)

書評:恩田陸著、『EPITAPH東京』(朝日文庫)

短編集

書評:恩田陸著、『図書室の海』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『朝日のようにさわやかに』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『私と踊って』(新潮文庫)

その他の小説

書評:恩田陸著、『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎単行本)~第156回直木賞受賞作品

書評:恩田陸著、『錆びた太陽』(朝日新聞出版)

書評:恩田陸著、『まひるの月を追いかけて』(文春文庫)

書評:恩田陸著、『ドミノ』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『上と外』上・下巻(幻冬舎文庫)

書評:恩田陸著、『きのうの世界』上・下巻(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『ネクロポリス』上・下巻(朝日文庫)

書評:恩田陸著、『劫尽童女』(光文社文庫)

書評:恩田陸著、『私の家では何も起こらない』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『ユージニア』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『不安な童話』(祥伝社文庫)

書評:恩田陸著、『ライオンハート』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『蛇行する川のほとり』(集英社文庫)

書評:恩田陸著、『ネジの回転 FEBRUARY MOMENT』上・下(集英社文庫)

書評:恩田陸著、『ブラザー・サン シスター・ムーン』(河出書房新社)

書評:恩田陸著、『球形の季節』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『夏の名残りの薔薇』(文春文庫)

書評:恩田陸著、『月の裏側』(幻冬舎文庫)

書評:恩田陸著、『夢違』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『七月に流れる花』(講談社タイガ)

書評:恩田陸著、『八月は冷たい城』(講談社タイガ)

エッセイ

書評:恩田陸著、『酩酊混乱紀行 『恐怖の報酬』日記』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『小説以外』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『隅の風景』(新潮文庫)


書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。 』(ビーズログ文庫)

2018年11月06日 | 書評ー小説:作者ア行

『十三歳の誕生日、皇后になりました。 』は現在4巻まで出ているシリーズ『茉莉花官吏伝』の番外編のようなもので、白楼国の珀陽の支援で皇帝の座に就いた赤奏国の暁月と、本当は暁月が殺した先帝の後宮に入る予定だった莉杏の出会いから始まる恋物語です。暁月は帝位簒奪を実行した日にたまたま13歳の誕生日を迎えて(赤奏国は13歳で「成人」)顔見世のために王宮に来ていた莉杏を「ちょうどいいから」と皇后にしてしまいます。「鳳凰」朱雀神獣を守護神に掲げる赤奏国では「夫婦」であることが重視され、皇帝の即位も夫婦となっていることが必要とされ、暁月が皇后に想定していた女性が途中で暗殺されて来れなかったため、その場にちょうど来ていた莉杏を皇后にして朱雀神獣の加護を受けて即位する儀式を取り急ぎ行って既成事実をつくったという身も蓋もない経緯から始まる関係ですが、莉杏の方は皇后の役割を真摯に受け止め、暁月にもどんどん恋心を募らせ、より一層お役目を果たそうと努力していきます。

莉杏は幼いながらも鋭い洞察力を持ち、学習能力も高いので、どんどん問題解決能力を身につけて行きます。その有能さと健気さに暁月がほだされて行くところもみものです。政情不安の国の帝位に就いたばかりの皇帝の皇后としていろいろと残酷な決断を迫られたり、血なまぐさい事件に巻き込まれたりしますが、「こども」として守られるばかりではなく、懸命に事態に立ち向かおうとするところがひたむきでいいですね。事件の緊張感と「陛下、かっこいい~。好き~♡」というほんわかした感じが程よく混じっていて楽しめます。

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書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 2~ 百年、玉霞を俟つ 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 3 月下賢人、堂に垂せず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 4 良禽、茘枝を択んで棲む』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『おこぼれ姫と円卓の騎士』全17巻(ビーズログ文庫)


書評:池井戸潤著、『下町ロケット ヤタガラス』(小学館)

2018年10月03日 | 書評ー小説:作者ア行

マドリード旅行から帰って、片付けもしないまま読み出して止まらなくなってしまった『下町ロケット ヤタガラス』。旅行の行きと帰りに読んだ本を含め3冊分一気に書評を書く羽目に…

ロケット計画で付き合いの長い財前がヤタガラスの打ち上げを最後に異動になり、そこで立ち上げた衛星ヤタガラスによって可能になった精確な位置情報を利用した無人農耕機プロジェクトに佃製作所が参加することになってしましたが、財前の属する派閥と対立する的場がプロジェクトの総責任者となり、佃製作所が供給する筈だったエンジンとトランスミッションを内製化することを決定し、佃製作所はまたしてもピンチに陥りますが、プロジェクトのキーテクノロジーであるヴィークル・ロボティクスを供給する北大教授の試作機に協力することで、農耕機用のエンジンおよびトランスミッションの独自開発を進めます。

下町ロケット ゴースト』で佃製作所に助けられたのにもかかわらず、「ギアゴースト」社長・伊丹大は帝国重工の特に取締役的場俊一に復讐するために佃製作所のライバル社「ダイダロス」と手を組み、無人農耕機のプロジェクト「ダーウィン」で帝国重工の無人農耕機のプロジェクトに対立します。

いくつもの対立関係が絡み合い、緊迫感溢れるストーリー展開で目が離せません。最後に「日本の農業を救おう」という理念が貫かれるところが素晴らしいですね。改めて見直される下町の人情、使う人のことを考えるものづくりの姿勢が現実に取り戻されればどんなにいいかと、変に捻じれた日本経済を余計憂えてしまうことになるかもしれませんが、ひとまずは池井戸潤的カタルシスを存分に味わえる作品です。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)

書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品

書評:池井戸潤著、『シャイロックの子供たち』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『かばん屋の相続』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『株価暴落 』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『BT’63 上・下』(講談社文庫)

書評:池井戸潤著、『民王』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『金融探偵 』(徳間文庫)

書評:池井戸潤著、『ルーズヴェルト・ゲーム』(講談社文庫)

書評:池井戸潤著、『銀行仕置人』(双葉文庫)

書評:池井戸潤著、『鉄の骨』(講談社文庫)~第31回吉川英治文学新人賞受賞作

書評:池井戸潤著、『果つる底なき』(講談社文庫)~第44回江戸川乱歩賞受賞作

書評:池井戸潤著、『ようこそ、わが家へ』(小学館文庫)

書評:池井戸潤著、『花咲舞が黙ってない 』(中公文庫)

書評:池井戸潤著、『銀翼のイカロス』(文春文庫)

書評:池井戸潤著、『下町ロケット ガウディ計画』(小学館文庫)

書評:池井戸潤著、『下町ロケット ゴースト』(小学館)


書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 4 良禽、茘枝を択んで棲む』(ビーズログ文庫)

2018年09月05日 | 書評ー小説:作者ア行

茉莉花官吏伝』4巻も面白かったです。ちょっと短すぎたような気もしますが。

赤奏国に借り出された白楼国の文官・茉莉花は、皇帝・暁月の無理難題に応えたことにより、“宰相候補の海成との結婚”という引き抜き計画に巻き込まれますが、白羽の矢を立てられた舒海成は茉莉花だけは嫌だと拒否!皇帝命令なので一応茉莉花を食事に誘ったりして形ばかりの努力をするところが可笑しいです。

また、そういう勧誘を見越していた白楼国皇帝側近の子星が、まっすぐで嘘の付けない皇帝側近の武官・天河に、茉莉花に近づく赤奏国の男を嘘の設定で牽制するように課題を出します。この場合、ウソがばれても「茉莉花さんを好きすぎる痛い男」ということにしかならないから、いい訓練になるとか、なんというか見も蓋もない感じでやっぱり笑えます。

茉莉花が戦いが避けられないところに来ていた内乱を別の作戦で戦なしで内乱を終結させるのは想定内でしたが、諦めずに頑張るところが健気でいいですね。

皇帝・柏陽がまたしても茉莉花の部屋を唐突に訪れて、茉莉花がお土産に持ってきた茘枝酒を一緒に飲むシーンが微笑ましい。二人は両想いなんだけどどちらもそれに気づいてなくて絶妙にすれ違っているところがwww

そして次回は州牧の不正と州牧補佐の自殺について御史台が調査に入るという州に新州牧補佐として乗り込んで、御史台の手柄を奪う(?)ことになるようです。

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書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 2~ 百年、玉霞を俟つ 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 3 月下賢人、堂に垂せず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『おこぼれ姫と円卓の騎士』全17巻(ビーズログ文庫)


書評:恩田陸著、『EPITAPH東京』(朝日文庫)

2018年08月26日 | 書評ー小説:作者ア行

久々に恩田作品を手に取りました。『EPITAPH東京』は先月文庫化されたので買っておいたもの。

刻々と変貎する《東京》を舞台にした戯曲「エピタフ東京」を書きあぐねている筆者Kが書く日記のようなエッセイのような作りで、どこぞのバーで出会った自称吸血鬼の吉屋と友人B子との交流体験を綴りながら、大都市として記号化された《東京》とそこで生きる人たちや都市伝説についての考察が進んでいきます。また、戯曲「エピタフ東京」のシーンも3回登場します。かなりシュールな設定で、確かに東京の都市伝説に相応しい感じがします。完成した戯曲をぜひ読みたいと思わせるだけのアイディアが詰まっていると感じました。

所々で吉屋の吸血鬼としての視点が「僕」と言う一人称で語られるエピソードが差し挟まれているのですが、それも都市伝説的な要素の一つという印象を受けます。常野物語3部作の不思議能力を受け継ぎながら市井の人たちに混じって生きている一族に相通じる設定のようです。

Kの綴るエッセイの中ではいくつかの東京または都市を題材とした作品に言及されますが、小野不由美の『東京異聞』はなぜかスルーされていましたね。奇妙な魑魅魍魎が跋扈する東京の話という意味ではこの恩田作品に通じるものがあると思うのですが。大分前に読んだ作品なのでもうおぼろげにしか覚えていないのが残念ですが、逆に言えば、記憶に残るほどのインパクトがなかったということですね。

この『EPITAPH東京』も、時が経てば記憶の底にうずもれて行くに違いない作品の1つとなることでしょう。そこそこ興味深い視点や考察が提示されるものの、さほどのインパクトは残らない、作品として完結しておらず、エッセイなんだか劇中劇なんだか分からず、またゴジラが上陸するエピソードが挿入されていて「いきなり」感が半端ないところもあり、なんというのか、作家の雑多な構想メモを見せられたような中途半端な印象を受けます。

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三月・理瀬シリーズ

書評:恩田陸著、『三月は深き紅の淵を』(講談社文庫)

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学園もの

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短編集

書評:恩田陸著、『図書室の海』(新潮文庫)

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その他の小説

書評:恩田陸著、『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎単行本)~第156回直木賞受賞作品

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書評:恩田陸著、『まひるの月を追いかけて』(文春文庫)

書評:恩田陸著、『ドミノ』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『上と外』上・下巻(幻冬舎文庫)

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書評:恩田陸著、『劫尽童女』(光文社文庫)

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書評:恩田陸著、『ユージニア』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『不安な童話』(祥伝社文庫)

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書評:恩田陸著、『球形の季節』(新潮文庫)

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書評:恩田陸著、『月の裏側』(幻冬舎文庫)

書評:恩田陸著、『夢違』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『七月に流れる花』(講談社タイガ)

書評:恩田陸著、『八月は冷たい城』(講談社タイガ)

エッセイ

書評:恩田陸著、『酩酊混乱紀行 『恐怖の報酬』日記』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『小説以外』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『隅の風景』(新潮文庫)


書評:池井戸潤著、『下町ロケット ゴースト』(小学館)

2018年08月20日 | 書評ー小説:作者ア行

池井戸潤の『下町ロケット』シリーズ第3弾『ゴースト』は前編書下ろし。文庫化まで待てなかったので、電子書籍で買ってしまいました。

大田区の町工場「佃製作所」にまたもや暗雲が垂れ込めます。いまや佃製作所のシンボルとなったロケットエンジン用バルブシステムの納入先である帝国重工の業績悪化により、ロケット打ち上げのための「スターダスト計画」プロジェクトが打ち切りになる見込み。
また、農機具のための小型エンジンの納入先であるヤマタニからはトップ交代と方針転換により、新型エンジン開発の打ち切りが通告されます。佃製作所のエンジンは一部の高級機向けに限定し、今後販売戦略のメインとなる汎用モデルには「ダイダロス」という低価格メーカーのエンジンが採用されるという。このヤマタニからトランスミッションのメーカー「ギアゴースト」を紹介され、新たにトランスミッション用のバルブを開発することになります。
一方、経理部長の殿村は、父が病に倒れたため実家の農業を手伝うことに。

比較的資金が潤沢な優良企業である佃製作所も納入先の大企業が経営戦略やコストの見直しをすればすぐに赤字の危機に陥ってしまうという中小企業の悲哀が漂ってますが、それでも人情家の佃社長は「まっとうな商売」にこだわり、社員を大切にするところがとても魅力的です。ブラック企業が山ほどある現実の日本社会においては、この佃製作所の「まっとうさ」だけでもすでにカタルシス効果があるのではないでしょうか。

さて、この第3弾はストーリーとして完結しておらず、読んだら第4弾が待ち遠しくなるという構成です。「帝国重工」、「ギアゴースト」そして「ダイダロス」の問題が続編に繰り越されます。この巻で謀略に巻き込まれたのは佃製作所自身ではなく、新規取引先となる予定の「ギアゴースト」でしたが、謀略自体は前作と比べると軽めな感じがするかもしれません。

新たなキャラとして登場した「天才エンジニア」と呼ばれる女性・島津裕(しまず ゆう)、ギアゴースト副社長が個人的にお気に入りです。

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書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

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書評:池井戸潤著、『下町ロケット ガウディ計画』(小学館文庫)


書評:池井戸潤著、『下町ロケット ガウディ計画』(小学館文庫)

2018年07月31日 | 書評ー小説:作者ア行

『下町ロケット ガウディ計画』、待ちに待った文庫化。発売直後に注文して、昨日届いて、今日読み切りました。なんでも単行本では省略されていたところも収録されているそうで、小説の完成度としては文庫の方が高いということですね。

新聞連載・ドラマ化・単行本発行と『下町ロケット ガウディ計画』は2015年に随分話題になったようですから粗筋を知っている方も多いかと思いますが、自分の備忘録として粗筋をここに書かせていただきます。

前作『下町ロケット』でロケットエンジンのバルブシステムの開発により倒産の危機を切り抜けた大田区の町工場・佃製作所はまたもや危機にさらされます。日本クラインという大手医療機器メーカから謎の依頼が舞い込み、あとでそれが人工心臓のコア部品のバルブであることが判明しますが、量産を見込んで赤字でしかない試作品の製作を受けたものの、何やら怪しい動きがあり、結局試作品を納品しただけで取引打ち切り。そればかりか、佃製作所のプライドの根幹をなすロケットのバルブを収めている帝国重工からも次のロケットエンジンの開発では、NASA出身の社長率いるサヤマ製作所とのコンペになるという知らせが入り、経営の危機に直面。日本クラインのバルブ制作の受注も実はこのサヤマ製作所が横取りしていました。この二つの会社経営を揺るがす事態に加えて、内側からも危機が迫る。技術開発部の若手・中里が日本クラインのバルブを担当し、挫折してからおかしな動きをします。

そんな中、かつての部下・真野から北陸医科大学と福井の地元工場・サクラダと心臓の人工弁「ガウディ」を共同開発する話がもたらされます。ロケットから医療機器への進出は大きなリスクを伴うものの、完成すれば多くの、特に子供の心臓病患者を救うことができるというので、佃航平社長は腹をくくって新らしい挑戦に受けて立つ決断をします。

人工心臓のバルブ、ロケットエンジンのバルブ、心臓の人工弁という3つのストリングが絡み合いながら話が進行していきますが、その中で浮き彫りになるのは大企業の驕りと内部抗争に明け暮れて医療機器の本質を見失っている人たち、医学会の患者そっちのけで権力闘争にかまける人たち、医療機器の「許認可」権限を自身の権力とはき違えて威張る人たち、ただただ保身に走る人たちの卑しさと、患者第一で、医療機器を一刻も早く完成させようと真摯に努力する医師、モノ作りに誇りを持ってただひたすらいいものを作ろうと真剣に取り組む人たちの鮮やかな対比です。後者の努力が最終的には報われるというハッピーエンドですが、味わい深いと思うのが、「敵役」的な立ち位置だった人たちのなかには、ちゃんと反省し、自らの原点に立ち返ることができた人たちがいたことですね。

佃社長が神谷弁護士とともに日本クラインの傲慢コンビをやり込めるシーンも痛快ですが、部下の手柄横取り、大学の理事会でより大きな権力を求めて人工心臓の開発を進め、追放した部下の関わるガウディ計画の妨害など相当な悪役ぶりを発揮した貴船アジア医科大学心臓血管外科部長が、スキャンダルの後に地位を追われ、最後の片づけを終えて学部長室から外を行き交う人々をいとおしそうに眺め、見舞いに来た日本クラインの営業に「患者のためと言いつつ、私が最優先してきたのは、いつのまにか自分のことばかりだったな。だけどな、久坂君。医者は医者だ。患者と向き合い、患者と寄り添ってこそ、医者だ。地位とか利益も関係なくなってみて思い出したよ」というくだりが素晴らしい。そしてそう語りかけられた久坂が、なぜ自分が医療機器メーカーに就職したのか、そして営業ノルマや収益目標に追い立てられるうちに高邁な理想は脇へ追いやられ、ひたすら収益と効率を追求するばかりの日々を過ごしてきたと自覚するあたりが感動的ですね。どちらもいやーなキャラだったんですが、このように反省してくれると逆に好感度が上がります。こうして敵役の中でも様々な人物を描き分けるところがさすがですね。

先日『下町ロケット ゴースト』の書下ろし単行本が発売されました。今すぐ読みたい気持ちでいっぱいです。文庫化されるまで待つか、単行本の電子書籍版を買ってしまうか、迷うところです。

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書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

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書評:小川勝己著、『葬列』(角川文庫)~第20回横溝正史ミステリ大賞受賞

2018年07月18日 | 書評ー小説:作者ア行

第20回横溝正史ミステリ大賞受賞作品ということと、角川フェアだったかフェスだったかで割引されていたので、新規開拓とばかりに手に取ってみた『葬列』ですが、うーん。「戦慄と驚愕の超一級クライム・アクション」という煽りにある通り確かに戦慄し、驚愕しましたよ。 「不幸のどん底で喘ぐ中年主婦・明日美としのぶ。気が弱い半端なヤクザ・史郎。そして、現実を感じることのできない孤独な女・渚。社会にもてあそばれ、運命に見放された三人の女と一人の男が、逆転不可能な状況のなかで、とっておきの作戦を実行した――。果てない欲望と本能だけを頼りに、負け犬たちの戦争が始まる!」という商品紹介。明日美としのぶは元々知り合いでしたが、20歳そこそこの渚は3人とは一切無関係。史郎はおしぼりを届けに明日美の勤め先であるラブホテルに出入りしていたので顔見知り程度。この一見無関係な4人が合流し、強盗を計画し、その後に史郎が娘を殺された復讐のために自分の属していた九條組に戦争を仕掛ける、というのがストーリの大筋ですが、それだけで終わらず、意外なラスボスが最後に登場し、真相の一面を明らかにするのに驚愕を覚えました。

全体的な話運びとして「起承転ー起承転ー起承転転転結」みたいな感じでした。クライムアクションなので、なんというか死体がゴロゴロ半端なく出ます。やめとけばよかったという後悔もすでに遅く、途中まで読んだらやはりどこに話が辿り着くのか見届けずにはいられない、つまり「はまって」しまったので、最後まで一気読みでした。

コロボックルでほっこりした後はミステリの気分だったから横溝正史ミステリ大賞受賞作品を選んだわけなんですが、「これもミステリなの?」という疑問はぬぐえず、気持ちがざらつき過ぎて読後感は最悪。でも思わず「はまってしまう」筆致・ストーリー展開はやはり賞を取るだけのことはあると思います。「欲望むき出しの人間は怖い」というのと、「一度スイッチが入る、またはリミッターのようなものが振り切れてしまうと人間は豹変し、いくらでも残酷なことができる」というのがこの本を読んで改めて確認した結論ですね。その豹変の過程の描写が説得力ありました。


書評:小野不由美著、『営繕かるかや怪異譚』(角川文庫)

2018年07月14日 | 書評ー小説:作者ア行

小野不由美の新刊文庫を久々に目にしたので早速購入した『営繕かるかや怪異譚』。

この作品に触れるまで「営繕」という言葉を知りませんでしたが、「営繕」とは、「建築物の営造と修繕」のことをいい、具体的には、建築物の新築、増築、修繕及び模様替などを指します。字面からなんとなく縁起の良さそうな感じがするのは私だけでしょうか。

というわけで、『営繕かるかや怪異譚』は家にまつわる怪異譚の集成で、営繕かるかやの尾端(おばな)という大工が家の「障り」のようなものを修繕して、住み続けられるようにするエピソードが6編収録されています。

小野不由美の怪奇物はマンガ化された「ゴーストハント」を除けばどちらかというと地味にじわじわ怖くなる感じの物が多いと思いますが、これもその一つで、一編ごとにちゃんと営繕屋が解決策を示すまで読み切らないと不気味さが残って夜中どれもにトイレに行くのがなんとなく嫌になります 

奥座敷の襖が何度閉めても開いている(「奥庭から」)、「屋根裏に誰かいる」と不安を覚える母親(「屋根裏に」)、雨の日に鈴の音と共にたたずむ黒い和服の女が徐々に袋小路にある自分の家に近づいてくる?(「雨の鈴」)、おやつやお供えがあさられ、押し入れを開けてみたら痩せた老人がうずくまっていて、目が合ってしまうが他の家族には誰にも見えない(「異形のひと」)、祖母の家を受け継いで「使えない井戸」を庭のうち水や植木に使ったら枯れ込んでしまい、何やら異臭を放ち水跡を残す「何か」が徘徊するようになった?(「潮満ちの井戸」)、4歳の娘を連れて出戻ったら親に厄介払いされ、格安で貸してもらった親戚の古い家では車の調子がしょっちゅうおかしくなり、暗いガレージで男の子が現れるようになった?(「織の外」)。

どれも自分で体験するのはごめんこうむりたい現象ですね。

それにしても、私は小野不由美は「十二国記」シリーズからファンになったんですが、ああいうファンタジーはもう書かれないのでしょうか。というか「十二国記」自体いまいちすっきりと終わっていない(行方不明のままの麒麟とか)ので、続編が出ないかなあと思ってるんですけど。でも最近出ているのは怪奇物ばかりで、中でも『残穢』は一番怖かったですね。実話っぽい現実感が特に。

(購入はこちらから)

それに比べるとこの『営繕かるかや怪異譚』は軽くて朗らかな感じすらしてきてしまいます。営繕屋がやっていることは除霊でもお祓いでもなく単なる大工工事ですし。もちろん家相や由来などはきちんと考慮されてますが。そのささやかなことを大事にしている感じが微笑ましいです。


書評:有川浩著、『誰もが知ってる小さな国』(講談社)

2018年07月13日 | 書評ー小説:作者ア行

本日2冊目の本。やはり日本語だと読むのが速すぎて何冊買っても足りない感じです。これでも書評を書くことでスピードを落としてはいるのですが。書評を書かなかった頃はそれはもう次から次へと。。。。

さて、『誰もが知ってる小さな国』はコロボックルのお話しです。佐藤さとる氏が戦後生み出した『コロボックル物語シリーズ』の継承作品とのことで、本人からのお墨付きももらっています。実は私は『コロボックル物語シリーズ』のほうは読んだことがないので、今度そちらを読んでみようと思いました(こうしてまた読みたい本が増える...)

主人公は日本全国を旅するはち屋(養蜂家)の息子ヒコ。小学校3年の夏に北海道で同業者の娘ヒメと出会い、またコロボックルのハリーと秘密の友達になります。コロボックルが登場するまでに随分はち屋についての説明が多く、それはそれで興味深いのですが、「コロボックルは?」という期待になかなか答えてくれないので、ちょっとじれったい感じがするかもしれません。

作中で佐藤さとるの『コロボックル物語シリーズ』が何度も言及されていて、コロボックルもその本に出合ってびっくりして大騒ぎになったとあって、素敵なオマージュだと思いました。途中でコロボックルを危機にさらすような事件が起き、成り行きが不安になりますが、もちろん丸く収まるので、概ねしあわせな気分で読めるお話です。最後に明かされるはち屋とコロボックルのご縁の輪が見事ですね。そのしあわせな世界観にほっこりしました。


書評:有川浩著、『レインツリーの国 World of Delight』(角川文庫)

書評:有川浩著、『ストーリー・セラー』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、自衛隊3部作『塩の街』、『空の中』、『海の底』(角川文庫)

書評:有川浩著、『クジラの彼』(角川文庫)

書評:有川浩著、『植物図鑑』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『ラブコメ今昔』(角川文庫)

書評:有川浩著、『県庁おもてなし課』(角川文庫)

書評:有川浩著、『空飛ぶ広報室』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『阪急電車』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『三匹のおっさん』(文春文庫)&『三匹のおっさん ふたたび』(講談社文庫)

書評:有川浩著、『ヒア・カムズ・ザ・サン』(新潮文庫)

書評:有川浩著、『シアター!』&『シアター!2』(メディアワークス文庫)

書評:有川浩著、『キケン』(新潮文庫)

書評:有川浩著、『フリーター、家を買う』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『旅猫リポート』(講談社文庫)

書評:有川浩著、『キャロリング』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『明日の子供たち』(幻冬舎文庫)

書評:有川浩著、『アンマーとぼくら』(講談社)